本稿では,神奈川県立高校に所属する教員を対象に質問紙調査を行い,読書指導への意識と指導の実態を分析し,その結果をもとに,高校教員の行う読書指導に対して司書教諭や学校司書が効果的な支援を行うための方策を考察した。
研究の結果,担当教科や経験年数等によって,読書指導の意識や実施度に差のあることが明らかになった。主な特徴として,国語と数学では読書指導への意識に差があり,学校図書館に望む支援内容も異なること,国語と地歴・公民では読書指導の実施度に差があり, 指導の観点が異なると考えられること,本を紹介することや学校図書館の利用を指導することは国語科担当教員の仕事であるという考えが全体にあること,教員経験の浅い層を中心に読書指導への関心があっても実施に結びつかない状況があることなどが挙げられた。司書教諭や学校司書には,教員のニーズや読書指導への距離感に応じた支援を工夫することが求められる。
本研究は,文部官僚などが遺した一次資料(深川文書など)に基づき,戦後初期(1952〜1953年)の日本における学校図書館法の法案作成過程の要諦を明らかにすることを目的とした。先行研究で使用されなかった新資料に依拠し,国会に上程されるまでの法案の変遷について,主な3つの諸案の特徴を摘出し,それらを比較検討した。
法案上程までの過程において,各アクター間(文部省,全国学校図書館協議会,政党など)の対立・妥協があり,紆余曲折していた。法案の作成過程において,当初予定していた司書教諭の免許制度が任用資格制に変更された背景には,当時の文部省の教員養成政策 や高等教育政策が大きく影響していた。さらに,同省は,学校図書館法の立法化に関して,総じて批判的であり,代案として「学校図書館振興法案要綱」を作成していたことが明らかになった。他方,同法成立時に大蔵省は,司書教諭必置化について,否定的な公式見解を示した。