生体医工学
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Annual58 巻, Abstract 号
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  • 太田 裕貴
    2020 年 Annual58 巻 Abstract 号 p. 204
    発行日: 2020年
    公開日: 2020/08/05
    ジャーナル フリー

    本研究では、3次元プリンティングをもとにした医療用スマートデバイスを報告する。近年、目覚ましい発展を遂げているウェアラブルエレクトロニクスに3次元プリンティングをもとにした加工を応用することで、患者の様々なバイタルサインを検出しかつスマートフォンを通じてモニタ可能なスマートデバイスを開発した。本発表では、[1]3次元プリンティングを利用したスマートデバイスの開発方法、[2]リアルタイムで対象の深部体温を計測できるスマートデバイス、[3]新生児黄疸とバイタルを額から検出できるスマートデバイスの3点に関して報告する。本研究では3次元プリンティングにより、患者それぞれの身体情報に対応したデバイスの形状を作成し、その中にソリッドステートの固体電子素子、センサを包埋することによってスマートデバイスを開発した。以上の加工方法の実用例として、鼓膜温から経時的に深部体温を計測できるウェアラブルデバイス及び新生児の額から新生児黄疸とSpO2(血中酸素飽和度)、脈拍をリアルタイムに計測できるウェアラブルスマートデバイスを実現した。本研究は、次世代のウェアラブルスマートデバイスの研究・開発手法を提案するものである。

  • 岡田 正弘
    2020 年 Annual58 巻 Abstract 号 p. 205
    発行日: 2020年
    公開日: 2020/08/05
    ジャーナル フリー

    金属系バイオマテリアルは、高分子系あるいはセラミックス系バイオマテリアルと比べて機械的特性や耐久性に優れる。このため、金属系バイオマテリアルは人工骨や歯科用インプラントなどの硬組織代替材料として使用されており、その表面処理による「硬組織」との結合性付与に関して数多くの知見がある。一方、金属系バイオマテリアルの「軟組織」との接着性はこれまでに検討されていない。しかし、ペースメーカやステントなどの金属系バイオマテリアルを用いた医療機器やマイクロチップなどのインプランタブルデバイスは、皮下や血管などの軟組織に固定させた状態で使用されるものであり、これらの用途には軟組織との接着性が求められる。

    我々は最近、金属系バイオマテリアルのなかでも生体適合性に優れたチタンを表面処理することで、接着剤を用いることなく瞬時に軟組織とチタンが接着することを見出した。このような軟組織接着性を付与したチタンをインプランタブルデバイスに適用することで、デバイスを目的部位から移動することなく確実に体内留置することが可能となる。本発表では、チタンの表面処理条件と軟組織接着強さの関係について検討し、その接着メカニズムについて報告する。

  • 藤枝 俊宣
    2020 年 Annual58 巻 Abstract 号 p. 206
    発行日: 2020年
    公開日: 2020/08/05
    ジャーナル フリー

    光線力学療法(PDT)は、光増感剤が集積した腫瘍に光を照射することにより発生する活性酸素を利用して、がんの細胞死を誘導する治療方法であり、病変選択的な治療法として臨床応用されている。最近では、従来型のレーザー光源と比べて、低強度・長時間の光照射が可能なPDT(メトロノミックPDT)が提唱されており、体内埋め込み型デバイスの開発が期待されている。一方、腫瘍と光源の位置が少しでもずれるとPDTによる治療効果が得られないため、生体内に長期間光源を固定する技術の開発が望まれている。この点において、柔らかい生体組織に対して、硬質な電子素子(例: LED)を固定するためには、生体と電子素子の界面における力学特性を制御する必要がある。本研究では、無線給電にて作動可能なLEDチップを、高分子ナノ薄膜(膜厚:約600 nm)にて被覆することで、生体内にシールのように貼付可能な埋め込み型発光デバイスを開発した。具体的には、ポリジメチルシロキサンからなるナノ薄膜に、生体模倣型の接着性高分子であるポリドーパミンを修飾することで、生体接着性を有するナノ薄膜を調製した。ナノ薄膜にて被覆された発光デバイスを担がんモデルマウスの皮下に埋め込み、光増感剤(フォトフリン)を投与後に10日間連続作動させたところ、従来型PDTの約1000分の1の光強度(<100 μW/cm2)で抗腫瘍効果を得ることに成功した。

  • 保坂 良資
    2020 年 Annual58 巻 Abstract 号 p. 207
    発行日: 2020年
    公開日: 2020/08/05
    ジャーナル フリー

    医療現場では、医用テレメ-タ、院内PHS、無線LAN、ICタグシステムなど、多くのワイヤレスシステムが利用されている。これらは、医療の高効率化に効果的である。中でもUHF帯パッシブRFIDは、現在普及しているHF帯RFIDよりも高いパフォ-マンスを有している。これを活用すれば、院内の人や小型ME機器、あるいはSPDと呼ばれる医用小物の管理などが簡単に実現できる。さらには、手術器械の多数個一括認証などでも効果的と言える。これらUHF帯パッシブRFIDのシステムは、医療スタッフの過誤縮小にも効果的であり、患者の安全性向上にも寄与できる。また認証メディアとして、ステルスバ-コ-ドも効果的と言える。これは不可視であるため改ざんが困難である。UHF帯パッシブRFIDなどと共に応用できれば、医療現場の個体認証と情報共有に有効である。

  • 海野 泰, 小笹 雅也, 大澤 達史, 松原 有里
    2020 年 Annual58 巻 Abstract 号 p. 208
    発行日: 2020年
    公開日: 2020/08/05
    ジャーナル フリー

    RFIDをネームリストバンドとして患者の手首に装着して放射線科領域で利用するに当たり、通常臨床検査の状況において問題の発生について実証実験を行った。

    方法:単純X線撮影、X線CT撮影、1.5TMRI、3.0T MRI、PET、10MevX線リニアックにおいて通常診療と同じ状況で、画像に対する障害陰影発生の有無、RFIDの破損の有無、RFIDによる発熱について検証を行った。使用したRFIDは、UHF920MHz帯、および、HF帯13.56MHz帯で、いずれもパッシブ方式であった。

    結果:単純X線撮影においてHF帯で障害陰影が出たが、UHF帯では視認できなかった。また、X線CT撮影、1.5TMRI、3.0TMRI、でも障害陰影を生ぜず、MRIにおいて60°C以上の発熱を生じなかった。PET、10MevX線リニアックを含めて、タグの破損、読み取りエラーは起きなかった。

  • 笠松 眞吾, 石本 洋子, 小久保 安朗
    2020 年 Annual58 巻 Abstract 号 p. 209
    発行日: 2020年
    公開日: 2020/08/05
    ジャーナル フリー

    【背景】福井大学医学部附属病院では、2014年に総合滅菌管理システムを導入した。先行事例では、手術の信頼性向上によるメリットよりも導入費用の増大および現場作業の増加によるデメリットが多かった。病院経営にとって重要な課題である費用対効果に寄与しないため導入が進まなかった。

    【目的】手術を効率化するには、総合的な手術マネジメントシステムの構築と早期導入が望まれる。本システムは、ICTを活用し品質保証体制の確立と手術前後作業のムダ、ムリを削減し効率化を進める。

    【方法】手術用器具に微細な2次元コード刻印(UDI)を行い、開発した読み取り装置(DPMR)にて個体識別を行う。洗浄・滅菌装置、垂直回転棚および生物学的インジケータは、Wi-Fiを使用し、手術カートは、アクティブタグを使用しリアルタイム位置情報を利用した。

    【結果】滅菌コンテナ・セットの組立時間は、システム導入前と比較して平均1/3以下に減少した。年間のセット組ミスは、導入前2013年15件が2017年は1件になった。労務費は年間約3000万円のコストダウンを達成した。

    【考按】手術準備カートの位置情報をリアルタイムに収集することで適切な手術室への搬入確認や、急な手術室の変更にも対応が可能になった。導入後5年間で本システムに対する投資回収率は、ほぼ100%となりIoTとGS1を活用した総合滅菌管理システムは、医療の安全に成果を上げた。

  • 脇坂 仁
    2020 年 Annual58 巻 Abstract 号 p. 210
    発行日: 2020年
    公開日: 2020/08/05
    ジャーナル フリー

    現在の患者情報を中心として構成されている電子カルテにも、かなり詳細なアクセスログが残されている。このログを取り出すことにより、端末ごとに時系列で何が行われたのかを分析することが可能となる。端末の利用状況から業務の時間による集中度や利用率を求めることにより、端末配置の最適化を行うための根拠を得ることができる。実際に新規設立部門用の端末を利用率が低いことを可視化した資料により移動元となった現場の理解を比較的スムースに得ることができた。これにしたがって合理性に基づいた速やかな端末再配置が実現できる。また利用者に注目して時系列解析を行うことで、時間的な業務集中による過大な負荷の検出ができる。さらに勤務帯ごとの重ね合わせで時系列処理を行えば個人ごとの業務パターンの特性を観察し、利用者間で比較することにより、より負荷の高くなリやすい者を推測できると期待される。アクセスログ中の利用内容を元に業務を類別したり、さらに各種オーダー情報や記載内容や記載量を組み合わせれば特定の業務パフォーマンスに焦点を当てた解析も想定される。しかしながらパフォーマンスの個人間比較は人事評価に流用されやすいことに注意を払うべきであり、得られた数値インデックスが実際の評価にそぐわないものである可能性を念頭に置かねばならない。まずは全体としての業務負荷軽減を目指すための指標として利用されるべきである。

  • 中田 悠太, 近藤 温子, 梅田 みちる
    2020 年 Annual58 巻 Abstract 号 p. 211
    発行日: 2020年
    公開日: 2020/08/05
    ジャーナル フリー

    【はじめに】医療情報技術の発展によって、医療施設の内外を問わず多数の情報がやり取りされる時代となった。電子カルテシステムの普及により、我々が扱うデータの範囲が変化する一方で、医療職種全般が「ビッグデータ」に意識が向きつつある。当院では2017年より全国で初となる「部署事務長制度」を導入し、診療部、看護部、診療技術部をはじめ、救急センターや人材開発センター等の主要部門に事務長を配置することで医療スタッフの業務効率化とデータ活用を促進させた。看護部事務長として「業務効率化」「看護技術向上」「人材確保と安定化」を中心に、一般的な病院事務長の業務全般を部門内で解決できるよう制度が終わる2019年10月まで取り組んだ。

    【スマートフォンデバイスの導入】働き方改革という言葉が登場し、以前に増して残業時間の短縮が求められるようになった。看護師の残業時間の要因の一つに「記録業務」があり、問題を調査した後に2019年4月よりスマートフォンデバイスを導入した。今回の演題では導入後1年を経過しての振り返りを行い、導入前に期待していた効果と現状の差を示すとともに、新たな課題に対する対応策の模索を行いたい。また、看護部において事務の管理者として感じた、スマートフォンデバイス以外のワイヤレス機器への期待について考察したい。

  • 星 善光
    2020 年 Annual58 巻 Abstract 号 p. 212
    発行日: 2020年
    公開日: 2020/08/05
    ジャーナル フリー

     病棟では様々な重要情報が通信されている.ナースコールシステムは多くの病院に導入されており,患者からの呼出以外にも患者に関する情報の伝達手段として利用されている.様々な情報が統合されることで病棟内の情報を集約することができる.ナースコールシステムを実現するために,病棟内には有線及び無線の通信ネットワークを構築されている.特に無線通信システムはスマートホンや無線通信機器の普及に伴い病院内での導入も進んでいる.通信システムの高機能化は患者の生体情報を詳細に把握することにつながる.うまく活用することで看護師や医師の業務効率化に有用な情報が得られる可能性もある.一方,情報量の増加は看護師や医師の負担増につながる可能性もあり,伝達する情報については十分な検討が必要である.特に警報は患者の安全確保に重要であり,他の情報と区別されねばならない.時間的な制約のため複数の警報へ同時に対処できない場合,遅れにつながる可能性がある.呼出方法や情報伝達方法については今後も改善が望まれる.本報告では,情報伝達システムとその一部である警報についてのこれからと問題点を述べる.

  • 瀬戸 僚馬, 保坂 良資
    2020 年 Annual58 巻 Abstract 号 p. 213
    発行日: 2020年
    公開日: 2020/08/05
    ジャーナル フリー

    日本医療情報学会看護部会病棟デバイスWGは、日本生体医工学会ユビキタス情報メディアと医療システム研究会との緊密な連携のもと、病棟で用いられる生体デバイス及び可搬型情報機器のセンシング技術や通信技術を用いて、看護師や協働する多職種との間で病棟業務をどのように革新していくか、また、情報デバイスを用いた記録などのように記録等の形で蓄積していくか、議論を深めてきた。その議論を踏まえて、今般、提言をまとめた。ナースコールや警報に呼応して起動させるカメラなど患者安全上の期待が多数で、プライバシー上の懸念が少数のものもあり、今後の普及が期待される。他方では看護師に対する位置検知など懸念が多数の技術もあるので、これらの導入の際には慎重な検討が必要である。また、看護管理者からは情報量が既に過多であり、こうした技術が情報量を更に増やしてしまうことへの懸念も寄せられた。これらの課題を丁寧に議論しつつ、適切な形で技術を実装していくことを期待する。

  • 佐藤 文規, 瀬原 淳子
    2020 年 Annual58 巻 Abstract 号 p. 214
    発行日: 2020年
    公開日: 2020/08/05
    ジャーナル フリー

    骨格筋の発達や維持に、筋収縮に対する負荷応答が大切であることは、多くの研究によって示されてきた。それに対し、重力に対する応答のメカニズムについてはほとんど解明されていないのが現状である。そもそも重力負荷応答というのは存在するのか?その分子実体は何か?そして重力負荷応答の欠如によると考えられている宇宙滞在による筋萎縮は、可塑的な廃用性筋萎縮や、現在はその進行を食い止めることが難しい加齢に伴う筋萎縮などとどのような共通性があり、また異なるのだろうか?

    重力依存性についての研究には、宇宙実験が必要である。しかし、これまでの脊椎動物を用いた多くの宇宙実験は、地上帰還後にサンプリングした試料の解析を行ってきたことから、国際宇宙ステーション(ISS)滞在中に何が起こっているのか、どのような経過を辿って萎縮し、また回復するのか、実はよくわかっていなかった。そこで、重力・無重力応答の分子メカニズムの解明を目的として、我々はゼブラフィシュを用いた研究を行った。小型魚類の特性を生かして軌道上での泳ぎの評価を行いその重力依存性について検討するとともに、ISS 滞在中・地上帰還後における骨格筋の遺伝子発現の、時系列変化を検討した。本研究では、そこで得られた新たな知見について紹介したい。

  • 東谷 篤志
    2020 年 Annual58 巻 Abstract 号 p. 215
    発行日: 2020年
    公開日: 2020/08/05
    ジャーナル フリー

    線虫の宇宙実験ならびに3D クリノスタットを用いた疑似微小重力実験において、再現良くドーパミンの代謝酵素遺伝子の発現が、1G 区と比較して低下することを見出してきた。本遺伝子はドーパミンを添加すると発現上昇することから、内生ドーパミン量に対して負の発現制御を受けることが強く示唆された。そこで、「宇宙微小重力環境下においてはドーパミンが低下する」という作業仮説を立案し、2018 年12 月に英国の研究チームとの共同研究Molecular Muscle Experiment において、宇宙フライト線虫の内生ドーパミン量の測定を行った。その結果、地上3D クリノスタット培養と同様に宇宙フライト群では、内生ドーパミン量の顕著な低下を認めることができた。すなわち宇宙の微小重力環境ならびに地上の疑似微小重力環境は、線虫の内生ドーパミン量を低下させることがわかった。ロシアのバイオサテライトBION-M1 による1 ヵ月のマウス宇宙飛行でも、骨や筋量の低下に加えて、大脳基底核の黒質線条体において、ドーパミン分解酵素遺伝子や生合成の律速酵素遺伝子チロシンヒドロキシラーゼ、ドーパミンD1 受容体遺伝子の発現の有意な低下が報告されており、微小重力環境は、生物の種を越えて神経伝達物質ドーパミンの代謝に影響を及ぼす可能性が強く示唆された。本発表では、その作用機序についても議論したい。

  • 小久保 利雄, 堀江 和正, 太田 玲央, 宮本 隆典, 北川 博之, 星野 和哉, 馬場 節, 柳原 康司, 樋江井 哲郎, 清水 徹, ...
    2020 年 Annual58 巻 Abstract 号 p. 216
    発行日: 2020年
    公開日: 2020/08/05
    ジャーナル フリー

    終夜睡眠ポリグラフ検査(PSG検査)は睡眠障害の診断のための睡眠検査の標準であるが、その適応はいくつかの問題によって制限されている。制限の一つは、検査入院や多数の電極/センサーの装着のために睡眠が妨げられてしまうことであり、高い費用やそのために長時間を費やさなくてはならないことも大きな問題である。そこで、我々は誰でも簡単に在宅で低コストで自然な睡眠を計測できるシステムを開発している。このシステムを開発するため、我々は二つの基盤技術、すなわちウェラブル脳波測定デバイスと脳波解析による睡眠ステージ判定のための人工知能プログラム、を開発している。ウェラブルデバイスの開発では、当初、電極一体型を検討したが、測定への影響や着け心地の観点から電極分離型のデバイスへ転換した。人口知能プログラムの開発では、まず、PSG検査結果から睡眠ステージ判定を行う解析モデルを深層学習により構築し、熟練の臨床検査技師による睡眠ステージ判定結果に対して非常に高い一致率(κ係数0.83)を示す解析プログラムの開発に成功した。現在、ウェラブルデバイスの測定結果から睡眠ステージ判定を行う人工知能プログラムを開発している。我々は、上記の二つの基盤技術や通信ネットワーク、データ/情報入力・出力インタフェースを統合するシステムも開発しており、家庭で誰でも簡単に睡眠を低コストで計測できるサービスの提供を目指している。

  • 黒田 知宏, 櫻井 理紗, 吉元 俊輔, 中村 英夫, 杉町 勝, 木村 裕一
    2020 年 Annual58 巻 Abstract 号 p. 217
    発行日: 2020年
    公開日: 2020/08/05
    ジャーナル フリー

    2018年4月に臨床研究法が施行された。同法は、同法が定義する「臨床研究」に該当する研究について、医師免許保有者に研究の実施を求める法であるため、医師免許を保有しない工学出身の者が多い生体工学研究者を研究活動から遠ざけてしまっている。日本生体医工学会では、生体医工学研究を活性化することを目的に、ある研究が法の定める臨床研究に該当するか否かを判断するためのガイドラインを2019年10月に発出した。ガイドラインは該当性判断機序の概要を示しているが、ガイドライン充実のためには電気刺激、運動支援などの各分野の研究者によって、詳細な判断機序を与えるための別表が作製される必要がある。

  • 吉元 俊輔
    2020 年 Annual58 巻 Abstract 号 p. 218
    発行日: 2020年
    公開日: 2020/08/05
    ジャーナル フリー

    医療機器開発に関する研究に対し医行為の該当性を判断する上で,身体の構造もしくは機能に影響を及ぼすかどうかを判断するための別表の策定が進められている.人体通電安全調査WGでは特に,電気インピーダンス法による体組成計測,経皮的電気刺激,機能的電気刺激などをはじめとした人体への通電により生体の計測や制御を行う研究に関わる別表策定を行ってきた.過度な人体通電による身体への影響には,皮膚損傷,神経損傷,機能障害,痛覚,心室細動などが挙げられる.当WGでは,その影響が生じない通電の範囲について,国際規格や国内の規約に定められた基準や論文を広く調査した.本発表では,当WGが調査・議論した人体通電に関する安全性や侵襲性の資料に基づき,別表策定のための方法論やその解釈を事例を交えて紹介する.

  • 中村 英夫, 内藤 尚, 戸田 英樹, 吉田 正樹
    2020 年 Annual58 巻 Abstract 号 p. 219
    発行日: 2020年
    公開日: 2020/08/05
    ジャーナル フリー

    2018年4月より臨床研究法が施行された.同法は罰則を伴っており,医療分野に限らずヒトを対象とした広範な研究分野にその影響が及んでいる.特に,治療,診断だけでなく予防にも罰則適用されることから注意を要する.研究者らが独自に臨床研究法にみずからの研究が適用されるかの判断をせまられる.そのような状況で研究者らの研究意欲が減退し,研究の質の低下が危惧されている.日本生体医工学会では臨床研究法WGを立ち上げ,ガイドラインの作成に取り組んでおり,各分野における別表作成作業を進めている.著者らは主に介護福祉,リハビリテーションでどのような問題が生じ,どのような方針で臨むかについて述べる.多くの方々の意見の聴取とご検討を期待する.

  • 宇都 甲一郎, 荏原 充宏
    2020 年 Annual58 巻 Abstract 号 p. 220
    発行日: 2020年
    公開日: 2020/08/05
    ジャーナル フリー

    細胞機能を司る要因として、生化学的、物理的、構造力学的シグナルなどが知られており、これらが時空間的に複雑に関わりあうことで生命システムが成り立っている。中でも、弾性やトポロジーなど細胞足場の物性が発生、組織の再生、病気の発症などの生命現象と密接に関係することが明らかにされつつある。しかしながら、従来検討されている基材(足場)材料の構造力学的特性は培養中一定、すなわち静的システムが採用されており、生体内における細胞・組織周囲の動的環境とは異なる。本発表では、この生体内と生体外のギャップを埋めるべく、形状記憶高分子を基軸とした新規動的培養基材材料の開発を行い、メカノバイオマテリアルとしての可能性について検討した。

  • 木戸秋 悟, 江端 宏之, 久保木 タッサニーヤー, 金城 美咲, 澤田 留美, 辻 ゆきえ, 田中 和紗, 河野 健, 草川 森士
    2020 年 Annual58 巻 Abstract 号 p. 221
    発行日: 2020年
    公開日: 2020/08/05
    ジャーナル フリー

    間葉系幹細胞(MSC)の細胞製剤としての治療有効性は、その幹細胞性の保持と強く関わる。一方、MSCの幹細胞性は培養力学場の強度と経験時間を履歴に影響を受け容易に変質するため、治療有効性の保証のためにはMSCの幹細胞性を保持する培養力学場設計が重要となる。この問題に対して我々はこれまでに、三角形の硬領域を軟ベースゲルに非一様に刻み込んだ基材上でMSCに非定住遊走させることで、力学場履歴の蓄積を回避し系統偏向をブロックする培養系の構築を試みてきた。この培養系には、MSCのDurotaxisによる硬領域への蓄積を回避するためReverse durotaxisを誘導する仕組みを導入するとともに、硬軟領域間を移動する際、YAP/TAZの細胞核―細胞質シャトリングを持続させる設計を施している。この系で培養されたMSCの網羅的遺伝子発現解析から、細胞の生存、増殖、運動に関わる遺伝子群の発現上昇が顕著となるとともに、Wntシグナルのコア因子の一つであるAPCの発現が最大となることが見出され、MSCの活力と幹細胞性を総じて高める効果が見られたことからこの培養をエクササイズ培養と名付けた。本講演ではこのエクササイズ効果が生成するメカニズムとして細胞核の力学的挙動の役割を議論し、エクササイズ培養されたMSCの幹細胞性について報告する。

  • 高田 弘弥, 若林 奈緒, 坂井 敦, 星 貴之, 鈴木 秀典, 小川 令
    2020 年 Annual58 巻 Abstract 号 p. 222
    発行日: 2020年
    公開日: 2020/08/05
    ジャーナル フリー

    最近になって、細胞の微小変形が創傷治癒を加速することがわかってきた。伸展、圧など様々な外的な力が細胞機能を活性化するメカノバイオロジー機構が働いていると考えられている。そこで、従来にない非接触で圧刺激を制御することができる空間集束超音波デバイスに着目し、応用を試みた。ヒト微小血管内皮細胞に対する圧刺激の感知・応答機構について、外界から細胞頂上面へ加えられた力が血管内皮細胞の増殖および管腔形成をどのように調節するかを検討した。その結果、細胞頂上面からの周期的圧刺激がアクチンの脱重合や高頻度Ca2+オシレーションの誘起が血管形成に関与している可能性が示唆された。次に、マウス創傷モデルを用いて創傷治癒過程における周期的圧刺激の役割の解析を行った。マウスの背部正中対称に左右に全層欠損創を作成し、右創に周期的圧刺激を与え、左創を対照とした。組織免疫染色により、周期的圧刺激がコラーゲン産生、上皮化に先立ち、CD31陽性血管新生を促し、創傷治癒を加速することがわかった。血管新生関連遺伝子がDLL1、Notch1の順に継時的及び一過性の発現量増加を示したことから、周期的圧刺激はDLL1を介した血管新生メカニズムに寄与すると考えられる。細胞の微小変形にともなう分子機構を血管再生医療に活用することを目的に、世界に先駆けた非接触型デバイスによるわが国発のメカノバイオロジー医療、すなわち、メカノセラピーの実践を目指している。

  • 川野 聡恭
    2020 年 Annual58 巻 Abstract 号 p. 223
    発行日: 2020年
    公開日: 2020/08/05
    ジャーナル フリー

    当研究グループでは,MEMS技術による完全埋め込み型人工聴覚上皮の研究開発に取り組んでいる.動物実験によるElectrically Evoked Auditory Brainstem Responseの実測に成功しており,臨床応用に向けてさらなる性能向上を目指している.共振特性,周波数弁別能および出力電圧の予測・設計技法の開発は,非常に重要であり,特に,リンパ液を模した液体中での性能評価法が確立されつつある.技術的障壁として,圧電薄膜材料の電気的出力向上,外有毛細胞を模した膜振動のフィードバック制御機構,そして,神経刺激用電極の開発が挙げられる.本研究では,これらの克服すべき問題点や将来展望について,生体医工学的な学術的視点から紹介する.

  • 新井 敏
    2020 年 Annual58 巻 Abstract 号 p. 224
    発行日: 2020年
    公開日: 2020/08/05
    ジャーナル フリー

    蒸気機関を想定した古典的な熱力学モデルで細胞を紐解いてみたい。細胞は、外部から化学エネルギーを獲得、これをアデノシン3リン酸(ATP)に変換し、必要な時・場所に応じて生物学的な「仕事」にATPを消費していく。一方、総エネルギーの7~8割は「熱」として放出、細胞空間の温度を補償していると言われる。細胞には、熱とATPのエネルギーフローが絶えず流れていて、このフローは、細胞の健康状態を表す重要なパラメータでもある。実際、エネルギー摂取量が消費量を超えれば肥満になるし、ATPが枯渇すれば、細胞機能への影響は深刻である。私達は、この独自の視点で、ATPと熱の2つの因子の時空間情報を1細胞レベルの解像度で捉える蛍光センサーを開発してきた。細胞内で起きる微小な温度変化やATPの濃度変化の情報を、蛍光強度・寿命といった蛍光シグナルに変換し、顕微鏡観察下、1細胞レベルでマッピングする技術である。例えば、細胞小器官の温度を計測できる小分子の蛍光温度センサーで、特に熱産生細胞と言われる細胞種の温度マッピングに成功してきた。ATPについては、赤・緑・青の3種類の輝度変化型の遺伝子コード型センサーの開発に成功しており、使用できる色(波長)が拡張したことで、ミトコンドリア(酸化的リン酸化)と細胞質(解糖系)のATP動態を同じ細胞内で解析することが可能になった。本発表では、一連の研究の最新の結果をご紹介したい。

  • Yamamoto Kimiko, Joji Ando
    2020 年 Annual58 巻 Abstract 号 p. 225
    発行日: 2020年
    公開日: 2020/08/05
    ジャーナル フリー

    Vascular endothelial cells (ECs) play critical roles in regulating a variety of vascular functions in response to hemodynamic forces, namely, shear stress and stretch. Endothelial plasma membranes have recently been shown to respond differently to shear stress and stretch, by changing their lipid order, membrane fluidity, and cholesterol content. Such changes in the membranes' physical properties trigger the activation of membrane receptors and cell responses specific to each type of force. Real-time imaging of mitochondrial ATP demonstrated the novel role of endothelial mitochondria as mechanosignaling organelles that are able to transduce shear stress into ATP generation, triggering ATP release and purinoceptor-mediated Ca2+ signaling within the cells. These results suggest the novel role of the mitochondria in transducing the shear stress into ATP generation.

  • 吉村 成弘
    2020 年 Annual58 巻 Abstract 号 p. 226
    発行日: 2020年
    公開日: 2020/08/05
    ジャーナル フリー

    細胞表層骨格は、細胞の形や運動を決定・制御する重要な動的構造であり、細胞分裂や組織・器官形成において重要な役割を果たしている。また表層骨格は、細胞膜と共に、化学刺激や機械刺激などの様々なシグナルを受容し、細胞内へ伝達するハブとしても機能しており、各種エンドサイトーシス経路への関与が、分子レベルで明らかにされている。我々はこれまでに、ライブセル観察に特化した高速原子間力顕微鏡を開発し、表層骨格の動的構造を生きた細胞で明らかにすると共に、共焦点蛍光顕微鏡とを組み合わせた新たな相関イメージング法を確立することで、エンドサイトーシス等の過程における膜変形とタンパク質局在との関係を明らかにしてきた。ここでは、外力による機械刺激が細胞表層骨格の動的構造に及ぼす影響、およびエンドサイトーシスなどの膜変形過程に及ぼす影響について解析したので報告する。PDMSチャンバを用いて、培養細胞に一軸の伸展刺激を与えると、エンドサイトーシスの開始のステップとΩ型への移行時に大きな遅れが見られた。これは、これらの過程が膜張力に依存することを示すものであり、細胞の張力維持機構における重要なメカニズムの1つであると考えられる。

  • 松本 健郎, 横田 秀夫, 杉田 修啓, 安東 頼子
    2020 年 Annual58 巻 Abstract 号 p. 227
    発行日: 2020年
    公開日: 2020/08/05
    ジャーナル フリー

    一般に動脈壁は高血圧で肥厚するが,その円周方向応力は血圧に依らずほぼ一定に保たれることが知られている.この現象は血管壁中膜の平滑筋細胞が自らに加わる力を察知して壁を作り変えているためと考えられているが,その詳細は不明である.このため,血管壁内の平滑筋細胞にどの様な力が加わっているのか明らかにすることが必要である.ところで血管壁の主な構成要素は平滑筋細胞,エラスチン,コラーゲンであるが,これらの要素のヤング率はそれぞれ,おおよそ10-100 kPa,600 kPa,1 GPaであり,その差は1万倍以上である.しかもこれらの要素は血管壁内で10μm程度の寸法で複雑に絡み合って存在しており,内部の応力分布は極めて複雑であると予想される.従って,壁内の個々の平滑筋細胞に作用する力を知るには,壁の実際の3次元微細構造を明らかにする必要がある.そこで我々は,凍結組織の連続薄切により得られる断面を逐次撮影して内部の3次元構造を明らかにする3次元内部構造顕微鏡を用いた計測,2光子顕微鏡観察を用いた正常組織表面付近の観察,透明化した血管による壁全層の観察などを通じて血管壁の3次元構造の詳細を明らかにしつつある.本講演ではこれらの方法を紹介し,実際得られたデータを紹介するとともに,それらの利害得失について論じる.

  • 日比野 浩, 太田 岳, 崔 森悦, 任 書晃
    2020 年 Annual58 巻 Abstract 号 p. 228
    発行日: 2020年
    公開日: 2020/08/05
    ジャーナル フリー

    外界からの音は、内耳蝸牛の感覚上皮帯にナノレベルの微小振動を誘引する。この組織は、刺激に応じて伸縮する外有毛細胞を含む。感覚上皮帯の振動振幅の感受性は、音入力が小さいほど増幅される。この非線形的な性質は外有毛細胞の動作に依存するが、その詳細なメカニズムは十分に明らかではない。そこで本研究では、生きたモルモットを用いて、複数の振動計測系を用いて高音に反応する部位の感覚上皮帯を解析した。最初に、独自の工夫を凝らしたレーザ干渉計により、刺激音が大きい時のみ、上皮帯のオフセット移動を振動と共に計測した。この動作は、外有毛細胞の直流的な収縮により誘引されていた。オフセットは、巨大音による感覚上皮帯の過剰な振動を抑制し、組織を障害から守る働きを担うと考えられた。第二に、市販の光干渉断層計を改良し、それを駆使して外有毛細胞の頂上部と基底部を可視化した。そして、微小音の際には、前者の振動が後者よりも大きいことを見出した。この特性は、上皮帯振動の増幅に貢献していると想定された。

  • 大宮 康宏, 高野 毅, 樋口 政和, 篠原 修二, 中村 光晃, 光吉 俊二, 徳野 慎一
    2020 年 Annual58 巻 Abstract 号 p. 229
    発行日: 2020年
    公開日: 2020/08/05
    ジャーナル フリー

    メンタルヘルス不調が社会問題となっており、その対策が求められている。音声を用いた分析は、非接触で特別な専用機器を必要とせず手軽にかつ遠隔的に行えるという利点がある。本研究では、我々の先行研究において開発した、音声から心の健康状態をモニタリングするアプリケーション「MIMOSYS」(Mind Monitoring System)の有効性を検討する。MIMOSYSは音声の特徴量から、録音時の心の健康状態の指標として「元気圧」と、長期的な心の健康状態の指標として「活量値」とを示す。その医学的妥当性を検証するため、東京大学によって2015年7月から約4年間にわたり社会実装研究が実施された。当初は通話解析によるMIMOSYS for Androidが、2018年4月からは7か国語に対応した読上げ発話および自由発話での解析(録音解析)も可能となったMIMOSYS ver.2 for Androidが、そして2019年1月末からは録音解析によるMIMOSYS ver.2 for iOSが公開された。MIMOSYS ver.2での収集データを解析した結果、他国語での分布が日本語と差がないこと、各OSによる解析結果と自記式心理測定テスト(ベックうつ病調査票:BDI)との比較おいて弱い相関が見られたことからOSに依らず心の健康状態のモニタリングが有効であること、および録音方式の違いによる影響についての解析によって読上げ発話では少し低めに結果が出ることが確認された。よって録音方式の違いを考慮した上でMIMOSYSを使用する事の有効性が示唆された。

  • 高野 毅, 篠原 修二, 光吉 俊二, 大宮 康宏, 樋口 政和, 中村 光晃, 斉藤 拓, 吉野 相英, 戸田 裕之, 徳野 慎一
    2020 年 Annual58 巻 Abstract 号 p. 230
    発行日: 2020年
    公開日: 2020/08/05
    ジャーナル フリー

    ストレス過多な現代において,メンタルヘルス不調の早期発見が課題となっている.これまで著者らは音声から人のメンタルヘルス状態を推定する技術MIMOSYS(Mind Monitoring System)を開発してきた.この技術には非侵襲であり手軽に行えるという利点がある.一方でMIMOSYSの短期指標である元気圧にはメンタルヘルス状態の推定の特異度が低いという性質があり,その改善のために14日間の元気圧の平均値と変動から計算される心の活量値という指標を開発した経緯がある.本研究ではMIMOSYSにベイズ統計学の考え方を組み合わせ,短期間の音声データからメンタルヘルス状態を推定できる可能性を検討した.防衛医科大学校病院において大うつ病性障害として診断された患者に対し,ハミルトンうつ病尺度(HAM-D)による重症度の確認と,定型文の読み上げという形で音声データ収集を行った.その後HAM-Dのスコアから被験者を軽症者と重症者に分類し,それぞれの音声から発話ごとの元気圧の尤度分布を求めた.発話ごとの尤度分布とベイズの定理を用いて被験者の発話ごとの元気圧から事後確率を計算することで重症者である確率を推定した.その結果,元気圧ではAUC 0.66だった軽症者と重症者の分離能力が0.89へと向上した.この結果から短期間の音声データからも高い精度でうつ病患者の軽症者と重症者を分離することができ,従来の指標よりメンタル不調者を早期発見できる可能性が示唆された.

  • 樋口 政和, 中村 光晃, 篠原 修二, 大宮 康宏, 高野 毅, 光吉 俊二, 徳野 慎一
    2020 年 Annual58 巻 Abstract 号 p. 231
    発行日: 2020年
    公開日: 2020/08/05
    ジャーナル フリー

    飽和潜水は大深度潜水での潜水効率向上のため、目的深度とほぼ同様の圧力の高圧居室を準備して行う潜水である。加減圧は十数日かけて行い、潜水士の体内では呼吸源である不活性ヘリウムガスが飽和状態となる。この間、外部からのアクセスが困難なため遠隔での体調管理が必要となる。我々は音声からストレス状態の変化を推定する研究を進めてきた。音声を用いた分析は,非侵襲でリモートに行える利点がある。

    本研究では、海上自衛隊の協力を得て飽和潜水訓練中の音声を取得し、我々の音声評価手法の高圧力下およびヘリウム吸引による影響を調査した。比較のため、一般被験者に対して1気圧下でのヘリウム吸引前後の音声も取得し分析を行った。

    自衛隊員の音声録音は訓練前後と訓練中に行い、訓練前後は1気圧下の通常音声、訓練中は加圧・減圧のタイミングでヘリウム音声を取得した。音声は定型句の読み上げ音声を用いた。訓練環境は雑音が多かったため、雑音を除去し分析を行った。

    その結果、訓練中は通常時よりも音声評価値が低い傾向であった。一般被験者に対してもヘリウム吸引後は同様な傾向を示したため、訓練中の音声評価値の減少はヘリウムによる可能性が示唆された。また、訓練中の深度差による変化も若干確認できたが、圧力差によるものなのか、精神状態の変化によるものなのか判断できず今後の課題である。

  • 山本 伊佐夫, 中川 貴美子, 大平 寛, 鎌倉 尚史, 山田 良広, 長谷川 巖
    2020 年 Annual58 巻 Abstract 号 p. 232
    発行日: 2020年
    公開日: 2020/08/05
    ジャーナル フリー

    舌喉頭偏位症(ADEL)いわゆる舌癒着症は、舌・喉頭の前上方への偏位により呼吸が抑制され、夜泣き、疳の虫などの症状を呈する。舌小帯およびオトガイ舌筋の一部を切除する舌喉頭矯正術(CGL)により、喉頭は直立し上気道の抵抗が減少するためADEL症状が改善する。

    本研究の目的は、育児困難な重度ADEL 児を早期発見し、CGL治療や育児支援等の対策を講じるための基礎技術を開発すべく、CGL前後のADEL患児の啼泣音声を解析し、その違いを明らかにすることである。

    向井診療所にCGLを希望し来院した乳児を対象に、CGL前後の啼泣音声を録音し、その音声ファイルからノイズの少ない啼泣音声を切り出した。尚、本研究は神奈川歯科大学研究倫理審査委員会の承認後、親権者の同意を得て行った。解析では、音響特徴量として、感性制御技術(Sensibility Technology:ST)を用いた5種類の感情指標、および音声分析ソフト「Praat」を用いた音質に関する4種類の特徴量を算出した。CGL施術前後で有効な啼泣音声が確認された69名それぞれの乳児ごとに手術前と手術後の各特徴量の平均値をt検定により比較検討した。

    結果、いくつかの特徴量に有意な差が認められた。本結果は、舌・喉頭の偏位によって啼泣音声が変化することを示している。今後、正常乳児との音声比較や、より細かな特徴量解析などを行うことによって、ADEL 簡易診断や手術効果の確認に役立つシステムの実現を目指す。

  • 岡崎 俊実
    2020 年 Annual58 巻 Abstract 号 p. 233
    発行日: 2020年
    公開日: 2020/08/05
    ジャーナル フリー

    1.目的近年,認知障害の疑いのある高齢ドライバーによる交通事故が問題となっている.認知症による認知機能低下と運転能力とを関連付けた、従来の方法によるスクリーニングには限界があると考えられる。我々は,人の発する音声から運転能力を推定する指標を開発した.音声を用いた推定は、特殊な専用装置を必要とせず,手軽に、日常的に、かつ遠隔的に行えるという利点がある.自動車応用では乗車の際や普段からの運転機能チェッカーとしての可能性を大いに期待できる。2.方法 運転資格を有する65歳から80歳の高齢者45名を被験者として、ドライビングシミュレータによる運転能力検査,定型文読み上げによる音声の収録を行った.多数の音声特徴量を説明変数として、5段階の運転能力検査値を教師信号として,機械学習にかけることにより、検査値の3を閾値とする二値判別器、および回帰モデルによる予測器を導出した.3.結果二値の判別器,回帰モデルによる予測器はともに良好な予測性能を有している。二値判別器では、AUC=0.85、テストで85%の予測精度であった。回帰モデルでは、R2=0.63 の相関の予測器が得られている。4.結論45名のデータの機械学習モデルにより、音声から運転能力を評価できる可能性は示唆された.今後はより多くの被験者から学習データを得て判別器/予測器の汎化性能の確認とその向上が必要である.

  • 金田 隆
    2020 年 Annual58 巻 Abstract 号 p. 234
    発行日: 2020年
    公開日: 2020/08/05
    ジャーナル フリー

    Paper-based analytical devices (PADs), consisting of flow channels surrounded by hydrophobic barriers, are promising in the realization of point-of-care testing outside equipped laboratories because of their portability, easy disposal, and simplicity in fabrication and operation. The conventional detection scheme is colorimetry where color intensity depending on the analyte concentration represents quantitative information. However, colorimetry needs a scanner or a controlled light source for the reproducible image capture, and a personal computer for image processing. Therefore, in addition to colorimetric detection, we have developed several types of PADs using the detection schemes without instrument which are based on zone-counting readout and distance-based readout. We have also explored ways to enhance the sensitivity and to stabilize the reagents deposited on a paper substrate. Here, we overview our achievements in the study of PADs [1].

    [1] T. Kaneta, W. Alhamad, P. Varanusupakul, Appl. Spectrosc. Rev., 54, 117-141 (2019). (DOI: 10.1080/05704928.2018.1457045)

  • Chen Cheng-Han
    2020 年 Annual58 巻 Abstract 号 p. 235
    発行日: 2020年
    公開日: 2020/08/05
    ジャーナル フリー

    Point of care testing, a rapid and easily accessible exam that provides a quick result to the patients, is an emerging technique in the medicare system. This technique facilitates better disease diagnosis, monitoring, and management. It enables more precise medical decisions, as the diseases can be diagnosed at a very early stage, leading to improved health outcomes for patients by allowing the immediate start of treatment. It also provides patients to monitor their disease control more efficiently. The finger sugar testing is an excellent example of these techniques. Diabetic patients can check their blood sugar at any time and anywhere and modify their anti-diabetic medication or insulin injection to avoid blood sugar over or under control. For the non-diabetic ones, or who are unaware of getting diabetes, they can check their fasting sugar at home and seek the doctor earlier if the rapid testing reported abnormal fasting sugar.

    Urinary tract infection (UTI) is a common disease. The prevalence in women over 65years of age is approximately 20% and nearly 11% in the overall population. Meanwhile, UTI accounted for the second most of the cause of sepsis during hospitalization. The gold-standard diagnosis of urinary tract infection is made by clinical symptoms and positive results of urine culture. Because of the variety of clinical manifestations of urinary tract infection and the time-consuming urinary culture, the diagnosis of urinary tract infection is rather difficult. The current urinary dipstick was not reliable with low sensitivity in the diagnosis of UTI. Although empirical broad-spectrum antibiotics are effective in treating UTI, these uncertainties in determination lead to the overuse of antibiotics in clinical practice. Drug resistance pathogens are result from the overuse of antibiotics. Therefore, the more accurate and rapid test for UTI is urgent.

    MTT+ Assay (3-(4,5-Dimethylthiazol-2-yl)- 2,5-diphenyltetrazolium bromid) is a colorimetric assay for assessing cell metabolic activity. In other words, the method could quantify the living cell of the sample. Our Lab had applied this exam on the sperm mobility examination previously. In previous bacterial in vitro experiments, we had found the colorimetric result might be correlated to the concentration of bacteria. As a result, we plan to conduct an MTT assay for the urinary bacteria examination in vivo. With the rapid result of MTT assay, it could improve our current bacteriuria screen. We also plan to develop a Point-of- Care Testing device with MTT assay to exam the bacteriuria more efficiently.

  • Chen Wei-Chun, Ting-Chang Chang, Chao-Min Cheng
    2020 年 Annual58 巻 Abstract 号 p. 236
    発行日: 2020年
    公開日: 2020/08/05
    ジャーナル フリー

    Purpose

    Endometriosis is one of most common gynecologic disease, and it can cause dysmenorrhea, infertility, and even malignant transformation that affect patient's life quality. The most common biomarker of endometriosis is serum CA-125 level. There were much increasing articles already presented that inflammatory factors including IL-1, IL-6, IL-8, and TNF-alpha as well as adhesion or angiogenesis factors involving ICAM-1, MMPs, TIMPs, and VEGF can be utilized. However, those studies usually spend much times with intervention approaches. Urine is the easiest collected specimen without invasion. Therefore, we want to developed quick test of endometriosis based on urine specimens.

    Methods

    In our present study, we also collected urine from patients of endometriosis to performed associate proteomics study to search a representative urinary biomarker as a non-invasive detection of endometriosis in our first step study. Then based on above results and our lab's previous experience, a paper-based quick examination test will be developed in our second step study. Besides, a further clinical trial to apply the paper-based test into patients with endometriosis will also be started in our third step study.

    Results

    In our first step of project, urine analysis started after collection of total 40 patients with clinical endometriosis including endometrioma or adenomyosis, and another 40 persons without endometriosis as controlled group. ELISA test with kit of CA-125, alpha1-antitrypsin (A1AT), Enolase-1, and vitamin D binding protein (VDBP) were used for collected urine specimen. Then much greater amount of alpha1- antitrypsin (A1AT), Enolase-1, and vitamin D binding protein (VDBP) can be detected in endometriosis group than controlled groups. The area under the curve was 0.815 (95% confidence interval 0.707 to 0.933) when evaluated with serum CA-125 combination.

    Conclusion

    Based on above results, further paper-based microfluidic quick test will be developed in our next step of project. Then further clinical trial will be started with this quick test in patients with endometriosis under different treatment status to validation of the clinical applications in the future.

  • Tsai Yao-Hung
    2020 年 Annual58 巻 Abstract 号 p. 237
    発行日: 2020年
    公開日: 2020/08/05
    ジャーナル フリー

    Wound healing is a complicated process that involves various factors. Depending on the recovery time, the wound can be divided into acute wounds and chronic wounds. Unlike the conventional wound morphology assessment, we tried to assess the wound in a molecular aspect. Recent researches have indicated that growth factors play an important role in the wound healing process. Many cytokines like vascular epithelial growth factor (VEGF) and epidermal growth factor (EGF) have been reported to take part in angiogenesis or endothelial proliferation during the process of wound healing. Recent wound dressings development often combines growth factors, like platelet-derived growth factor (PDGF), to enhance the healing process. Therefore, we tried to detect the amount of specific cytokines like VEGF or EGF at the wound sites in order to provide a clinical reference for further therapeutic strategies. For example, the amount of EGF in chronic wounds is expected to be relatively low, by sensing the increasing of EGF, doctors could decide to conduct surgical debridement or EGF treatment. In terms of the importance of growth factors in wound healing, we tried to develop a point-of-care method that can be applied in wound healing diagnostic. The method was based on paper material because it is rather cheap and easy to manufacture.

    The acute wound usually heals as it proceeds the normal process of wound healing. We targeted the biomarkers of angiogenin and VEGF, which have been reported to participate in the angiogenesis process of acute wounds. These protein biomarkers can be detected through immunoassay, and we transferred the assay into paper-based assay like paper-based ELISA or lateral flow immunoassay test strip. We had tried to use these methods to assess the burn depth of secondary burn wound through the detection of angiogenin. On the other hand, chronic wounds like diabetes ulcer foot are also big issues throughout the world. However, the recent diagnostic method is hard for point-of-care applications. In our study, we tried to define the amount of EGF in chronic wounds, and moreover, to develop a point-of-care diagnostic method for chronic wound care. EGF contributes to the proliferation of keratinocytes and plays a significant role in cell migration and differentiation. Therefore, EGF biomarker is an important factor that can even be used as treatments for chronic wounds. We tested the EGF concentration in chronic wounds with ELISA in microplates and developed a paper-based ELISA detection method of EGF for point-of-care application. We wish that our paper-based diagnostic method could offer a convenient way for wound care management and to improve wound healing

  • Kataoka Masatoshi
    2020 年 Annual58 巻 Abstract 号 p. 238
    発行日: 2020年
    公開日: 2020/08/05
    ジャーナル フリー

    Malaria is a mosquito-borne infectious disease caused by parasitic protozoans of the genus Plasmodium, and parasitizes on red blood cells (RBCs). It is one of the major infectious diseases, with an estimated 216 million clinical cases and 445, 000 deaths. The African Region continues to bear an estimated 90% of all malaria cases and deaths worldwide, and the infrastructure to address the disease is weak in endemic area. A highly sensitive and accurate malaria diagnostic system which can be used in the endemic area is necessary. A fluorescent blue-ray optical system with scan disc including a push column for the recovery of RBCs from whole blood was developed. A portable, battery-driven fluorescence image reader was employed to detect Plasmodium falciparum-infected RBCs (Pf-iRBCs) for 40 min. The ability of the developed system to detect low-density Pf-iRBCs and provide accurate quantitative evaluation with easy operation was demonstrated.

  • Flacher Vincent
    2020 年 Annual58 巻 Abstract 号 p. 239
    発行日: 2020年
    公開日: 2020/08/05
    ジャーナル フリー

    Pathogens, chemicals and autoimmunity trigger T cell-driven inflammation in the skin under control of Dendritic Cells (DCs). No in vitro human model recapitulates cutaneous immune responses, as they lack an epidermal barrier, necessary to investigate topically applied compounds, and fail to acknowledge the influence of non-immune cells on DCs and T cells. This prevents accurate pre-clinical evaluation of drugs, adjuvants or chemicals. Therefore, we created an Innervated and Vascularized immunocompetent Tissue-Engineered Skin Tissue-Engineered Skin (IV-iTES) combining all structural and functional elements of the healthy skin.

    The IV-iTES integrated human keratinocytes, fibroblasts, DCs, pseudo-capillaries and sensory nerves. Structure and cell-specific markers were thoroughly characterized. Sensory nerves could be activated in situ and subsequently released neuropeptides. When exposed to sensitizers (allergens) and control molecules, cytokines were released with a pattern that reflected the properties of the chemicals. The IViTES should allow in-depth investigations on cutaneous toxicity, angiogenesis and inflammation.

  • 竹内 文也
    2020 年 Annual58 巻 Abstract 号 p. 240
    発行日: 2020年
    公開日: 2020/08/05
    ジャーナル フリー

    本セッションは生体医工学会と臨床工学技士会、臨床工学技士養成校の連携に関するシンポジウムです。以下の3部構成です。

    (1)ME技術教育委員会企画

    (2)研究発表(臨床工学技士会連携WG後援)

    (3)総合討論

  • 林 国人
    2020 年 Annual58 巻 Abstract 号 p. 241
    発行日: 2020年
    公開日: 2020/08/05
    ジャーナル フリー

    私は1991年に臨床工学技士免許を取得し,兵庫県の病院に就職した.当時の主な業務は血液浄化であったが,阪神淡路大震災を契機に災害対策を含めた機器管理体制の構築が急務となった.現在は帰郷し,透析室の設立段階から関わった医院(19床の有床診療所)に勤務している.ここでは春季に数日間のプレ実習として学生(4年生)を受け入れ,命を繋ぐ現場を体感してもらっている.職場業務の他に,母校での人工呼吸器実習に参画(4ヶ月)させて頂いている.また,大学院へ進学し,2018年3月に修士課程を取得した.今回は,大学院での基礎研究から当院で行った臨床試験の内容と併せて,経験から学んだ日常業務と研究の進め方についても紹介できればと考えている.透析の治療効果をリアルタイムに評価できれば目標値の推測など様々な利点がある.そこで我々は尿素と次亜臭素酸を混合すると化学発光が生じることに着目し,透析液排液から尿素濃度を測定するセンサの作製を試みた.学内実験で試薬の次亜臭素酸ナトリウムと尿素窒素の最適な反応速度を導き出した.次に当院倫理委員会の承認を得た上で臨床試験を行った.結果,センサと従来法の測定値は相関係数0.96と良好であったが,センサを連続使用すると反応槽に炭酸塩が生じるなど不具合が発生じた.現在までに改良を重ね,治療条件下における要因が測定値にどのような影響を与えるか検討中であり,結果を含めて報告する.

  • 工藤 元嗣, 菅原 望希, 宮崎 拓人, 矢萩 遥子, 千原 伸也, 巽 博臣, 升田 好樹
    2020 年 Annual58 巻 Abstract 号 p. 242
    発行日: 2020年
    公開日: 2020/08/05
    ジャーナル フリー

    【背景】血液透析において動脈チャンバー流入部にバックフロー(BF)が発生した場合,実血流量の低下が先行研究により示されている.一方,流量誤差を与えるほどの陰圧が発生していれば,溶血の危険性が推測されるがBFと溶血の関連については検討されていない.

    【目的】本研究では,BFの大きさと溶血の関連性について検討するため人体を模擬した患者回路を開発してウシ血液による循環実験を行った.

    【方法】動脈側回路の圧閉度を調整し, BFが0,1,2,4cmとなるよう脱血不良状態を作製して血流量200mL/分にてウシ血液を循環した.0, 12, 24分経過時点での赤血球数を比較してBFと溶血との関連についてFriedman検定およびTurkey検定を用いて検討した.

    【結果】BF 0 cmでは赤血球数に経時変化はなかった.BF 1cmで0分,12分,24分での赤血球数がそれぞれ710万個/μL,596万個/μL,617万個/μLで,0分に対し,12分で有意に減少した. BF 2cm以上でも同様の傾向を示した.一方,12分と24分で赤血球数が変化しなかった.

    【結語】動脈チャンバー流入部に目視で確認可能なBFを生じている場合,溶血を起こす可能性があり,何らかの適切な対処を考慮する必要がある.

  • 青木 郁香, 本田 大輔, 菊地 眞
    2020 年 Annual58 巻 Abstract 号 p. 243
    発行日: 2020年
    公開日: 2020/08/05
    ジャーナル フリー

    【緒言】平成19年の改正医療法施行により、医療機関における医療機器に係る安全確保のための体制の確保が義務付けられた。本研究の目的は、現場に資する医療機器の研修および保守点検の指針を取りまとめることである。 ※厚生労働行政推進調査事業において2018~2020年度の3年間で実施予定

    【対象と方法】対象は医療法における特定機器とした。作成方法は、既存の研修および保守点検に関連するガイドラインや代表的な製品の取扱説明書他の記載内容を分析した。これらから指針に記載すべき事項を抽出し、必要に応じて関係学会などのレビューを経て指針を完成する。なお、検討メンバーは医用工学などに精通する研究者、医師、臨床工学技士や診療放射線技師などの医療従事者、医療機器企業団体、病院団体などの複数の専門家で構成する。

    【結果】研修については医療事故事例の分析により安全性に関する事項を中心に抽出した。保守点検については既存の保守点検ガイドライン等の記載事項について、点検の内容や手順、実施頻度などの観点から分析し、主に日常点検の事項について抽出した。

    【まとめ】医療機器の研修・保守点検の標準化により、医療機器の適正かつ安全な使用を推進することが必要である。ただし、指針は医療現場の実態を踏まえたものでなければ混乱を来す。現場に実装可能な指針を作成することを念頭に研究を継続する。

  • Liu Shuang, Akihiro Kuwahata, Masaki Sekino
    2020 年 Annual58 巻 Abstract 号 p. 244
    発行日: 2020年
    公開日: 2020/08/05
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    Transcranial magnetic stimulation (TMS) has been widely used for research and clinical applications of neurological disorders. Existing methods for designing TMS coils are either based on researchers experience or based on optimize the combination of basis functions in specific surface like plane and sphere, which cannot be used when consider the curve of head. We want to develop a numerical method capable of optimizing TMS coils shape on arbitrary surfaces. In this work, We first derive the relationship between the induced electric field and the stream function analytically. Then we solve the stream function directly from the target electric field by Tikhonov regularization. Finally, the corresponding coil shape can be obtained by drawing the contour lines of the stream function. The result of coil shape is similar to fig-8 coil on the flat plane, which illustrates the effectiveness of our method.

  • 松尾 俊彦, 内田 哲也
    2020 年 Annual58 巻 Abstract 号 p. 245
    発行日: 2020年
    公開日: 2020/08/05
    ジャーナル フリー

    岡山大学方式人工網膜(OUReP)はポリエチレン薄膜表面に光電変換色素分子を結合した世界初の新方式「色素結合薄膜型」人工網膜である。生物学的安全性評価で毒性はない。岡山大インキュベータのクリーンルーム製造設備で品質管理体制(QMS)下、治験機器を製造している。有効性非臨床試験としては、黄斑変性サル眼に人工網膜を植込み視覚誘発電位の振幅が回復することを示した。さらに網膜変性(rd1)マウスから摘出した変性網膜で人工網膜が活動電位スパイクを誘発するかを検証している。6-8週齢rd1マウス眼球から網膜を摘出し、人工脳脊髄液中で多電極シャーレ(アルファメッド社)中に視細胞側を上に向け神経節細胞側を電極側に向けて静置し、多電極シャーレ底面から、即ち、網膜の神経節細胞側からLED光を照射した。変性網膜のみに光を照射しても活動電位は記録されないことを先ず確認した。次に、対照薄膜として光電変換色素を未結合のポリエチレン薄膜を変性網膜に乗せて光を照射しても活動電位は記録されなかった。続いて、対照薄膜を取り除き替わりに人工網膜を変性網膜に乗せて光を照射すると活動電位が記録された。活動電位は光照射がない場合は記録されず、光照射に応答して生じた。摘出変性網膜を使った非臨床試験でOURePの有効性がさらに確認できた。

  • 沖永 友輝, 山本 隆彦, 越地 耕二
    2020 年 Annual58 巻 Abstract 号 p. 246
    発行日: 2020年
    公開日: 2020/08/05
    ジャーナル フリー

    完全体内埋込型人工心臓へのエネルギー伝送方法として経皮エネルギー伝送システムの研究が行われているが、体内側回路の交流電力を直流電力に変換する整流回路において一般的なダイオードブリッジ整流回路を用いると整流ダイオードの発熱が問題となる。本研究ではダイオードブリッジのLow-Side部にパワーMOS-FETを付与するハーフアクティブ整流器による整流を行うことで、整流後の電圧を一定に保ち安定した電力供給を行うことにくわえ、ダイオードの発熱を従来のダイオードブリッジ回路と比べて低減することとの両立を実現したのでシミュレーションと実測の2点から報告する。

  • 牧野 雄一, 山本 聡, 清水 太一, 小野木 真哉, 桝田 晃司
    2020 年 Annual58 巻 Abstract 号 p. 247
    発行日: 2020年
    公開日: 2020/08/05
    ジャーナル フリー

     我々はこれまで音響放射力による微小物体の生体内制御のために必要な超音波照射位置精度を実現するロボットシステムを開発してきた.しかしロボットの位置と姿勢を把握するためのトラッカーに検出不能なものが存在する場合、著しく位置決め精度が低下してしまう問題があった。本研究では,超音波照射位置精度維持のための位置・姿勢校正制御の開発とパラレルリンクロボットでの応用を目的とする. パラレルリンクロボットの3本のアームと,それらの先端に接続された超音波トランスデューサ把持機構の4か所にトラッカーを設置し,光学式3次元計測センサによって計測することでロボットの位置と姿勢を把握する.また,把持機構に設置された慣性センサにより計測した加速度と角速度から算出される姿勢の値をカルマンフィルタに適応させることで,ロボットの姿勢を推定する.以上で得た位置・姿勢をロボットの位置決め指令値と随時比較し,その誤差を軽減する位置・姿勢校正制御を行う. ロボットに位置・姿勢校正制御を適応させてピボット運動させ,検証実験を行った.その結果,光学式3次元計測センサによって検出不能なトラッカーが存在するタイミングにおいてもロボットの位置と姿勢を把握し,トラッカーがすべて検出される場合と同等の精度での位置・姿勢決めを実現した.以上より,超音波照射位置精度が維持される条件が拡張され,本システムの有用性が示された.

  • 和田 直大, 鈴木 孝司, 千葉 慎二, 鷲尾 利克, 辛川 領, 矢野 智之, 荒船 龍彦
    2020 年 Annual58 巻 Abstract 号 p. 248
    発行日: 2020年
    公開日: 2020/08/05
    ジャーナル フリー

    近年,日本では生活習慣病患者の増加によって抹消動脈疾患(PAD)が増加している.重篤なPADの場合,一般的に壊死部分の切除といった外科的治療が行われるが,治療後の患者のQOL確保において温存部位と切除部位の正確な把握は大変重要である.経皮的酸素分圧(TcpO2)計測は,既存のPAD治療において臨床で多く用いられている測定手法である.末梢動脈疾患の診断や切断部位の決定,術後の効果判断に用いられ有用性が確立された手法であるが,切除部位の正確な把握のために繰り返し多点計測を行う必要があること,計測装置が十分に配備されえていないことが課題として挙げられていた.我々は既報にて可視光カメラと画像処理を組み合わせ,足趾の背と底の血流動態を可視化するシステムを構築した.しかしその後実施したPAD患者を対象にした本システムの基礎的検討において,駆血解除時の足趾の動きが大きく,画像処理に影響を与えることが明らかとなった.そこで本研究の目的は,足趾固定具に加え,ソフトウエアによる非剛体レジストレーションを用い,駆血解除時に生じるモーションアーチファクトを除去した血流動態可視化システムの開発とする.開発した本システムを用い,健常者を被験者とした評価実験を行い,駆血解除に伴う画像上のアーチファクト低減が出来たので報告する.

  • 山本 裕和, 水戸部 一孝
    2020 年 Annual58 巻 Abstract 号 p. 249
    発行日: 2020年
    公開日: 2020/08/05
    ジャーナル フリー

    近年,癌治療法の中で副作用の少ない温熱療法(ハイパーサーミア)が再注目されている.本研究では,感温磁性体を患部に埋め込み,体外から高周波磁場を印加することにより患部のみを局所的に誘導加熱するソフトヒーティング法を採用している.我々は,感温磁性体の温度依存による磁気特性を利用することにより,周囲の磁場の変化を体外に設置するピックアップコイルに生じる誘導起電力の変化として計測することで,非侵襲的に患部の温度検知が可能な温熱治療システムを目指している.しかし,励磁コイルから感温磁性体までの距離が離れるに従って磁束密度が小さくなり,感温磁性体の温度依存に伴う磁束の変化が減少するため,磁束の歪みを高感度に検知可能なピックアップコイルが必要となる.そこで本研究では,励磁コイルおよびピックアップコイルを一体化することで磁束の歪みを高感度に検知可能な磁場印加検知ユニットの構築を目的とした.そこで,励磁コイルおよびピックアップコイルを一体化した検証用磁場印加検知ユニットを試作した.本報告では,ピックアップコイルを構成する2個のループの中心間距離が異なる3種類のピックアップコイルの設置位置を変更し物理実験により比較することで高感度に磁束の歪みを検知可能な最適値について検討した.

  • 遠藤 綾人, 山本 裕和, 加藤 裕太, 安藝 史崇, 水戸部 一孝
    2020 年 Annual58 巻 Abstract 号 p. 250
    発行日: 2020年
    公開日: 2020/08/05
    ジャーナル フリー

    近年,癌治療法の1つとして温熱治療(ハイパーサーミア)が注目されている.ハイパーサーミアは,手術療法に比べ低侵襲であり化学療法に比べて副作用が少ないため,癌患者への負担を低減できる利点がある.本研究では,感温磁性体を腫瘍部に注射し,体外から高周波磁場を印加して腫瘍部を誘導加熱することで局所加温するソフトヒーティング法を採用している.我々は,感温磁性体の温度依存の磁気特性による周囲の磁場の変化を,体外に設置したピックアップコイルに生じる誘導起電力として検知し,ワイヤレスで患部の温度を検知可能な温熱治療システムを開発している.過去の研究において,温度変化に伴う誘導起電力の値を閾値として利用したON/OFF制御による定温加熱システムが開発されている.しかしながら,高周波磁場を停止するOFF制御時には,感温磁性体の温度を検知できない課題が残っていた.そこで,本報告では,常に励磁コイルから磁場を印加する自動定温加熱システムのHigh/Low制御を実装し,2種類の感温磁性体を利用した物理実験により妥当性を評価した.

  • 加藤 裕太, 山本 裕和, 遠藤 綾人, 安藝 史崇, 水戸部 一孝
    2020 年 Annual58 巻 Abstract 号 p. 251
    発行日: 2020年
    公開日: 2020/08/05
    ジャーナル フリー

    近年,ハイパーサーミア(温熱療法)は副作用の少ないがん治療法として注目されている.本研究室では,患部に直径50~120μmの粒径の感温磁性体微粒子を1g程度注射し,体外から高周波磁場を印加して患部を局所的に誘導加熱するソフトヒーティング法について研究している.過去の研究において,治療温度前後の「感温磁性体の磁性の変化」を「体外に設置されたPickup coilに発生する誘導起電力の変化」として検知することで,温度情報を非侵襲的にモニタリングしながら加温治療できるシステムが報告されている.しかしながら,高周波磁場印加中の発熱過程における感温磁性粉体の温度分布は不明であった.そこで本研究は,任意の磁束密度および周波数における感温磁性粉体内部の昇温特性の違いを明らかにすること目的とした.そこで感温磁性粉体に複数の光ファイバー温度計を刺入し,昇温過程を計測することで感温磁性体の発熱分布を明らかにした.

  • 小林 勇太郎, 高野 潤也, 岡留 寛斉, 桝田 晃司
    2020 年 Annual58 巻 Abstract 号 p. 252
    発行日: 2020年
    公開日: 2020/08/05
    ジャーナル フリー

    我々は現在,音響放射力形成による極細カテーテルの誘導制御に関する研究を行っている。これまではカテーテルに対して2つの2Dアレイトランスデューサ(以下2Dアレイ)を線対称でかつ直交する配置条件で任意の方向への屈曲を行ってきた。しかしながら実際の医療現場においては体表面や血管の形状により2Dアレイを体表面上で配置できる条件は制限される。よって本研究では,2Dアレイのさまざまな配置条件に対するカテーテルの挙動を観測し、生体内の血管内にて誘導するために必要な音場の条件を導出することを目的とする。自由水中中にて方位角をつけてカテーテルに対して線対称,もしくは点対称に2Dアレイを配置し音響放射力形成を行い音軸垂直方向へのカテーテルの変位を測定した。音場の焦点位置を0.2 mm刻みで変化させ,その最大変位を測定した。方位角を30 degから150degまで設けて実験を行ったところ、点対称に配置した場合に比べ線対称に配置した方が大きな変位を得ることができた。本研究により、実験で得られた結果を比較し配置条件それぞれの優位性を確認した。

  • 木場 晏也, 大須賀 美恵子
    2020 年 Annual58 巻 Abstract 号 p. 253
    発行日: 2020年
    公開日: 2020/08/05
    ジャーナル フリー

    特定の対象に過度な不安を感じる不安症の認知行動療法に暴露療法がある.これには実際に体験させるin vivo暴露療法,image暴露療法, VR空間を利用するVR暴露療法がある.比較的弱い不安から始め慣れさせる方法では症状の再発が生じやすい,強い不安から始めると治療効果は上がるが,患者の治療に対する抵抗感が増す.そこで,不安レベルを推定し,これを適切なレベルに保つようにVR環境を制御するVR暴露療法システムを提案している.第一段階として,比較的低負担で計測できる心電図,呼吸,指の皮膚コンダクタンス(SC)から得られる指標を用いて不安レベルを推定する手法を検討した.文書による同意を得た8名の健常成人男性を対象とし,HMDを装着させてVR空間で模擬面接を行い,安静時,面接の質問終了時に不安度を10段階評定させた.評定直前の発話のない区間の生理指標の平均値を求め,安静時と面接時に有意な差を示した指標セットに主成分分析を施し,説明率が最も高い平均心拍,心拍変動LF,心拍変動呼吸性成分,呼吸重心周波数,SCレベル,SC反応のセットを選んだ.第一主成分は心拍上昇,心拍変動LF上昇,SCレベル上昇,SC反応上昇からなり,交感神経系賦活と解釈できる.この主成分得点で安静時と面接時を概ね区別でき,不安度の推定として利用できる可能性を示したが,主観評定値との相関は必ずしも高くなくその原因を検討した.

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