デジタルアーカイブ学会誌
Online ISSN : 2432-9770
Print ISSN : 2432-9762
6 巻, s3 号
選択された号の論文の38件中1~38を表示しています
一般研究発表(オンライン)
  • 西村 由希子, 羽田 聡, 三島 貴雄, 近藤 無滴, 後藤 真
    2022 年 6 巻 s3 号 p. s119-s122
    発行日: 2022年
    公開日: 2022/11/02
    ジャーナル オープンアクセス

    本研究は、文化財に関わる情報をさらに豊かにすることでその価値を再発見するとともに、それらのデジタルアーカイブの高度活用に資するための「メタ文化財情報アーカイブズ」の構築手法を検討するものである。

    メタ文化財情報とは、文化財のメタデータのうち、物質そのものの情報だけはなく、その歴史的変遷・来歴・取り扱いなど文化財の「扱われ方」を重視した概念として定義する。このメタ文化財情報のデータを構築するために、1889(明治22)年の創設以降、京都国立博物館(以下、「当館」という。)に多数集積された記録資料を活用する。

    本研究では、現在ある文化財と記録資料とのリンクをはかるべく、以下のステップにて作業を進めている。1.全体像を把握するための資料整理、目録化。2.デジタル化、メタデータの検討。3.現在デジタル化されている文化財とのリンクモデル作成。今回は、本研究の前半部分を対象として、現状の報告と課題、今後の展望について発表する。

  • ノイツラ・ ゾフィー, 宮川 創
    2022 年 6 巻 s3 号 p. s123-s126
    発行日: 2022年
    公開日: 2022/11/02
    ジャーナル オープンアクセス

    2017年にドイツのヘルツォーク・アウグスト図書館(HAB)で発見された新出キリシタン資料ローマ字本日本語訳『コンテムツス・ムンヂ』の翻刻プロジェクトで用いられた技術と公開方法について論じる。本論文著者両名による日独共同研究プロジェクトにおいて、ルール大学ボーフムのオースタカンプ・スヱン教授の指導のもと、本文献のデジタル化を目標としたデジタル技術活用に関する議論と実践がなされた。そこでは、機械学習による自動翻刻ソフトウェアTranskribusを用いて、そのHTR(Handwritten Text Recognition)モデルに学習させ、自動および手動修正で文献のレイアウト・補助記号などを忠実に再現したデジタル翻刻が行われた。本プロジェクトは、このデジタル翻刻に基づいて、本キリシタン版をデジタルアーカイブ化し、可能な研究対象として公開し、国際的な研究に活用できるようにするモデルを提示する。

  • 小幡 圭祐, 本多 広樹
    2022 年 6 巻 s3 号 p. s127-s130
    発行日: 2022年
    公開日: 2022/11/02
    ジャーナル オープンアクセス

    発表者の所属する山形大学では、2022年度より、再開発など変化がめまぐるしい山形市の中心市街地にまつわる資料を、同大学附属博物館を拠点としてアーカイブするというプロジェクトをスタートした。本プロジェクトの最大の特徴は、いわゆる歴史資料だけではなく、のちに歴史資料になるであろう、現代の街並みや土地利用状況、そこで活動を行っている人々の声などを積極的に先回りして収集・記録し、デジタルアーカイブとして保存・活用することを目指している点、さらに、大学の授業の一環として、学生たちがアーカイブの収集・活用を立案・実践する点である。本報告では、学生を主体とした「まちの記憶を残し隊」によるまちの「記憶」のデジタルアーカイブ化の実践事例を紹介するとともに、公文書管理で実施されているような組織アーカイブにおけるレコード・マネジメントを、地域アーカイブにおいても実現することが可能であることを試論的に示したい。

  • 吉賀 夏子, 伊藤 昭弘
    2022 年 6 巻 s3 号 p. s131-s134
    発行日: 2022年
    公開日: 2022/11/02
    ジャーナル オープンアクセス
    J-STAGE Data

    佐賀県立図書館および佐賀大学では、佐賀藩とその支藩で作られた「日記」およびその要約で「日記目録」と呼ばれる業務日誌群を所蔵している。当史料群には、藩主の側役人らの家で記録された日記に相当する私的な記録も含まれる。このような歴史史料から当時の藩内外の政治・経済の動きを統合的に知るために、同大学地域学歴史文化研究センターでは、「佐賀藩関係『日記』資料時系列データベース」を構築し、佐賀県地域に残存する11種の日記について、同じ日付の日記画像を並列で参照できるようにした。加えて、「小城藩日記データベース」の日別記事文も対応させた。その結果、ある日付における多様な出来事や天候についての記録を補完しあい、統合的な情報収集が可能となった。本稿では、当データベースの概要と機械学習などへの応用可能性を含めた現時点までの取り組みについて紹介する。

  • 逢坂 裕紀子
    2022 年 6 巻 s3 号 p. s135-s138
    発行日: 2022年
    公開日: 2022/11/02
    ジャーナル オープンアクセス

    本報告では、東京大学文書館が所蔵する人事記録をもとにした人名データベースの構築とその活用について報告する。所蔵資料『職員進退』目次情報及び文書館作成「教員データベース」は、明治初期の大学発足時からの所属教職員に関するデータベースとして、これまでレファレンスなど館内において活用されてきた。学内外からの利用ニーズも高いコンテンツであるため、公開に向けて個別に管理運用されてきたファイルの統合及びデータの整理、ウェブデータベースの構築をおこなった。ウェブデータベース化にあたっては、オープンソースのCMSであるOmeka Sを利用し、キーワードによる全文検索機能を持たせ、国立国会図書館典拠データ検索・提供サービス(Web NDL Authorities)による典拠データへのリンク表示の機能をもたせることで、人名データベースの精度を高めた。人名データベースにより、コンテンツの自由度を増加させ、所蔵資料の利活用性を高めることができる。

  • 富澤 浩樹, 阿部 昭博
    2022 年 6 巻 s3 号 p. s139-s142
    発行日: 2022年
    公開日: 2022/11/02
    ジャーナル オープンアクセス
    J-STAGE Data

    東日本大震災関連資料(以下、資料)を対象とした震災関連デジタルアーカイブは、震災で得た教訓を後世に伝えることを目的に各所で構築されている。対象の岩手県立図書館震災関連資料コーナーは発災翌年4月に本公開されたが、OPACで管理された資料は研究者や調査者といった強い関心と目的意識がなければ利用することが難しい状況にある。そこで著者らは、資料を用いた活動によって新規に作成されたデジタル資料がアーカイビングされ、それによって資料の利用活性を促す仕組みを資料循環型デジタルアーカイビングシステムと呼び、その活動を支援するシステムの研究開発を、2014年以来継続的に行なって来た。本稿ではその試行から得られた知見をまとめるとともに、今後の研究について展望する。

  • 杉本 達應
    2022 年 6 巻 s3 号 p. s143-s146
    発行日: 2022年
    公開日: 2022/11/02
    ジャーナル オープンアクセス
    J-STAGE Data

    発表者は、オンラインで書籍リストを共有するウェブサービス「仮想書棚」を開発している。書籍リストとは、個人の蔵書群や、書評集、ブックガイドなど、任意の主題でキュレーションされた複数の書籍群をさす。書籍リストの提示方法は、場所によって変化する。実空間では、書籍を棚や台に並べる。紙誌面では、各書籍の書誌情報を箇条書きし、書影を添える場合もある。バーチャル空間でも、箇条書きや書影を並べる従来の方法が踏襲されている。一方、現実の書棚を模し、背表紙を並べて提示する例や、3次元空間や地理的に配置する実験的なプロジェクトも存在している。こうした事例を受け、「仮想書棚」では、書籍リストを並べた背表紙で提示するインタフェースデザインの採用を検討し、書誌情報から背表紙画像を生成するプログラムを開発した。対象とする書籍は、新書に限定した。この開発の経緯と展望を報告する。

  • 金 甫榮, 中村 覚, 渡邉 英徳
    2022 年 6 巻 s3 号 p. s147-s150
    発行日: 2022年
    公開日: 2022/11/02
    ジャーナル オープンアクセス

    本研究では、デジタル化した資料の長期保存および公開のための、OAIS情報モデルに準拠したワークフローを提案する。ワークフローの実現には、オープンソースソフトウェアであるArchivematica(長期保存用)とOmeka S(公開用)を用いる。まず、デジタル化資料の真正性を確保するため、OAIS情報モデルで定義するメタデータ要素に基づき、メタデータを分析した。次に、Archivematicaを用いて必要な情報パッケージを作成した上で、それをOmeka Sへインポートするためのツールを独自に開発した。その結果、デジタル化資料の受入から公開までの一貫したワークフローを提案することが可能となった。

  • 奥村 牧人, 徳原 直子, 髙橋 良平
    2022 年 6 巻 s3 号 p. s151-s154
    発行日: 2022年
    公開日: 2022/11/02
    ジャーナル オープンアクセス
    J-STAGE Data

    2021年9月、デジタルアーカイブジャパン推進委員会・実務者検討委員会(事務局:内閣府知的財産戦略推進事務局)は、今後のジャパンサーチの活動の方向性を示した「ジャパンサーチ戦略方針2021-2025」を策定し、翌年4月には、その目標の実現に向けて「ジャパンサーチ・アクションプラン2021-2025」を策定した。

    国立国会図書館は、実務者検討委員会の企画運営に協力しており、ジャパンサーチのシステム開発・運用等の実務を担当する立場から、戦略方針やアクションプランの素案の作成を分担した。素案の作成に当たり、国立国会図書館は、ジャパンサーチの連携機関と2回にわたる意見交換会を開催した。そこでは、共創的な議論が行われ、多様な意見の集約を図ることができた。

    本発表では、意見交換の場で出た連携機関の主な意見を紹介し、デジタルアーカイブに取り組む現場の人々の要望を踏まえ策定されたアクションプランが何を目指しているのかを解説する。

  • 永崎 研宣
    2022 年 6 巻 s3 号 p. s155-s157
    発行日: 2022年
    公開日: 2022/11/02
    ジャーナル オープンアクセス

    デジタルアーカイブ(以下、DA)の議論の場においては、議論の前提を共有することの困難さがある。この解決のためにはインターネットの4階層モデルにヒントをモデルとするデジタルアーカイブのレイヤーモデルを確立することが有効である。このモデルはデジタルコンテンツ/アノテーション/インターフェイス/コミュニケーションの4階層と法・規範・技術標準等を含む要素からなる。DAの構築運用にかかわる様々な営為は前者の4階層に分類される一方、後者の要素は4階層のすべてに関わり、全体を規定しつつ各階層から影響を受けるというインタラクションのなかで新たな知識基盤を形成していく。このモデルを踏まえることで、議論の前提の共有が容易になるだけでなく、DAの様々な課題への対処やこれに関わる組織や個人の連携・協力も促進されることが期待される。

  • 中西 智範, 田村 優依
    2022 年 6 巻 s3 号 p. s158-s161
    発行日: 2022年
    公開日: 2022/11/02
    ジャーナル オープンアクセス
    J-STAGE Data

    演劇博物館が実施する事業、通称「ドーナツ・プロジェクト」の活動や国内外における舞台芸術分野のアーカイブの実情について紹介しながら、国内における舞台芸術分野を担うアーキビスト人材育成についての課題や展望を考察する。国内における舞台芸術分野のアーカイブ/デジタルアーカイブの活動は、個別の機関やプロジェクト事業などにおいて特徴的な取り組みがあるものの、コミュニティやネットワークを利用した活動は限定的である。本発表ではこの点に注目しつつ、舞台芸術分野のアーキビストに求められる役割やその定義についても言及する。

  • 前川 道博
    2022 年 6 巻 s3 号 p. s162-s165
    発行日: 2022年
    公開日: 2022/11/02
    ジャーナル オープンアクセス
    J-STAGE Data

    全国の学校でGIGAスクールが実施されながら、学校で地域学習を計画しようとすると、地域を知る情報源がネット上には極めて少ないことが直ちに顕在化する。特に学校区の情報源は殆どの地域においても存在しないと言って過言ではない。さらには地域資料があっても、教員の経験不足等の理由によりその活用が図りにくい課題がある。

    以上の課題を解決するため、これからの学校教育に求められる児童生徒の主体的で探求的な学びを包摂的に支援できる分散型デジタルコモンズサービスd-commons.netを用いた「d-commonsメソッド」により、校内資料のデジタルアーカイブ構築に取り組んだ。校内資料のデジタル化は「やればできる」ことなのに、学校現場ではその課題の気づきや実践が行えない壁がある。その壁を取り除き、DX時代にふさわしい地域学習の環境づくりが全国の学校で進んでいくことを期待したい。

一般研究発表 (沖縄現地会場)
  • 大髙 崇
    2022 年 6 巻 s3 号 p. s166-s169
    発行日: 2022年
    公開日: 2022/11/02
    ジャーナル オープンアクセス
    J-STAGE Data

    北陸3県の博物館・図書館等(MLA)に対して、過去の放送番組アーカイブの利用ニーズをアンケート調査したところ、約70%が「利用したい」と回答。理由として、放送映像のわかりやすさなどの魅力が、博物館等での展示内容を補強充実させ、地域文化の継承や集客、さらにはPRになることで観光客や移住者の増加など地域活性化の効果に期待があげられた。一方、権利処理コストや、放送局の相談窓口機能の貧弱さと高額な使用料など、放送アーカイブ活用に際しての課題も抽出された。デジタル化とコロナ禍で存在感低下が危惧される地域MLAと、同じく「テレビ離れ」の加速に苦しむ放送局、ともに従来「公共」を担ってきた両者が、アーカイブ利活用を通じて協力・連携することで、変容・混迷する公共空間の立て直しの一助になり得る。調査分析結果を踏まえ、法改正と放送局の運用改善など、活用促進に向けて提言する。

  • 二重作 昌満
    2022 年 6 巻 s3 号 p. s170-s173
    発行日: 2022年
    公開日: 2022/11/02
    ジャーナル オープンアクセス
    J-STAGE Data

    本研究の目的は、特撮を誘致資源化した観光現象である特撮ツーリズム誕生当初の時代(1950年代から1970年代)に焦点を当て、当時代に各レジャー施設にて開催された催事の模様やその創作過程に着目することで、各映像制作会社がいかにキャラクタービジネスを現在まで成立させてきたかについて、観光歴史学的観点から記録と検証を実施した。その結果、特撮ツーリズム誕生初期の時代も現在と同様、開催地は多様性に富んでいた。特に百貨店や遊園地において、着ぐるみショーや展覧会等の開催事例が集中的に確認可能であった。その上で、特撮ツーリズムが現在まで約70年の歴史を有するまでに至った背景には、誕生初期の時代において特撮作品の撮影で使用された「物品」が、観光者にとって「時間を費やして訪れるに値する存在」として認知されたことが下地となり、やがてその認識が現在まで普遍化していったことで、当観光現象は現在まで続いてきたことが考察できた。

  • 宮本 隆史
    2022 年 6 巻 s3 号 p. s174-s177
    発行日: 2022年
    公開日: 2022/11/02
    ジャーナル オープンアクセス

    本発表では、デジタル時代において「アーカイブ」がいかに想像されるのかを考察する。インターネットと端末が普及した今日、「アーカイブ」なるものがわたしたちの日常生活にかつてないほど浸透してきている。その変化の中で、情報の「集積」なるものについてのひとびとの捉え方が変化し、「アーカイブ」を想像するありかたも大きく変わってきている。本発表では、「アーカイブ」や情報の「集積」といった概念を自明の前提とすることなく、それらがどのような文脈において想像されうるのかを考察する。その手がかりとして、インドの首相ナレーンドラ・モーディーのインターネット上のメディア戦略を検討する。

  • 向平 由子, 平岡 磨紀子, 山岡 正明
    2022 年 6 巻 s3 号 p. s178-s181
    発行日: 2022年
    公開日: 2022/11/02
    ジャーナル オープンアクセス

    ドキュメンタリー新社では、1992~2002年に放送したテレビ番組「映像タイムトラベル」のデジタルアーカイブに取り組んでいる。昭和館での一般公開も始まり、その存在を周知するため2021年から動画共有サイトYouTubeでの公開をスタートさせた。昭和の生活、鉄道の作品を中心に掲載したところ、視聴回数は19万回を超え予想を上回る反響を得ている。寄せられたコメントは、動画を見て甦った思い出など、撮影当時を理解する上で貴重な情報が多い。番組情報のデータ化も進めているが、これらコメントも映像への理解を深める情報として保存を始めた。また、解説ナレーションとBGMがミックスされた番組の音から、マルチオーディオ(MA)技術を応用してナレーションのみ抽出できることが分かった。この取組みについても紹介する。

  • 宮田 悠史
    2022 年 6 巻 s3 号 p. s182-s185
    発行日: 2022年
    公開日: 2022/11/02
    ジャーナル オープンアクセス

    京都ニュースは、1956年(昭和31年)から1994年(平成6年)にかけて京都市が製作した市政ニュース映像である。この間に製作された映像のフィルムは244本にのぼり、その中には921の話題(トピックス)が収録されている。発表者らは、これら映像の活用を念頭に置いて、デジタルアーカイブを構築し公開するプロジェクトを展開しており、2022年6月にはこのうちの112本(486トピックス)について先行的な公開に至った。そこで、本発表は当該デジタルアーカイブの構築工程(デジタル化、内容確認、映像編集、フィルムの管理、メタデータの設定、公開準備)などの実践と内容とともに、構築の過程において確認された課題や、今後におけるプロジェクトの展望について発表するものである。

  • 奥野 拓
    2022 年 6 巻 s3 号 p. s186-s189
    発行日: 2022年
    公開日: 2022/11/02
    ジャーナル オープンアクセス
    J-STAGE Data

    地域デジタルアーカイブの一つである「南北海道の文化財」は、道南地域に散在する文化財の情報を網羅的に収集・活用すること目的とするウェブサイトである。サイトの閲覧者の大半が検索エンジンから文化財の個別ページにアクセスし、閲覧後にサイトを離脱している。そこで本研究では、サイトを訪れたユーザーが、閲覧した文化財以外に興味のある文化財を探索することを支援するシステムを構築する。興味を持つ文化財を容易に発見できるように、文化財のタイトルと説明文から抽出した特徴語を階層的クラスタリングした結果を提示する。全体的な文化財の分布を把握しながら興味のある文化財の探索を行うことを支援するために、対話的な階層構造の視覚化手法であるZoomable Circle Packingを用いて特徴語クラスタの階層構造を視覚化する。

  • ゲルスタ・ ユリア, 柴山 明寛, 森本 涼, ゴードン・ アンドルー, ボレー・ ペンメレン・セバスチャン
    2022 年 6 巻 s3 号 p. s190-s193
    発行日: 2022年
    公開日: 2022/11/02
    ジャーナル オープンアクセス

    ソーシャルディスタンスやテレワークなどの新型コロナウイルス感染拡大防止対策は,教育現場に甚大な影響を与え、防災教育もその例外ではない。一方、災害デジタルアーカイブは,個別にオンラインでアクセスでき、コロナ禍の中でも大きな可能性があると考えられる。そこで本稿は、コロナ禍の2年間(2020-21年)に実施した日本災害デジタルアーカイブ(JDA)を 用いた3種類の「ワークショップ」の結果から見えた災害デジタルアーカイブの可能性と課題を報告する。JDAの個人的利用はある程度の学びをもたらすが、講師を交えたワークショップや被災地訪問を併用する事により、利用者は防災意識向上をより強く感じられることが分かった。

  • 坂本 菫, 柊 和佑, 柳谷 啓子, 王 昊凡, 廣瀬 陸
    2022 年 6 巻 s3 号 p. s194-s197
    発行日: 2022年
    公開日: 2022/11/02
    ジャーナル オープンアクセス

    近年、エンタテインメントコンテンツに関わる情報が増え続けている。その情報は、映像だけに止まらず、3Dデータ、環境音、位置情報など、その種類は多岐にわたる。本研究は、無編集の音資源アーカイブを制作し、サウンドデザイナーが利活用できるアーカイビングシステムについて検討を行い、収集蓄積提供システムを構築している。現在は、2022年に稚内市と中部大学内で実験データの収集とメタデータの付与を行い、検索システムの検討を進めている。本稿では、天気、気温、湿度、年日時、季節、オノマトペを検索項目に持つ検索システムを構築し、その有用性を示した。その上で、サウンドスケープの概念を整理し、サウンドデザイナーによる利活用を目指した音資源デジタルアーカイブを構築し、データを百件程度入力した。また、APIの計画とオノマトペ検索について、その方向性を示す。

  • 星 泉, 岩田 啓介, 平田 昌弘, 別所 裕介, 山口 哲由, 海老原 志穂
    2022 年 6 巻 s3 号 p. s198-s201
    発行日: 2022年
    公開日: 2022/11/02
    ジャーナル オープンアクセス

    チベット高原では都市への移住と村落部の生活変化が急速に進み、家畜飼養と密接に結びついて長期間かけて形成されてきた民俗文化が、十分な学術調査がなされないまま、急速に失われようとしている。発表者らはこれを憂慮し、チベット高原東北部の青海省ツェコ県において、牧畜民出身の研究者と現地の人々とともに6年間にわたる現地調査を実施し、牧畜民の民俗文化を体系的に整理した『チベット牧畜文化辞典』を刊行した。調査の過程では、辞典には収録しきれない語り・映像・写真・音声・文学作品など多岐にわたる情報が得られ、発表者らの手元に残されている。これらを有機的に結びつけた形でアーカイブすることによって民俗文化を再現的に活写することを課題とし、現在実験的試みを続けている。本発表では、この一連のプロセスから成る研究の営みを「フィールド・アーカイビング」と位置づけ、その意義と可能性について論じる。

  • 石橋 豊之, 柊 和佑, 安藤 友晴
    2022 年 6 巻 s3 号 p. s202-s205
    発行日: 2022年
    公開日: 2022/11/02
    ジャーナル オープンアクセス

    本発表は宗谷総合振興局内でのみ発行さ新聞である「日刊宗谷」の記事および広告に着目したものである。日刊宗谷では、過去の新聞記事を画像によるデジタル化のみされている状態である。そのため、このような新聞記事をデジタルアーカイビングするうえでは、検索に有効なメタデータの検討が必要である。発表者ら次の手順に沿ってメタデータを検討した。1960、70、80、90年の1月1日~10日までの記事のテキスト化を行い、『ニュース・シソーラス』の7つの分類と42分野を参照し照らし合わせ、その分野に当てはまる「領域・範囲」を検討した。そのためにKH Coder 3を用いて形態素解析を行い、複数の記事かつ10回以上の出現のある用語に絞り、「領域・範囲」に当てはめた。次にこれら記事及び広告の位置に着目しQGISでシンボルレイヤを作成し地図上にプロットした。その際には、過去の地名と現在の地名を参照し、広告については「日本標準産業分類」を用いて分類を行った。

  • 宮川 創, 加藤 幹治, 町田 星羅, カルリノ・ サルバトーレ, ズラズリ 美穂
    2022 年 6 巻 s3 号 p. s206-s209
    発行日: 2022年
    公開日: 2022/11/02
    ジャーナル オープンアクセス
    J-STAGE Data

    沖縄語は、沖縄本島で話されている日琉語族に属する北琉球諸語のうちの一言語である。国立国語研究所発行の『沖繩語辞典』(1963年刊行、2001年第9刷)は、ラテン文字を使用し、声門閉鎖音などの音素記号を一部補足したものである。沖縄語は今日に至るまで、漢字かな混じり、カタカナ、ローマ字、ひらがなのみなど様々な形で書かれてきた。本「沖縄語辞典オンライン」プロジェクトでは、まず、今までに用いられた正書法・表記法を精査し、標準的な漢字かな混じり表記法を割り出し、標準化した。次に、国語研により既に作成されている辞書のスプレッドシートデータ(XSLX)に、標準化した漢字かな混じり表記やひらがな表記、国際音声字母(IPA)を追加した上で、データをテキスト構造化の世界標準であるTEI XMLに変換した。さらに、このXMLを変形させ、静的ウェブサイトジェネレータであるHugoを通してウェブアプリケーションを作成した。本稿ではこの「沖縄語辞典オンライン」の現在までの成果と課題について議論する。

  • 徳原 直子, 青池 亨
    2022 年 6 巻 s3 号 p. s210-s213
    発行日: 2022年
    公開日: 2022/11/02
    ジャーナル オープンアクセス
    J-STAGE Data

    令和3年度、国立国会図書館は、二つのOCR関連事業を外部委託にて実施した。一つは、国立国会図書館が保有するデジタル化資料約247万点(2億3000万画像)のOCRによるテキスト化であり、もう一つはオープンソースで公開可能なOCR処理プログラムの研究開発である。令和4年3月から5月にかけて、OCR関連事業の成果物の一部を使った実験サービスをNDLラボ上で公開した。NDLラボは、次世代の図書館システムの開発に資する要素技術の実証実験を行うウェブサイトである。令和4年9月現在、NDLラボ上の実験サービス「次世代デジタルライブラリー」及び「NDL Ngram Viewer」は、著作権保護期間が満了した図書約28万点の全文テキストデータを対象としている。本発表では、OCR関連事業の概要、実験サービスの特徴を紹介するとともに、沖縄に関連するキーワードを用いた検索結果から、本文テキストデータの地域史研究等への活用可能性を探る。

  • 大井 将生, 渡邉 英徳
    2022 年 6 巻 s3 号 p. s214-s217
    発行日: 2022年
    公開日: 2022/11/02
    ジャーナル オープンアクセス
    J-STAGE Data

    本研究の目的は、多様な資料と学校教育をつなぐ、人とデータのネットワークを構築することである。そのための手法として、小中高の教員と資料公開機関の関係者が協創的に資料の教材化を行うS×UKILAM(School × University・Kominkan・Industry・Library・Archives・Museum)連携を提案する。これまでに全国規模のワークショップを4回開催し、43都道府県、242機関から多様な参加者が集い、資料の教材化に向けた議論が行われた。また、ワークショップをもとに協創され、「教育メタデータ」が付与された62点の多様性に富む教材を二次利用可能なアーカイブとしてIIIFを用いて公開した。以上の実践を基点に自治体単位での発展的な取り組みも各地で展開されており、多様な資料と学校教育をつなぐネットワークがボトムアップに拡張されている。

  • 木村 文
    2022 年 6 巻 s3 号 p. s218-s221
    発行日: 2022年
    公開日: 2022/11/02
    ジャーナル オープンアクセス

    本発表は、リトアニア共和国のデジタルアーカイブのポータルサイトであるePaveldas(アーパーヴェルダス)のリニューアルの契機について考察を行うものである。ePaveldasは2005年に公開されて以降、2度リニューアルされており、2度目が完了したのは2022年2月であった。ユーザーの視点では、2度目のリニューアルの前のePaveldasは、検索機能の不具合等、使い勝手に課題があった。他方、運営側からの視点として、国立マジュヴィーダス図書館においてヒアリングの結果をまとめたところ、2度目のリニューアルは、二次利用のための著作権の権利関係を表示することに注力していた。また、最初のポータルサイトの公開と2度のリニューアルは欧州連合の助成金を受けることによって行われていた。リニューアルの契機は、運営側の方針や助成金の有無等の様々な要因があることが分かった。今後は、デジタルアーカイブのポータルサイトのステークホルダーについて、さらなる調査が必要である。

  • 廣瀬 陸, 柊 和佑, 柳谷 啓子, 王 昊凡, 坂本 菫
    2022 年 6 巻 s3 号 p. s222-s225
    発行日: 2022年
    公開日: 2022/11/02
    ジャーナル オープンアクセス

    現在、3D仮想空間をインフラとして利用する「メタバース」が試みられている。博物館や美術館を模した文化資源として成立しうる精度のコンテンツも存在するが、仮想空間のコンテンツを将来にわたって再利用するための、アーカイビングシステムは存在していない。そのため、将来的にメタバースが普及した際、従来のWeb情報資源のように、制作された文化資源が散逸する可能性が高い。情報資源の散逸を繰り返さないために、今後の利活用方法を検討・予測し、アーカイビングシステムを整備しなければならない。

    本稿は、メタバースにおけるワールドを環境とコンテンツに分けて蓄積し、検索、利活用が出来るシステムの構築を目指している。現在は、蓄積されたワールドに対してのメタデータの付与と、検索システムの構築について研究を進めており、現状の仮想空間デジタルアーカイブのワールド検索システムについて解説を行い、今後の検討すべき点について解説を行う。

  • 佐野 智也, 外山 勝彦, 増田 知子
    2022 年 6 巻 s3 号 p. s226-s229
    発行日: 2022年
    公開日: 2022/11/02
    ジャーナル オープンアクセス
    J-STAGE Data

    「日本研究のための歴史情報」プロジェクトでは、明治以降の近代法体系に基づく全法令のオープンデータベースシステムの構築を目指している。その最初の作業として、日本国憲法施行以前の法律と勅令のデータベース化に取り組んでいる。日本政府の「e-Gov法令検索」は、データ利活用の観点から、法令標準XMLスキーマに従った現行法令のデータを提供している。本プロジェクトでも、共通規格として、このスキーマに準拠する方針である。しかし、このスキーマは、その策定時(2017年)において有効な法令の文書構造を記述できるように設計されたため、日本国憲法施行以前の法律や勅令に適合することは担保されていない。本報告は、明治19年から大正10年までの法律・勅令の文書構造を分析した結果をもとに、法令標準XMLスキーマに対して追加・変更が必要な事項と、同スキーマが対象としていない上諭の構造化に必要な事項を示す。

  • 元 ナミ, 橋本 陽
    2022 年 6 巻 s3 号 p. s230-s233
    発行日: 2022年
    公開日: 2022/11/02
    ジャーナル オープンアクセス

    本報告ではアーカイブズ記述の新標準であるRecords in Contexts(RiC)の実装方法について検討する。

    RiCとは、アーカイブズ記述のための概念モデル(Conceptual Model)であるRiC-CMおよびそのオントロジー(Ontology)であるRiC-Oから構成される。他国を見れば、すでにRiC-Oを用いたテスト段階の検索システムが少数ではあるが公開されている。それらを紹介しつつ、実装のための具体的なワークフローを構想する。

    提示するのは次の方法である。Access to Memory(AtoM)を利用し、XML形式でアーカイブズ記述のメタデータを作成する。それをフランス国立公文書館が開発したRiC-O ConverterによってRiC-O準拠のRDF/XMLに変換する。最後にRDF/XML をOmeka-Sなどのアプリを使い、検索とその視覚化を実現させる。

  • 福田 一史, 三原 鉄也
    2022 年 6 巻 s3 号 p. s234-s237
    発行日: 2022年
    公開日: 2022/11/02
    ジャーナル オープンアクセス
    J-STAGE Data

    検索やデータ利活用など調査・研究のための専門分野の要求に基づく、メタデータのリッチ化は一つの論点であるが、データ作成コストが課題となる。その解決策として、オープンデータとのリンキングは有効な戦略である。ビデオゲーム分野では、オンラインコミュニティが生成するゲーム作品データセットが評価を集めており、同時にアーカイブ機関が生成する現物資料の書誌データ作成も活発化しつつある。本研究は効率的なメタデータの拡張や補完・検証を目的に、メディア芸術データベースのビデオゲームパッケージリソースと、Wikipediaより抽出したビデオゲームリソースのリンキング実践について報告する。Wikipediaのゲームタイトル一覧から情報を抽出し、メディア芸術データベースの関連するリソースを機械的にリンクさせた。その結果、多くのリソースで適切なリンクが確認できたが、Wikipediaの利用者要求や記述ルールの不統一に起因する課題と限界が明らかになった。

  • 全 炳徳
    2022 年 6 巻 s3 号 p. s238-s241
    発行日: 2022年
    公開日: 2022/11/02
    ジャーナル オープンアクセス
    J-STAGE Data

    今から凡そ77年前の1945年8月6日と9日,広島と長崎に原子爆弾が投下された。アメリカ軍の戦略爆撃機B-29によるものだった。この約8カ月前,戦略爆撃機B-29を改造してF-13と呼ばれる写真偵察機が,広島と長崎など原子爆弾を投下するための情報収集を当たった。当時としては最先端の航空写真測量によるものだった。本論での発表内容としてはアメリカの写真偵察機による航空写真関連の内容について触れるとともに,新しく取り組んだ画質の高度化のため研究内容について発表する。更に,近年普及しているクラウド環境を活用した平和教育教材のためのデジタルアース・システムについての内容も発表に盛り込む。本論では長崎の原爆前後のデジタルデータ(1945年8月7日と9月7日)の合計58枚を処理しており,オリジナルデータに近い画質向上のためArcGISとAdobe Photoshopを活用して解析を実施した。

  • 嘉村 哲郎
    2022 年 6 巻 s3 号 p. s242-s245
    発行日: 2022年
    公開日: 2022/11/02
    ジャーナル オープンアクセス
    J-STAGE Data

    本発表では、Web3の文脈で語られる分散型台帳技術をはじめとする通信や暗号化技術、仕組み等を分散型情報技術と称し、これらをデジタルアーカイブ(DA)に導入することで、DAが抱えるデジタルコンテンツの管理と流通に関する課題解決の可能性を技術的側面から考察する。

  • 研究大会事務局
    2022 年 6 巻 s3 号 p. s246-s251
    発行日: 2022年
    公開日: 2024/01/25
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  • 井上 透
    2022 年 6 巻 s3 号 p. s246a-s251a
    発行日: 2022年
    公開日: 2024/01/25
    ジャーナル オープンアクセス
    J-STAGE Data

    第6回研究大会(2021年10月)においてデジタルアーカイブ学会人材養成・活用検討委員会主催で開催した「企画セッション デジタルアーキビストの在り方」の議論を継承し、デジタルアーキビストの使命とターゲット、そして養成課程について提示する。各報告者から人材養成・活用検討委員会で積み重ねた議論を報告し、その後、参加者からの発言を求めつつディスカッションを行い、デジタルアーキビストのアウトラインを検討する。

    社会全体のDX化の動きのなかで、デジタルアーカイブにあらためて期待が集まっている。これからの各団体や地域に必須の人材としてのデジタルアーキビストについて、現段階での議論をまとめ、今後の展開を見据えるためのセッションとしたい。

  • 細矢 剛
    2022 年 6 巻 s3 号 p. s246b-s251b
    発行日: 2022年
    公開日: 2024/01/25
    ジャーナル オープンアクセス
    J-STAGE Data

    第6回研究大会(2021年10月)においてデジタルアーカイブ学会人材養成・活用検討委員会主催で開催した「企画セッション デジタルアーキビストの在り方」の議論を継承し、デジタルアーキビストの使命とターゲット、そして養成課程について提示する。各報告者から人材養成・活用検討委員会で積み重ねた議論を報告し、その後、参加者からの発言を求めつつディスカッションを行い、デジタルアーキビストのアウトラインを検討する。

    社会全体のDX化の動きのなかで、デジタルアーカイブにあらためて期待が集まっている。これからの各団体や地域に必須の人材としてのデジタルアーキビストについて、現段階での議論をまとめ、今後の展開を見据えるためのセッションとしたい。

  • 古賀 崇
    2022 年 6 巻 s3 号 p. s246c-s251c
    発行日: 2022年
    公開日: 2024/01/25
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    DX化が急速に進み、社会のあらゆる事象がデジタル情報で記録されてきている。ただしまだまだそのデジタル情報をアーカイブするというところに議論が及んではいない。そこで、デジタルアーカイブ論の視点から「デジタル公共文書(digital public document)」という概念を提起し、その意義とその展開の可能性を考える。その際、利用者(市民、企業人、研究者等)の視点から、民間のものも含めた、公共的に利活用可能な形で蓄積されるべき「デジタル公共文書」を、新しい知識や社会生活、産業を生み出す源泉とするための方策を考える。特に今回は、沖縄の地域や現状に即しつつ、日本の状況と今後を視野に入れる形で、公共文書やそのデジタルアーカイブ化をめぐっての実例と課題を共有し、議論する機会としたい。

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