図書館でLGBTQ 向けサービスを提供することの重要性は多くの文献で述べられているものの,日本の図書館におけるLGBTQ 関連資料の所蔵・提供実態はほとんど明らかにされていない。そこで本研究では,日本全国の公立図書館3,085 館を対象に,カーリルを用いて,LGBTQ 関連図書433 点の所蔵状況を調査した。結果,調査対象のLGBTQ 関連図書を1 点も所蔵していない図書館が58 館存在すること,絵本や日本・英米の小説・物語が所蔵されやすい一方,自叙伝を含むC コードの末尾が「95」の図書は所蔵されにくいこと,コミックスは需要が高いにも拘わらず所蔵されにくいことが示唆された。また,所蔵調査と図書館に対するインタビュー調査などの結果から,LGBTQ に関する自治体の政策が図書館のLGBTQ 関連図書の所蔵状況に影響を与えていること,複合施設の中の図書館,特に複合施設の中に学校や教育施設等がある図書館であることが,LGBTQ 関連図書の所蔵率の高さに影響を与えていることが示された。
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