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松藤 絵理子, 橋本 典明
2019 年75 巻2 号 p.
I_301-I_306
発行日: 2019年
公開日: 2019/10/09
ジャーナル
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本研究では,太平洋を対象に波浪モデルWAVEWATCH IIIを用いて1年分の波浪推算とpartitioningを行い,うねりのデータセットを作成した.このデータセットを減衰距離が短いうねりと長いうねりに分類しそれぞれの出現特性を調べた結果,減衰距離が短いうねりは台風や低気圧による南東寄りの波向,長いうねりは北太平洋北部から伝搬する北東寄りの波向の出現が卓越することがわかった.また,うねりをWave System Trackingにより追跡し,うねりが南太平洋や貿易風帯から我が国の太平洋沿岸まで伝搬する解析結果を示した.
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仲井 圭二, 橋本 典明, 額田 恭史
2019 年75 巻2 号 p.
I_307-I_312
発行日: 2019年
公開日: 2019/10/09
ジャーナル
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陸奥湾と仙台湾に出現する周期数時間の副振動の特性を明らかにした.陸奥湾では,この副振動は年間を通じて存在するが,振幅は冬に大きく夏に小さいという季節変化を示し,風速の季節変化と良い相関を示す.スペクトル解析によると,周期5時間前後に2個のピークが存在し,そのエネルギーの季節変化は異なる.仙台湾では潮位偏差が高まる際に周期3時間程度の副振動が発達する.湾内の仙台,石巻,鮎川では振動の位相が非常に良く一致しているが,湾外の地点ではこのような振動はみられない.潮位偏差が大きい時と,大きくない時の周波数スペクトルの比をみると,周期3時間程度の成分の増幅率は他の成分よりも際立って大きく,潮位偏差が大きい時にはこの成分が特に発達していることが分かる.
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増田 和輝, 二宮 順一, 斎藤 武久
2019 年75 巻2 号 p.
I_313-I_318
発行日: 2019年
公開日: 2019/10/09
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気象庁55年長期再解析データ(JRA-55)を利用して,富山湾に来襲する寄り回り波に対するニューラルネットワーク(NN)を用いた予測の可能性と精度を調査した.入力データに気象データを,教師データに複数の寄り回り波イベントを与えて,波高または周期を出力する階層型NNを構築した.モデルの学習結果の違いから最適なモデルを検討した.また,高精度なモデルに感度係数法を適用することで,高波発生の経験則を抽出し考察を行った.解析の結果,ユニット数5個,イベント数4~6個(計160~240時刻ほどの気象データ),リードタイム13時間,教師データに日本列島を通過する低気圧を含むデータを取り入れたモデルが学習に適した条件であることを示し,2008年2月23日発生大規模な寄り回り波の波高を精度良く再現できることが明らかになった.
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渡辺 一也, 室橋 海, 齋藤 憲寿, 田名部 理
2019 年75 巻2 号 p.
I_319-I_324
発行日: 2019年
公開日: 2019/10/09
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古くから波浪データから海上風を推定する手法についての検討は行われているが,取得された波浪データには,風波だけでなく,有義波周期が大きく波形勾配が小さい,うねりとみられる波も含まれている.うねりとみられる波が海上風推定の精度に影響があると示唆されている.
そこで,本研究では有義波周期が大きく波形勾配が小さい波を抜き出した.そのデータが海上風推定にどのような影響を与えているのかを調べ,海上風の推定をより高精度に行う方法について検討を行った.その結果,波形勾配が0.02以下の波が海上風推定の推定値と実測値が異なる要因であることが分かった.上記の条件の波を除外することで,海上風推定の精度が向上した.さらに,内湾では波形勾配でデータを除外し,近似曲線の傾きを1に補正することで推定値が向上した.
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石橋 さくら, 宮武 誠, 越智 聖志, 佐々 真志
2019 年75 巻2 号 p.
I_325-I_330
発行日: 2019年
公開日: 2019/10/09
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著者らがこれまでに構築した浸透・滲出流を考慮した波打ち帯の漂砂輸送解析モデルを,透水性の高い粗砂で構成された底質に適用できるよう改良を加え,過去に実施した蛍光砂を用いた段波作用下における波打ち帯の漂砂可視化実験に関する数値計算を行い,その再現性を検証した.また,粗粒底質下での波打ち帯の漂砂移動に及ぼす飽和・不飽和斜面の影響についても検討した.その結果,底質粒径が大きい場合,波打ち帯の漂砂移動に及ぼす斜面の飽和度の影響はほぼ消失することを明らかにするとともに,浸透・滲出流を考慮することによって,遡上波水位や漂砂量の再現性に一部課題が残るものの,底質を粗砂で構成した波打ち帯の漂砂量の特性を概ね良好な結果で評価できることを示した.
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西村 亜子, 小林 昭男, 宇多 高明, 野志 保仁
2019 年75 巻2 号 p.
I_331-I_336
発行日: 2019年
公開日: 2019/10/09
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岩盤またはbeach rockなどの上に砂礫浜がある場合,不透過性の物体があるがゆえに波の遡上時の戻り流れおよび浸透流が変化し,前浜の堆積侵食状況に変化が現れる可能性がある.本研究では,まず沖縄本島南端に位置する米須海岸とMaldivesのHithadhoo島にある礫浜を具体例として取り上げた.米須海岸では,リーフの岩盤上に礫浜が安定的に存在していたが,Hithadhoo島では侵食によりbeach rockの露出が進んできている.しかしこのような岩盤上に載る砂礫浜の挙動ついては十分明らかとはなっていない.そこで砂浜下に岩盤がある状況を想定し,岩盤の位置と岩盤上の礫層厚を様々変えたときの前浜の侵食堆積機構について移動床2次元水理模型実験により調べた.
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鈴木 崇之, Daniel T. COX
2019 年75 巻2 号 p.
I_337-I_342
発行日: 2019年
公開日: 2019/10/09
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アメリカ,オレゴン州立大学が有する小型アクリル水槽(長さ7m,幅15.5cm,高さ35cm)を用いて,波高4.7cmの押し波を作用させ,陸上遡上波による中砂,粗砂,細礫の混合率を変化させた混合砂の移動特性を把握する目的の実験を行った.本研究では,細礫(d50 = 4.05mm)の移動動態に着目した検討を行った.混合砂は,汀線よりも陸側の地点にマウンド上に設置した.細礫を用いた実験を計11ケース実施し,解析を行った.その結果,陸側に分布した細礫の移動ピーク位置は中砂(d50 = 0.64mm)と粗砂(d50 = 1.60mm)の混入量に関わらずほぼ一定であることがわかった.また,中砂,粗砂を混入した方が細礫は移動しやすくなり,よりピーク位置に集まる傾向となることがわかった.分布形状についてはロジステック関数にて表現できることがわかった.
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有光 剛, 川崎 浩司
2019 年75 巻2 号 p.
I_343-I_348
発行日: 2019年
公開日: 2019/10/09
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本研究では,津波来襲時の砂移動・地形変化に及ぼす底質の粒度組成の影響を把握することを目的として,狭窄部背後に形成される大規模津波渦による地形変化に関する移動床実験を実施した.実験には2種類の粒径の砂を用いて,それぞれの混合比を変えたケースで計測を行った.
実験結果より,侵食域・堆積域の空間分布に関しては粒度組成による差異は小さいものの,それぞれの地形変化量については粒度組成による違いがみられ,粗粒分含有率が小さいほど地形変化量が大きいことが明らかとなった.また,混合粒径のケースの地形変化量は,単一粒径の場合の地形変化量を混合比に応じて線形重ね合わせをした値と概ね一致した.なお,土砂供給源の近傍で堆積が生じるような場所では,粒径が粗い方が堆積しやすい場合があることが確認された.
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長谷川 巌, 有川 太郎
2019 年75 巻2 号 p.
I_349-I_354
発行日: 2019年
公開日: 2019/10/09
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近年は気候変動により海象条件が厳しくなりつつある.また,複合的な外力の作用への対応が求められるようになっている.これらの近年における状況の変化について,従来の水理模型実験施設では対応できない場合もある.そのため,既存の水理模型実験施設について整理し,気候変動への対応や複合的な災害のメカニズムを解明するための水理模型実験施設を提案することを目的とした.水理模型実験施設の進展と近年における水理模型実験内容および実験施設の変化の整理を行った.日本国内と海外の水理模型実験施設の現状を調べ,施設規模や造波装置等の確認を行った.気候変動や複合災害への対応など近年の状況の変化に対応するために導入が望まれる水理模型実験施設を提案した.
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杉 栄一郎, 吉村 藤謙, 栫 浩太, 榎本 葵, 森川 高徳, 池尾 進
2019 年75 巻2 号 p.
I_355-I_360
発行日: 2019年
公開日: 2019/10/09
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本研究は,防波堤が施工途中の段階で,堤幹部の一部に低天端消波工が存在するケーソンに60度強の急角度入射波が来襲した場合の波力特性を平面水理模型実験により検討したものである.その主要な結論は以下のとおりである.(1)低天端消波工による衝撃砕波圧は発生しない.一方で,1)消波工の無い上手区間からの沿い波の発達による波高増大,2)低天端消波工のブロックとケーソン壁の空隙での激しい擾乱,により直立部のほとんどの部位で合田値を超える波圧が発生する.(2)波の作用時刻は上手から下手に向けて遅れるためケーソン全体に作用するピーク波力が抑制される.(3)ケーソン前面波と背面に回り込む回折波が同様な位相となるため,押し波時にケーソン背面から押し返す力が発生し,ピーク水平波力が抑制される.
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森 智弘, Tom ZHANG , 粟津 裕太, 大中 晋, 田島 芳満
2019 年75 巻2 号 p.
I_361-I_366
発行日: 2019年
公開日: 2019/10/09
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海外では防波堤や突堤の構造として,中空のセルラーケーソンを中詰め材として石を充填し,その上部にコンクリートの蓋ブロックを置くだけのものがあるが,波による蓋ブロックの移動・流出が報告されている.これまで海水面近くに置かれたブロックの挙動および安定性について明らかにされた研究事例は少ない.そこで本研究では,二次元造波水路を用いた水理実験により,蓋ブロックの仕上げ高や水位の違いによる蓋ブロックの挙動や作用波力の違いおよび蓋ブロックの形状による違いが蓋ブロックの安定性に及ぼす影響を調べた.その結果,蓋ブロックの仕上げ高がケーソン天端より高いほど,また水位が蓋ブロックの仕上げ高に近いほど安定性が低下すること,およびブロックの安定性を改善する上で,ブロックに開口部を設ける,あるいは天端面に傾斜を設けることが効果的であることが分かった.
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三井 順, 間辺 本文, 大井 邦昭, 岡野谷 知樹, 平山 隆幸, 松下 紘資, 古市 尚基, 大村 智宏
2019 年75 巻2 号 p.
I_367-I_372
発行日: 2019年
公開日: 2019/10/09
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津波の流れに対する防波堤マウンド被覆ブロックのイスバッシュ数の基礎的な特性把握を目的として,水理模型実験を実施した.マウンドの法面勾配を変えた実験結果から,イスバッシュ式は傾斜角が大きくなることによる所要質量の増大を過剰に評価していることが明らかとなった.また,台形形状のマウンドにおいては上流側あるいは下流側法肩付近のブロックが構造的に弱点となること,防波堤堤頭部においてはケーソンの角付近と下流側のマウンド稜線部が被災しやすく,断面二次元の実験と比較してイスバッシュ数がやや低下することがわかった.イスバッシュ式における流速の定義に関しては,ブロック近傍の流速を用いてイスバッシュ数を評価した方がデータのまとまりが良いが,設計との整合性を優先して断面平均流速を用いるのが良いと考えられる.
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松下 紘資, 鶴江 智彦, 平山 隆幸, 河村 裕之, 平石 哲也, 間瀬 肇
2019 年75 巻2 号 p.
I_373-I_378
発行日: 2019年
公開日: 2019/10/09
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港湾の荷役作業の安全性を確保し経済的な運営を行うには,長周期波による荷役障害を軽減することが重要である.長周期波の反射波を抑制する工法として,消波ブロックを被覆材に使用した没水型のマウンド構造物で良好な結果を得た既往研究もあるが,使用した消波ブロックは特定の種類のみであり,異なる種類の消波ブロックを用いた場合の効果は明らかになっていない.本研究では,没水型マウンド構造物について,異なる種類の消波ブロックおよび枠体ブロックを被覆材に用いた水理模型実験を実施し,反射波抑制効果を検証した.
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河村 裕之, 松下 紘資, 伊井 洋和, 大熊 康平
2019 年75 巻2 号 p.
I_379-I_384
発行日: 2019年
公開日: 2019/10/09
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津波に対する防波堤の安定性を強化するため,防波堤背後に腹付マウンドを設置する工法が進められている.この工法に使用されるマウンド上の被覆ブロックの所要質量は提案式によって算定可能であり,式中に含まれる実験定数である被覆材の安定数は各種ブロックについて示されている.しかしながら,腹付マウンドの天端が津波越流時に没水する条件が主対象であり,干出する条件については検討が不十分であるため,本研究では水理模型実験によって干出型腹付マウンドの被覆ブロックの安定性を検証した.その結果,被覆ブロックの安定数は没水の条件よりも低下することが確認された.また,被覆ブロックの形状による安定数の違いや対策による安定性の影響について考察した.
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佐伯 公康, 佐藤 秀政, 藤井 照久, 不動 雅之, 清宮 理
2019 年75 巻2 号 p.
I_385-I_390
発行日: 2019年
公開日: 2019/10/09
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港湾(国交省所管)の設計基準には,係船岸のレベル1地震動に関する耐震設計用の照査用震度の設定手法として,地震動の周波数特性および構造物の変形量を考慮したフィルター関数を使用する方法が示されている.一方,漁港(水産庁所管)については重力式係船岸に対するフィルター関数の係数は示されているが,矢板式については示されていなかった.漁港と港湾との水深の違い,標準的に使用されている設計方法の違いにより,漁港の矢板式係船岸には港湾とは別の係数が必要である.そこで,漁港の典型的な矢板式係船岸をモデル化した二次元地震応答解析を行って,フィルター関数の係数の算出を行った.また,レベル1地震動程度の地震動が作用する際に部材応力が降伏に至らないことを確認した.
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森川 嘉之, 高橋 英紀, 竹信 正寛, 宮田 正史, 川俣 秀樹, 今井 優輝, 高田 英典, 徳永 幸彦
2019 年75 巻2 号 p.
I_391-I_396
発行日: 2019年
公開日: 2019/10/09
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平成30年に「港湾の施設の技術上の基準・同解説」が改定されるにあたり,これまで用いられてきたレベル1信頼性設計法の材料係数アプローチを荷重抵抗係数アプローチへ移行することとなった.両アプローチともに性能照査において部分係数を用いることは共通しているが,性能照査式内での部分係数の位置づけが異なる.このため,荷重抵抗係数アプローチの性能照査式に適した部分係数を改めて設定する必要がある.そこで本研究では,基礎地盤を改良した港湾構造物の永続状態における安定性を対象として信頼性解析を行い,荷重抵抗係数アプローチに対応する部分係数を求めた.
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惠藤 浩朗, 関口 諒, 敷田 曜, 木原 寛明, 居駒 知樹, 相田 康洋, 増田 光一
2019 年75 巻2 号 p.
I_397-I_402
発行日: 2019年
公開日: 2019/10/09
ジャーナル
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本研究では,大型バルカー(以下,バルカー)が大型石炭貯蔵浮体(以下,LFTS)に接舷した二浮体問題としてのLFTSシステムの運動応答特性について述べる.東カリマンタン周辺ではバージ輸送により石炭をバルカーへ運び沖荷役により積み込む非効率的な輸送手順による石炭の運搬が実施されていることから,石炭輸送の中継基地となるLFTSが提案された.しかしLFTSとバルカーは共に大型の構造物でありその運動はそれぞれを結ぶ係留ロープを介して互いに影響を及ぼし合い,LFTSは特に長周期変動波漂流力の影響を顕著に示すことからLFTSシステムの動揺特性把握は,その実現化に向けて極めて重要な課題となる.そこで本研究ではLFTSとバルカーの二浮体の運動が係留ロープを介し,互いの運動応答に与える影響も考慮した二浮体問題としてのLFTSシステムの運動応答特性把握に努めた.
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中村 友昭, 大沼 史都, 趙 容桓, 水谷 法美, 江口 三希子, 倉原 義之介, 武田 将英
2019 年75 巻2 号 p.
I_403-I_408
発行日: 2019年
公開日: 2019/10/09
ジャーナル
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Flume式減揺タンクをPitchの低減に効果がある方向とRollの低減に効果がある方向に直交して浮遊ケーソンの天端に搭載した状況を取り扱い,規則波下と多方向不規則波下における減揺タンクの動揺低減効果を水理実験により検討した.また,減揺タンクの効果を簡易に評価できる手法を構築し,その適用性と有用性を確認した.その結果,規則波下では,Pitchは固有周波数とその倍周波数付近で増大し,減揺タンクにはその増大したPitchを低減させる効果があること,多方向不規則波下では,PitchだけでなくRollに対しても効果があることを確認し,本研究で対象とした減揺タンクとその配置の有効性を明らかにした.また,本解析手法により,減揺タンクがPitchに与える効果を概ね評価でき,それに基づいて効果的な減揺タンクの水量を見積もれることを確認し,本解析手法の有用性を示した.
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武田 将英, 重松 孝昌, 倉原 義之介, 原 知聡, 西山 大和
2019 年75 巻2 号 p.
I_409-I_414
発行日: 2019年
公開日: 2019/10/09
ジャーナル
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膜体の有効膜高を算定するための手法はこれまでに多く提案されているが,いずれの手法でも水理実験に基づく実験定数が必要なため,設計者が容易に有効膜高を求めることはできなかった.本研究では,設計者が簡便に計算することができる一様流下に置かれた垂下式膜体の新しい有効膜高の予測式を提案することを目的とした.水理実験と数値計算によって膜体に作用する圧力分布を検討した結果,実験定数は一意に定まるものではないことを確認した.そこで,無次元流速(動圧と錘重量の比)と膜高有効率(有効膜高と初期膜高の比)を用いた有効膜高の実用算定式を得た.この実用算定式は,初期膜高と水深の比を媒介変数とすることで実験定数が内包され,実験定数を利用者が指定しなくてよい点と,錘重量が式に含まれる点に特徴を有する.ただし,適用できる流速の範囲には制限があることに注意が必要である.
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高橋 英紀, 神原 晋, 福尾 原悟, 山谷 早苗
2019 年75 巻2 号 p.
I_415-I_420
発行日: 2019年
公開日: 2019/10/09
ジャーナル
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東日本大震災後,ケーソン背後に石を積み上げる腹付工が津波に対する既存の混成堤の補強方法として注目されている.実験や解析によって,石積みはケーソンの滑動を抑制し,基礎マウンドの支持力を増すことが確認されており,定量的な耐力評価方法も提案されている.一方,腹付工を設置した場合のケーソンへ作用する底面反力特性については十分には検討されていない.大きな端趾圧はケーソン端部を破損したり,マウンドを形成する石材を圧潰したりする恐れがあり,底面反力特性を把握しておくことは重要である.本研究では,腹付工を有する混成堤におけるケーソンの底面反力特性を遠心模型実験によって調べるとともに,過去に著者らが実施した実験結果も含めて検討し,腹付工による端趾圧の低減効果について明らかにした.また,単純化した計算モデルによって底面反力を推定できることも示した.
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石坂 修, 佐々 真志
2019 年75 巻2 号 p.
I_421-I_425
発行日: 2019年
公開日: 2019/10/09
ジャーナル
フリー
本研究では,護岸・岸壁の吸い出し・陥没リスク抑制に向けて筆者らが新たに考案・構築した緩衝材によるケーソン目地透過波低減法の設置直後及び設置後1年間にわたる追跡調査を行った.ケーソン間の目地透過波圧を計測した結果,設置時の最大振幅で88%,平均振幅で90%の波圧低減効果に対して,高波浪の影響や目地間の形状変更を始めする通年の周囲環境の変化後も,それぞれ88%,及び,95%のきわめて高い波圧低減効果が得られ,波力低減効果の継続性を明らかにした.さらに,陥没サイクルが事前に把握されている現場で本手法による陥没抑止効果を詳しく検証した結果,全ての現場で変状が無く,ケーソン目地透過波低減法による陥没抑止効果を実証した.
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山本 貴也, 野志 保仁, 宇多 高明, 小林 昭男, 橋本 桂樹
2019 年75 巻2 号 p.
I_426-I_431
発行日: 2019年
公開日: 2019/10/09
ジャーナル
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館山湾に面した見物海岸において護岸倒壊と背後地からの土砂流出の調査を行った.見物海岸の護岸は埋め立てによって造成されたものであるが,護岸前面に深みが迫る場所では越波が著しかった.2017年1月5日の現地調査では越波が計測されたものの,護岸は形状を維持していた.しかし,2018年11月の現地調査では,護岸が倒壊し,護岸背後からの土砂流出が著しかった.本研究では護岸倒壊と土砂流出の状況を現地調査によって観察し,護岸倒壊のメカニズムについて考察した.
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毛利 惇士, 山口 天宗, 篠沢 俊明, 菊池 喜昭, 野田 翔兵, 妙中 真治, 森安 俊介, 及川 森
2019 年75 巻2 号 p.
I_432-I_437
発行日: 2019年
公開日: 2019/10/09
ジャーナル
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防波堤の耐津波性能の向上対策として,鋼管杭と中詰土によって補強を行う鋼杭補強式混成堤が提案されている.本研究では,鋼杭補強式混成堤の模型気中水平載荷実験を実施し,中詰土の形状や基礎地盤の剛性の違いによって,杭の挙動にどのような影響が生じるか検討した.その結果,ケーソンへの載荷荷重が同一の場合,中詰土の幅が狭いほど杭に生じる最大曲げモーメントは大きくなる傾向にあった.また,港外側から杭に作用した外力分布を推定した結果,基礎地盤の剛性が低い場合に深い深度にまで外力が作用していた.これは,基礎地盤の剛性の違いによってケーソンの変位挙動が異なることが主原因であると考えられた.
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大村 厚夫, 浜口 正志, 上谷 修, 荻 定治, 上田 倫大, 横山 直弥, 大﨑 晴之
2019 年75 巻2 号 p.
I_438-I_443
発行日: 2019年
公開日: 2019/10/09
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鋼矢板は優れた断面性能を持ち止水性のある土留壁を形成できることから,港湾では護岸などの抗土圧構造として用いられている.しかしながら,鋼矢板の鉛直載荷試験例は少なく,鉛直支持力を期待する本設構造物として用いる際の支持力推定式が「港湾の施設の技術上の基準・同解説(平成30年)」1)において,詳述されていない実情があり,粘性土層の周面抵抗力を鋼矢板支持力として考慮する場合の課題となっている.本設基礎構造として鋼矢板を用いる際の支持力推定式は,「鉄道構造物に適用するシートパイル基礎の設計・施工マニュアル(案)」2)に記載されているが,バイブロハンマ工法による打設を対象としたものである.そこで,護岸改良に適用する新しい構造形式である「櫛形鋼矢板工法」の長尺鋼矢板を想定し,油圧圧入工法等により施工されるハット形鋼矢板(SP-50H)単体の鉛直押込みによる支持力試験を実施し,測定された基準支持力を施工法の違いを考慮して,既往の推定式と比較・考察した.
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土田 孝, 鶴ケ崎 和博, Arlyn Aristo CIKMIT
2019 年75 巻2 号 p.
I_444-I_449
発行日: 2019年
公開日: 2019/10/09
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高重量固化体を岸壁の裏込めに用いることによる地震時土圧低減効果について,計算と実験により検討を行った.分割法土圧計算法を用いて,高重量固化体と軽量固化体の併用により水平震度0.25の場合通常の岸壁に比べ約45%の土圧低減が得られることを示した.重量固化体(密度2.45g/cm3)を重力式護岸の背後に台形および逆台形の形状で設置し,動的土圧を軽減する構造について遠心載荷模型振動台実験による検討を行った.実験により裏込めした高重量固化体前面で大きな土圧低減効果があることを確認した.
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高野 大樹, 高橋 英紀, 遠山 憲二
2019 年75 巻2 号 p.
I_450-I_455
発行日: 2019年
公開日: 2019/10/09
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構造物の自重により背後の土圧を支える重力式岸壁において,地震時に背後地盤が液状化した場合,水平土圧の増加が原因となりケーソンの傾斜,滑動の被害が生じることが考えられる.地震により変位が生じた岸壁にさらに津波,引波が作用することでさらなる被害の拡大が生じることが予測される.その対策として,ケーソン背後の裏込め石部分に流動性の高い固化剤を注入することでケーソンの見掛けの自重を増大し,水平土圧への抵抗力を増加させる方法が考えられる.本研究では,ケーソンの裏込め固化範囲の違いが岸壁の地震時挙動におよぼす影響について動的遠心模型実験により検討した.その結果,裏込めを固化することで水平抵抗が増加すること,固化範囲によって改良効果が異なることがわかった.
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宮本 順司, 佐々 真志, 鶴ヶ崎 和博, 角田 紘子
2019 年75 巻2 号 p.
I_456-I_461
発行日: 2019年
公開日: 2019/10/09
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本研究では,高波時の洋上モノパイル基礎の安定性検討の観点から,遠心力場で砂地盤-モノパイル系の波浪実験を行い,パイル周辺地盤の液状化発生特性と,洗掘対策で用いられるパイル周りの表層礫置換のパイルの安定性への効果を詳しく調べている.実験は遠心力場70Gで行った.実験の結果,モノパイル周辺地盤で,波の進行方向に対しパイル側面部の地盤で液状化が発生しやすいことが得られ,進行波によってもたらされる主応力方向の回転(厳しい繰返しせん断)とパイルの存在による地盤内の部分排水条件の制限の2つの重要性を示した.パイル周りの礫置換工法は,液状化抵抗を4割程度増加させるものの,厳しい波に対しては液状化が発生しパイルの倒壊を免れないことから,パイルの安定に対しては礫層置換のみでなく密地盤への一定以上の根入れが重要となることを示した.
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山崎 弘芳, 菊池 喜昭, 野田 翔兵, 崎元 和樹, 松岡 宏樹
2019 年75 巻2 号 p.
I_462-I_467
発行日: 2019年
公開日: 2019/10/09
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港湾における杭基礎を用いた構造物では,施設の大型化や構造形式の変化に伴い,杭に大きな支持力が期待されるようになり,杭の長尺・大径化が進んでいる.ところが,開端杭の閉塞の問題と深度に依存する杭の支持力評価の問題が混在するため,長尺・大径化した開端杭の支持力評価方法は定まっていない.本研究では,開端杭の杭内周面摩擦と実質部分抵抗力を分離して測定ができる二重管模型杭を用いて貫入実験を行い,開端杭の杭先端の支持力分布について検討した.また,杭先端各部に作用する抵抗を測定できる閉端杭でも貫入実験を行い,開端杭と閉端杭での杭先端の支持力分布の違いについても検討した.得られた結果より,杭先端の抵抗力分布には杭先端の閉塞状況が大きく影響を及ぼすことが分かった.
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野村 理樹, 菊池 喜昭, 野田 翔兵, 井上 珠希, 平尾 隆行, 竹本 誠
2019 年75 巻2 号 p.
I_468-I_473
発行日: 2019年
公開日: 2019/10/09
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海面廃棄物処分場跡地を高度利用する場合,構造物の基礎工として基礎杭を支持地盤まで打設することが必要になると考えられる.その場合,廃棄物を遮水基盤(粘性土地盤)や支持層まで連込むことが懸念されている.本研究では,処分場内の大きな廃棄物を想定して廃棄物を平板で簡単に模擬し,平板に偏心鉛直荷重を作用させた時の平板の粘性土地盤への貫入挙動を検討した.その結果,平板は徐々に回転しながら貫入され,鉛直載荷荷重の偏心度が大きいほど浅い深度で杭から外れた.特に,平板が杭から外れるような時には地盤からの反力が極限状態に近い状態であると考えられる.また,平板の板厚が大きくなると平板の回転に対する抵抗するモーメントが大きくなること,貫入量の増加量に対する平板の傾斜角の増加量が小さくなることが分かった.
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平澤 充成, 中川 康之, 善 功企, 服部 俊朗, 井方 弘正, 濱野 吉章
2019 年75 巻2 号 p.
I_474-I_479
発行日: 2019年
公開日: 2019/10/09
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我が国沿岸ではアサリ漁獲量が急速に減少している.一方,港湾においては航路・泊地整備や維持に伴い発生する浚渫土を受け入れるための土砂処分場が容量不足になっている.浚渫土を活用して造成した人工干潟をアサリ生息場とする手法が確立できれば,これらの課題を同時に解決する有効な方策になると考えられる.本研究では底質中の硫化物とアサリの肥満度に着目し,細粒なシルト・粘土分含有率の高い浚渫土を人工干潟の造成材料に活用した場合のアサリ生残の推計方法について検討し,現地実験におけるアサリ生残率の経時変化の特徴を再現することができた.
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大谷 壮介, 田畑 直樹, 東 和之
2019 年75 巻2 号 p.
I_480-I_485
発行日: 2019年
公開日: 2019/10/09
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本研究では,カキ殻付着生物に着目して有機物の分解機能の定量化を行った.調査は2016年7月から2017年3月まで2か月ごとに大阪府貝塚市二色浜近傍において水質調査を行い,採集したカキ殻は実験室において酸素消費速度の計測を行った.殻上付着生物は付着動物(840μm以上)と付着有機物(840μm未満)の2つに分けて,付着動物には多毛類,藻類,ホヤ,二枚貝等が確認できた.また,殻上付着生物量は水深が深くになるに伴って大きくなり,付着動物の重量は付着有機物よりも大きかった.カキ殻上の付着生物による酸素消費速度は75.2±74.2(4.59-239)mgO2/m2/hourであり,そのうち80.5±14.0(47-97)%は付着有機物によるものであった.また,付着有機物による酸素消費速度は付着動物の酸素消費速度の5.63倍であった.以上のことから,カキ殻は付着生物に生息場を提供して有機物の分解機能を促進していることがわかった.
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市村 康, 藤田 孝康, 米花 正三, 中村 明日人, 鮓本 健治, 佐野 雄一
2019 年75 巻2 号 p.
I_486-I_491
発行日: 2019年
公開日: 2019/10/09
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本研究は,年々漁獲高が減少傾向にあるアサリについて,短時間で多面的に稚貝の生息適性を推定するために,UAVによる空撮画像の分析,底質の粒度分析および蛍光X線分析を用い,アサリ稚貝の生息適地推定方法の開発を行うことを目的とした.空撮は,約2,000万画素のUAV搭載カメラでアサリ漁場を撮影した.その後,3次元モデルを作成しGISによる分析により地盤情報を得た.さらに粒度分析の結果を加え地盤情報とした.底質は,蛍光X線分析を用い分析し,底質情報とした.次に,アサリ稚貝の個体数を目的変数とし,地盤情報および底質情報を説明変数とし重回帰分析を行った結果,R=0.7以上の相関を示した.これらの結果から,本手法により短時間で多面的にアサリ稚貝の生息適地を推定できる可能性が示された.
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丸山 修治, 梶原 瑠美子, 伊藤 敏朗, 井上 智, 大橋 正臣, 門谷 茂
2019 年75 巻2 号 p.
I_492-I_497
発行日: 2019年
公開日: 2019/10/09
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北海道南西部に位置する江良漁港(松前町)の港内蓄養施設において,人工種苗を用いたアサリ垂下養殖試験を行い,殻長の増加量,蓄養施設内の物理環境を把握するとともに,波浪環境下でのアサリや基質の移動に関する室内実験結果から,アサリが反転または移動,基質が移動しはじめる流速の発生頻度を整理し,成長に有利な垂下条件について検討した.その結果,本施設内のような波浪環境下での垂下養殖では,「篭の固定」,「基質の配置」は成長に有利と考えられ,基質材はアサリが流速に影響を受けやすい殻長の小さい時期は「砂利」,流速の影響を受けづらい大きさに成長した時期は「軽石」が成長に有利になる可能性が考えられた.
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村上 智一, 河野 裕美, 中村 雅子, 黒澤 華織, 國島 綾乃, 竹下 遥平, 水谷 晃, 下川 信也
2019 年75 巻2 号 p.
I_498-I_503
発行日: 2019年
公開日: 2019/10/09
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西表島網取湾では,2016年にサンゴの大規模白化が発生した.本研究では,その後の状況を明らかにするために2017および2018年にサンゴ被度,産卵率,稚サンゴ群体数などの調査を実施した.主要な結果は以下である.(1) 2016年に比べて2017年の被度は大きく低下した.さらに,2017と2018年の被度は,ほぼ変化なく低い被度であった.(2) 2017および2018年は,台風によって水温が低下し,大きな白化現象が発生しなかった.(3) 2017および2018年の産卵率は,それぞれ37.5%および65.9%であり,2018年は白化によるダメージから一定量回復した.(4) 稚サンゴ群体数は,特に湾口で多く見られた.(5) 被度の回復は地点レベルで異なり,湾口部や湾中央部網取側から回復していくと予測された.
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佐々木 大輔, 中山 恵介, 中西 佑太郎, 中川 康之, 田多 一史, 駒井 克昭
2019 年75 巻2 号 p.
I_504-I_509
発行日: 2019年
公開日: 2019/10/09
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地球温暖化対策として,海洋生物によって捕捉・吸収される炭素「ブルーカーボン」が注目されている.アマモ(Zostera marina)の成長に伴いCO2が吸収され,同時に地上部や地下部でのアマモ生物体の更新により,生物体の一部が海底に炭素ストックとして貯留される.アマモ場にCO2を効率よく吸収させる方法を検討するうえで,光合成によるCO2吸収に影響を与える,一様流場におけるアマモの有効水草高さ(Deflected Vegetation Height:DVH)に関する検討は重要である.そこで本研究では,様々な水深および流速の条件を与えてDVHに関する検討を行った.その結果,一様流場において,水深がアマモの葉長以上の場合とそうでない場合で,異なる傾向を示すことが分かった.さらにパラメータCaとBを用いることにより,アマモが水中に完全に水没する限界を推定できることが示された.
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有田 守, 下嶋 爽詩
2019 年75 巻2 号 p.
I_510-I_515
発行日: 2019年
公開日: 2019/10/09
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画像解析からアマモ場のモニタリングを行う研究が数多くなされている.筆者ら1)は画像からアマモ場などの植生の領域を抽出する際に領域ベースのsnake法を用い領域抽出法が有効であることを示した.さらに,抽出した藻場の種類をCNNの手法を用いて判別する研究2)を行い,アマモ画像と非アマモ画像を94%の精度で分類できることを示した.CNNは一般的に輪郭特徴のある物体の画像に対して有用であることが示されているが,アマモのような輪郭が曖昧な画像について分類を高精度に行えたのかについて十分な考察がなされていない.そこで本研究では,CNNがアマモ画像をどのように判別しているかについて解析で用いられる特徴マップに着目して検証を行いCNNで使用されるフィルタによって学習で使用した画像から固有の特徴マップを形成していることがわかった.
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杉本 憲司, 木下 咲菜, 高嶋 ひかる, 高田 陽一, 吉永 圭介, 岡田 光正
2019 年75 巻2 号 p.
I_516-I_521
発行日: 2019年
公開日: 2019/10/09
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本研究は,広島県呉市下蒲刈島において防波堤によって波浪抑制されたアマモ場において長期的な分布状況とアマモ場の生物多様性の影響を周辺アマモ場と比較をすることで検証することを目的とした.防波堤内におけるアマモ分布面積は,2001年12月に移植面積の2倍以上となったが,2006年以降は大幅に減少した.防波堤内のアマモ株密度は季節変動をしながら2003年7月まで高くなったが,その後は秋の衰退期にすべて消失し,種子によって再度アマモ場が形成される1年生アマモ場となっていた.葉上浮泥量から光透過率を計算すると,防波堤内では周辺天然アマモ場よりも15%程度葉に届く光量が少なかった.防波堤内のアマモ場は葉上・底生動物ともに種の多様性が周辺天然アマモ場よりも低くなっており,遺伝的交流も減少していたが,遺伝的多様性の低下は確認されなかった.
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江幡 恵吾, 佐藤 鴻成, 小針 統, 本間 公也, 前田 一巳, 税所 誠一, 宮本 秀樹, 神渡 巧
2019 年75 巻2 号 p.
I_522-I_527
発行日: 2019年
公開日: 2019/10/09
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海中に浸漬した焼酎粕混和マグネシア系モルタルの微細藻類付着特性を明らかにすることを目的とした.セメントモルタルCMとマグネシア系モルタルMM,それぞれに乳酸発酵させた甘藷焼酎粕を混和したCS,MSの4種類の供試体(円柱形:直径11mm,高さ20mm)を用いて夏季と冬季に実験を行った.浸漬期間と微細藻類付着密度の関係を求めるために,海中に設置した供試体を回収し,N, N-ジメチルホルムアミド溶液に浸漬して蛍光光度計を用いてクロロフィルa濃度を測定した.MSのクロロフィルa付着密度はCM,CS,MMよりも高い傾向にあり,夏季実験では3週間後に最大になり,1,3,6週間後でCMよりも有意に高く,冬季実験では1,2週間後にCMよりも有意に高かった.海中構造物に焼酎粕を利用する上でマグネシア系モルタルと混合することで微細藻類付着量が多くなると考えられた.
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中村 明日人, 末永 慶寛
2019 年75 巻2 号 p.
I_528-I_533
発行日: 2019年
公開日: 2019/10/09
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本研究では,大阪湾で施工されている漁場における人工魚礁による流動制御機能について,成層の安定度を指標として,定量的に評価することを目的とした.現地調査によりデータを収集した後,成層の安定度の指標であるRi(リチャードソン数),ME(混合効果),UE(湧昇効果)を算出し,魚礁区と対照区で比較を行った.調査の結果,魚礁区内は下流側の観測地点よりRiが小さく,UE>0であることから,下層水が湧昇し,混合していることが明らかになった.これにより,人工魚礁群により海水の混合,湧昇が生じていることが示され,流動制御機能に関する定量的評価のための知見を得ることができた.
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加村 聡, 穴口 裕司, 青山 智, 薬師寺 房憲, 伊藤 靖
2019 年75 巻2 号 p.
I_534-I_538
発行日: 2019年
公開日: 2019/10/09
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愛媛県海域の栽培漁業による漁業振興とその放流基盤の効果検証のため,貝殻増殖礁の潜水目視によるキジハタの観察事例と県内水揚量に関するデータを解析し,種苗放流と増殖場造成の役割及びその関連性について考察を行った.キジハタは放流尾数の増加に伴い増殖礁内でも幼魚~未成魚の観察個体数が増加し,その成長に同調して水揚量も増加する傾向が示された.また夏季には婚姻色を呈した大型個体も確認されており,増殖礁が放流の受け皿として機能するだけでなく幼魚~未成魚の保護育成,成長に寄与し,また,繁殖場としても貢献していることがうかがわれた.
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野原 秀彰, 菅野 孝則, 三戸 勇吾, 日比野 忠史
2019 年75 巻2 号 p.
I_539-I_544
発行日: 2019年
公開日: 2019/10/09
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閉鎖的な海域への生活排水等の流入により底生動物が生息できなくなった福山港内港地区(内港)に石炭灰造粒物(GCA)を用いた浅場が造成された.浅場造成前に実施した調査干潟での約3年間の底生動物調査の解析結果を踏まえ,造成された浅場での底生動物の再生状況を評価するとともに,浅場による流入負荷に対する有機物浄化能力を算出した.また,底生動物の生息阻害の要因となる海底での還元化環境における環境確認実験を通して,GCAによって形成される水底質状態が底生動物の生息へ与える影響を検証した.これらの結果から,本内港域で再生される底生動物量の再現性は高く,年間10g-COD/m2程度の有機物が底生動物により消費されることが明らかにされた.さらに,GCAは底生動物の生息を阻害するH2S,NH4+濃度等の低減や堆積汚泥の減量化に寄与することが示された.
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梁 順普, 佐々 真志, 高田 宜武
2019 年75 巻2 号 p.
I_545-I_550
発行日: 2019年
公開日: 2019/10/09
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日本海沿岸の砂浜の保全・再生上,重要となる典型的な3種の小型底生甲殻類,即ち,ナミノリソコエビ,ヒメスナホリムシ及びヒゲナガハマトビムシの分布域は土砂内部の水分張力を表すサクションによって制御されていることが明らかになっている.このような背景から,本研究では,上述の3種の底生生物を対象とし,高波イベントに伴う砂浜地形の顕著な変化による生物生息分布の変化とその要因に対するメカニズムを地盤環境適合場の観点から明らかにすることを目的として現地調査を行った.その結果,当該生物の生息分布変化とサクションで表す地盤環境適合場の間には密接な関係があり,各底生生物の固有のサクション適合場に従って岸沖生物分布変化が発現していることを明らかにした.
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竹中 寛, 末岡 英二, 水谷 征治, 合田 和哉, 白庄司 健之, 中嶋 道雄, 常盤 敏, 岩波 光保
2019 年75 巻2 号 p.
I_551-I_556
発行日: 2019年
公開日: 2019/10/09
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昨今,生産性向上の観点から,桟橋などの港湾構造物においてもプレキャストコンクリートが活用されつつある.著者らは,桟橋工事におけるさらなる生産性の向上を指向し,ループ継手を応用した新規な杭頭部の接合構造を提案している.当該構法の実用化に向けて,本研究では,鉛直打継目や継手構造が部材の力学性状に及ぼす影響を確認するため,梁試験体による載荷試験を行った.その結果,鉛直打継目の有無や処理方法の違いが梁部材の曲げ,せん断耐力に及ぼす影響は小さいこと,分離型ループ継手接合と称する接合方法を用いた当該構法は,連続する1段配筋の梁と同等以上の曲げ,せん断耐力を有し,既往のコンクリート標準示方書やレオンハルトの設計式によって耐力を推定可能であることを明らかにした.
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池野 勝哉, 白 可, 岩波 光保, 川端 雄一郎, 加藤 絵万
2019 年75 巻2 号 p.
I_557-I_562
発行日: 2019年
公開日: 2019/10/09
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著者らは,直杭式桟橋のプレキャスト化に適した杭頭接合として「鞘管方式」を提案している.「鞘管方式」とは,鋼管杭よりも直径の大きな鞘管をプレキャスト上部工に埋設し,鞘管内に鋼管杭を杭径程度挿入するとともに,その間隙を無収縮系のモルタルで充填して一体化を図る方法である.一方,桟橋には水平剛性を高めた斜杭式も広く適用されているが,「鞘管方式」を適用しようとした場合,鋼管杭の斜角によって鞘管径が大きくなるため,杭頭部の固定度が低下する懸念がある.そこで本研究では,新たに「ソケット鉄筋方式」と呼称する斜杭用の接合方法を提案し,各方式の杭頭部の固定度を確認するための正負交番載荷実験を実施した.実験の結果,従来の現場打ち上部工による杭頭接合と比べて,「鞘管方式」は概ね同程度,「ソケット鉄筋方式」はより高い水平剛性および固定度を有することを確認した.
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近藤 明彦, 小濱 英司, 渡辺 健二, 国生 隼人, 小山 萌弥, 永尾 直也, 吉原 到
2019 年75 巻2 号 p.
I_563-I_568
発行日: 2019年
公開日: 2019/10/09
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本研究では,桟橋式係留施設の耐震性を安価かつ容易に向上する方法の開発を目的とし,制振部材として座屈拘束ブレースを取付ける工法の有効性を検討した.一般的な水深-13mの直杭式桟橋を対象に二次元非線形動的有限要素解析によって,制振部材配置,降伏軸力と軸剛性,入力地震動の周波数特性の影響を考慮して検討を行った.制振部材の取付けによる効果として,杭頭部に発生する曲げモーメントを制振部材が塑性変形しつつ分担することで,桟橋全体に発生する最大変位を25%から30%程度減少させた.基礎杭に発生する曲率と曲げモーメント分布の比較から,部材の降伏軸力と軸剛性のバランスを適切に設定することで基礎杭の損傷を軽減させられることを示した.
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夏坂 亮太, 小濱 英司, 伊藤 広高, 松村 聡, 水谷 崇亮, 森川 嘉之, 藤田 純逸, 下谷 勝規
2019 年75 巻2 号 p.
I_569-I_574
発行日: 2019年
公開日: 2019/10/09
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杭間固化改良工法は,組杭周辺地盤にセメント固化改良を施工するものであり,組杭の横抵抗増加を見込まれて考案された新しい工法である.本研究は,杭間固化改良工法の実施工に向け,控え組杭式矢板式岸壁における効果を大型模型実験により確認することを目的としている.そこで,実構造を想定した断面を1/30スケールで再現し,水中振動台による加振実験を行った.実験結果から,矢板と共に控え工近くの背後地盤が海側に移動する場合においても杭間固化改良によって矢板および組杭上部工の水平変位が低減され,実構造物においてもその効果が期待されることが示された.
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梅津 啓史, 藤田 孝康, 三上 信雄, 斎藤 将貴, 三神 厚, 不動 雅之, 井上 真仁, 笠井 哲郎
2019 年75 巻2 号 p.
I_575-I_580
発行日: 2019年
公開日: 2019/10/09
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漁港施設防波堤は大部分が水面下にあり,基礎部分の欠陥などの機能性の診断は陸上目視では把握困難なことが多い.そのため,防波堤上部工での自由振動計測から固有振動数を特定し基礎部分を評価する手法が検討されている.しかし自由振動では,現場で固有振動数の特定が難しいという課題があった.本研究では,固有振動数の特定方法として,強制振動による共振曲線から求める手法を提案し,室内試験と現地試験で適用性を検証し,漁港施設の機能診断への有効性を検討した.その結果,室内試験により,固有振動数は圧縮ばね個数に依存し理論値と相関が高いことが確認された.また、現地試験から,強制振動による手法の方が確実に固有振動数を特定可能なこと,固有振動数の違いによる欠陥推定など機能診断における評価に活用可能なことがわかった.
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Thi HA , 楠原 啓右, 水谷 聖, 大中 晋
2019 年75 巻2 号 p.
I_581-I_586
発行日: 2019年
公開日: 2019/10/09
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河口部から沖合まで連続した航路・泊地が存在する場合,シルトに対する波・流れによる移流拡散現象と浅海域での波による漂砂現象が混在するため,数値モデルによる予測検討は容易ではない.また東南アジアでは,季節の違いにより土砂供給,河川流量,海象条件等が大きく変化するため,長期モニタリングによる現象解明が重要である.本研究では,-14m航路の整備現場で実施された長期測量データおよび波と濁度の連続観測データを用いて,航路内の埋没状況の季節変化,場所的変化,濁度と外力との関係を明らかにした.航路内の土砂堆積は高波浪の出現頻度の高い雨季に顕著であり,航路水深の違いに関わらず増深前も増進後も同様の傾向が見られた.また,少なくとも短期間での顕著な航路内堆砂の直接的な要因は,波による影響が支配的であることが示された.
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宇多 高明, 伊達 文美, 野志 保仁, 小林 昭男, Le Thi Kim Thoa
2019 年75 巻2 号 p.
I_587-I_592
発行日: 2019年
公開日: 2019/10/09
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急速な経済発展を遂げている発展途上国では,経済活動の活発化や海岸付近でのリゾート開発のために,海岸線付近での各種行為が総合調整が不足したまま急速に進められ,これによって侵食が急速に進んでしまう例が多く見られる.しかも,侵食が進んだとしても,深浅測量データの取得など基礎データの取得も行われないからデータは不足したままで,したがって課題の解決は容易ではなく,この間にも侵食が進んでしまう例には事欠かない.このような問題の発生を防ぐには,容易に取得可能な衛星データと,現地調査を組み合わせた方式で課題の存在を明らかにし,早期に対処方針を練ることが必要と考えられる.本研究ではVietman南部のPhan Thiet周辺での海岸侵食の事例を基にこのような視点から検討した.
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Takaaki UDA, Chun-Hung PAO, Yu-Hsiang LIN
2019 年75 巻2 号 p.
I_593-I_598
発行日: 2019年
公開日: 2019/10/09
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Golden Beach in Taiwan is a famous sandy beach attracting many people because of a wide sandy beach and beautiful sunset. In recent years, however, this beach has been eroded. As a measure against beach erosion, groins were constructed as well as the beach nourishment on the beach. Despite these efforts, their effect was insufficient in recovering sandy beach. In this study, the beach changes in a widespread area including the Erren River, Golden Beach, and Anping Harbor were investigated using the satellite images and bathymetric survey data. Field observation was also carried out on May 25, 2018 near Anping Harbor and Golden Beach. On the basis of these field data future measures were discussed.
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