近年,子どもの読書活動が活発に行われている。なかでも学校教育は大きな役割を果たしている。これまでも,学校教育では読書指導が行われてきた。したがって,今後の読書指導のあり方は,これまでの読書指導の展開過程を踏まえて考えることが重要である。本稿では,戦後の読書指導を主導した滑川道夫の読書指導論について検討を行い,その特徴を明らかにし,滑川読書指導論の意義と限界を考察した。その結果,(1)滑川読書指導論には「読書に関する生活指導」と「読書による生活指導」の2つの観点があること,(2)読書指導では「読書に関する生活指導」に加え,「読書による生活指導」を重視するべきであるという考えを段階的に明確に示したことが明らかになった。滑川読書指導論の意義としては,子どもの情操や知力を育てる読書指導が重要であることを提起したこと,限界としては,読書指導のあり方を示すにとどまったことを挙げることができる。
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