デジタルアーカイブ学会誌
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巻頭言
特集:デジタルアーカイブと実展示
  • 渡邉 英徳
    2024 年 8 巻 1 号 p. 3-5
    発行日: 2024/02/01
    公開日: 2024/03/25
    ジャーナル オープンアクセス

    AIによって生成されるコンテンツの進化と急増は、あたかも鏡像のように、人間によって作成されたオーセンティックな資料の重要性を高めている。こうしたヒト由来のオーセンティックな資料をデジタルアーカイブ化し、社会に“ストック”しておくことは急務である。さらに、ポストコロナ時代においては、ウェブ空間だけでなく実空間におけるコミュニケーションの重要性が増している。実空間でのデジタルアーカイブ展示は、実空間ならではの豊かな“フロー”を生み出す。この“フロー”が展示空間を超えて社会全体に滲み込んでいくことにより、“ストック”されていた貴重な知見が未来に受け継がれていく。本特集では、そうした実践について論じる。

  • 高田 百合奈, 金 甫榮, 山口 温大, 濱津 すみれ, 曹 好
    2024 年 8 巻 1 号 p. 6-10
    発行日: 2024/02/01
    公開日: 2024/03/25
    ジャーナル オープンアクセス

    震災を過去という点での出来事ではなく、過去と現在を繋いだ線上での出来事として捉えられるよう、1923年に発生した関東大震災を題材に、過去と今をつなぐインターフェースを持つデジタルアーカイブを検討した。スクリーン投影型VRを採用し、震度分布、火災の燃え広がり、被災者の体験、渋沢栄一の避難ルート、被災写真のマッピング、そして震災前後の経済データをデジタル地球儀上に可視化したデジタルアーカイブを実装した。このデジタルアーカイブの実展示を通して、過去の震災が、私たちが今生きているこの場所で起こった出来事であると感じられる体験を提供する。

  • 室谷 智子
    2024 年 8 巻 1 号 p. 11-14
    発行日: 2024/02/01
    公開日: 2024/03/25
    ジャーナル オープンアクセス

    毎年のように、地球上のどこかで災害が起き、その様子はすぐさま世界中に発信される。日本は古くからくり返し地震、津波、火山噴火、台風といった自然災害に見舞われてきた災害大国である。自然現象解明のために自然を観測し、理解し、私たちの生活を守るために研究や科学技術を発展させてきた。過去の災害が現在に伝えられてきた背景には、残されてきた多くの資料がある。この先も過去の災害を風化させず、未来の防災・減災対策のためには、どのように資料を残し、災害を伝え、備えていけばよいだろうか。本稿では、デジタルコンテンツも活用して2023年に国立科学博物館で開催した、関東大震災100年企画展を例に挙げて紹介する。

  • 大井 将生, 宮田 諭志, 中森 康人, 榎本 剛治
    2024 年 8 巻 1 号 p. 15-20
    発行日: 2024/02/01
    公開日: 2024/03/25
    ジャーナル オープンアクセス

    本研究の目的は、地域の歴史や文化についての「問い」を創発し、見方・考え方を広げながら自分自身の意見を形成する力を育む方法を提示することである。そのために、デジタル資料の多次元可視化ツール「みどころキューブ」を展示空間として活用した学習シナリオをデザインし、複数の自治体において小学校の授業と地域イベントを実践する。その結果、学習者が地域の歴史や文化についての「問い」を持ち、見方・考え方を広げながら自分自身の意見を形成する力を育むことへの効果が示唆された。また、学習者が実空間とデジタル空間を架橋し、郷土の魅力を他者に伝えることや未来に継承したいという思いが育まれたことが示唆された。

  • 小松 尚平, 渡邉 英徳
    2024 年 8 巻 1 号 p. 21-24
    発行日: 2024/02/01
    公開日: 2024/03/25
    ジャーナル オープンアクセス

    このプロジェクトは、過去の戦災写真のデジタルアーカイブを活用して、未来に繋げる試みである。3Dスキャナー技術を用いて体験者のアバターを再現し、戦災写真内で歩行させる。これにより、過去の写真の没入感を提供し、特に新たな世代に戦争の実感を伝える。ユーザーはタイムマシンのように過去の写真内をアバターとして歩行し、臨場感を強く感じる。この新しい体験を通じて、体験者は単なる鑑賞以上の興味を持ち、当時の状況や環境をより身近に感じ取り、歴史を理解する。戦災写真内を歩行可能なアバター・フレームシステムは、デジタルアーカイブと新興技術の融合により、新たな体験を提供するプロジェクトとして進行中である。

  • 福田 美波
    2024 年 8 巻 1 号 p. 25-29
    発行日: 2024/02/01
    公開日: 2024/03/25
    ジャーナル オープンアクセス

    帝国データバンク史料館は、株式会社帝国データバンクが1900年以来、信用調査を通して収集してきた歴史的な企業情報を保管する企業ミュージアムである。近年、資料のデジタル化を進め、展示では既存のVRやタッチパネルなどのデジタルコンテンツに加え、企画展を通して新たなデジタルアーカイブの導入を試みている。企業データと関連資料の画像データを紐づけた「倒産企業データベース」や、『帝国銀行会社要録』が収録する企業情報のデータ化は、パネルとの連動や可視化によって展示の幅を広げた。資料の特性を理解し、活用の可能性を模索していくことが今後の課題となる。

  • 寺師 太郎
    2024 年 8 巻 1 号 p. 30-35
    発行日: 2024/02/01
    公開日: 2024/03/25
    ジャーナル オープンアクセス

    デジタルアーカイブがMLAやアカデミアで広く使用されるようなり、公開データベースを通じてデジタルアーカイブを楽しむことができるようなり二次利用や二次創作も広がっている。展示においてもデジタルアーカイブが活用され、情報を残す伝えることに役立っている。デジタルアーカイブは様々なコンテンツに展開が可能で、新しい表現との親和性も高い。事例を紐解きながらその実際と今後なにを重要視すべきかを考えてみる。

連載特集
  • 小山 紘一
    2024 年 8 巻 1 号 p. 36-40
    発行日: 2024/02/01
    公開日: 2024/03/25
    ジャーナル オープンアクセス

    デジタルアーカイブ学会では、「デジタルアーカイブ憲章」を採択したが、そこで謳われている理想の姿を実現するための政策提言「デジタル温故知新社会に向けた政策提言2022年」も発表している。この政策提言は、単に学会オフィシャルサイトで公開するにとどまらず、その内容を政府の政策に反映するためにさまざまな取組みを行ってきた。本稿では、法令及び慣習によって恒常化した国のルールメイキングのプロセスに触れつつ、この政策提言の内容をそのプロセスに乗せるためにどのような取組みが行われてきたのか、その取組みの意義や背景について論じる。

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