日本図書館情報学会誌
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68 巻, 2 号
選択された号の論文の7件中1~7を表示しています
論文
  • 水沼 友宏, 辻 慶太
    原稿種別: 論  文
    2022 年 68 巻 2 号 p. 73-94
    発行日: 2022年
    公開日: 2022/06/30
    ジャーナル フリー

     図書館でLGBTQ 向けサービスを提供することの重要性は多くの文献で述べられているものの,日本の図書館におけるLGBTQ 関連資料の所蔵・提供実態はほとんど明らかにされていない。そこで本研究では,日本全国の公立図書館3,085 館を対象に,カーリルを用いて,LGBTQ 関連図書433 点の所蔵状況を調査した。結果,調査対象のLGBTQ 関連図書を1 点も所蔵していない図書館が58 館存在すること,絵本や日本・英米の小説・物語が所蔵されやすい一方,自叙伝を含むC コードの末尾が「95」の図書は所蔵されにくいこと,コミックスは需要が高いにも拘わらず所蔵されにくいことが示唆された。また,所蔵調査と図書館に対するインタビュー調査などの結果から,LGBTQ に関する自治体の政策が図書館のLGBTQ 関連図書の所蔵状況に影響を与えていること,複合施設の中の図書館,特に複合施設の中に学校や教育施設等がある図書館であることが,LGBTQ 関連図書の所蔵率の高さに影響を与えていることが示された。

  • 德安 由希, 小泉 公乃
    原稿種別: 論  文
    2022 年 68 巻 2 号 p. 95-111
    発行日: 2022年
    公開日: 2022/06/30
    ジャーナル フリー

     本研究の目的は,積極的に行政支援サービスに取り組む公共図書館がどのようにサービスを構築し,発展させてきたかを解明することである。愛知県の田原市図書館を対象に,資料調査と館長,副館長,図書館員,行政職員(サービス利用経験有)への半構造化インタビューによる事例分析を行った。結果,田原市図書館では,地域課題によって図書館員と行政職員の意識と行動が互いに変化し,両者の関係性の強化を契機に従来のサービスを転換する形で行政支援サービスを構築していた。構築後も図書館員の継続的な努力によってサービスは緩やかに進展し,図書館と行政部局の連携による新たな成果の創出にまで発展していることが明らかになった。さらに,図書館と行政職員の意識や行動をサービスが変化した時期と関連づけながら,サービスに与えた影響を整理し,サービスの構築過程を4 段階別に描いた上で,行政支援サービスに関連する図書館員の専門的知識を考察した。

  • 根本 彰
    原稿種別: 論  文
    2022 年 68 巻 2 号 p. 112-128
    発行日: 2022年
    公開日: 2022/06/30
    ジャーナル フリー

     戦後の学校図書館政策に関する議論の変遷と展開を公共政策論的なマクロ分析によって明らかにした。方法としてジョン・キングダンの「政策の窓」モデルを用いて,①戦後教育改革期(1947-1958),②日本型教育システム期(1958-1987),③21 世紀型教育改革期(1987-現在)の3 つの時期について,学校図書館政策の議論の流れ,政策の流れ,政治の流れを検討した。その結果,各期で政策の流れが中心にあることが認められ,政策で不十分なところが議論の対象とされそれが政治的なアジェンダと一致したときに立法化の動きに結びついたことを確認した。第一期には学校施設整備,第三期には言語力・読書力の向上が政治的アジェンダになり立法化まで進んだが,第二期においては政治的な議論の対立があって立法化できなかった。最後に,次のアジェンダ設定のためには,地域社会における探究カリキュラムと方法に関わる理論的研究が必要なことを述べた。

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