大正元年から『目録編成法』刊行直前の時期の日本における目録を巡る学説について分析した。その結果,辞書体目録と分類目録は対立するものとして捉えられていた明治期と異なり,和田万吉,今沢慈海などの図書館関係者は,分類目録を辞書体目録に組み込むという考え方に移行していたことがわかった。また,明治期に引き続き冊子体目録とカード目録を比較する学説も見られたが,カード目録が肯定的に捉えられた。さらにシーフ目録が和田によって紹介された。その他,目録における仮名遣い,著者名の表記のあり方,雑誌記事索引の重要性,児童用の目録論などが語られ,主記入論争へとつながる動きとして,田中敬による,和洋図書両方を著者標目で統一することの主張が見られる。大正期における目録の目的論は利用者を重視したものであった。その背景には当時の図書館界の利用者を重視する姿勢があった。
本稿では1946 年以降に出版された読書法に関する書籍の分析を通して,規範化されている読書観を類型化するとともに,その経年変化を概観した。分析においては読書目的・読書対象・対象読者の3 項目に着目し,各項目に関する記述に対して帰納的アプローチによる定性的コーディングをおこなった。類型化によって,対象読者は年齢・職業・読者自身の性質による分類がなされていること,読書対象は学問分野やジャンルによる分類の他に出版形式・内容への評価・読者に基づいた分類がなされていることがわかった。読書観の経年変化の検討では,次のことがわかった。読書目的では読書を人生あるいは自己の成長や形成に関わるものとする考えの定着と,教養を得ることから能力を得たり実践したりすることへの変化がみられた。読書対象では文芸の定着と,古典からビジネス書への変化がみられた。対象読者では若者から社会人への変化と,子供や小学生への対象拡大がみられた。