デジタルアーカイブ学会誌
Online ISSN : 2432-9770
Print ISSN : 2432-9762
8 巻, s1 号
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第4回DAフォーラム(2024年7月21日)予稿
口頭発表
  • 仲丸 有紗
    2024 年8 巻s1 号 p. s1-s4
    発行日: 2024年
    公開日: 2024/07/20
    ジャーナル オープンアクセス

    文化遺産デジタルアーカイブ(以下「文化遺産DA」)とは、有形・無形の文化遺産の記録がデジタル形式で集積したもののことを指す。文化遺産DAは今まで、主にミュージアムとの関連で論じられてきた。しかし文化遺産DAに関わる〈権力〉を分析するためには、このメディアの文化的実践に加え、物質と技術という別の側面を考慮する必要がある。本研究はメディア考古学の理論を取り入れることで、文化遺産DAを新たな文脈でとらえ直し、現実世界の物体に限らない様々な「文化遺産」とDAの関係を分析するための基盤を構築する。最終的に、文化遺産DAの権力論を展開するための視座を提供する。

  • 本間 大善
    2024 年8 巻s1 号 p. s5-s8
    発行日: 2024年
    公開日: 2024/07/20
    ジャーナル オープンアクセス

    宮城県では令和5年度、文書規程を改正施行し、「歴史的価値を有する公文書」として公文書館が選定した文書を電磁的記録に変換し、当該電磁的記録を「正本」として保存する事業に取り組んだ。本発表では、電磁的記録に正本性を具備するための基本的な考え方を検討するとともに、事業のこれまでの成果と浮かび上がってきた課題について整理することを目的とする。

  • 岩村 孝平
    2024 年8 巻s1 号 p. s9-s11
    発行日: 2024年
    公開日: 2024/07/20
    ジャーナル オープンアクセス

    2020年8月、文化財活用の地域おこし協力隊として岡山県備前市に着任した。しかしながら、コロナ禍により文化財を活用したイベント等の開催が困難となったため、活動内容を文化財のデジタルデータ作成・公開およびデータ保存先の模索といったデジタルアーカイブに焦点をあてた活動にシフトさせた。4年間での地域おこし協力隊の活動で実施した文化財の3次元計測・バーチャルツアーの公開・自治体職員への技術指導・県立図書館へのデジタルデータ収蔵など、具体的な成果や課題について報告する。

  • 鈴木 悠平
    2024 年8 巻s1 号 p. s12-s15
    発行日: 2024年
    公開日: 2024/07/20
    ジャーナル オープンアクセス

    「刑務所アート展」は、全国各地の刑務所に服役する受刑者からアート作品を募集して展覧会をひらき、審査員および展示会場やWebギャラリーで作品を観た人のコメントを、応募した受刑者に返すことで、「壁」で隔てられた刑務所の内と外の交流をつくりだすプロジェクトである。刑務所アート展に参加する受刑者たちから送られてきたアート作品と、応募用紙記載の作品紹介・作者名等のメタ情報を画像およびテキストデータ化し、運営団体のWebサイト上でデジタルアーカイブを構築した。服役中のため自由に作品を発表することのできない受刑者たちに代わって、作品を預かり、発表し、アーカイブする過程での論点・注意事項(作品募集方法、権利処理、アクセシビリティなど)に触れながら、実践報告を行う。また、これら作品データのアーカイブの学術研究や教育現場での活用可能性についても論じる。

  • 谷川 智洋
    2024 年8 巻s1 号 p. s16-s19
    発行日: 2024年
    公開日: 2024/07/20
    ジャーナル オープンアクセス

    近年、情報通信技術や情報サービスの普及に伴い、デジタルアーカイブの対象が文字情報だけでなく画像や映像から3Dデータなど多岐にわたりつつある。特に映像情報はスマートフォンなどで手軽に撮影することができるようになってきたことに伴い膨大になりつつある。しかしながら膨大な映像資料から必要な情報や重要なシーンを見つけ出すためには膨大な時間がかかる。本論文では、人物による活動や発言が含まれる映像資料から、機械学習(AI)を用いた動画解析により登場人物の本人の表情や視線、瞬き、動作といった非言語情報の抽出を行い、音声認識による言語情報ともに時系列メタデータとして保存可能とするツールsyosaを構築したので紹介する。

  • 野口 博司
    2024 年8 巻s1 号 p. s20-s23
    発行日: 2024年
    公開日: 2024/07/20
    ジャーナル オープンアクセス

    立正佼成会は1938年に創立された在家仏教教団であり、2023年に教団創立85周年を迎えた。「立正佼成会デジタルアーカイブ」(https://archive.kosei-kai.or.jp/)は、教団にとって「長期的に持続可能な文化的価値の創出の基盤」を目指し、2023年5月に公開された。宗教関係のアーカイブズについては宗教学領域からは宗教的美術・工芸品・歴史資料など、宗教研究に関する資料がデジタルアーカイブで様々に公開されている。しかし、宗教組織のアーカイブズをデジタルアーカイブとして公開している事例は少ない。日本の宗教人口の減少が進行している中で、宗教組織が後世に文化的価値を継承していくため、デジタルアーカイブの果たすべき役割は大きいと言える。本稿は「立正佼成会デジタルアーカイブ」の構想から公開に関わる報告である。

  • 田中 直人, 中村 弥生, 近藤 尚子
    2024 年8 巻s1 号 p. s24-s27
    発行日: 2024年
    公開日: 2024/07/20
    ジャーナル オープンアクセス

    学園内各所に分置、管理される資料の中には、研究資源としての可能性を有しながらも、資料の基礎的調査と所在情報の学園内共有化が滞り、十分に活用されないものがある。それら資料の多くは、類例の少ない資料であることから価値の判断が難しく、共有情報の作成に手間もかかるため、未整理のままとされた資料である。資料管理を主業務としない部署では、日々の業務の傍らこうした資料と向き合い、情報共有化に向けた準備を行うことは困難である。そこで、発表者が当該資料を預かって簡易調査を行い、「概報」(詳細な評価にまで踏み込まない、必要にして十分な情報)としてまとめ、学園内に公開することとした。

    本発表では、学園内の未整理資料をデジタルデータ化することで、より多くの職員にその存在を知らせて活用機会を増やすことを目指した、研究環境整備のための試みについて説明する。

  • 後藤 博之, 中島 理男
    2024 年8 巻s1 号 p. s28-s30
    発行日: 2024年
    公開日: 2024/07/20
    ジャーナル オープンアクセス

    時間と労力とコストをかけてデジタルデータを作成し、デジタルアーカイブしてもなお、そのデータが消えてしまったり壊れてしまったり、あるいは改ざんされてしまったりするリスクが、かねてより大きな課題として存在していた。一方、ブロックチェーン上にデータをフルオンチェーン保存することによって、そのリスクを回避できる基盤が近年登場しており、実稼働・実運用されている。世界各地に分散して多数設置され、互いに接続し合い、同期し続けているノード群(データベース群・サーバ群)が堅牢性を高めており、ある地域で災害が発生したとしても、別の地域のノードが生きていれば、ダウンすることなく(ゼロダウンタイム)、データが残り続けるブロックチェーンの特性・特長を活かし、低コストで強固なデジタルアーカイブを実現することができる。このブロックチェーン上へのデータ保存について、本発表では解説する。

  • 城所 岩生
    2024 年8 巻s1 号 p. s31-s34
    発行日: 2024年
    公開日: 2024/07/20
    ジャーナル オープンアクセス

    米国著作権法には公正な利用であれば権利者の許諾なしに著作物の利用を認めるフェアユース規定がある。1994年の最高裁判決以来、パロディのように別の作品を作るための変容的利用にはフェアユースが認められてきた。続発する生成AIに関連する著作権侵害訴訟で重要な先例となりそうな事件でも、被告の利用が言語パターンを分析するための変容的利用であるかが争われている。2018年の改正で日本の著作権法に「著作物に表現された思想又は感情を享受しない利用」については許諾なしの利用を認める条文が追加された。文化庁は目的が非享受利用でも享受目的が少しでもあるような利用行為には適用されないとしている。米国は享受目的があっても変容的利用であれば利用を認めるのに対し、日本は非享受目的であっても享受目的が併存する場合には利用を認めないわけである。技術面、資金面で米国勢や中国勢に太刀打ちできない日本の生成AI事業者を法制度面でも縛らないためにも日本版フェアユース規定の導入を提案する。

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