交通工学論文集
Online ISSN : 2187-2929
ISSN-L : 2187-2929
8 巻, 4 号
特集号
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特集号A(研究論文)
  • 橋本 成仁, 矢田 篤史, 海野 遥香, 萩原 祥行, 堀 裕典
    2022 年 8 巻 4 号 p. A_1-A_8
    発行日: 2022/04/01
    公開日: 2022/04/01
    ジャーナル フリー

    我が国における自転車関連事故のうち、毎年約 6 割は交差点周辺で発生しており、自転車利用者の法令違反による交差点での出会い頭事故も問題となっている。また、2012 年に発出された「安全で快適な自転車利用環境創出ガイドライン」において、道路空間と自転車利用実態の把握が自転車ネットワーク計画の策定に重要であるとされている。本研究では、自転車利用時の挙動を GPS データで記録し、止まれ標識のある交差点での行動と交差点部の道路要素との関係性について検証を行った。まず、止まれ標識のある交差点における一時停止率と徐行率を集計し実態把握を行った。加えて、一時停止遵守及び徐行遵守、交差点部の通過速度や交差点直前での減速率について多変量解析を行い、それぞれに影響を与えると考えられる要素を明らかにした。

  • 郭 雪松, 成田 健浩, 小林 寛
    2022 年 8 巻 4 号 p. A_9-A_15
    発行日: 2022/04/01
    公開日: 2022/04/01
    ジャーナル フリー

    国土交通省では、ETC2.0 プローブ情報から得られる急減速データ等を道路施策で活用する取組みを進めている。急減速データには,衝突を回避するための減速行動と非危険な減速行動の両方が含まれている。そのため、正確な交通安全施策を導くためには,真の潜在的な危険事象を対象にすることが肝要である.そこで本研究では、効率的且つ効果的に潜在的な危険箇所を抽出するために、ドライブレコーダより取得した加速度の波形に着目して、危険事象と非危険事象の発生特徴量を整理し、多変量解析(非階層クラスター分析、決定木分析)を用いて、危険事象を判定できる特徴量ないしは特徴量の組み合わせを検討し、さらに、今後の危険事象と非危険事象を正確に判定する指標(特徴量)を提案した

  • 頓部 真大, 浜岡 秀勝, 萩原 亨, 佐々木 伸, 髙木 一誠
    2022 年 8 巻 4 号 p. A_16-A_23
    発行日: 2022/04/01
    公開日: 2022/04/01
    ジャーナル フリー

    冬期の高速道路では、吹雪や積雪により道路線形の認知が困難である。そこで、線状反射光で外側線を示す帯状ガイドライトが開発された。しかし、既存の視線誘導標と帯状ガイドライトのドライバーに及ぼす影響の違いは明らかにされていない。そこで、ドライビングシミュレータを用いた走行実験を実施した。道路横断方向の走行位置を分析すると、帯状ガイドライトは視線誘導標と比較して、走行位置を適切に認識できることが明らかとなった。また、走行位置の安定性も向上し、視界不良に起因する速度低下を抑制した。加えて、アンケート調査の主観評価より、運転負担軽減や線形認知の向上が示され、運転しやすいことが分かった。また、運転しやすさへの影響を比較すると、帯状ガイドライトは視線誘導標よりも大きな影響を与えていることが明らかになった。

  • 松本 太朗, 吉城 秀治, 辰巳 浩, 堤 香代子, 権藤 梨奈
    2022 年 8 巻 4 号 p. A_24-A_33
    発行日: 2022/04/01
    公開日: 2022/04/01
    ジャーナル フリー

    片側 1 車線道路においてその幅員が十分に広くない場合では、車道走行する自転車を自動車が追い越す際に、中央線をはみ出してしまうことも多い。その結果、接近状況次第では対向車の回避挙動を誘発するなど、自転車の車道走行が、対向車線の自動車にまで影響を及ぼす可能性が指摘されている。そこで本研究では、自転車の追い越しに伴う自動車の中央線のはみ出し挙動の実態を明らかにするとともに、自転車の追い越し挙動が対向車線の自動車走行挙動に及ぼす影響について検討した。実走行空間における自転車実走調査から、自転車を追い越す自動車の中央線はみ出し幅等を明らかにしており、その結果を踏まえたドライビングシミュレータによる走行実験を行うことで、対向車線の自動車走行挙動への影響について明らかにしている。

  • 藤田 素弘, 林 大樹
    2022 年 8 巻 4 号 p. A_34-A_42
    発行日: 2022/04/01
    公開日: 2022/04/01
    ジャーナル フリー

    ピーク時間帯の交通渋滞対策のための時間帯別利用者均衡配分の精度を向上させるものとして、時間変動係数に基づく時間帯別OD交通量の逆推定手法が開発されてきている。本研究では、この手法における域外・域内ODの段階的推定での計算効率化等の課題について検討した。先行研究の3段階推定法に加えて、2段階推定法と同時推定法を検討して、推定精度等を比較した。逆推定の結果、同時推定法が全体として最も精度がよく、計算時間も1/3程度に大幅に削減可能とわかった。ただし、域外ODの逆推定においては、時間変動係数の過剰な上下変動がまだ残ることが分かったことから、域外ODペアだけの重み係数の補正値を掛けることを検討した。全体の推定精度では、補正値によって時間変動係数の過剰変動も抑えつつ精度もさらに良くなることがわかった

  • 浅野 周平, 大門 創
    2022 年 8 巻 4 号 p. A_43-A_50
    発行日: 2022/04/01
    公開日: 2022/04/01
    ジャーナル フリー

    本研究の目的は、移動しやすい環境を手に入れたいという動機以外の動機(以下、移動目的外保有動機)によって自動車を保有している人がどの程度存在するのかを把握するとともに、その特徴を明らかにすることである。分析の結果、以下が明らかとなった。第一に、移動目的外保有動機の重要度は、23.3%であった。第二に、移動目的外保有動機によって自動車を保有している層は、12.8%であり、趣味性を重視している層が7.9%、無意識に保有している層が4.9%であった。第三に、移動目的外保有動機に影響を与える要因は、「自動車に趣味性を持っている」では、子供がいない世帯の男性や専業主婦、「他者からの目が気になる」では、子供がいる世帯の専業主婦や世帯年収が低い人、「特に理由を考えず無意識に」では、一人暮らしの人や女性などであった。

  • 菅原 諭良斗, 佐々木 邦明, 小菅 英恵, 三上 杏奈
    2022 年 8 巻 4 号 p. A_51-A_60
    発行日: 2022/04/01
    公開日: 2022/04/01
    ジャーナル フリー

    我が国では高齢化に伴い,高齢運転者による死亡事故件数の割合が増加傾向にある.対策として運転免許自主返納制度が挙げられるが,非都市部では代替交通手段の乏しさから自動車を手放せない状況にあり返納率は低いところが多い.本研究では代替手段などの要因以外にも,地域ごとの土地利用状況や道路の利用状況・混雑状況など普段の運転環境の違いにより,高齢運転者の運転頻度や運転技能等が異なり,結果として事故の状況も異なるという想定のもと,高齢運転者の運転行動及び高齢運転者による事故と地域特性との関係に関する分析を行った.その結果,高齢運転者の不安全な運転行動についても地域ごとに有意な差が見られた.また土地利用や運転頻度などと事故発生に有意な関係が確認され,地域ごとの高齢運転者の事故対策への示唆が得られた.

  • 小松 香貴, 柳原 正実, 小根山 裕之
    2022 年 8 巻 4 号 p. A_61-A_69
    発行日: 2022/04/01
    公開日: 2022/04/01
    ジャーナル フリー

    本研究では,ドライビングシミュレータ(以下DS)を用いた模擬走行実験により,十字路よりも複雑な幾何構造の交差点における信号灯器位置の違いに対する車両挙動の比較分析を行い,適切な灯器位置検討のための知見を得た.結論として,複雑な交差点での追突のリスクのある条件下において信号切り替わり時の通過判断率がnearタイプはfarタイプよりも高く,停止位置の分析ではnearタイプの方がfarタイプよりも停止線より離れて停止するとともに,一部の複雑な交差点ではfarタイプに比べてnearタイプで停止線遵守率が向上していた.このように,nearタイプの方がfarタイプよりも安全性が向上していることを示唆する結果が得られ,複雑な交差点でより顕著であった.

  • 原尾 彰, 岩崎 真純, 大畑 長, 熊倉 大起, 後藤 秀典, 糸島 史浩, 邢 健
    2022 年 8 巻 4 号 p. A_70-A_76
    発行日: 2022/04/01
    公開日: 2022/04/01
    ジャーナル フリー

    多車線高速道路単路部区間において付加車線が設置される場合、登坂車線方式が一般的に採用されるが、試行を含めて他の設置形態も導入されている。付加車線区間では車線変更の挙動が交通運用上重要となるが、標識による車線変更行動の影響に関する研究は見当たらない。そこで本研究では、ビデオ撮影動画をもとに付加車線区間の車線変更挙動と標識の関係を分析した。そして、標識の案内効果を加味したミクロシミュレーションモデルを構築し、右付加左絞込み方式の付加車線区間における効果的な標識の配置検討を行った。その結果、右付加左絞込み方式において絞込み予告標識が一定のドライバー層に影響を与え、付加車線延長が 2km のケースにおいて付加車線始点及び終端部手前 1km の地点に設置することがそれぞれ円滑性及び安全性に効果的であることを確認した。

特集号B(実務論文)
  • 萩田 賢司
    2022 年 8 巻 4 号 p. B_1-B_9
    発行日: 2022/04/01
    公開日: 2022/04/01
    ジャーナル フリー

    交通事故統計では、縦断勾配が概ね 3%以上を坂路と定義している。本研究では、交通事故統計を活用して自転車走行道路の縦断勾配を推定し、自転車を電動アシスト自転車とその他の自転車に分類したうえで、様々な条件ごとに、自転車事故の縦断勾配別割合を比較した。その結果、電動アシスト自転車は、その他の自転車と比較すると、特に第 1 当事者で下りの構成割合が高く、下りで自転車事故を起こしやすいことが想定された。電動アシスト自転車は、第 1 当事者が若年者や男性、単路部や車道幅員が 5.5~13.0m の道路では、下りの構成割合が高い。下りでは電動アシスト自転車は高速で走行しやすいために、このような現象が起きていることも考えられる。自転車が第 2 当事者の場合、走行道路の縦断勾配を推定できないことが多く、今後の検討が必要である。

  • 塚田 伸也, 角野 康太郎, 森田 哲夫
    2022 年 8 巻 4 号 p. B_10-B_17
    発行日: 2022/04/01
    公開日: 2022/04/01
    ジャーナル フリー

    本研究は、地方都市圏における高校生を対象に通学の現状と交通に抱く具体的なイメージを把握するとともに、将来的な帰還意向と環境との関係性を把握することを目的とした。群馬県北部地域の 13 の高校を対象としたアンケート調査を用いて、テキストマイニングから交通のイメージを、将来への帰還意向を目的変数に設定したモデルを仮定して数量化理論第 II 類による分析を行った。分析の結果、「電車やバスの本数を増やして欲しい」「運賃が高い」「駅やバス停の近くにコンビニが欲しい」といった交通に対するイメージが明らかにされるとともに、数量化理論第 II 類による分析から,将来的な住みたいところの意向に高校卒業後に希望する進路と就業の環境、家族や親族の存在、商業施設や公共交通の利便性が大きく影響を与えていると考えた。

  • 奥城 洋, 吉岡 慶祐, 石黒 雄紀, 中根 武志, 松岡 寿章, 首藤 貴子, 張 馨, 中村 英樹, 阿部 義典, 神戸 信人, 下川 ...
    2022 年 8 巻 4 号 p. B_18-B_25
    発行日: 2022/04/01
    公開日: 2022/04/01
    ジャーナル フリー

    愛知県豊橋市牧野町における県道と市道の 4 枝無信号交差点は,総流入交通量が約 15,000 台/日と比較的多いが無信号で運用されている.そして,市道が鋭角の食い違い交差となっていることなど,交通安全上の課題を抱えている.その対策案として,瓢箪型ラウンドアバウトの導入が計画されているものの,国内では市街地における導入事例がなく,また,ラウンドアバウトマニュアルにおいても正円でないラウンドアバウトの幾何構造に関する設計の考え方などは記載がない状況である.そこで本研究では,実験フィールドに実物大の仮設ラウンドアバウトを設置し,実証実験を通して瓢箪型ラウンドアバウトの形状を検討した.本稿では,各種実験の概要と分析結果,および望ましいラウンドアバウト形状の検討結果について報告する.

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