公立図書館における中立・公平な所蔵について検討した。2014 年から2015 年にかけて日本国内で論議された「集団的自衛権」を主題とする91 点の書籍の所蔵について調べた。書籍を賛否に従ってグループ分けしたところ,需要においては賛成本が勝っていたが,否定本のほうが4倍弱多く所蔵されていた。一点当たりの所蔵数においては否定本が1.2 倍程度有利に所蔵されていた。所蔵に影響する他の要因も含めて重回帰分析をしたところ,出版社の信用(特に岩波書店刊行書籍),需要,書籍の質などの要因とともに,否定本であることも有意な要因であった。続いて,賛否の所蔵数の比を基準に図書館設置自治体をグループ化し,所蔵規模別に検討した。結果,所蔵規模が大きくなるほど中立的となり,小さくなれば賛否どちらかに偏ること,特に否定本に偏るケースが多いことが明らかになった。否定本のみ所蔵する自治体は全体の1/4 強存在した。
イングランドの大学図書館における特別な支援の背景要素を明らかにするため,大学図書館16 館を対象にブロンフェンブレンナーの「人間発達の生態学」理論を援用して分析した。結果として,連携,支援環境整備,研修,意識の根底の4 点が支援の背景要素として挙げられた。①.連携は大学図書館,障害サービス,IT 関連部署,サポートワーカー,大学外との相互で行われていた。大学外では,地域コミュニティや社会企業との連携が SEN 学生への自立や就労支援へとつながっていた。②.大学図書館における支援環境整備 (リフトの設置など物理的環境整備や特別支援担当ポストなど支援体制)は,政府による法的整備,ソーシャル・インクルージョンの概念に依拠していた。③.SEN 学生へのサービス利便性を図るため,大学内外の研修を通して,専門性の強化がなされていた。併せて,研修を通してネットワークの構築にもつながっていた。④.職員の意識は,パートナーシップの精神を根底としていた。
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