生体医工学
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Annual58 巻, Abstract 号
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  • 吉澤 誠, 杉田 典大, 湯田 恵美, 田中 明, 本間 経康, 山家 智之
    2020 年 Annual58 巻 Abstract 号 p. 152
    発行日: 2020年
    公開日: 2020/08/05
    ジャーナル フリー

    近年,健康管理のためにウェアラブル・センサが普及しつつある.例えば,アップル社のApple Watchの最新バージョンでは,光電脈波計ばかりではなく心電計の機能まで具備している.確かに,ウェアラブル・センサは身体に直接装着するため,常時連続的な生体情報取得が可能である.しかし当然であるが,ウェアラブル・センサは,それを購入して「装着(ウェア)」しなければセンシングできない. 一方,パーソナルコンピュータやスマートフォンに内蔵されているビデオカメラの映像信号から脈波(映像脈波)が得られる.ウェアラブル・センサに比べて映像脈波が決定的に優れているのは,何も身に付けず(ウェア“レス”に),遠隔・非接触的なセンシングができる点である. 本稿では,まず,映像脈波の計測方法とその性質について述べた後,映像脈波の幅広い応用可能性について解説する.すなわち,家庭における風呂・トイレなどでの血圧サージの検出,洗面所の鏡やスマートスピーカーでの応用可能性,あるいは自動車内での運転者のモニタリングについて触れ,最も応用可能性の高いものとして,スマートフォンを使ったクラウドサービスの概念を紹介する. 次に,映像脈波の実用上の課題と限界について述べる.すなわち,映像脈波の最大の弱点が,体動と照度変化に極端に弱いことであり,それぞれに関する対策を紹介するとともに,今後を展望する

  • 津村 徳道
    2020 年 Annual58 巻 Abstract 号 p. 153
    発行日: 2020年
    公開日: 2020/08/05
    ジャーナル フリー

    メラニン色素,ヘモグロビン色素,陰影塩分を考慮した、生理学に基づいた皮膚の成分解析を紹介します。まず、顔の陰影の影響除去は、生体光学の知識に基づいた単純な色空間でのベクトル分析によって実現されます。陰影除去された画像は、独立成分分析による色素成分分離法により、ヘモグロビン成分とメラニン成分に分離されます。抽出した総ヘモグロビンの時間軸の分析は、心拍からの脈波と高い相関をしていることを示します。この方法により、リアルタイムの顔のビデオから感情や情動を監視することができます。

  • 中本 涼太, 鈴木 新
    2020 年 Annual58 巻 Abstract 号 p. 154
    発行日: 2020年
    公開日: 2020/08/05
    ジャーナル フリー

    動画像から脈波を抽出する映像脈波の健康管理への利用が検討されている。映像脈波は血流変化を波形として抽出するために、肌の状態とも関係があると考えられる。本研究では映像脈波を用いた肌状態診断の基礎的な検討を行った結果を報告する。

  • 田中 明, 熊谷 岬, 吉澤 誠
    2020 年 Annual58 巻 Abstract 号 p. 155
    発行日: 2020年
    公開日: 2020/08/05
    ジャーナル フリー

    顔などの毛細血管の走行が多い皮膚の画像から得られる映像脈波は,非接触で脈波を計測できる方法として注目されている.また,映像脈波は非接触計測可能なばかりでなく,多点同時計測もできるという利点を持つ.したがって,映像脈波が接触型の容積脈波と同様に血行動態に関する情報を有していれば,あたかも無数の容積脈波センサを体に装着していることに相当し,今後新らたな血行動態評価指標の創出も期待できる.これまでに我々は,周期成分分析を利用した新たな脈波抽出方法を提案し,顔以外の比較的毛細血管の走行が少ない部位においても映像脈波を従来法よりも高精度で抽出できることを示した.姿勢変化や温熱負荷等によって末梢の血圧や血管抵抗を変化させた際の複数部位の映像脈波を算出し,いくつかの脈波解析手法を適用した結果,指標のいくつかは血行動態の変化に応じて特徴的な伝播特性の変化を示し,末梢血行動態の変化を非接触で得られる可能性が示唆された.一方で,瞬時心拍数はPPGから得られる値に比べて誤差が大きく,心拍数の揺らぎ解析のためにはさらなる改善が必要なことも明らかとなった.今後,ノイズ除去や照明の方法も考慮し,計測をよりロバストに行うための改善を行う予定である.

  • 杉田 典大, 吉澤 誠
    2020 年 Annual58 巻 Abstract 号 p. 156
    発行日: 2020年
    公開日: 2020/08/05
    ジャーナル フリー

    近年,映像を用いた生体情報に関する研究が盛んに行われている.特に,映像から得られる脈波情報(映像脈波)は,非接触での生体モニタリングを可能とすることから有用であると考えられる.脈波を得る場合,可視光映像のRGBチャネル信号を使用することで体動などのノイズを抑制することが出来る.一方,近赤外光映像のように単一チャネル信号しか得られず,かつ吸光特性が可視光と異なる場合,映像脈波を安定的に得るためには新しいアプローチが必要である.本講演では,近赤外光映像を用いた映像脈波信号の基礎特性を述べると共に,我々の提案した脈波抽出手法を近赤外光映像に適用した結果について紹介する.

  • 植田 典浩, 木曽原 昌也, 湯田 恵美, 吉田 豊, 早野 順一郎
    2020 年 Annual58 巻 Abstract 号 p. 157
    発行日: 2020年
    公開日: 2020/08/05
    ジャーナル フリー

    【背景】気温により死亡率が異なり、暑さと寒さのいずれにおいてもリスクが高くなることが報告された(Lancet 386: 369-375, 2015)。国により気温の影響は多彩であり、日本国内においても地域差がみられた。気温変化が、心血管系や自律神経に影響することが主因と考えられるが、詳細なメカニズムについては不明である。【目的】心拍数や心拍変動指標への気温の影響について、地域差も含めた検討を行うことを目的とした。【方法】洞調律である24時間ホルター心電図で得られたR-R間隔のデータを解析した。ホルター心電図データベースから、例数の多い東京都と北海道を抽出して解析した。解析対象は、東京の3.9万例、北海道の3.5万例 であった。解析は、MeanNN(24時間のN-N間隔の平均値)などの時間領域、周波数領域、非線形指標、に関しておこなった。【結果】MeanNNは、両地域ともM字型の変化を示した。北海道は東京と比較して低温方向へ曲線がシフトしており、高温における低下が顕著であった。SDNN:24時間のN-N間隔の標準偏差、LF:低周波領域のパワー、HF:高周波領域のパワー、についてもMeanNNと同様の変化を示した。【総括】気温により心拍数が変動することが示された。気温による心拍数の変動には地域差がみられ、自律神経活動の変化によるものと考えられた。

  • 堀 潤一, 白戸 元気
    2020 年 Annual58 巻 Abstract 号 p. 158
    発行日: 2020年
    公開日: 2020/08/05
    ジャーナル フリー

     脳内電気活動を非侵襲で画像化する方法として,脳皮質電位イメージングが提案されている.脳皮質電位イメージングによれば,頭皮で計測された脳波から空間逆フィルタを用いて,脳表面上における電位を高空間分解能で可視化でき,信号源の数や方向に制限されることなく推定できる.本研究では,脳活動を詳細に可視化するために,最適なフィルタ特性と伝達行列誤差を考慮したフィルタを組み合わせた手法を提案した.また,時間変化する脳活動を動的に可視化するために,空間逆フィルタを時空間逆フィルタに拡張した.脳波の時空間雑音情報に応じて時変性パラメータに制約条件を設けることで,逆フィルタの安定化を達成した.実脳波として,パターン反転刺激ならびに視覚運動刺激による視覚誘発電位へ応用した結果,それぞれ腹側皮質視覚路,背側皮質視覚路へ信号が伝搬する様子が確認され,生理学的知見と一致した結果が得られた.T提案法は,非侵襲で脳機能を時空間解析する有効な手法として期待される.

  • 吉田 久, 北岡 由圭, 永野 海斗, 小濱 剛
    2020 年 Annual58 巻 Abstract 号 p. 159
    発行日: 2020年
    公開日: 2020/08/05
    ジャーナル フリー

    眼球は視野内の一点を凝視している場合においても、固視微動と呼ばれる不随意性の微小な運動が絶えず行われている。固視微動は主に跳躍的な運動であるマイクロサッカード成分、ゆっくりとした変動を行うドリフト成分、微小かつ高周波成分のトレマー成分の3 種類から構成されている。近年、固視微動には視野を確保する機能だけではなく、マイクロサッカード制御系が、注意のような認知機構の影響下にあることを示す証拠が数多く報告されており,固視微動の特性を知ることは、人の認知機構を知る上で重要な指標となる.本研究報告では固視微動を状態空間モデルによってモデル化し、状態空間モデルの状態推定することで固視微動成分の分離と追跡を行う新たな方法を提案した.その結果,マイクロサッカードのオーバーシュートやアンダーシュートも含めて精度良く固視微動を追跡することが可能であった.また,固視微動追跡の予測中央値ならびにベイズ予測区間を用いるマイクロサッカード検出法を新たに提案した.本マイクロサッカード検出法は,平滑化微分と閾値によってマイクロサッカードを検出する従来方法に比べ,マイクロサッカードに現れるオーバーシュートやアンダーシュートが考慮された精度の高いマイクロサッカード検出が可能であり,また検出率も高かった.

  • QIAN Kun, Yoshiharu YAMAMOTO
    2020 年 Annual58 巻 Abstract 号 p. 160
    発行日: 2020年
    公開日: 2020/08/05
    ジャーナル フリー

    Snore sound, as a common symptom among adults (more than 30%), has been increasingly studied during the past three decades. Particularly, an in-depth analysis of snore sound can benefit a targeted surgical plan for both the subjects suffering from primary snoring and Obstructive Sleep Apnoea snoring. In this presentation, we will firstly introduce the history of using snore sound analysis for localising the snore site in the upper airway. We will compare the early works focused on acoustic parameter analysis and the machine learning (including the cutting-edge deep learning approaches) based studies by a comprehensive review on literature. Then, we indicate the findings and limitations in current research work. Finally, we conclude the studies and give our future perspectives.

  • 中村 亨, 李 俐
    2020 年 Annual58 巻 Abstract 号 p. 161
    発行日: 2020年
    公開日: 2020/08/05
    ジャーナル フリー

    ウェアラブル睡眠トラッカに代表される近年の睡眠モニタリング技術の発展や睡眠モニタリングサービスの普及は、我々の日常生活下での睡眠を継続的かつ大規模に取得することを可能にしつつある。従来の実験室環境での計測を超えて、日常生活下で計測される睡眠ビッグデータの解析は、生態学的妥当性を有する睡眠疫学的知見の導出につながる。近年、我々は、日本全国から集められた大規模な体幹加速度データベース(約8万人、睡眠時を含む24時間データ)を活用し、日本居住者の睡眠に関する客観的な疫学的知見を得た。本発表では、加齢や性別差、生気象学的要因が睡眠に与える影響を報告する。

  • 田地川 勉, 関戸 耀太, 中山 泰秀
    2020 年 Annual58 巻 Abstract 号 p. 162
    発行日: 2020年
    公開日: 2020/08/05
    ジャーナル フリー

    これまで我々の研究グループでは,生体自身を培養器として利用し様々な立体形状を有する結合組織体を作製する生体内組織形成術(以下,iBTA)を用いて,人工血管,心臓弁などの再生に取り組んできた.中でも,心臓代用弁としてのバイオバルブは,主に動脈弁としての開発を行ってきたが,房室弁形状のバイオバルブは対象となる弁の形状が複雑であり,特に弁尖が腱索によって心室壁と繋がる構造的な複雑性を有することから,移植難易度が高いといった問題点があり実用化には至っていない.そこで本研究では,この問題点を解決する簡易型人工房室弁の開発を目標として,簡易的な形状を有しながらも,弁閉鎖時に弁尖の裏返りなどの逸脱が生じにくい形状として,人工弁輪を兼ねた金属製のステントにシート状の結合組織を縫い付けることで,ヒンジを有する様なバタフライバルブ形状の人工弁を試作した.この弁を,研究室で開発した左心シミュレータを用いて,ヒト左心系の生理条件を模した条件下で実験を行うことで,逆流率,EOA,圧隔差などの弁血行力学的特性を測定・評価した.また,バイオシートと力学的に相似なポリウレタンシートを使い,その厚みやシート切り出し形状を変化させることで,弁形状の違いが弁機能におよぼす影響を系統的に調べることで,設計の最適化を試みた.

  • Sifuna Martin, Achyut Sapkota, Masahiro Takei
    2020 年 Annual58 巻 Abstract 号 p. 165
    発行日: 2020年
    公開日: 2020/08/05
    ジャーナル フリー

    Control of blood flow rate is vital in prevention of thrombogenesis in extracorporeal circulation. Electrical capacitance tomography was used to visualize permittivity distribution to enhance precision in control flow rates thrombus prevention. An ECT sensor was made to measure blood capacitance at flow rates Q from Q = 0 to 2.6 L/min using impedance analyzer at current I =1 mA and at frequency from f = 1 kHz to 3 MHz. The flow dependent cell distribution images were reconstructed based on Linear back projection while simulations and modified Hanai formula were used as a post-evaluation of methods used in main experiments. Under the images at f = 430, 550 and 758 kHz showed significant increase in permittivity with increase in Q. Results correlated well with the simulation results showing flow dependent permittivity distribution. This adds a medical dimension to application of ECT to visualize permittivity distributions in proactive prevention thrombogenesis

  • 佐伯 壮一, 近藤 宏樹, 古川 大介, 山本 衛
    2020 年 Annual58 巻 Abstract 号 p. 166
    発行日: 2020年
    公開日: 2020/08/05
    ジャーナル フリー

    紫外線暴露による光老化皮膚では,光に対する自己防衛によって表皮肥厚が発生することが知られている.すなわち,皮膚組織における粘弾性や微小循環などのバイオメカニクス特性が変化している.本研究では,光熱変換型・光干渉断層法(Photo-Thermal Optical Coherence Doppler Velocigraphy)を光老化皮膚マウスの皮膚に適用し,リンパ流れの微小循環機能をマイクロ断層可視化する.これはIndocyanine Green(ICG)の光吸収と光熱変換に基づき,毛細血管から漏出する血漿の微小循環特性をマイクロ断層可視化を行うことができる.また,キュートメーターによる力学特性計測結果と比較評価も同時に実施し検討を行う.

  • 小谷 博子
    2020 年 Annual58 巻 Abstract 号 p. 167
    発行日: 2020年
    公開日: 2020/08/05
    ジャーナル フリー

    「科学技術研究調査」(総務省 2019)によれば、現在の日本の研究者数は87万4800人で、そのうち女性は15万5000人である。研究者に占める女性割合は 16.6%と過去最高となっているが、欧米の先進諸国と比べると未だ低く、また女性研究者の上位職への登用もなかなか進まない傾向がある。大学院からポストドクターの時期は、男女ともに結婚が視野に入り、家庭を築く時期と重なる。特に、若手女性研究者にとっては、「研究と出産」か「研究か出産か」の二者択一になりがちで、葛藤・プレッシャーを強く感じる時期でもある。私自身は、博士号を取得後に出産し、日本学術振興会特別研究員のPD,RPDという立場で研究を続けることができたが、思うような業績を出せたとは言えない。業績はないことが、研究者としての自信喪失に繋がっていく。また、子育て中は、子どもの預け先の確保の問題で、学会の大会へ参加することすら難しい。特に、男性研究者の多い日本生体医工学会の大会は子連れで参加できる雰囲気はなく、私自身、再び学会の大会へ参加できるようになったのは15年経ってからであった。2018年の札幌大会より保育室の設置と男女共同参画・ダイバーシティのセッションを大会長のサポートのもと毎回企画させていただいている。本セッションでは、性別にかかわりなく、若い研究者が能力を生かして活躍できるよう、またワークライフバランスに配慮した研究環境とは何か議論してゆきたい。

  • 関野 正樹, 山口 さち子
    2020 年 Annual58 巻 Abstract 号 p. 168
    発行日: 2020年
    公開日: 2020/08/05
    ジャーナル フリー

    著者らは夫婦とも生体医工学の研究者であり,小学生の子供2人の子育てをしている.ここでは男性研究者からよいワークライフバランス(ここでは研究と家事や育児のバランス)を取ることによる研究生活への効果について,著者らの拙い体験を,成功,失敗,反省など織り交ぜて共有し,議論の題材としたい.特に,男性研究者が家事や育児に参加して得られる経験が研究活動にどのようにプラスに作用するかについて発信したい.まず家事と育児で磨かれるマルチタスク能力は,主観的ではあるが研究チームを俯瞰的に眺めることの助けとなり,マネジメントにも活かされることがあったように思う.また,この能力は限られた研究時間で多様な業務を効率的にこなす術ともなった.小学生が面白いと感じるほど簡潔に説明できるかという視点・技術でプレゼンを企画することは,講演,予算獲得,教育の全てにおいて活かされる点があった.さらに,マイコンなどのツールを子供とともに作る際に,生体医工学の研究にも有用な気づきが得られることがあった.もちろん,こういった観点が無くても夫婦で家事や育児をすることが望ましいが,まだ仕事面に時間を使うことが多い研究者が興味を抱く端緒となれば幸いである.

  • 雨宮 歩
    2020 年 Annual58 巻 Abstract 号 p. 169
    発行日: 2020年
    公開日: 2020/08/05
    ジャーナル フリー

    研究者(教員)となって4年目、2人の子どもを育児中の、今まさに研究と育児の両立について、日々試行錯誤している女性研究者の一例を紹介する。7年間の社会人経験の後、大学院在学中に(D1)長女を、研究者になって3年目の2018年に次女を出産し、出産と育児にともなう大きな研究生活の変化を経験している。夫は企業で研究・開発をしており、研究に対し理解がある上に、家事も可能である(一応)。そのような状況で、長女誕生前は好きなだけ研究に時間を使い、出産当日まで陣痛室でも論文を書いていた。長女誕生後は、まず研究生活に復帰するために壮絶な保活(保育園活動)をのり越え、奇跡的に生後4か月から復帰することができた。復帰したとはいえ、保育園から突然呼び出されることも多く、その対応には夫と近県に住む母の協力が欠かせない。自分自身および夫の職場の寛容な雰囲気にも助けられ、どうにか研究と育児を両立している状況である。この一例では、夫や家族の理解と協力がある上に、寛容な職場であるという条件があり成り立っている。それでも長女誕生後は、好きなだけ研究に時間を使えるということはなくなった。しかし、研究も育児もどれだけ時間をかけるかではなく、質が重要だと信じて、日々試行錯誤を続けている。研究も子どももあきらめたくない一例として体験談をお伝えすることで、育児中や、これから子どもが欲しい研究者の方たちの参考になることがあれば幸いです。

  • 中川 誠司
    2020 年 Annual58 巻 Abstract 号 p. 170
    発行日: 2020年
    公開日: 2020/08/05
    ジャーナル フリー

    ワークライフバランスとキャリアパスは,おそらく全ての共働きの夫婦に共通した関心事であろう.筆者の家庭は夫が大学教員,妻が勤務医として,二人の子供を育てながら共働きをしている.夫婦の両親や親戚は近隣に居住しておらず,専ら保育園や職場の一時預かり制度,ベビーシッター,時には友人を活用して,子育てとそれぞれの仕事に邁進してきた.しかしながら,数年前に夫が単身赴任となり,妻は勤務病院の部長に就任したことで,生活はますます多忙となり,育児と仕事の両立に悩ましい状況が拡大している.本発表は筆者らの経験の紹介に終始するが,これから同様の状況を経験するであろう若手研究者の参考になれば幸いである.

  • 荒船 龍彦
    2020 年 Annual58 巻 Abstract 号 p. 171
    発行日: 2020年
    公開日: 2020/08/05
    ジャーナル フリー

    昨年度大会にて実施した本学会の若手研究者活動WG主催企画『医工連携の失敗談セッション』に引き続き,本大会でも若手WG企画として,研究者として独立し始めた若手研究者,そしてこれから医療機器/ヘルスケア産業に参入予定の新規参入企業に向けた,時代に合った新しい産学連携を模索する.若手研究者にとって,既に産学連携の実績のある出身研究室を離れて独立する場合,新たな身分で医工連携,産学連携の関係を1から構築する必要がある.理系大学において,純粋な研究内容に資する科目ではなく,産学連携に資するような経営,ビジネスに関する学問を体系的に受講する機会は非常に少なく,従って若手研究者にとって産学連携は『未知の学問』に近い.結果的にOJT(オンザジョブトレーニング)に近い状態で経験を積むことになるが,1つ1つのプロジェクトは数年単位になるため,1つの失敗が長期のタイムロスを生むリスクが生じる.また最初から巨大メーカの多額のグラント獲得が出来る研究者はほんの一握りのため,まずは身の丈に合った「ちょうどいい」産学連携から経験を積むべきである.そこで著者のこれまでの産学連携の経験を踏まえながら,実際にアカデミアが担うパートは純粋な研究開発だけでないことを紐解きつつ,アカデミアが持つべき強み,企業が持ちにくい役割を明確にし,『産学連携で選ばれやすい若手研究者』を目指す方法について提案する.

  • 田中 由浩
    2020 年 Annual58 巻 Abstract 号 p. 172
    発行日: 2020年
    公開日: 2020/08/05
    ジャーナル フリー

    発表者は触覚の基礎と応用に関する研究を行なっており,製品の触感のデザインや触覚デバイス開発に関する共同研究を様々な業種の企業と行なってきている.ここで視覚や聴覚と比べると触覚は情報化が進んでおらず,評価や設計の手法は確立されていない.したがって,触覚のセンサや提示装置などのデバイスの活用についても,どのような応用可能性,効果があるかは未知であることが多い.このような背景の下,産学連携においては,企業のニーズと大学の技術シーズのマッチングという単純な様相を取ることは少ない.良い成果を生むには共創的な課題設定が重要である.そしてこの際に,アカデミアとして,培ってきた基礎的知見,独自の視点,バックキャスティングによる発想が役立つと考えている.新しい手法や技術の創出を目指す生体医工学の分野においては,その産学連携のプロセスに共通する課題や指針があるように思う.本発表では,医療福祉にとどまらず,広く発表者の産学連携の体験を紹介し,共創的産学連携について議論させていただきたい.

  • 青井 堅
    2020 年 Annual58 巻 Abstract 号 p. 173
    発行日: 2020年
    公開日: 2020/08/05
    ジャーナル フリー

    これまで主力産業を医療機器としてこなかった『異業種』企業が医療機器、ヘルスケアへ参入しようという動きが活発化している。 AMEDに集約された我が国の医療機器開発研究費においても、企業と大学/病院がセットでなければ申請できないLate Phaseの大型研究費が投入されるようになり、それに伴って企業と大学の産学連携の機会も増している。一般的に産学連携は、現場担当者同士が意気投合すれば、共同研究を開始することも多いが、それが長期的な取り組みとなっている例は多くない。しかしながら医療機器開発には、ニーズ探索、開発、さらに承認取得後の市販後調査、臨床における新たな課題解決など、非常に長期の視点が必要となる。そのため、産学連携した場合にうまくいかないことが発生する。著者はこれまで様々な産業分野でのコンサルタント業務を経験し、産学連携・異業種連携などの例も見聞きしてきた。産学連携のミスマッチ原因の多くは、GOALの共通認識形成や、お互いの持つ様々な認識の差に拠るものが多く、この認識の違いに気づかないままプロジェクト進行、あるいは気づいても軌道修正の手段を講じられないまま、進んでしまう場合もある。産学連携における落とし穴と、それを回避するために適したプロセスを洗い出し、医療機器開発を目指す若手研究者や新規参入企業のアウトプットを円滑にする施策について提案する。

  • 出口 真次, 李 泓翰, 松井 翼, 松永 大樹, ネワ フォンチャムジャーミア, 青崎 宏樹
    2020 年 Annual58 巻 Abstract 号 p. 174
    発行日: 2020年
    公開日: 2020/08/05
    ジャーナル フリー

    本発表では我々が開発した細胞収縮力の評価方法(アッセイ)について紹介する。昨今の研究から、非筋細胞の収縮力は単に細胞遊走の駆動力として使われるだけでなく、細胞の基本状態(増殖、分化、アポトーシスのどの状態をとるか)を決める要素であることが明らかにされている。ただし「収縮」と言っても細胞の長さの短縮を伴うものではなく、「等尺性収縮」状態において力を発生するものであることから、すぐには視認できず、研究者が意識することも少ないように感じる。しかし特に細胞外基質の硬さ(細胞収縮力を決める要素)に依存した分化方向の決定機構(細胞外基質の硬さ→細胞収縮力の大きさ→細胞内シグナルの変化(メカノトランスダクション))の現状の理解を紹介しながら、非筋細胞の収縮力の一般的な重要性について説明する。我々の方法では細胞に分子的な擾乱を与えた際の収縮力の変化を効率的に定量評価できるために、今後細胞生物学分野におけるスクリーニング実験等でのアッセイ技術として活用されていくと期待している。

  • 岡嶋 孝治
    2020 年 Annual58 巻 Abstract 号 p. 175
    発行日: 2020年
    公開日: 2020/08/05
    ジャーナル フリー

    原子間力顕微鏡(AFM)は、生きた細胞・組織の力学特性を高い時空間分解能で計測できる特徴をもつ[1]。このAFMの高い位置・力制御機構を利用することにより、1細胞メカニクスの個性[2]やその時間変動(揺らぎ)[3]の定量計測、そして、AFMによる細胞アッセイ法の可能性とその限界も明らかになってきた。さらに、AFMの計測対象は、1細胞から組織等の多細胞系へと広がっている。AFMを用いた多細胞系のメカニクス計測を実現するために、大きな表面粗さを有する多細胞系の精密計測法[4]や高速レオロジー計測法[5]が提案され、多細胞系に内在する弾性率の空間分布をサブ細胞分解能で捉えることも可能になってきている[6]。本講演では、AFM細胞アッセイと今後の組織力学計測への展開と問題点について述べたい。[1] Y. M. Efremov et al. Soft Matter 16, 64(2020). [2] P.G. Cai et al., Biophys. J. 105, 1093 (2013) . [3] P.G. Cai, R. Takahashi et al. Biophys. J. 113, 671 (2017). [4] Y. Fujii, T. Okajima, AIP Advances 9, 015028 (2019). [5] R. Takahashi, T. Okajima, Appl. Phys. Lett. 107, 173702 (2015). [6] Y. Fujii et al., Biophys. J. 116, 1152 (2019).

  • 森松 賢順, 藤田 彩乃, 寺町 一希, 成瀬 恵治
    2020 年 Annual58 巻 Abstract 号 p. 176
    発行日: 2020年
    公開日: 2020/08/05
    ジャーナル フリー

    組織や器官を構成する細胞は、ずり応力、圧力、伸展圧縮等の機械刺激を受容し、細胞自身や組織の機能維持に利用している。 特に、軟骨組織や歯周組織等は、歩行や咬合等の日常生活に伴った圧力に常にさらされているが、これらの組織に存在する細胞の圧力に対する受容応答メカニズムの解明には未だ研究の余地があった。その理由は、高圧下での細胞、分子レベルの計測方法が極端に欠如しており、圧力による生体への影響に関する研究の進捗が遅れていたためである。そこで本研究では、高圧負荷システムを用いた、細胞の圧力受容応答機構の解明を目的とした。開発した圧力顕微鏡下において、歯根膜細胞においては、転写因子の一つであるfork head box protein(foxo)が細胞質から核への移行が観察された。減圧後は、foxoが核から細胞質への移行が観察され、この核移送は可逆的な運動と考えられる。一方、軟骨細胞においては、転写因子の一つであるSmadが加圧により核への移行が観察されたが、減圧後も核内に局在することが観察された。この結果は、加圧による転写因子の核への移送を加速させ、軟骨細胞の細胞外マトリクスタンパク質の精製上昇に関わると考えられる。歯根膜組織への圧力の指標は、機械刺激下での歯周組織の恒常性や、歯周組織リモデリング機構の研究を加速させ、軟骨組織への圧力受容応答メカニズムの知見は、高齢者に多く見られる変形性膝関節症のメカニズムの解明に繋がる。

  • 須藤 亮, 池上 直希, 長南 友太, 山下 忠紘
    2020 年 Annual58 巻 Abstract 号 p. 177
    発行日: 2020年
    公開日: 2020/08/05
    ジャーナル フリー

    グリオーマは浸潤能力の高い脳腫瘍の一種であり、極めて予後の悪い癌である。特に、グリオーマ幹細胞が未分化細胞と分化細胞の混在した不均質な癌細胞集団を形成することが、グリオーマの治療を困難にしている原因の1つであると考えられている。そこで本研究では、このような癌細胞集団が間質流のもとで三次元ゲルの中を浸潤していくプロセスを調べる生体外三次元浸潤アッセイを行った。細胞はマイクロ流体デバイスを用いて培養され、細胞がゲル内部に浸潤していくプロセスを観察することができる。まず、グリオーマ幹細胞の分化状態によって間質流に対する浸潤応答が変化することを見出した。また、このような浸潤プロセスにおける分化・未分化細胞の配置を調べてみると、浸潤先端部には未分化細胞が多く存在することがわかってきた。次に、間質流の強さに着目して浸潤アッセイを行った。一般に腫瘍組織の間質流は正常組織の間質流よりも強いことが知られている。腫瘍組織を模擬した間質流を負荷することで、グリオーマ幹細胞の浸潤や増殖が間質流の強さに依存することを明らかにした。

  • 中島 友紀
    2020 年 Annual58 巻 Abstract 号 p. 178
    発行日: 2020年
    公開日: 2020/08/05
    ジャーナル フリー

    運動など力学的な負荷が増えると骨は丈夫になり、宇宙空間など力学的負荷が減ると骨は弱くなることを我々は経験的に理解している。しかし、その詳細な制御機構については、いまだ不明な点が多いのが現状である。生体の基軸である骨組織は、動的な恒常性を維持しながら統合的な運動機能を支えている。骨は破壊と形成の恒常的なバランスによって常に新しく作り替えられている。この再構築は“骨リモデリング”と呼ばれ、強靭な骨組織の維持のみならず、生命維持に必須なミネラルの代謝器官である骨を巧妙に制御している。骨リモデリングは、骨を構成する細胞、破骨細胞、骨芽細胞、骨細胞の細胞間コミュニケーションによって厳密に制御されており、この破綻が様々な骨疾患に繋がる。破骨細胞と骨芽細胞が骨表面で機能する一方で、骨に埋没した骨細胞は、力学的刺激やホルモンなどを感知し、シグナル伝達を介し応答することで、骨リモデリングを制御していると考えられている。

  • 原 雄二, 平野 航太郎, 梅田 眞郷
    2020 年 Annual58 巻 Abstract 号 p. 179
    発行日: 2020年
    公開日: 2020/08/05
    ジャーナル フリー

    骨格筋の構成単位である筋線維は、筋収縮・弛緩に伴い絶えず損傷を受けており、筋線維の再生は骨格筋のみならず生体恒常性の維持に必須である。筋幹細胞(筋衛星細胞)は筋損傷時に筋芽細胞へと運命決定され、筋芽細胞同士の融合を介して長大な筋線維への成熟・再生に至る。我々は筋線維の再生過程において、物理的な力を感知する機構がどのような役割を果たすか解明を目指してきた。その結果、膜張力により活性化され、様々な物理的な力感知(細胞力覚)に関わる機械受容イオンチャネル群が重要な役割を果たすことを見出した。 筋衛星細胞にて高発現する機械受容イオンチャネルPIEZO1について、筋衛星細胞特異的Creレコンビナーゼマウスを用いて、Piezo1欠損マウスを作出・解析した。筋変性後の筋再生過程を検討したところ、同イオンチャネル欠損マウスでは筋再生過程の遅延が認められた。さらに単離した筋衛星細胞の解析により、上記の表現型は筋衛星細胞の増殖および遊走不全に起因することが示された。以上の結果よりPIEZO1を介した細胞力覚は、筋衛星細胞の機能に重要な役割を果たすと考えられる。 現在、筋再生時におけるPIEZO1チャネルの挙動観察等とともに、筋衛星細胞に高発現し、細胞力覚に関わる他のイオンチャネル群についても解析を進めており、本シンポジウムにて併せて報告したい。

  • 二川 健
    2020 年 Annual58 巻 Abstract 号 p. 180
    発行日: 2020年
    公開日: 2020/08/05
    ジャーナル フリー

    寝たきりや宇宙フライトなどの身体に無重力ストレスが加わる状態においては骨格筋の萎縮が進展することが知られている。当研究室はこれまでの研究で、無重力ストレスによってユビキチンリガーゼCbl-b の発現が増大し、それがIRS-1 のユビキチン化、分解を誘導しIGF-1 シグナルが阻害され筋萎縮が発生することを明らかにしてきた。しかし、細胞が無重力ストレスをどのように感知しCbl-b の発現を亢進しているかは依然として不明なままであった。そこで、我々はこの細胞による重力の感知機構を明らかにするため、国際宇宙ステーション宇宙実験、地上の模擬微小重力培養装置である3D-Clinorotationを用いた検討を行った。まず、Myolab 宇宙実験において、1 週間無重力空間で培養した宇宙サンプルのメタボローム解析を行った。その結果、細胞中の酸化ストレス蓄積量とエネルギー代謝に関連したミトコンドリアに局在するタンパク質の発現に変化が見られた。3D-Clinorotation による実験でも、宇宙サンプルと同様に細胞内の酸化ストレスの上昇が見られること、この上昇した酸化ストレスによってミトコンドリア内のエネルギー産生に重要な酵素アコニターゼの機能が低下すること、さらにミトコンドリアの形態に異常が引き起こされていることが明らかとなった。また、siRNA を用いたアコニターゼノックダウン実験では、3D-Clinorotation を行った際と同様のミトコンドリアの形態変化が引き起こされた。これらの結果は、アコニターゼをはじめとしたミトコンドリアの構成タンパク質が細胞の重力感知の初期応答に重要な働きを担っていることを示唆している。

  • 浅原 弘嗣
    2020 年 Annual58 巻 Abstract 号 p. 181
    発行日: 2020年
    公開日: 2020/08/05
    ジャーナル フリー

    筋・腱・骨格・関節の形態形成と恒常性を理解するため(Hum Mol Genet 2015, PloS Genet 2016, Sci Rep 2017)、転写因子の発現データベースEMBRYSを作成(Dev Cell 2009)、腱の転写因子Mkxを同定し(PNAS 2010)、その生理学的な機能を解明した(PNAS 2016, Nat Commun 2016, Mol Cell Biol 2016, Development 2017, Nat Rev Rheumatol 2020)。軟骨の発生においては、Sox9の軟骨における遠位エンハンサーを同定、先天性骨系統疾患の理解に貢献した(Dev Cell 2018)。また、Sox9に調節されるマイクロRNAとして、miR-140を同定した。興味深いことに、miR-140(Gene Dev 2010, Nat Rev Rheumatol 2012)は頭蓋骨形成に必須であるが、Host遺伝子のWWP2は必須でないこと(Inui Nat Cell Biol 2018)、関節炎においては、協調して機能することを明らかにした(Nat Commun 2019)。さらに、miRNAのターゲット同定システムを構築し(PNAS 2017, Blood Adv 2018)、遺伝子ネットワークの解明と応用を行っている。

  • 中山 憲太郎
    2020 年 Annual58 巻 Abstract 号 p. 182
    発行日: 2020年
    公開日: 2020/08/05
    ジャーナル フリー

    弊社は足や靴でお悩みの方を対象とした靴店を岡山県中心に全国で6店舗を経営している。来店される顧客の8割は女性であり、足に何らかのトラブルを抱えている方が多い。来店される顧客の主な主訴は外反母趾、足底の胼胝・鶏眼、巻き爪、リウマチ疾患、糖尿病などである。このような方の多くは自分の足を知らず、間違った靴選びをしているため症状を悪化させていると思われる。 靴業界の現状は大手量販店が全国に増加し、またインターネット販売が普及したことにより安価な靴が手軽に手に入るようになってきたが、自分自身の足のサイズや特徴を知らずファッション性を重視した靴選びにより若年層から足を痛めるケースも増えている。 弊社では10年以上前から3D足型計測器や足圧計測器を用い、カンや経験でのみ販売されていた靴に対して、数値と整形外科的な理論に基づく靴選び・インソール製作・オーダーシューズ製作を行ってきた。 今回の講演では、弊社に来店される顧客の足や靴に対する”今”の声とそれぞれの症状に合わせた靴選び、ならびにインソール製作例を発表する。最後に現在、医療分野と連携して行っている3Dプリンターを使用した靴型製作の試みや今後の課題について発表する。

  • 大澤 誠也
    2020 年 Annual58 巻 Abstract 号 p. 183
    発行日: 2020年
    公開日: 2020/08/05
    ジャーナル フリー

    【はじめに】外反母趾は単純な骨関節の変形ではなく、軟部組織の破綻を伴い徐々に重症化する母趾機能不全症である。手術においては変形のメカニズムや荷重による影響を考慮しなければならない。荷重による扁平足や開帳足を防ぐために、我々は3次元的な骨切り矯正と底側からのプレート固定を行っている。外反母趾手術の理念、概要、課題を述べる。【対象と方法】2013年以降に同一術者で手術を行い12カ月以上経過した141例179足が対象である。立位X線正面像での第1第2中足骨間角(M1M2角)、外反母趾角(HV角)、Hardy分類での母趾内側種子骨の偏移度、日本足の外科学会母趾判定基準(JSSF scale)、立位X線側面像でのinclination angle(第1中足骨軸と床面の角度)で評価した。2016年以降の63例78足で日本足の外科学会足部足関節評価質問票(SAFE-Q)を用いて評価をした。【結果】術前後平均でM1M2角(16.8→4.8°)、HV角(42→10.5°)、Hardy(6.8→2.9)、Inclination angle(20.3→20.8°)、JSSF(54.9→95.6点)といずれも有意に改善した。SAFE-Qは全項目で有意に改善した。HV≧25°の再発は5%、内反母趾は5%、骨切り部の伸展変形は2.8%であった。【考察】3次元的な骨切り矯正と底側ロッキングプレートでの固定は外反母趾手術において有用であった。回旋矯正、アーチの再現、筋腱ベクトルと緊張の正常化、骨切り部の強固な固定など手技的に難しい要素が多く、今後の課題も多く残されている。

  • 山下 和彦, 山下 知子
    2020 年 Annual58 巻 Abstract 号 p. 184
    発行日: 2020年
    公開日: 2020/08/05
    ジャーナル フリー

    足部は地面に唯一接地し,動作の起点となる重要な部位である.足部の骨は片足26個で,様々な床面,動作に対応できるように複雑な構造となっている.足部の骨格構造は,子どもの頃に発達し12歳ごろまでに基礎的構造が完成する.そのため,健常な子どもの足部を定量的に評価し,ストレスの少ない骨格構造に発達できるような支援が求められる. 一方,中高年の6割以上に外反母趾や足裏の胼胝などの足病を持っており,後期高齢者では8割以上と報告される.要介護要因の上位は,”関節疾患”,”転倒骨折”,“高齢による衰弱”が挙げられる.変形性膝関節症などの関節疾患や転倒骨折は歩行と密接であり,外反母趾などの足部変形だけではなく,扁平足やハイアーチなどの足部の衝撃吸収能力や足部の骨格構造の特性による歩行の影響を強く受けると考えられる.足に痛みが出れば,外出意欲が低下するため,身体機能の低下につながる.そのため,足部の骨格構造の特性を明らかにし,歩行による足部・関節・歩行機能をサポートすることが期待される. そこで本研究では,足部の骨格構造の定量的評価のために,スマートフォンを用いた足部3Dスキャナを開発した.本システムの計測精度は,距離1.7±0.7mm,角度 0.1±0.2°である. わかりやすい計測指標を示し,靴などのフットウェアや日常のケア,運動領域との連携で,子どもから高齢者までの健康支援に寄与する仕組みを構築したい.

  • Nonomura Keiko, Ardem Patapoutian
    2020 年 Annual58 巻 Abstract 号 p. 185
    発行日: 2020年
    公開日: 2020/08/05
    ジャーナル フリー

    Respiratory organs experience repetitive and wide-ranging mechanical forces during breathing. Some of those mechanical signals are transduced by airway-innervating sensory neurons and control respiration; however, the physiological significance and molecular mechanisms of these signals remained obscure. PIEZO2, a mechanically activated cation channel, is the principal mechanotransducer in low-threshold cutaneous mechanoreceptors and skeletal-muscle-innervating proprioceptors in mice. We found that global and sensory neuron-specific ablation of PIEZO2 causes respiratory distress and death in newborn mice. Optogenetic activation of PIEZO2 expressing vagal sensory neurons causes apnoea in adult mice. Moreover, induced ablation of PIEZO2 in nodose sensory neurons of adult mice causes decreased neuronal responses to lung inflation, an impaired Hering-Breuer mechanoreflex, and increased tidal volume under normal conditions. Our data suggest that PIEZO2 is an airway stretch sensor and that PIEZO2-mediated mechanotransduction within airway-innervating sensory neurons is critical for establishing efficient respiration at birth and maintaining normal breathing in adults.

  • 佐藤 晋
    2020 年 Annual58 巻 Abstract 号 p. 186
    発行日: 2020年
    公開日: 2020/08/05
    ジャーナル フリー

    Chronic obstructive pulmonary disease (COPD) is characterized as progressive airflow limitation caused by pathologies in airway and lung parenchyma. Whereas airflow limitation may occur due to simple airway diseases, physiological and mechanical interaction between airway and parenchyma may be important pathophysiological features of COPD. Such interaction may exist in various level of airways, and consequently, static and/or dynamic hyperinflation may occur in COPD lungs. These pathophysiological features may serve as major source of severe breathlessness, excise intolerance and restricted activities in daily life. To evaluate these pathophysiological features of COPD, several modalities, such as pulmonary function tests, quantitative imaging techniques, and other objective measurements are conducted in clinical settings. However, radical interventions to treat COPD lungs are not achieved yet. Recent progress in techniques of quantitative measurements, and physiological investigations of COPD lungs may contribute deepened understandings of COPD pathophysiology and development of significant intervention of patients with COPD.

  • Suki Béla, Hadi T. Nia, Keneth R. Lutchen
    2020 年 Annual58 巻 Abstract 号 p. 187
    発行日: 2020年
    公開日: 2020/08/05
    ジャーナル フリー

    Introduction: Emphysema is a progressive disease that gradually destroys alveolar tissue leading to airspace enlargement. CT imaging have demonstrated that tissue density decreases in a heterogeneous manner producing a distribution of clusters of low attenuation areas (LAA). Although computational models have been proposed to understand the process via mechanical failure, they lack patient specificity. The aim of this work was to develop a computational model that allows spatiotemporal simulations of patient specific tissue loss on CT images.

    Materials and Methods: We created a large 2-dimensional hexagonal elastic network to recapitulate the alveolar geometry. Initially, the network had a rectangular boundary. The CT image of a patient was thresholded and the boundary of the lung field was approximated with a closed polygon. The coordinates of the vertices were mapped onto the network and nodes outside the polygon were set to be fixed whereas nodes inside the polygon were allowed move in subsequent optimization procedures. The line elements were linear springs with their initial length smaller than the distance between their nodes creating a prestress. The equilibrium configuration was solved and an apparent CT image was created by placing a square grid on the network and within each square, the number of springs were counted which was set to be proportional to CT density. From the network, a stress map can be computed by averaging the network forces within a pixel. To mimic emphysema progression, first a set of initial holes was created in the network by cutting springs in a random fashion. Next, the internal node positions were found that minimized the total elastic energy of the network. The forces on all springs were computed and 10 springs carrying the largest force were cut followed by another optimization. These steps were then repeated 5 times where each iteration represents the progression of emphysema.

    Results and Discussion: The original CT image and the LAA cluster structure created by the model were similar and the corresponding network also predicted the LAA clusters and a stress map. The model captured the large and medium sized LAA clusters but not the smallest clusters. The model was then applied to predict a patient's CT image 1 or 2 year after the first image was taken by advancing the progression of emphysema on the images obtained at time 0. Despite some differences, the model was able to capture major trends in structural alterations. The stress map predicted by the model can then be used as a patient and location specific risk predictor.

    Conclusions: We have introduced a personalized network model approach to convert a CT image to a stress map which allows predicting the spatial location of tissue deterioration. Our approach may find implications for predicting the personalized rate of decline of lung structure and function in response to interventions such as drug treatment or lung volume reduction.

    Acknowledgements: This study was funded by NIH grant U01 HL-139466.

  • 伊藤 理
    2020 年 Annual58 巻 Abstract 号 p. 188
    発行日: 2020年
    公開日: 2020/08/05
    ジャーナル フリー

    Mechanical cues such as stretch, shear stress and matrix stiffness are considered to be involved in the mechanisms underlying the pathogenesis of pulmonary diseases. Because the elastic modulus of solid tumors (20-30 kPa) is much stiffer than that of normal lung parenchyma (0.5-5 kPa), the increased rigidity of the extracellular matrix (ECM) is one of characteristics of malignant phenotypes in solid tumors including lung cancer. Expression of programmed death-ligand 1 (PD-L1) in lung cancer cells regulates evasion of an immune check point system. We evaluated the effects of substrate stiffness on PD-L1 expression by using polyacrylamide hydrogels with different stiffnesses. We demonstrated that a stiff substrate enhanced PD-L1 expression via actin-dependent mechanisms in lung cancer cells. It is suggested that stiff substrates corresponding to pathologically cancer-related fibrotic tissues as a tumor environment regulates PD-L1 expression, which leads to evasion of the immune system and tumor growth.

  • 花田 英輔
    2020 年 Annual58 巻 Abstract 号 p. 189
    発行日: 2020年
    公開日: 2020/08/05
    ジャーナル フリー

     電波環境協議会(EMCC)は1987年に設立され、主な活動内容は「不要電波問題関連情報の収集、交換及び調整」、「良好な電波環境を実現するための許容値、測定法等の技術基準の検討」、「電波環境に関係する審議機関に対する情報提供等の支援」、「不要電波問題に関する啓発、広報」である。 EMCCには5つの委員会があり、その一つに「医療機関における電波利用推進委員会」があり、医療機関において安心・安全に電波を利用するためのガイドライン策定や、問題解決に向けた技術的検討、医療者への電磁環境の管理に関する周知啓発等を行っている。本発表では、この委員会の活動内容として、主にガイドラインや現状の課題について説明する。

  • 松居 和広
    2020 年 Annual58 巻 Abstract 号 p. 190
    発行日: 2020年
    公開日: 2020/08/05
    ジャーナル フリー

    近年では医療機関において、スマートフォンを利用が盛んに議論され始めている。ナースコールシステムとして従来から活用されてきたPHSについても、スマートフォンで代替を図ることを検討され、いくつかの病院ではすでに利用開始までにも至っている。スマートフォンを活用した次世代ナースコールシステムとして、実際に導入された病院における利用状況およびシステム構成を説明するとともに、スマートフォンによってもたらされるICT活用による業務プロセスの改善例についても紹介する。また、それに加えて、スマートフォンの活用するために注目すべきインターネット利用を関連したセキュリティの在り方についても紹介する。

  • 山下 芳範
    2020 年 Annual58 巻 Abstract 号 p. 191
    発行日: 2020年
    公開日: 2020/08/05
    ジャーナル フリー

    医療現場では電子カルテをはじめとする電子的な情報の利用が広がっていることもあり、医療の現場での利用という観点から無線LANの利用は非常に一般的である。医療機器についても機器間の無線利用だけでなく、医療機器のICT化によってデータ通信としての無線通信を利用するものが増加している。さらに、バイタルサイン機器やセンサー等についても、IoTとしての無線通信に対応するものも広がっており、データ連携もネットワークを介して行われるようになってきた。本院においても、医療安全対策や監視等の用途でのIoTの利用としてのセンサーデータの活用も始めている。実際には、バイタル機器からの確実なデータ取得や人・モノの位置情報の特定といった利用から、感染対策強化のための手指衛生の監視とアシストによる薬剤耐性菌や未知ウイルス対策への応用なども行っている。医療現場での利用ということから場所を問わない利用としてのスマートデバイスの活用も行っており、これまで以上に無線通信が重要となってきている。これからは、単にデータ通信という意味ではなく、医療現場での働き方環境の改善といった面でも、IoTの利用が拡大するものと思われる。このように無線LAN以外の通信も混在するため、医療機関での電波管理は非常に重要となる。無線LANにおいても混信を行い運用設計だけでなく、医療機器やIoTでの通信の考慮が今後の重要な課題となる。

  • 稲田 慎, 相庭 武司, 柴田 仁太郎, 原口 亮, 芦原 貴司, 草野 研吾, 清水 渉, 池田 隆徳, 佐久間 一郎, 中沢 一雄
    2020 年 Annual58 巻 Abstract 号 p. 192
    発行日: 2020年
    公開日: 2020/08/05
    ジャーナル フリー

    心室性不整脈の発生メカニズムの一つとして,右室流出路における電気的興奮の伝導異常が考えられている.本研究では,コンピュータシミュレーションを用いて不整脈の発生メカニズムを理論的に検討することを目的とした.心室内における電気的興奮の広がりを再現するために,約2000万のユニットで構成された両心室モデルを構築した.心室内における伝導障害を再現するために,心筋組織の一部に対してユニット間の電気的結合を弱くした.伝導障害領域の大きさや障害の程度などの条件を変えながらシミュレーションを実行し,不整脈が誘発される条件について検討した.伝導障害領域が右室自由壁にある場合と右室流出路に伝導障害がある場合を比較すると,右室流出路にある場合の方が不整脈の誘発性が高い結果となった.右室流出路周辺は,解剖学的に心室壁の厚さの変化や心筋細胞の電気生理学的不均一性が大きく,この領域に伝導障害が形成されると,電気的興奮が旋回しやすくなることを示していると考えられた.

  • 植野 彰規
    2020 年 Annual58 巻 Abstract 号 p. 193
    発行日: 2020年
    公開日: 2020/08/05
    ジャーナル フリー

    本研究では容量結合電極を使用した心電図計測システムについて発表する。発表する三つのシステムのうち二つは非装着型で、ベッドや椅子に布電極を設置したシステムである。残り一つはウェアラブル型で胸部に装着するバンドに布電極が導入されている。これらのシステムで着衣などの衣類を介して計測された容量式心電図(cECG)は、実環境に近い計測条件においても、明瞭なR 波とT 波を検出することが可能であった。ベッド型システムでは、就寝時の6 時間計測において7 名の被験者の平均精度は、R 波が86%、T 波が84% であった。椅子型システムについては、スーツ着用被験者による高速道路実験での解析が進行中である。胸バンド型のシステムでは、トレッドミルを使用した運動負荷試験において、NASA 誘導心電図と比較しても遜色のない安定性にて計測が行えた。

  • 植田 典浩, 増田 勇人, 木曽原 昌也, 湯田 恵美, 早野 順一郎
    2020 年 Annual58 巻 Abstract 号 p. 194
    発行日: 2020年
    公開日: 2020/08/05
    ジャーナル フリー

    [背景と目的]心房細動(AF)は、脳動脈主幹部の塞栓のため広範囲の脳梗塞を引き起こし予後不良であるが、経口抗凝固薬を服用することで予防が可能である。ただし、発作性AF では長期のECG モニタリングによって診断されることが多く、ECG 信号のデジタル時系列またはR-R 間隔をアルゴリズム的に分析することが必要である。ローレンツプロット(LP)画像は、長期ECG モニタリングにおけるAF 検出の有望な方法である。今回、畳み込みニューラルネットワーク(CNN)を使用して、LP 画像での発作性AF 検出における、至適なセグメント長について検討した。

    [方法]持続しているAF 患者52 人と非AF コントロール58 人の24 時間心電図記録(ホルター心電図)を教師データとして、20-600 拍の長さの非重複セグメントの32 x 32 低解像度LP 画像を作成・解析した。発作性AF の患者53 人と非AF コントロール52 人を検証データとして、識別性能を調べた。

    [結果]検証では、AF を検出するための陽性尤度比は、100 拍にピークを有する凸型の放物線を示した。一方、陰性尤度比はセグメント長が短いと低下した。

    [結論]32 x 32 の低解像度 LP 画像において、AF と非AF を区別するためにCNN モデルを使用する際には、セグメント長を100 拍とするのが至適であると考えられた。

  • 瀬野 宏, 富井 直輝, 山崎 正俊, 本荘 晴朗, 柴田 仁太郎, 佐久間 一郎
    2020 年 Annual58 巻 Abstract 号 p. 195
    発行日: 2020年
    公開日: 2020/08/05
    ジャーナル フリー

    【背景・目的】頻脈性不整脈の駆動源として知られる旋回性興奮(Spiral Wave:SW)は,心臓内の局所冷却領域の周辺を移動することが報告されており,局所冷却によってSW の移動を制御することができれば,低侵襲除細動を実現できる可能性がある.そこで本研究では,SW を効果的に停止させる手法として線状の局所冷却を提案し,コンピュータシミュレーションモデルを用いたin silico 実験,及びウサギ心臓標本を用いたex vivo 実験で本手法の有効性を確認した.

    【手法】二次元バイドメイン心臓組織モデル上で誘発したSW に対し,冷却幅,冷却温度,冷却方向をパラメータとし,様々な線状局所冷却を検討するin silico 実験を行った.そしてex vivo 実験に向けて冷却液を用いた線状局所冷却システムを構築し,ウサギ二次元心臓標本に対する冷却実験を行った.

    【結果】in silico実験の結果,冷却温度が低く,冷却幅の広い線状局所冷却を心筋線維走行に沿って行ったとき,効果的なSW の移動がみられた.またex vivo 実験において,線状局所冷却によってSW が停止した例を観測した.

    【考察・結論】適切な線状局所冷却を行うことによって,SW を停止できる可能性が示された.

  • 山﨑 正俊
    2020 年 Annual58 巻 Abstract 号 p. 196
    発行日: 2020年
    公開日: 2020/08/05
    ジャーナル フリー

    ウサギ慢性心筋梗塞モデルに発生する致死性心室性不整脈である心室頻拍/心室細動が重粒子線(炭素線:15Gy)の単回体外照射によって抑制されることを以前報告したが、電気/構造学的リモデリングが進展した心房細動に対する効果は明らかになっていない。本研究では、加齢・高脂血症に伴う心房リモデリングを不整脈基質とするウサギ心房細動モデル(ARC)に発生する心房細動の維持メカニズムを解明し、同不整脈に対する重粒子線単回体外照射による抗不整脈作用を評価した。ARC 心臓をランゲンドルフ灌流し、高速ビデオカメラを用いて自然発生もしくは誘発した心房細動の興奮様式・活動電位波形を撮影した。ARC において発生した心房細動は渦巻き型旋回興奮によって維持されていた。単回重粒子線体外照射は、心房リモデリングを回復することで細動維持の駆動源を抑制する事が明らかになった。

  • 金川 基
    2020 年 Annual58 巻 Abstract 号 p. 197
    発行日: 2020年
    公開日: 2020/08/05
    ジャーナル フリー

     骨格筋は絶えず筋収縮というメカニカルストレスにさらされる組織であり、それゆえに機械的な細胞障害や運動負荷に適応すべき仕組みを備える必要がある。細胞外マトリクス受容体であるジストログリカンは、基底膜と細胞骨格を結ぶ分子で、糖鎖修飾がマトリクス結合活性に必須とされる。糖鎖の異常は筋ジストロフィーなどヒト疾患につながることが知られている。我々は、ジストログリカンに修飾される糖鎖の中から、リビトールリン酸という新規の翻訳後修飾体を発見し、これがマトリクス結合性糖鎖の生合成に重要であることを見出した。また、リビトールリン酸を欠落した筋は機械的負荷に対して脆弱であることも明らかになってきた。つまり、リビトールリン酸は機械的負荷に対する細胞膜強度の維持に重要であることが示唆される。

     本シンポジウムでは、我々のAMED-CRESTプロジェクト「機械受容応答を支える膜・糖鎖環境の解明と筋疾患治療への展開」についても紹介する。本計画では、機械感知・応答の分子機構を明らかにすることで、ヒト筋疾患の予防や治療に有効な戦略の開発を目的としている。

  • 齋藤 琢
    2020 年 Annual58 巻 Abstract 号 p. 198
    発行日: 2020年
    公開日: 2020/08/05
    ジャーナル フリー

    Articular cartilage is an essential tissue that support movement of articular joint, and always receives intensive mechanical loading, particularly in lower extremities. We have studied molecular pathophysiology of osteoarthritis using mouse experimental models for years, and identified NF-kappaB-HIF-2alpha pathway as a major responsible signaling for cartilage degeneration. We recently reported mechanisms in which excessive loading cause cartilage degradation through Gremlin-1 induction and the subsequent NF-kappaB activation. In this symposium, I introduce these molecular mechanisms.

  • 古川 潤一, 花松 久寿
    2020 年 Annual58 巻 Abstract 号 p. 199
    発行日: 2020年
    公開日: 2020/08/05
    ジャーナル フリー

    全ての細胞表面を覆い、そしてほとんどのタンパク質を修飾している糖鎖は、核酸やタンパク質に続く第三の生命鎖として注目され、ポストゲノム研究が勢力的に進められている。CA19-9, CA125およびPSAなど、がんに特異的に発現する腫瘍マーカーの多くは糖タンパク質であり、最近では前立腺がん患者由来のPSAにおいて付加頻度が増加する特異的な糖鎖構造が発見され、糖鎖情報を組み合わせることで診断の精度を飛躍的に高めることが報告された。このような最終産物として発現変動を示す糖鎖は、遺伝子情報と同様に細胞・組織の状態や疾患に伴うバイオマーカーのソースとして有用であるが、複合糖質は糖タンパク質の他に脂質に結合するスフィンゴ糖脂質、グリコサミノグリカンを有するプロテオグリカンそして代謝産物である遊離オリゴ糖など様々なサブクラスが存在するため、複合糖質から網羅的に糖鎖情報を取得することは困難であった。本発表では、これまでに開発してきた様々なサブクラスの複合糖質糖鎖の解析法や主要な複合糖質糖鎖を包括的に捉える総合グライコーム解析について紹介する。また最近進めている糖鎖異性体情報を取得するためのシアル酸結合様式特異的標識法(aminolysis-SALSA法)や本技術を利用したバイオマーカー探索についても併せて紹介したい。

  • 片野坂 友紀
    2020 年 Annual58 巻 Abstract 号 p. 200
    発行日: 2020年
    公開日: 2020/08/05
    ジャーナル フリー

    心臓は、血行動態負荷に対して適応的応答を示すが、この範囲を超えると心不全が生じる。我々は、遺伝子操作マウスを用いて、圧負荷に対する適応的肥大応答を支える分子機構および不全発症機構を探っている。これまでの研究において、我々は、心筋細胞にメカノセンサー候補分子として働くTRPV2が発現していることを明らかにした。また、心臓の様々な時期におけるTRPV2の生理的役割を明らかにしてきた。培養心筋細胞でTRPV2を発現抑制すると、成熟が妨げられ拍動心筋細胞への成熟が阻害された。成体の心臓では、心筋細胞同士の連絡部位(介在板)にTRPV2が局在しており、メカニカルカップリングの調節を介して心機能や構造の維持に必須な分子として働いていた。また、心筋細胞特異的TRPV2欠損マウスは、圧負荷に対して適応的応答ができずに心不全を発症した。このことは、心臓の圧負荷に対する適応的応答は、心筋細胞が成長の過程でTRPV2シグナルを介して獲得した形質に支えられていることを示している。また、本発表では、心筋細胞の持つ予備力を評価する指標として、筋小胞体のCa2+収容能力と肥大応答に関わる転写因子の働きに着目し、筋ジストロフィー心筋症モデルマウスが、病態発症前でも圧負荷に対して適応的応答ができずたちまち心不全を生じる病態発症機構も説明する。

  • 永森 收志
    2020 年 Annual58 巻 Abstract 号 p. 201
    発行日: 2020年
    公開日: 2020/08/05
    ジャーナル フリー

    Membrane is one of the most important apparatus for living cells. Every single external matter, include mechanical stimuli, goes through the membrane. However, membrane proteins are generally tough targets to study although there is the strong demand for medicine. Here, I present one of the examples how to conduct basic and translational research of membrane transporters. Nutrient transporters play the role to allow selective permeation of nutrients. In cancer cells, nutrient transporters are constitutively upregulated to facilitate the uptake for robust cell growth. Among them, LAT1 (SLC7A5) is known as a cancer-specific amino acid transporter. LAT1 transports most of essential amino acids include leucine, a signal for cell growth via mTORC1. Thus, LAT1 has been considered as an attractive target for cancer diagnose and treatment. By using multi-disciplinary approaches from biochemistry, pharmacology and proteomics, we have been studying LAT1 and developed several of small compounds for cancer imaging or anti-cancer.

  • 倉橋 伸幸, Makiko Ban
    2020 年 Annual58 巻 Abstract 号 p. 202
    発行日: 2020年
    公開日: 2020/08/05
    ジャーナル フリー

    Otsuka and Proteus Digital Health developed the first digital medicine "Abilify MyCite" that can measure medication adherence. It embeds a very small sensor developed by Proteus into an antipsychotic Abilify tablet marketed by Otsuka. When a patient swallows tablets, a chip emits a signal in the stomach and it is captured by a small patch which sticks to the patient's abdomen and this is recorded. The patch transmits adherence information to the patient's smartphone as well as capturing activity and rest from sensors on the patch. The transmitted information is captured on both the patient's phone as well as shared with healthcare professionals, caregivers and families with the patients' consent. Based on this information, healthcare professionals can measure the condition of the patient and assess the risk if there is a sign of recurrence such as poor adherence or abnormal sleep pattern, then take the appropriate intervention.

  • 高宮 真
    2020 年 Annual58 巻 Abstract 号 p. 203
    発行日: 2020年
    公開日: 2020/08/05
    ジャーナル フリー

    厚さ1umから10um程度のフィルム上に形成された超薄型で皮膚密着型の多種多様なフレキシブルヘルスケアデバイスが提案されている。これらの超薄型のデバイスに既存の電池を有線接続で取り付けると、皮膚に常時貼り付けても装着の不快感が少ないという超薄型デバイスの本来のメリットが損なわれてしまう。そこで、超薄型デバイスに対するエネルギー供給の課題を解決するために、有機エレクトロニクスを用いたフレキシブルヘルスケアデバイスに対して無線給電とエネルギーハーベスティングを適用した研究例を紹介する。具体的には、無線給電で動作するおむつ用ワイヤレス尿漏れ検出センサシート、振動発電で動作する踏んで発電する靴の中敷き型万歩計、フレキシブル太陽電池で動作する音で発熱を知らせる腕章型発熱アラームなどの開発事例を紹介する。

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