本稿の目的は,戦後日本における印刷メディア受容量変化の数量的分析である。分析には,販売ルート経由の図書,雑誌,新聞の受容量,図書館ルート経由の受容量,経済動向の5変数からなるモデルを用いた。具体的には,国民1人当たりの図書,雑誌の実売部数,新聞の発行部数,公共図書館の館外貸出数と,実質経済成長率を分析した。この5つの時系列データに対し,同時変化関係の指標として相関係数を求め,先行遅行関係の指標としてグレンジャー因果性検定を行った。分析の結果,以下の結論が得られた。第1に,販売ルート経由の受容量と経済動向とのあいだに正の相関,図書館ルート経由の受容量と経済動向とのあいだに負の相関がある。第2に,図書の販売ルート経由の受容量は図書館ルートに先行している。第3に,販売ルート経由の受容量は相互に正の相関があり,図書,雑誌,新聞の順に変動している。図書と雑誌の関係については詳細な分析を加えた。
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