日本図書館情報学会誌
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63 巻, 4 号
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論文
  • 山田 翔平
    2017 年 63 巻 4 号 p. 181-195
    発行日: 2017年
    公開日: 2017/12/29
    ジャーナル フリー

    本研究の目的は,電子メディアの世界においてオンライン百科事典として参照されるWikipedia が,印刷メディアの世界で確立された百科事典の概念に対応するものであるかを明らかにすることである。対応関係を議論する上では,各メディアの世界が支えている知識の編成において百科事典とWikipedia がそれぞれ占める位置づけを考慮することが必要である。そこで,本研究では,百科事典とWikipedia それぞれの役割とそれらの役割を支える属性に着目して分析を行った。まず,百科事典について議論,論究した文献をレビューし,百科事典の役割と属性について分析を行った。次に,Wikipedia について調査,分析を行った文献をレビューし,Wikipedia が百科事典と同じ役割を果たし,同様の属性を有するかについて分析を行った。結論として,個々の利用という状況を除いて,Wikipedia は百科事典と概念的に対応しないことが示された。この結論はまた,電子メディアの世界におけるWikipedia の位置づけは印刷メディアの世界における百科事典の位置づけとは異なることを示唆している。

  • 武田 将季
    2017 年 63 巻 4 号 p. 196-210
    発行日: 2017年
    公開日: 2017/12/29
    ジャーナル フリー

    本研究では,情報過多による探索行動の困難を回避するための手段として,キュレーションによる情報提示に着目し,ユーザの思考状態や精神的負荷,情報行動に対して,どのような変化をもたらすかを明らかにすることを目的とした。実験参加者30人を,キュレーションにより情報提示を受ける群とサーチエンジンで検索されたWeb ページから情報提示を受ける群に15 人ずつ無作為に割り付け,性質の異なる2 つのタスクを用いて実験を行い,脳波解析を行った。その結果,キュレーションされた情報提示を受けることで,特に,ページ閲覧時の集中状態が高くなる,精神的負荷が低くなる等の変化が観察された。加えて,ページ内のナビゲーションに従って多くの情報を入手するタイプのタスクでは,キュレーションされたWeb ページから情報を受ける群の,クエリ投入時における精神的負荷も低減されていることが分かった。

  • ─1930 年代東京市立図書館を中心に─
    宮本 愛
    2017 年 63 巻 4 号 p. 211-225
    発行日: 2017年
    公開日: 2017/12/29
    ジャーナル フリー

    本研究は戦前期東京における公共図書館の女性利用者の実態を明らかにすることを目的とする。1930 年代東京市立図書館を中心に調査した結果,利用者数は全体の1 割程度であり,26歳以上の利用者の存在は稀であった。彼女らは裕福かつ教育レベルの高い階層であった。また,平日よりも休日に多く利用する傾向にあった。

    女性利用者が少ないこと,年齢層が若年層に限定されていたことの要因としては,(1)図書館を利用する習慣を持つ女性は限られていたこと,(2)読書する習慣を持つ女性であっても結婚後は図書館を利用する機会はほぼなかったこと,(3)婦人閲覧室の設置状態が貧弱だったこと,(4)当時の女性は“女性に読書は不要である”という,女性が読書をすることに否定的な社会的風潮の中に置かれていたことが挙げられる。

    つまり,戦前期日本における女性の図書館利用に関しては,女性の社会的地位が低いという当時の時代背景が大きく関連していた。

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