本研究の目的は,妊娠後期または産褥早期から出産後約2年間の女性の心理社会的側面について明らかにすることである.方法は縦断的質問紙調査である.本報は,出産後2年〜2年2ヵ月の心理社会的状態および育児,夫婦関係に関する調査結果の分析である.対象と方法:対象者は札幌市内と道内の産婦人科病院および総合病院の産科で出産し,継続調査に同意の得られた312名に記名自記式質問紙を郵送した.その結果,158名(回収率50.1%)から回答があり,有効回答数は142名(有効回答率89.9%)であった.調査期間は平成14年7月〜8月である.質問紙は,対象者の背景,サポート者の存在,心配事,育児に対する意識,夫婦関係の満足感,母親の心配尺度21項目(MCQ)(丸山知子,女性心身誌,2001)から構成した.さらに,精神的健康状態をみるためGeneral Health Questionnaire(以下GHQとする)の30項目版を用いた.結果:(1)夫婦関係について,満足42.3%,どちらともいえない48.6%,不満9.2%であった.(2)現在の生活に対する充実感は,満足49.3%,どちらともいえない47.2%,不満3.5%であった.(3)夫からつらいことをされる,時々・たまあに18.1%,全くない80.9%であった.(4)こどもに暴力的になる,時々・たまあに64.8%,全くない35.2%であった.(5)夫の援助について,非常に・普通53.4%,少し10.7%,援助なし35.9%であった.(6)夫婦関係の「満足」と「どちらでもない・不満足」の2群を比較すると,夫婦関係の満足群では経産婦が多く(p<0.05),また,生活の充実感も満足と答えた者が多かった(p<0.001).逆に不満足群では,夫の援助がない(p<0.05),夫からつらいことをされる(p<0.001)が多かった(p<0.001).(7)夫婦関係の満足感とMCQとGHQの得点は有意に関連した(p<0.001).結論:本調査の結果,育児の疲労感が持続していること,また,夫婦関係の満足感は,生活の充実感や心身の健康状態と関連し,その背景には夫の援助や夫の暴力的行為との関連も示唆された.
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