土木学会論文集B3(海洋開発)
Online ISSN : 2185-4688
ISSN-L : 2185-4688
75 巻, 2 号
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海洋開発論文集 Vol.35
  • 竹山 佳奈, 泉水 めぐみ, 西田 浩太, 峯松 麻成, 田中 裕一, 江口 信也, 野口 孝俊
    2019 年 75 巻 2 号 p. I_899-I_904
    発行日: 2019年
    公開日: 2019/10/09
    ジャーナル フリー

     浚渫土と転炉系製鋼スラグを有効活用したカルシア改質浚渫土を用いて,汚濁低減に配慮した土質性状や投入方法で築堤した潜堤の強度・形状特性について報告する.試験は注排水可能な京浜港ドックで実施し,水中打設で潜堤を築堤後,干出した堤体の形状測定および強度試験用の供試体採取をおこなった.その結果,投入した改質土の土質性状によって強度が異なっており,汚濁低減効果の低いスランプ値<1cmの改質土の強度は,汚濁低減効果の高いスランプ値スランプ値1-7cmの改質土の約1/2となった.同一の改質土を水中投入あるいは水面落下投入方法で投入した場合,堤体の強度差は小さかった.一方で,法面勾配は水面落下投入の方が緩やかとなった.

  • 五明 美智男
    2019 年 75 巻 2 号 p. I_905-I_910
    発行日: 2019年
    公開日: 2019/10/09
    ジャーナル フリー

     軟弱な浚渫土を有効活用することを意図し,実工事での適用が進められてきたカルシア改質土については,混合直後から施工時,施工直後の動的条件下における環境影響に関する研究例が少なく,その適切な評価方法が見当たらない.本研究では,既往のマニュアルで示されている静的条件下でのpH溶出試験,シリンダーフロー試験に対し,小型水槽を用いた動的溶出試験,落下条件を取り入れた動的シリンダーフロー試験を考案し,それらの有効性について実験的に検討した.

     侵食が生じるような初期の条件下では,濁度-pH履歴は閉曲線と初期への回帰傾向を示すことがわかった.また,落下高さを変えた際の動的フロー値は浚渫土,カルシア改質土いずれも線形的な変化を示した.その近似式からカルシア改質土の静的,動的な流動性の変化の指標を提案した.

  • 粟津 進吾, 山本 佳知, 本田 秀樹, 野中 宗一郎, 赤司 有三, 浅田 英幸, 近本 雅彦, 溝口 栄二郎
    2019 年 75 巻 2 号 p. I_911-I_916
    発行日: 2019年
    公開日: 2019/10/09
    ジャーナル フリー

     カルシア改質土の施工簡略化を目的として開発している原位置混合工法(海底粘土の掘削,改質材との混合,改質土の投入の工程を原位置で実施)について,実施工に用いる粒径の改質材を材料としたときの適用性を評価するため,1/5モデルでの大型実験を行った.

     実験の結果,撹拌翼のストロークの設定を適切に行うことで,最大粒径40mm程度の改質材でも改質土を製造することができた.また,改質材の配合割合を30%として,粘土の加水を行うことで,改質土の強度品質のばらつきが低減された.混合後のバケット内の改質土は,法勾配1:0.9~1:1.3程度で水中排出できることが分かった.さらなる混合均一性の改善のためには,撹拌翼の形状改良が課題であるが,現状の装置においても本工法の実現場での適用性は十分であると考えられる.

  • 澁谷 容子, 小竹 康夫, 荒木 進歩
    2019 年 75 巻 2 号 p. I_917-I_922
    発行日: 2019年
    公開日: 2019/10/09
    ジャーナル フリー

     土木構造物においては,建設時のコストだけでなく,維持管理を念頭にしたライフサイクルコストを考慮することの重要性が増してくると考えられる.なかでも消波ブロックは供用期間中に維持管理補修を行うことが前提であり,設計波などの極大波浪だけでなく,来襲する年最大波やその頻度分布により補修のタイミングが異なることから,それらをライフサイクルコストで考慮することが重要となる.本研究では,設計波の算出方法として,従来から用いられている9つの標準的な極値分布のうち最も近い形状を用いる手法ではなく,年最大波の分布にもっともフィットする極値分布を算出し,この分布形状を用いてモンテカルロシミュレーションを行い,極値分布の形状と被害率の関係を調査する.さらに,補修のタイミングの違いがライフサイクルコストに与える影響を検討する.

  • 片山 裕之, 前田 勇司
    2019 年 75 巻 2 号 p. I_923-I_928
    発行日: 2019年
    公開日: 2019/10/09
    ジャーナル フリー

     近年,地球温暖化の影響により気象が極端化し,大型で強い台風が来襲する頻度が高くなっていると言われている.各港湾では,適切な工期設定のため波浪ランク別供用係数(休日や荒天で現場休止の場合の割増係数)が設定されているが,荒天が多い港では実態と乖離している場合もあると想定され,台風強大化に伴う荒天日数の増加も懸念される.また昨今,建設業界では働き方改革に伴う施工効率化が求められており,気海象条件の影響を受け易い港湾工事でも週休2日を実現するための動きもある.

     本検討では,波浪観測データを用い実際の各港湾の荒天日特性を整理すると同時に供用係数の試算も行い,工事の閉所拘束条件による違いや,現行の供用係数との関係を整理した

  • 長野 晋平, 和田 雅昭, 阿部 幸樹, 田中 修一, 池田 博文, 長野 章
    2019 年 75 巻 2 号 p. I_929-I_934
    発行日: 2019年
    公開日: 2019/10/09
    ジャーナル フリー

     気象海況情報を持つ作業船位置・回航情報システムは,長崎県,岩手県,高知県において構築され,漁港工事に導入されている.このシステムの活用により,建設業界で大きな課題になっている週休二日・働き方改革を推進しようとするものである.しかし,漁港工事において,週休二日を確保することは,工事が気象海況に左右されることから非常に困難であるとされている.週休二日の確保は,4週8休(4週間以内に8休確保)でも可とされている.また,工事予定日のその地点の波高,風速,降雨等気象海況条件が工事可能閾値より大きいと予想されれば,休日設定することが出来る.本研究は,作業船位置・回航情報システムを活用し,漁港工事地点における気象海況予報データにより,4週8休の休日予定を可視化し,受発注者で情報共有する方法を提案する.

  • 原 知聡, 金 洙列, 倉原 義之介, 西山 大和, 武田 将英, 間瀬 肇
    2019 年 75 巻 2 号 p. I_935-I_940
    発行日: 2019年
    公開日: 2019/10/09
    ジャーナル フリー

     波浪予報は,海上工事の作業可否を判断する上で重要な情報である.しかし,外洋に面した海域では,波高や周期などの波浪予報値に基づいて作業可否を事前決定するわけではなく,朝一番に現場海域の静穏度を視認してから当日の作業可否を決定することが少なくない.これは,波浪予報が必ずしも現場海域の波浪状況を正確に表していないと工事関係者が感覚的にとらえているからと考えられる.本研究では,沿岸波浪数値予報モデルGPV(CWM)について,海上施工での利用を目的とした精度検証のため,予報値と全国のナウファス波浪観測地点における観測値との比較を行った.検討の結果,日本海側の予報精度は高く海上施工の可否判断に適するが,太平洋側の予報精度は日本海側に比べて低く,海上施工の可否判断として適していないことがわかった.太平洋側の波高と周期のさらなる精度向上が望まれる.

  • 折田 清隆, 谷 和夫, 鈴木 亮彦, 菅 章悟, 田中 肇一
    2019 年 75 巻 2 号 p. I_941-I_946
    発行日: 2019年
    公開日: 2019/10/09
    ジャーナル フリー

     圧送性能と材料不分離性を両立するキャリア物質(粘性流体+粒状体)を循環させて鉱石を輸送することで,粗粒・高密度の鉱石を海底から海面まで揚鉱する方法が提案され,その模型実験装置が開発された.揚鉱性能の評価のために,不透明なキャリア物質中の鉱石モデルの移動状況を装置外から計測する必要がある.そのために,RFID(Radio Frequency Identification)を用いた計測方法を開発した.

     文献・聞き取り調査から実験にRFIDを適した選定した後,キャリア物質中などの揚鉱実験で想定される環境下でRFIDの交信が可能なこと,気中でのRFタグの移動速度が計測可能であることを確認した.そして,揚鉱実験を行って,RFIDを用いた揚鉱速度の計測をしたところ,粒状体がキャリア物質の揚鉱性能の向上に寄与することが分かった.

  • 赤倉 康寛, 小野 憲司
    2019 年 75 巻 2 号 p. I_947-I_952
    発行日: 2019年
    公開日: 2019/10/09
    ジャーナル フリー

     ジャスト・イン・タイムに代表される精緻なグローバル・サプライチェーンは,災害等による輸送途絶に対して脆弱性を有している.さらに,世界の海上物流は,一部の国際海峡・運河に航路が集中している.以上の状況を踏まえ,本稿では,国際海峡・運河を通航する海上物流の現状を把握・分析した.その結果,世界海運や貿易に占める4つの海峡・運河の通過貨物量や貿易額のシェアは増加してきており,Malacca海峡やHormuz海峡は多くの荷姿・品種で3~4割を超えるシェアを占めていることが明らかになった.Malacca海峡通過貨物の価値は年3兆ドルを超え,世界貿易の18%を占めていると推計された.コンテナ貨物の迂回に限定した簡易算定では,Suez運河封鎖は,Malacca海峡封鎖より,迂回距離が長いために,経済被害額は大きくなった.

  • 野口 孝俊, 阿部 貴弘
    2019 年 75 巻 2 号 p. I_953-I_958
    発行日: 2019年
    公開日: 2019/10/09
    ジャーナル フリー

     港湾計画では土地利用として港湾緑地の機能を規定しているが,近年,実質的な内容や質が変化しており,緑地に賑わいを求めるなど機能が大きく変貌している状況にある.本稿は,半世紀前から現在に至るまでの港湾緑地整備指針の考え方の変化を整理し,横浜港をモデルとして港湾計画での緑地の変遷をとりまとめた.その上で,横浜港内港地区における港緑地利用者数の増加要因を検討し,アクセスの改善や緑地ネットワークが一要因であると推論した.

  • 小島 治幸, 光武 裕次, 須山 孝行, 伊藤 仁, 岡本 真一, 今浪 勝利, 石橋 知子, 伊藤 嘉隆
    2019 年 75 巻 2 号 p. I_959-I_964
    発行日: 2019年
    公開日: 2019/10/09
    ジャーナル フリー

     北九州市は,2010年度から響灘地区が有する充実した港湾インフラや広大な産業用地を活かし,産業の裾野が広く雇用創出効果が高い風力発電産業を主たるターゲットに据え,「風力発電関連産業の総合拠点」の形成を目指した「グリーンエネルギーポートひびき」事業を推進している.

     本稿は,この総合拠点化における中核的な事業である大規模な洋上ウインドファームの設置に向けて取り組んできた活動実績をまとめるとともに,事業を進めるに当たり直面した課題を明らかにし,その解決策を考察することを目的とする.主要な活動としては,洋上風力発電施設の適地設定と改正港湾法における公募による占用予定事業者の選考があげられる.

  • 阿部 幸樹, 高野 伸栄, 後藤 卓治, 髙師 拓也, 西岡 真治
    2019 年 75 巻 2 号 p. I_965-I_970
    発行日: 2019年
    公開日: 2019/10/09
    ジャーナル フリー

     東日本大震災により東北地方の水産業が壊滅的な被害を受け,国内有数の水産物供給基地である三陸地域の生産・流通が一定期間滞った.水産業は関係する業務分野が多く調査対象範囲が広いことから,復旧過程やその分析,早期復旧にむけた課題などの知見の蓄積が進んでいない.このため, 東日本大震災時の岩手県の大船渡地域において,魚市場を中心とした水産物の生産・流通の復旧過程を調査・分析した結果,水産業の早期再開に有効な対策として「①魚市場,水産加工場等へ流入した土砂や損傷した機器類の撤去作業に必要なフォークリフトなど機械類の事前配備又は被災後の入手経路の検討,②腐敗した水産物の迅速な処理体制の構築,③パソコン等に保存している債権債務等のデータのクラウド化などバックアップ体制の構築」などが示唆された.

  • Shinwoong KIM, Soraka NEHASHI, Tomoaki NAKAMURA, Yonghwan CHO, Norimi ...
    2019 年 75 巻 2 号 p. I_971-I_976
    発行日: 2019年
    公開日: 2019/10/09
    ジャーナル フリー

     In this study, to evaluate the effectiveness of the FS3M for assessing the countermeasures of beach erosion, the model was applied to the real-scale domain. We used the FS3M, which is a computational fluid dynamic model using the Navier-Stokes equation, and the survey data provided by Mie Prefecture. To address the problem of calculation cost, the numerical method called long-term estimation was used to calculate the evolution of the beach profile on the gravel beach. The validity of FS3M was investigated by applying the parameters used in the reflective type beach to the step type beach. The model reproduced well the position of the berm but shows a problem in the profile change under the water. However, in the process of wave propagation to the rear of the artificial reef, the reduction of the wave energy decreases the wave steepness, and the beach profile change for reflective type occurs predominantly. This fact shows that FS3M can be used to reproduce the beach profile change and evaluate the effects of artificial reef.

  • 伊藤 航, 中山 恵介, 矢野 真一郎, 熊 柄, 齋藤 直輝, 駒井 克昭, 矢島 啓
    2019 年 75 巻 2 号 p. I_977-I_982
    発行日: 2019年
    公開日: 2019/10/09
    ジャーナル フリー

     九州本土と天草諸島に囲まれた内湾である八代海を研究対象とし,八代海の流動解析を行うことを目的として八代海のモデルを作成した.また最も大きな影響を与えていると考えられる,モタレノ瀬戸,蔵々瀬戸,および大戸ノ瀬戸(Strait between Yatsushiro Sea and Ariake Sea:SYA)による有明海との交換流量を推定することに重点を置き交換流量推定モデルを作成した.それらのモデルを用いて2018年8月26日に行われた観測結果の再現計算を行った.その結果,SYAでの有明海との交換流量を推定するために必要な潮位差は,大潮および小潮に対応した変化をすること,さらにその変化は季節変動しないことが分かった.SYAを500m,250m,125m,62.5mの計算メッシュサイズで再現した結果,125m以下のメッシュサイズで安定した結果を得ることができた.このSYAのモデルで得た交換流量を境界条件として八代海のモデルに与えたところ,2018年8月26日に行われた観測結果を良好に再現することができた.

  • 横山 佳裕, 大畠 雄三, 後藤 祐哉, 望月 佑一, 藤井 暁彦, 内田 唯史
    2019 年 75 巻 2 号 p. I_983-I_988
    発行日: 2019年
    公開日: 2019/10/09
    ジャーナル フリー

     本研究では,福岡市西部水処理センターが試験的に実施している,処理水のリン濃度を冬季に高くして海域に放流する季節別管理運転(冬季緩和運転)によるノリ養殖場への栄養塩供給の効果を把握するために,下水放流口及びノリ養殖場周辺を調査し,放流口からのリンの拡散範囲を推定した.その結果,強風による海水の混合や植物プランクトンによる栄養塩類の消費により,PO4-Pは低下しやすいことが示唆された.一方,強風等の影響が小さい場合には,下水放流口から約1.0kmまでの範囲で処理水の放流による水温上昇や塩分低下,リン濃度の上昇が確認された.また,ノリ養殖に必要なPO4-P(0.0124mg/L以上)を満たす水が下げ潮の流れにより,放流口から西側のノリ養殖場へ供給されていることが確認された.

  • 笠毛 健生, 白木 喜章, 片山 理恵, 池田 香澄, 柳 哲雄
    2019 年 75 巻 2 号 p. I_989-I_994
    発行日: 2019年
    公開日: 2019/10/09
    ジャーナル フリー

     本研究では大阪湾を対象にした長期計算が可能な水質・底質結合モデルを構築し,水質と底質の長期変動および相互の関係性について検討を行った.解析の結果,T-N・T-Pともに,1980年あたりで水質濃度のピークを迎え,その後水質濃度は減少傾向に転じるが,その際底質濃度に大きな変化は確認されず,1990年を過ぎてから底質濃度も明確な減少傾向を示した.この水質と底質で異なる変動特性は,水質は陸域からの栄養塩負荷量削減にすぐ応答し,早い段階で減少傾向に転じるが,底泥は蓄積した有機物の分解・溶出が蓄積量より大きくなるまでに時間が必要なため,改善に時間がかかると考えられる.近年,底泥中のT-N・T-P濃度が減少傾向であり,流入負荷量の持続的な規制による底質環境の改善が示唆される.

  • 生駒 聖, 畠 俊郎
    2019 年 75 巻 2 号 p. I_995-I_1000
    発行日: 2019年
    公開日: 2019/10/09
    ジャーナル フリー

     既往の研究から,微生物の有する酵素を利用した表層固化技術を用いた巻き上がり抑制技術の有効性が報告されている.本研究では,浚渫土に固化試薬,セメント及びウレアーゼを添加することで結晶析出機能を付加する機能性造粒砂を提案する.予備実験から適切な造粒砂の配合を決定した後,実環境を想定して潮位変動を与える土槽を用いた本実験により有効性評価を行った.本実験では,造粒砂の添加量を適切に設定することで,無機体窒素の基準濃度を超過せず表層強度増進効果を得ることが可能であることが示された.加えて,試験後に行ったベーンせん断試験,窒素含有量の鉛直分布の測定結果から,磯焼け対策の一つとされる窒素の徐放効果が期待できるとともに,底生生物の生息環境を大きく乱すことなく濁度抑制効果が期待できることが明らかとなった.

  • 上月 康則, 田辺 尚暉, 岩見 和樹, 平川 倫, 齋藤 稔, 山中 亮一
    2019 年 75 巻 2 号 p. I_1001-I_1006
    発行日: 2019年
    公開日: 2019/10/09
    ジャーナル フリー

     底層から表層までの全層にわたって貧酸素化が起こる水環境中で,その貧酸素化の影響を緩和することのできる構造物の形状についての検討を行った.尼崎運河は,慢性的に貧酸素化しており,時には全層で貧酸素化し,年間を通して生存が確認される魚種は底生魚のチチブだけであった.空隙を有する構造物を表層に設置すると,底層のみが貧酸素化するときには,そこを代替の棲み処とし,また全層で貧酸素化したときには水面付近に沈められた板の上に乗り,再曝気されたわずかな酸素を求めて水面に向かって鼻上げ行動をすることがわかった.この時,空隙への選好行動やなわばり行動などのチチブの一般的な行動は認められなかった.以上のことより,貧酸素化する水域では,空隙と定位可能な底面を有する構造物を水面付近に設置するとチチブの避難場として機能することがわかった.

  • 林 浩志, 山本 雄介, 濱田 奈保子
    2019 年 75 巻 2 号 p. I_1007-I_1012
    発行日: 2019年
    公開日: 2019/10/09
    ジャーナル フリー

     鮮魚の多くは,漁獲後,氷等により魚体温を低下させ,その状態を保持しながら漁港で陸揚げされる.鮮度保持のためには,消費地まで低温で流通する必要がある.しかし,漁港では,選別,計量時に氷は取り除かれ魚体温は上昇する.その後は氷等により低温状態で出荷されるが,この魚体温上昇が鮮度に,どのような影響をおよぼすかは不明である.

     本研究では,ゴマサバを対象とし,鮮魚の昇温リスクを鮮度に関する指標から示すとともに,昇温リスクを回避するための漁港施設配置計画について検討を行った.その結果,より高鮮度・高品質の鮮魚を出荷するためには,漁港での低温管理が重要であることが確認でき,施設配置計画にあたっては,作業時間の短縮と容易な氷の供給を図ることが必要で,そのために最も重要な荷さばき所と製氷・貯氷施設の配置計画について提案した.

  • 三浦 浩, 伊藤 靖, 深瀬 一之, 吉永 聡, 末永 慶寛
    2019 年 75 巻 2 号 p. I_1013-I_1018
    発行日: 2019年
    公開日: 2019/10/09
    ジャーナル フリー

     日本近海では2016年までの100年間で年平均海面平均水温は1.09℃上昇しており,21世紀末までには0.6~3.1℃/100年の上昇と予測されている.魚介類の水温上昇に伴う出現状況の変化として,分布域の北上,漁期の変化,資源量の変化等が挙げられる.これらの将来予測に対し,適応策を立案することは喫緊の課題である.暖海性魚種のキジハタは,水温上昇により生息条件が好転した魚種の1つである.山口県では種苗放流や漁場整備事業が展開され,漁獲量は近年増加傾向にある.そこで本研究は,山口県油谷湾において水深,水温,餌料生物等の生息環境とキジハタ幼稚魚の分布に関するデータを収集した.以上から,キジハタ幼稚魚の分布水深と水温変化に伴う摂餌特性に着目し,今後の水温上昇に対応した漁場整備方策について考察した.

  • 梶原 瑠美子, 丸山 修治, 伊藤 敏朗, 大橋 正臣, 門谷 茂
    2019 年 75 巻 2 号 p. I_1019-I_1024
    発行日: 2019年
    公開日: 2019/10/09
    ジャーナル フリー

     本研究では,保護育成機能の寒冷域漁港での整備手法提案のために,漁港内の高波浪からの避難場,底生生態系に考慮した餌場機能に着目し,通年の北海道周辺漁港の保護育成機能に関する基礎的知見を得ることを目的とした.調査の結果,通年漁港内は港外に比べ静穏であり,動物プランクトンだけではなく底生動物も多く現存した.加えて,様々な生活史段階や様式の魚類が港内を利用し,稚仔魚の個体数や魚類種数が港内で多く,魚類胃内には港内底生動物優占種が確認された.これらのことから,漁港の高波浪からの避難場機能や餌場機能の魚類利用が示唆された.漁港の静穏性が浅海域に安定した海底環境を創出することにより,浮遊生態系とともに底生生態系が構築されることで,餌場機能を支えていると考えられた.

  • 嶋田 陽一
    2019 年 75 巻 2 号 p. I_1025-I_1030
    発行日: 2019年
    公開日: 2019/10/09
    ジャーナル フリー

     水産資源管理の一環として集魚灯漁船(以下,漁船)の動向を調べることは効率な方法の1つと考えられる.そこで本研究ではSuomi-NPP/VIIRSによる夜間光衛星画像を用いて夏季及び秋季の対馬海峡における漁船の動向を調べた.漁船は対馬東沿岸から山口県北沖へ舌状に分布する.漁船の分布と海洋モデルの50m深の流速場を比較すると,漁船は対馬東沿岸から北東へ広がる淀んだ海域及びその縁辺に多く分布する.漁船の分布と50m深の水温場の関係性はあるが,漁船の位置における水温場の最多頻度は2015年8月では19℃台,9月では22℃台及び10月では21℃台であり,漁船が位置する水温場は時期によって異なる.一方,漁船の分布と流速場の関係性を動的に示すことができるので,水温場よりも流速場を解析するほうが漁業操業できる漁場をより効率的に推定できる.

海洋開発論文集 Vol.35(第44回海洋開発シンポジウム特別セッションのまとめ)
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