今日の情報環境の急速な変化に伴い,利用者がどのように複数の情報源やそこから得られる情報を活用し,またそこにどのような問題を抱えているのかについての議論はますます重要になりつつある。本研究では,物理的・電子的情報源が混在した情報環境である大学図書館を仮想的な実験室として,被験者実験を実施した。実験では,被験者にレポート課題を与え,目的の明確性に要因操作を施した上で,自由な情報探索を求めた。実験の結果,情報源の利用に関する一般的な傾向として,(1)情報探索における情報源の利用に偏りが認められた。また,(2)明確な理由を伴わない情報源の切り替えがしばしば行われていた。さらに,(3)明確な意図を伴った探索であってもそこでは新たな発見が生み出されていることが明らかとなった。そして,目的の明確性の違いによる影響として,(4)明確な目的は複数の情報源の利用や情報ニーズの生成を促進させることが示唆された。
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