交通工学論文集
Online ISSN : 2187-2929
ISSN-L : 2187-2929
6 巻, 2 号
特集号
選択された号の論文の48件中1~48を表示しています
特集号A(研究論文)
  • 長崎 滉大, 中西 航, 朝倉 康夫
    2020 年 6 巻 2 号 p. A_1-A_8
    発行日: 2020/02/01
    公開日: 2020/02/06
    ジャーナル フリー

    鉄道駅周辺の道路網は駅自体の利便性などの特徴に大きく関係することが予想できる.しかし,道路網の評価をする際,駅など特定の都市施設周辺に焦点を当て,各道路の実延長や偏角などから分析と類型化を行う研究はほとんど存在しない.そこで本研究では,角度データを扱う方向統計学を用いて駅周辺道路網を評価する新たな手法を構築した.まず,駅周辺の各道路の偏角に着目したグラフ(バラ図)を作成した.次に,偏角の確率分布(円周分布)のパラメータを推定し,道路網を評価する指標を考案した.この指標を用いて東急東横線の各駅を分類し,既存の指標との違いを示した.偏角の四方向への集中度を表現できるという提案手法の一定程度の有用性を示すとともに,今後の展望を整理した.

  • 近田 博之, 中村 英樹
    2020 年 6 巻 2 号 p. A_9-A_15
    発行日: 2020/02/01
    公開日: 2020/02/06
    ジャーナル フリー

    本研究では,交通流のサービスの質として,追従状態の程度などの機動性が利用者認識に関わる要素を明示していると捉え,それを表現し得る評価指標について検討した.追従状態の程度を表す評価指標には,追従車と非追従車の車頭時間成分からなる合成車頭時間分布曲線を推定することで得られるパラメータのひとつである,追従車構成率を採用した.幾何構造の異なる都市間高速道路上に設置された複数地点の車両感知器により検出されたパルスデータを用いて分析を行ったところ,追従車構成率は,車線,車線交通量,車種構成,車線運用によって影響を受けることが明らかとなった.また,小型車と大型車の挙動特性を反映し,追従車を実際の交通現象に即して確率的に捕捉することができ,非渋滞時における高速道路の交通流のサービスの質の評価に相応しい指標であることを示した.

  • 葛西 誠, 邢 健
    2020 年 6 巻 2 号 p. A_16-A_22
    発行日: 2020/02/01
    公開日: 2020/02/06
    ジャーナル フリー

    本研究では、交通量レベル差および路線差を考慮し、暫定2車線高速道路の地点速度を縦断勾配と暫定2車線区間始端部からの距離で説明する階層型の予測式を提案する。ETC2.0 プローブデータから算出された常磐道を含む4路線の地点速度データを用いてモデル中のパラメータを推定した結果、予測に用いた区間における地点速度の実測値と予測値との誤差 RMSE は、交通量レベルが 600-800pcu/h 以下の場合ではおよそ 6km/h 以下に収まっていることが確認される。また精度検証用区間における地点速度の実測値と予測値との誤差 RMSE も 600-800pcu/h では 6km/h 以下であることが確認される。さらに、推定されたパラメータ値を考察すると交通量レベルが高いほど地点速度は縦断勾配の影響を強く受けることなど、いくつかの傾向が明らかとなった。

  • 相馬 大, 兵藤 哲朗
    2020 年 6 巻 2 号 p. A_23-A_30
    発行日: 2020/02/01
    公開日: 2020/02/06
    ジャーナル フリー

    近年,貨物量の増加や,ドライバーの高齢化,若手の人材不足などから,トラックドライバーの人手不足が物流業界全体の問題となっている.これらの問題を改善するために導入されたのがダブル連結トラック(以下:21m 超車両)である.この 21m 超車両は,1 台でトラック単車の約 2 倍の物量を運べるため,深刻な人手不足が課題である物流業界では解決策の 1 つとして期待されている.その他にも,地球環境への配慮が可能な利点もある. 本研究では 21m 超車両の GPS データとドライバーの心拍データを取り扱う.GPS データで観測された高加速度を地図上にプロットし,観測された地点を調べ,ドライバーのストレスのかかり方との関係性について明らかにし,21m 超車両運行の安全性を確認し得た.

  • 飯田 克弘, 吉村 海斗, 蓮花 一己, 多田 昌裕, 高橋 秀喜, 山本 隆
    2020 年 6 巻 2 号 p. A_31-A_40
    発行日: 2020/02/01
    公開日: 2020/02/06
    ジャーナル フリー

    本研究では,潜在的な事故リスクの評価を目標として,運転者の不安と不安全な走行傾向との関連性の分析を行った.ドライビング・シミュレータによる室内走行実験から,車両挙動に関するデータを収集した.さらに,毎走行後のヒアリングから,不安度に関するデータを収集した.不安度の変動は個人差が大きいため,不安度を基に行ったクラスター分析(Ward 法)から,被験者を 3 グループに分類した.分類結果を参考に,異なる道路の条件間において不安度が大きく変化していた被験者に着目した.その結果,ジャークの分散や,車両中心位置の車線中心からのずれの標準偏差から,不安と不安全な走行傾向との関連性を確認した.さらに,最大加速度から,部分的ではあるものの,不安全な走行傾向が不安全な行動の要因となる傾向を確認した.

  • 野田 和秀, 大橋 幸子, 小林 寛
    2020 年 6 巻 2 号 p. A_41-A_47
    発行日: 2020/02/01
    公開日: 2020/02/06
    ジャーナル フリー

    生活道路における交通安全対策として物理的デバイスの設置が有効である。「凸部・狭窄部及び屈曲部の設置に関する技術基準」が策定され、速度抑制等に効果的なハンプの標準的な形状が示されたが、生活道路の道路構造や沿道環境は様々であり、それぞれの道路に対応できる様々な形状の工夫や設置方法に関する知見が必要である。そこで本研究では、交差点等への設置を想定した平坦部の長さを有するハンプでも速度抑制が図られるか把握することを主眼として、平坦部の長さが異なる複数のハンプにて通行実験を行い、平坦部の長さが異なるハンプのケース別の速度抑制効果、車両挙動の違いを確認した。また、ハンプ通行時のドライバー意識を把握するためのアンケートを実施し、高い速度の出しづらさ、運転のしづらさ、実際の道路に設置した際に期待できる効果を調査した

  • 飯田 克弘, 遠藤 貴樹, 多田 昌裕, 蓮花 一己, 山本 隆
    2020 年 6 巻 2 号 p. A_48-A_54
    発行日: 2020/02/01
    公開日: 2020/02/06
    ジャーナル フリー

    現在建設が進められている大深度地下高速道路のジャンクションは,短い区間に急勾配,急カーブ,トンネル内分合流が集中する特有の道路構造を持つ.先行研究では,ランプに標識が設置できないことなどに起因して,連続する分岐の下流側の情報が不足し,分岐部に注意対象が集中することで,運転者の負荷が増加し,そのことが,分岐部での急減速を誘発するとの示唆を得た.本研究では,この課題の対策として標識のみに依存しない案内誘導方法であるカラー連携標示に着目し,室内走行実験から得られた車両および運転者の挙動を分析することで,課題に対するカラー連携標示の対策効果を検証した.その結果,カラー連携標示が運転者の進路認知のタイミングを早めること,それにより分岐部での運転者の負荷が減少し,急減速の要因が解消されたことを確認した.

  • 柳原 正実, 平木 賢太, 小根山 裕之
    2020 年 6 巻 2 号 p. A_55-A_62
    発行日: 2020/02/01
    公開日: 2020/02/06
    ジャーナル フリー

    高速道路の勾配変化点での交通集中に起因する渋滞対策として,複数の LED パネルの点滅による速度コントロールを目的とした走光型視線誘導システムの導入が注目されており,実際に捌け交通量の増加や渋滞量の減少等が確認されている.しかし,走光型視線誘導システムに伴う先行車両に対する追従挙動の変化に関する知見や,それら追従挙動の変化が交通流全体に与える影響に関する研究は少ない.本研究では走光型視線誘導システムの導入による交通流全体への影響を,追従挙動を考慮した上で明らかにすることを目的として分析した.具体的には走光型視線誘導システムの設置の有無で追従挙動が異なると仮定し,実測データより追従モデルを作成後,ミクロ交通シミュレーション実験により走光型視線誘導システムの設置の有無による交通流の比較分析を行った.

  • 下田 康貴, 寺奥 淳, 田中 秀人, 森本 章倫
    2020 年 6 巻 2 号 p. A_63-A_70
    発行日: 2020/02/01
    公開日: 2020/02/06
    ジャーナル フリー

    多くの人々が集まる都市では、より一層の治安の改善や安全・安心な街づくりを実現していく必要がある。その中で、警視庁では活動の高度化・迅速化・効率化や事前予測による犯罪や交通事故の未然防止を構想している。エビデンスベースの政策実施においては、警察は予測の結果に基づいて街頭取締り活動の投入量を決定する必要がある。しかし、取締りや街頭活動による事故減少効果は定量化されていないため、警察官の裁量によって決定されているのが現状である。そこで、本研究では街頭取締り活動と道路環境要因の2 要素を考慮した重回帰分析によって、回帰的に事故リスクの予測をすることで、街頭取締り活動の事故減少効果の定量化を行った。その結果、街頭活動には事故リスクを一定程度減少させる効果があることが分かった。

  • 長谷川 裕修, 伊藤 菜, 田村 亨
    2020 年 6 巻 2 号 p. A_71-A_77
    発行日: 2020/02/01
    公開日: 2020/02/06
    ジャーナル フリー

    道路交通法第十条において,歩行者は歩道(等)のない道路では右側端を通行しなければならないと定められている.ただし,右側端の通行が危険であるときやその他やむを得ないときは道路の左側端に寄って通行することができる,という例外も定められており,実際には歩行者自身の判断に委ねられて いる.しかし,歩行者にとってどちらを歩くのが安全であるかは自明ではない. 以上の問題意識のもと,無信号かつ車両側に一時停止規制がなく,見通しが悪い生活道路の交差点周辺において,歩行者の通行位置と,歩行者側道路と交差する道路を直進する車両との接触危険性との関係をモデル化し,歩行者通行位置の定量的な安全性評価を試みた.秋田市飯島長野中町を対象としたケーススタディの結果,本研究で想定する条件下では左側歩行の方が安全であることが明らかとなった.

  • 松田 啓輔, 柳原 正実, 小根山 裕之
    2020 年 6 巻 2 号 p. A_78-A_86
    発行日: 2020/02/01
    公開日: 2020/02/06
    ジャーナル フリー

    交差点の安全性や効率性について、交差点構造や現示パターンに着目した研究はあるが、信号灯器の位置に着目した研究は少なく、灯器位置の違いによる運転挙動の違い等の知見も十分に得られていない。 そこで本研究では、信号灯器の位置に着目し、日本で主流の交差点の右手前・左奥(far)と、ドイツなどで主流の交差点の左手前(near)による、交差点性能の違いについて、ドライビングシミュレータを用いた実験により得られた運転挙動データを用いて評価した。交差点性能を評価するための指標として、安全性については、「通過判断率と追突可能性」及び「交錯点通過時間差」、円滑性については「交差点の交通容量」を用いた。その結果、far より near の方が、円滑性および安全性の両方で性能が高い可能性があることを示した

  • 可児 匠, 井料 美帆
    2020 年 6 巻 2 号 p. A_87-A_96
    発行日: 2020/02/01
    公開日: 2020/02/06
    ジャーナル フリー

    自動運転車 (AV) が歩行者に受容されるためには、AV 自体の歩行者回避性能の技術的向上のみならず、歩行者が相対する AV の性能を過信することなく行動できることが必要である。本研究では、AV が無信号横断歩道に接近する状況で、「AV がとりうる減速挙動」や「AV の回避性能の信頼性」の違いが歩行者の横断判断へ与える影響を明らかにすることを目的とする。バーチャルリアリティを用いて AV 接近時の歩行者横断実験を行い、歩行者の横断判断や横断開始時刻と、横断時の判断の迷い等の主観評価データを取得・分析した。時刻ごとの歩行者横断可否の選択モデルを構築した結果、横断歩道への車両の予想到着時刻に加えて、車両の回避性能に対する歩行者の信頼度や、歩行者自身が普段運転者として道を譲る頻度が横断判断に影響することが明らかとなった

  • 藪崎 琳太郎, 森重 裕貴, 森本 章倫
    2020 年 6 巻 2 号 p. A_97-A_104
    発行日: 2020/02/01
    公開日: 2020/02/06
    ジャーナル フリー

    この半世紀の間、我が国の自転車利用環境は大きな変化を経験してきた。今後、ライフスタイルの変化を踏まえた自転車環境整備を検討するためには、これまでの自転車利用と社会的・経済的な変化の関連性を調べる必要があると考えられる。そこで本研究では、過去 5 回行われた東京都市圏 PT 調査のデータを用いて、自転車利用実態の長期的変化を把握した。社会的・経済的な変化と自転車利用実態変化との間の因果関係について BayesLiNGAM を用いた検証の結果、1980 年代における 4060 代女性の自転車利用の増加を把握した。さらに、2000 年代にオフィスワークの多いホワイトカラー層が積極的に自転車を利用するようになったため、全体の健康的な交通行動やポタリングが増加したという因果関係を明らかにした。

  • 岡野 舜, 高山 宇宙, 三浦 清洋, 森本 章倫
    2020 年 6 巻 2 号 p. A_105-A_112
    発行日: 2020/02/01
    公開日: 2020/02/06
    ジャーナル フリー

    自動運転技術の導入は,交通事故の削減や渋滞の解消など多岐にわたって交通利便性の向上に資することが期待されている.しかし,一般道での導入の際には,個別移動による送迎車の需要が高まり,従来の駐車場ではなく路上での停車需要が増加し,街路空間に渋滞や遅れが発生する可能性がある.そこで本研究ではミクロ交通シミュレータを用い,自由流と比べて速度低下した時間と旅行速度の値を用いて,定量的なデータに基づく自動運転社会下の街路空間の検討を行った.特に自動運転車の乗降環境に着目し,通行空間や路肩空間などの乗降環境を変化させシナリオ分析を行った.その結果,交通量が少ない街路では路上駐車型の乗降場でも対応できるが,一定以上の交通量のある街路ではバスストップ型の乗降場を整備することが望ましいことがわかった.

  • 松本 美紀, 宇野 伸宏, 中村 俊之, SCHMÖCKER Jan-Dirk
    2020 年 6 巻 2 号 p. A_113-A_120
    発行日: 2020/02/01
    公開日: 2020/02/06
    ジャーナル フリー

    本研究では,自動運転から手動運転への権限移譲時における運転行動及び視行動に対する影響を把握することを目的とし,ドライビングシミュレータを用いてレベル 3 相当の自動運転状態での模擬走行実験を行った.具体的には交通量の多寡,自動運転時のセカンドタスク(運転以外の作業)の有無や種類,そして自動運転中の周辺交通情報提供等の違いなどが与える影響に着目した.結果として,セカンドタスク無しの場合に比べ,セカンドタスク有りの場合にハンドルを握るまでの時間が短くなることが明らかになった.また,交通量が多く,ドライバーがセカンドタスクを行っている場面において,周囲への注意を促す情報提供によりハンドルを握るまでの時間と前方注視時間割合,映像注視時間割合に影響を与えることが示された.

  • 松ヶ谷 玲弥, 塩見 康博, 邢 健, 糸島 史浩, 甲斐 穂高
    2020 年 6 巻 2 号 p. A_121-A_130
    発行日: 2020/02/01
    公開日: 2020/02/06
    ジャーナル フリー

    近年,高速道路の交通容量が経年的に減少傾向にあることが報告されており,その原因究明と対策の検討が急務的課題となっている.本研究では,交通容量の変化要因を考察するため,過去と現在のミクロレベルでの交通流特性の差異を検証することを目的とした.具体的には,都市間高速道路(関越道,中国道,名神)の単路部ボトルネックを対象に,過去・現在の 2 時点で収集された車両感知器パルスデータを用い,車線利用率や追従車頭時間分布,TTC (Time to collision),希望走行速度分布,車群台数分布の変化を分析した.その結果,全体的な傾向として,追越車線利用率,追従車頭時間,TTC は全体的に増加傾向にある一方,希望走行速度,車群構成台数は減少傾向にあることが,交通容量減少の要因となっている可能性を明らかとした.

  • 楊 甲, 三村 泰広, 山崎 基浩, 安藤 良輔, 松尾 幸二郎, 菅野 甲明
    2020 年 6 巻 2 号 p. A_131-A_137
    発行日: 2020/02/01
    公開日: 2020/02/06
    ジャーナル フリー

    高齢運転者は身体能力の低下により速度制限標識を見落としやすいことが知られている。特に、最高速度が低下する交差点では、速度制限標識の見落としが生じると、意図せず最高速度を超過してしまう可能性がある。このため、これらの場所でいかに最高速度を遵守させるかが重要な課題である。本研究は、高齢運転者を対象に、最高速度低下点における速度遵守の実態を把握するとともに、そこで助言型 ISA による速度遵守行動を促す効果を検証することを目的とする。そのため、高齢者 10 名、非高齢者 10 名のプローブデータを用いて、助言型 ISA の稼動前、稼働中における最高速度変化点での速度遵守行動変化を把握した。その結果、高齢運転者の走行軌跡に基づいて抽出した 5 箇所のうち、3 箇所の超過率が低下、2 箇所の超過率が横ばいであることが分かった。

  • 小野川 立樹, 中村 俊之, 平山 高嗣, 平岡 敏洋, 森川 高行
    2020 年 6 巻 2 号 p. A_138-A_146
    発行日: 2020/02/01
    公開日: 2020/02/06
    ジャーナル フリー

    わが国における都市内高速道路は,建設上の制約から厳しい道路線形を有しており,ドライバーの視行動も交通状況や路側環境により,大きく変化することが想定される.一方で,運転中のドライバーの視行動を日常的に計測することは困難なこともあり,視行動の分析における知見は十分とは言い難い.本研究は,阪神高速道路を対象として,路側や交通状況等に着目し,実道実験,ならびにドライビングシミュレータ実験を通じて,ドライバーの視行動の変化を分析した.側壁の眺望性や交通状況,路外の建物における動的広告情報の存在が視行動に影響を与えていることを示唆する結果が得られた.これらの得られた結果は,都市内高速道路における事故の低減に向けて,道路管理者に共有することで,交通安全対策を検討するための一指針としての貢献が期待される.

  • 佐々木 啓太, 藤田 素弘, Wisinee WISETJINDAWAT
    2020 年 6 巻 2 号 p. A_147-A_155
    発行日: 2020/02/01
    公開日: 2020/02/06
    ジャーナル フリー

    本研究では巨大地震発生後の早期普及と被害軽減化のため,道路復旧シミュレーションの構築と評価を行った.まず現実的な再現を目指して各道路の被害規模や復旧作業,建設機械等の条件を詳細に検討 した.次に各道路の重要度と復旧所要時間で復旧リンクの優先度を評価することで,道路の区分や立地ばかりでなくより柔軟に復旧順序決定できる方法を構築できた.幾つかの被害規模想定の下でのシミュレーションより,1日ごとの復旧状況の変化を再現でき,また,建設機械数の条件や復旧開始地点の配置が復旧速度に大きく影響を与えていることがわかった.建設機械数に制限がある場合は,復旧リンクの優先度によって復旧順序決定をしつつ,復旧作業進行が遅延した地域に復旧開始地点を適正に追加したほうが,救援物資輸送の効率性が向上することを確認できた

  • 岡村 篤, 橋本 成仁, 木多 央信
    2020 年 6 巻 2 号 p. A_156-A_165
    発行日: 2020/02/01
    公開日: 2020/02/06
    ジャーナル フリー

    人口減少・少子高齢化が深刻化している中山間地域では、交通弱者の外出手段確保のため、デマンドバスなどの生活交通施策が実施されている。しかし、その多くは費用対効果の面で減便・廃止となるケースが多い。人口減少局面下で今後生活交通の運営・評価を行うには、地域住民にとって外出がどのくらい重要か、また外出を重視する人に対し生活交通の導入がどのような影響を与えているかを明確にする必要があると考えられる。本研究では、「車の運転ができなくなった後でも現在の地域で住み続ける」という前提の下で外出の重要性を明らかにした。さらに、生活交通の評価が高まることで、「将来の交通手段に対して安心して現在の市町村に住み続けることができる」意識が促される可能性があることを明らかにした

  • 兵頭 知, 小林 敬一
    2020 年 6 巻 2 号 p. A_166-A_174
    発行日: 2020/02/01
    公開日: 2020/02/06
    ジャーナル フリー

    東京都内における全交通事故に占める自転車関与事故の割合は4割近くとなり,増加傾向を示している.そこで,本研究では自転車関与事故の実態を把握するために,都内の代表交差点 58 地点を対象に自転車関与事故と交通曝露量の関係性を分析する.具体的には,自転車・自動車交通流観測データ,交通事故データおよび交差点形状データを用いて交差点単位で一般化線形混合モデルにより分析を行った.その結果,自転車関与事故の曝露量として主道路側から従道路側へ右左折する自動車交通量,自転車交通量と自転車関与事故が有意に関連することを示した.自動車交通量では主道路側の左折需要が10% 増加した場合,事故件数期待値は約 3.6%,右折需要では約 7.4% 増加することを示した.また,自転車交通需要が 10% 増加した場合,期待値は約 3.8% 上昇することを示した.

  • 白柳 洋俊, 吉井 稔雄, 倉内 慎也, 坪田 隆宏
    2020 年 6 巻 2 号 p. A_175-A_182
    発行日: 2020/02/01
    公開日: 2020/02/06
    ジャーナル フリー

    本研究では、夜間走行時において外発性注意の慣性転換が状況認知の遅れを軽減するとの仮説を措定し、同仮説を室内実験により検証する。夜間における運転は、沿道の高輝度の店舗に外発性注意が定位されることで、すでに定位した位置への再定位が抑制される復帰抑制が発現し、状況認知に遅れを生じさせている可能性がある。復帰抑制を軽減するためには、外発性注意の慣性転換により復帰抑制が生じる位置へ外発性注意を順に誘導することが有効である。そこで本研究では慣性転換が夜間走行中の状況認知に与える影響について、ガボールパッチ検出課題に基づき検証した。その結果、ドライバーに復帰抑制が生じること、慣性転換を誘発することにより状況認知の遅れが軽減する可能性が示唆された

  • 吉田 樹
    2020 年 6 巻 2 号 p. A_183-A_189
    発行日: 2020/02/01
    公開日: 2020/02/06
    ジャーナル フリー

    高齢化や人口減少に直面するわが国では,自家用車の保有に代わるモビリティの選択肢を拡げることが求められる。こうしたなか,MaaSMobility-as-a-Service)構築への期待が高まり,公共交通への定額制サービスの導入が注目されているが,乗用タクシーの運賃は,時間距離併用制を採用しており,同一区間であっても運賃の不確実性があるため,定額制サービスの導入には,他の公共交通とは異なる課題を有している。そこで,本研究では,曜日や時間帯,乗降可能な地点を限定する乗用タクシーの定額制サービスを導入した福島県南相馬市「みなタク」の配車データを用い,乗用タクシーの利用頻度モデルを構築したうえで,タクシーの利用頻度や収入が増加する可能性をシミュレートし,利用頻度の増進とタクシー事業者の増収を両立させ得る領域を示すことで,定額制サービスの適用可能性を検討した

  • 柳原 崇男, 河原 大貴
    2020 年 6 巻 2 号 p. A_190-A_197
    発行日: 2020/02/01
    公開日: 2020/02/06
    ジャーナル フリー

    健康日本 21 の報告書では、高齢者の歩行量減少が報告されており、高齢者が自力で移動できる環境整備が求められている。本研究では、泉北ニュータウンを対象に、比較的歩行環境が整備された地域において、歩行環境が高齢者の身体的、精神的、社会的健康に与える影響について分析することを目的としている。アンケート回答者を「高活動者」と「低活動者」に分類し、さらに主観的近隣歩行環境評価簡に関する質問紙を用いて、回答者が主観的に感じている近隣歩行環境評価を把握した。その結果、「高活動者」と「低活動者」では、歩行環境評価の違いが明らかとなった。また、「健康」と「主観的近隣歩行環境評価」の関係性を構造的に分析した結果、「商店や駅などのサービスへのアクセスのしやすさ」が回答者の身体的、精神的、社会的に影響を与えていることがわかった

  • 柿元 祐史, 中村 英樹
    2020 年 6 巻 2 号 p. A_198-A_205
    発行日: 2020/02/01
    公開日: 2020/02/06
    ジャーナル フリー

    道路事業を進めるにあたっては、費用便益分析により事業実施の妥当性を評価している。その際、道路種別に応じた交通量-旅行速度(Q-V)式を用いて交通量配分を行っているが、平面交差部の立体化等の道路事業では交通量に変化がなければ推定される旅行速度に感度がなく、事業の効果を適切に反映できていない。本論文では、交通流シミュレータを用いて信号交差点密度が Q-V 式の自由速度に与える影響を分析し、平面交差部の立体化に感度を有する Q-V 関係による便益算出への影響を評価した。その結果、Q-V 式の自由速度は、信号交差点密度、青時間比、希望速度に応じて変化することを確認した。そして、1OD 2 経路の簡易ネットワークを用いて、信号交差密度を考慮した自由速度を用いる Q-V 関係で道路事業の三便益を算出し、従来手法との便益差により新しい Q-V 関係の効果を明らかにした

  • 稲田 竜一, Rahman Mursheda , 小嶋 文, 久保田 尚
    2020 年 6 巻 2 号 p. A_206-A_215
    発行日: 2020/02/01
    公開日: 2020/02/06
    ジャーナル フリー

    本研究では、国土交通省の技術基準を参考に各地で設置されてきたハンプについて、形状、自動車に与える垂直加速度と速度抑制効果の関係について検討した。その結果、対象とした現場打ちアスファルトのハンプについて、高さが基準より低いものや、勾配部の緩急が小さくサイン波の形状を再現できておらず最大勾配も小さくなっているものがあることが分かった。速度調査結果からは、上りの最大勾配が小さいほどハンプ通過時の速度抑制効果が小さい可能性が見られた。加速度調査からは、上り最大勾配が小さいほど運転席背もたれの垂直加速度が小さい傾向が見られた。垂直加速度による不快感が小さくなり、速度抑制効果を十分に発揮していないことが考えられる。

  • 鳥海 梓, 井坪 慎二, 山田 康右, 田村 勇二, 牧 佑奈, 池田 裕二
    2020 年 6 巻 2 号 p. A_216-A_225
    発行日: 2020/02/01
    公開日: 2020/02/06
    ジャーナル フリー

    首都圏高速道路ネットワークにおいて交通分散による渋滞緩和を実現するためには,変動する交通状況に対するドライバーの経路選択の実態を把握し,適切な交通需要マネジメントに向けた課題を明らかにすることが重要である.本研究では,そのための基礎分析として,ETCシステムによって記録される料金所等の通行記録を基に,ジャンクション間での時間帯別の平均所要時間差と経路選択割合の関係や,所要時間差に依らず一定の経路を選択する経路固定層について分析を行った.その結果,所要時間や料金が同等にもかかわらず特定の経路に偏った選択が存在すること,多くの時間帯で所要時間差が逆転しにくい場合は経路選択割合が変化しにくい傾向があること,経路固定層は経験上所要時間が短いと期待される方の経路を選択している可能性があることがわかった.

  • 中西 雅一, 前田 雅人, 兒玉 崇, 佐々木 邦明
    2020 年 6 巻 2 号 p. A_226-A_234
    発行日: 2020/02/01
    公開日: 2020/02/06
    ジャーナル フリー

    高速道路の新規供用や料金施策の変更等、道路交通に影響を及ぼす事象に関して、前後比較に基づき、交通量や損失時間等の指標の変化を用いて、その効果を把握することが一般的である。しかし、曜日配列が異なる影響やインシデントの影響等により、明確に前後での変化を捉えることができていない可能性がある。一方、既往研究では、時系列に観測された交通量に対して、状態空間モデルを適用し、長期的な変動、周期的な変動、短期的な変動に分類して交通特性を分析している。従って、本稿では、阪神高速道路で観測された様々な交通状況に対して、既往研究で示された時系列に観測された交通量を各変動成分に分類する手法を適用して、長期的な変動を把握することで、新規路線の供用や料金施策等による効果をより明確にすることを試み、実務での適用可能性を考察する。

  • 宮内 弘太, 高田 和幸
    2020 年 6 巻 2 号 p. A_235-A_243
    発行日: 2020/02/01
    公開日: 2020/02/06
    ジャーナル フリー

    近年,我が国では,高齢運転者による交通事故が深刻な社会問題となっている.高齢運転者による交通事故は,加齢による身体能力・認知能力・判断能力の低下が要因で生じている.自動化運転の技術開発は,これらの能力低下を補う可能性を秘めているが,市街地道路での実用化は未だ先であると考えられる.したがって,高齢運転者の事故を未然に防ぐ技術開発が重要である.この技術は,自動車が運転者を特定していなければならない.本研究では,運転者の走行挙動に注視し,運転者を特定する手法を構築した.運転者の運転操作が複雑な交差点内の走行挙動に着目し,畳み込みニューラルネットワーク(CNN)を用いることで,高い精度で運転者の特定が可能であることが示唆された

  • Edwin AKANDWANAHO, Hideki NAKAMURA
    2020 年 6 巻 2 号 p. A_244-A_253
    発行日: 2020/02/01
    公開日: 2020/02/06
    ジャーナル フリー

    Free speed (FS) is the speed that drivers would adopt if they were not influenced by the presence of other vehicles. This study hypothesises that the difference between the free speed distribution (FSD) and the actual speed distribution (ASD) is indicative of the quality of service (QOS) of traffic flow perceived by drivers. We use raw pulse detector data and the Modified Kaplan-Meier estimation method to derive FSD, which is then modelled based on cross-section geometry. The proposed model of FSD can be easily applied by practitioners without detailed speed and headway data. Additionally, ASD is investigated under various flow conditions, and a model is developed for its estimation based on geometric factors and traffic flow. We then define the Free Speed Index, FSI = AS/FS as an indicator of expressway QOS perception. FSI was found to decrease with an increase in traffic flow, and its potential applications are discussed.

  • 高橋 歩夢, 掛井 孝俊, 小林 寛, 尾崎 悠太
    2020 年 6 巻 2 号 p. A_254-A_259
    発行日: 2020/02/01
    公開日: 2020/02/06
    ジャーナル フリー

    2012 11 月に発出された「安全で快適な自転車利用環境創出ガイドライン」や 2018 6 月に閣議決定された「自転車活用推進計画」において、自転車の利用実態の把握が自転車ネットワーク計画の策定を促進する上で重要であるとされている。自転車の利用実態のうち、自転車の通行経路を効率的に把握する手法としてスマートフォンを活用した調査があるが、常時観測には不向きという課題がある。 そこで、本研究では、コミュニティサイクルやシェアサイクル等の常時観測可能な GPS 位置情報データ等の情報通信技術の活用により、自転車の通行経路を把握するため、自転車の通行経路が把握可能な取得間隔の検討を行った。その結果、30 秒程度の取得間隔で GPS 位置情報を取得すれば、自転車の通行経路を把握できることが確認された。

  • 田部井 優也, 長田 哲平, 大森 宣暁
    2020 年 6 巻 2 号 p. A_260-A_269
    発行日: 2020/02/01
    公開日: 2020/02/06
    ジャーナル フリー

    大規模小売店舗の立地に起因する渋滞や店舗周辺での交通事故発生件数の増加によって,大規模小売店舗周辺の交通環境の悪化が問題となっている.本研究は,大規模小売店舗周辺の交通環境悪化の要因の一つとして考えられる路外駐車場出入口の構造に着目し,栃木県宇都宮市を対象にその構造の実態把握とビデオカメラ観測調査により,駐車場出入口の交通流現象の分析を行った.加えて駐車場出入口付近での事故発生状況の分析を行った.その結果,駐車場出入口の多くは構造上の問題により,入出庫車両の円滑な走行に支障を来しているだけでなく,駐車場前面道路のボトルネック箇所となっている実態を明らかにした.さらに構造上問題のある駐車場出入口付近では,問題のない出入口に比べ自動車同士の交通事故が多く発生している実態を明らかにした.

  • 坪田 隆宏, 吉井 稔雄, 白柳 洋俊, 倉内 慎也
    2020 年 6 巻 2 号 p. A_270-A_279
    発行日: 2020/02/01
    公開日: 2020/02/06
    ジャーナル フリー

    本研究では,交通事故の起こりやすさを示す交通事故リスク情報提供による事故減少効果を定量的に評価する.具体的には,松山都市圏の道路ネットワークを対象として,ネットワーク交通流シミュレーションモデル SOUND を用いてネットワークの交通流を再現し,同交通流における事故発生件数の期待値を算定する.さらに,現況に加えて各車両のドライバーが交通事故リスク情報を獲得した場合のネットワーク交通流の変化を予測し,事故発生件数の期待値を現況値と比較する.分析の結果,交通事故リスク情報の提供により,生活道路から幹線道路,すなわち交通事故リスクの高い道路から低い道路へ交通がシフトすることにより,ネットワーク全体で約 4%の事故削減効果を有するとの結果が得られた.

  • 佐野 可寸志, 王 凱, 鳩山 紀一郎, 高橋 貴生, 渡利 友紀
    2020 年 6 巻 2 号 p. A_280-A_285
    発行日: 2020/02/01
    公開日: 2020/02/06
    ジャーナル フリー

    廃止バス路線の代替交通手段としてだけでなく,高齢化の進展に伴うドア・ツー・ドア輸送のニーズの高まりも相まって,近年タクシーの役割は増大している.一方,長時間低賃金の職種であるタクシードライバーの確保は難しく,地方都市の周辺地域ではタクシー営業所等の撤退が進みつつある.タクシー事業者を確保するためには,タクシードライバーの生産性の向上が急務である. 本研究ではまず,新潟県長岡市のタクシー事業者のGPS データを用いてタクシーの運行実態を可視化し,運行効率化に資するデータを取得する.次に,前日までにすべての予約がなされているという理想的な状況を時間制約付き集配計画問題(PDPTW)として定式化し,必要車両数と最適な巡回ルートを,ヒューリスティックな解法である挿入法を用いて導出し,運行効率化の可能性を検討した.

  • 伊藤 潤, 酒井 教行, 佐野 可寸志, 鳩山 紀一郎
    2020 年 6 巻 2 号 p. A_286-A_295
    発行日: 2020/02/01
    公開日: 2020/02/06
    ジャーナル フリー

    本研究は,交通時間価値に対する冬期気象条件,とりわけ降積雪の影響を分析するものである.時間価値推定は,主に所得接近法と選好接近法の 2 つがあり,現在の道路事業における費用便益分析マニュアルに示されている時間価値は所得接近法によるものである.一方,本研究では降積雪時の混雑に起因する移動中の苦痛や肉体疲労等が交通時間価値へ影響を与えるものと考え,これを選好接近法から分析することとした.具体的には, ETC2.0 プローブデータ走行履歴情報から推定する手法と,経路選択に関するアンケート調査から推定する手法を試みた.その結果,交通時間価値はいずれの手法においても非冬期と比較して冬期のほうが有意に高くなることが確認された.また,冬期においては降雪がない場合においても交通時間価値が高まる傾向にあった

  • 小林 貴, 島川 陽一, 鹿島 茂, 加藤 正康
    2020 年 6 巻 2 号 p. A_296-A_302
    発行日: 2020/02/01
    公開日: 2020/02/06
    ジャーナル フリー

    本研究では、交通量調査が行われていない細街路の交通量を推計する手法として、調査が行われている幹線道路の交通量を用いる手法を提案する。この推計手法は、幹線道路の迂回路として使われる等、幹線道路交通量と細街路交通量の類似性(幹線道路依存度)に着目し推計するものである。細街路交通量と幹線道路交通量の類似性の分析から、細街路には幹線道路依存度の高い路線と低い路線が存在し、幹線道路依存度を幅員やリンク長等の道路機能変数で説明するモデルを構築できる可能性を示した。これにより、従来の細街路交通量の推計手法で用いられてきた土地利用変数や道路機能変数に加え、観測されている幹線道路交通量を細街路交通量推計時の情報として使用できる可能性を示した。

  • 白柳 洋俊, 倉内 慎也, 坪田 隆宏
    2020 年 6 巻 2 号 p. A_303-A_309
    発行日: 2020/02/01
    公開日: 2020/02/06
    ジャーナル フリー

    本研究では,高速道路連続走行時において,注意の解放が落下物の認知を向上させるとの仮説を措定し,室内実験を通じて同仮説を検証する.高速道路における運転は,進行方向前遠方の限られた範囲へ持続的に注意が向けられていると考えられ,落下物の認知にヴィジランス低下が影響を与える可能性が ある.ヴィジランス低下を軽減・抑制するためには,持続的な注意を解放させることが有効である.そこで本研究では,進行方向に向けられた注意の解放が落下物の認知に与える影響について,選択的順応パラダイムにもとづき検討した.その結果,注意の解放によりヴィジランス低下が軽減されること,ならびに同注意の解放効果は60 秒間持続することが示された.

  • 安田 昌平, 井料 隆雅, 坂井 勝哉
    2020 年 6 巻 2 号 p. A_310-A_316
    発行日: 2020/02/01
    公開日: 2020/02/06
    ジャーナル フリー

    大規模な道路ネットワーク上の交通データを管理・活用することには一般に多大な労力を伴う.大規模ネットワークを対象とした効率的な分析のため,複雑なネットワーク構造を簡略化するネットワーク集約手法が開発されている.しかしながら,既存の方法論の接続構造のみに基づいた処理の複雑さや,リンク特性の設定に伴う膨大な計算等の課題から,より効率的な方法論の開発が求められている.近年,GPS 機器等によりネットワークの交通状態を包括的に観測できる車両軌跡データが蓄積されるようになった.本研究では長期観測された車両軌跡データを用いて,実際の車両の流れに基づいたネットワーク表現及びネットワーク集約を行う方法論を提案する.

特集号B(実務論文)
  • 萩田 賢司, 早川 敬一, 高嶺 一男
    2020 年 6 巻 2 号 p. B_1-B_10
    発行日: 2020/02/01
    公開日: 2020/02/06
    ジャーナル フリー

    大地震発生時の交通管理対策に活用するため,全国で 2,130 人を対象としたインターネット調査を実施し,運転中に大地震が発生した時の運転行動意識を分析した.運転中に大地震が発生した場合,自宅から離れた人口密集市街地では,車から離れて避難すると回答した割合が30%弱であったが,それ以外の場合には,大半が運転を継続すると回答した.自宅付近で大地震に遭遇するほど,自宅に向かう割合が高くなり,自宅から遠くなるに連れて,とりあえず,行けるところまで行くといった回答の割合が高くなった.車から離れる時の路上駐車車両のエンジンキーとドアロックの措置は,交通の教則を遵守する割合はさほど高くなく,車の盗難被害を恐れているものが多く,適切な措置を認識していないものが一定数存在した

  • 桑原 昌広, 吉岡 顕, 松本 浩和, 早田 敏也
    2020 年 6 巻 2 号 p. B_11-B_18
    発行日: 2020/02/01
    公開日: 2020/02/06
    ジャーナル フリー

    ワンウェイ型カーシェアリング(OWCS)を導入する場合、人口密度の高い駅周辺などにステーションを配置することが考えられるが、公共交通との連携性を高めるためには周辺と比較して既存公共交通だけでは相対的に不便である場所に配置することが重要である。本研究では OWCS 導入を検討する際に、既存公共交通との連携・補完手段として OWCS 利用が期待されるステーション群を、マルチモーダル検索結果等の 2 次データを用いて探索する手法を提案した。東京で展開されている OWCS の実サービスデータを利用し、提案手法を用いて抽出したステーション群が、その他ステーション群と比べ移動時間差が大きなトリップ比率が高いこと等を明らかにし、手法の妥当性を確認した。

  • 柳沢 吉保, 亘 陽平, 轟 直希, 高山 純一
    2020 年 6 巻 2 号 p. B_19-B_28
    発行日: 2020/02/01
    公開日: 2020/02/06
    ジャーナル フリー

    近年、人口減少および少子高齢化に対応するため、都市部の公共交通ネットワーク上に中心拠点を設け、拠点エリアに都市機能施設を集積させ、市街地をコンパクトにすることで一定の人口密度を保つこと、生活拠点と中心交通拠点を公共交通ネットワークで連結させることで、居住地から都市機能施設へのアクセス性を高めることを目指した取り組みが進んでいる。本研究は、中心拠点を基点に居住人口分布を表わす居住人口のアクセシビリティ(以下、AC) と人口密度との関係,また用途別都市機能施設の立地分布を表す用途別施設 AC と施設までの集中トリップの関係を分析した。また、居住地から施設までのトリップに与える影響を、居住人口 AC、用途別施設 AC および施設までの所要時間を移動手段別に、少子高齢化への対応を考慮して年齢階層別に分析した。

  • 塩田 祐也, 二瓶 美里, 長尾 朋紀, 玉井 顯, 永見 豊, 中川 浩, 後藤 誠, 松本 和也, 田村 勇二
    2020 年 6 巻 2 号 p. B_29-B_36
    発行日: 2020/02/01
    公開日: 2020/02/06
    ジャーナル フリー

    年間約 200 件程度発生する高速道路の逆走に対し様々な逆走対策を進めているが、依然として逆走は発生しており更なる逆走対策の検討が必要である。 逆走の約 7 割が高齢者であり、認知機能低下が疑われる人も含まれる。本研究では、CG により高速道路 IC 接続交差点を再現し、ドライビングシミュレータにより健常高齢者と MCI 有病者に走行してもらい、逆走発生状況や視行動を分析した。 その結果、両者の逆走発生状況に有意差は見られなかった。また、逆走し続けた被験者は、正しく走行した被験者と比べて視行動範囲が狭い傾向が見られた。従って、逆走し続けた被験者の視行動範囲等を踏まえた逆走対策の検討が必要だと判明した

  • 兒玉 崇, 石原 雅晃, 前原 耀太, 眞貝 憲史, 中西 雅一, 田名部 淳
    2020 年 6 巻 2 号 p. B_37-B_45
    発行日: 2020/02/01
    公開日: 2020/02/06
    ジャーナル フリー

    近年、画像センシング技術の精度向上により、全車両を対象に、車間距離情報も含む走行軌跡データの大量生成が可能になりつつある。同データを活用すれば、これまで困難だった交通事象の発生メカニズムの統計的な把握が可能となり、新たな交通施策の創出も期待される。 そこで、阪神高速では、新たな高速道路ネットワークの建設が、今後一層難しくなることも見据え、交通流の円滑化を図る施策に着目し、近年技術向上が著しい車両制御技術が、将来その一役を担う可能性に期待し、現在、円滑な交通流を阻害している交通事象の発生メカニズムを統計的に把握することを通じて、その原因となり得る運転行動を評価し、その改善を促す施策の実現を模索している。 本稿は、そのファーストステップとして検討した運転行動の評価手法について報告するものである。

  • 西堀 泰英, 嚴 先鏞
    2020 年 6 巻 2 号 p. B_46-B_53
    発行日: 2020/02/01
    公開日: 2020/02/06
    ジャーナル フリー

    地方都市の中心市街地では自動車は重要な来訪手段の一つである。中心市街地の駐車場の利用実態を分析することで、まちづくりの実務に活用できる可能性がある。本稿では、駐車場利用実態等を分析することで、駐車場運営の効率化や中心市街地活性化の観点から、それらの課題と取るべき対策の方向性を得ることを目的とする。駐車場利用実態等の分析により、駐車場利用者の6 割程度は駐車場が付属する施設を利用しており他の施設を利用しないこと、中心市街地近隣でJ リーグの試合が開催される際の駐車場入出庫台数の時間変動が中心市街地の歩行者通行量の時間変動と異なることなどを示した。以上より、駐車場利用実態や複数のデータを組み合わせて分析することで、駐車場運営の効率化や中心市街地活性化の検討に資する知見が得られることを確認した。

  • 米村 圭一郎, 甲斐 穂高, 邢 健, 糸島 史浩, 松本 猛秀, 四辻 裕文, 喜多 秀行
    2020 年 6 巻 2 号 p. B_54-B_60
    発行日: 2020/02/01
    公開日: 2020/02/06
    ジャーナル フリー

    本研究では,常磐自動車道の要事故対策区間の一つであるカーブ区間(R1600m)の手前において減速マーク表示を施工し,ETC2.0 プローブデータに基づく車速分布の分析,対照群との比較検討(平・休,平均・90%タイル速度)を通じて,減速マーク表示を構成するラインの間隔がどのように減少すれば減速効果が高くなるのかを検証した.その際,減速マーク表示の配列と施工の手戻りを考慮し,減速マーク表示の配列に関する段階施工を実施した.また,減速マーク表示を施工した介入群(常磐道)との比較検討を行うため,道路構造が類似している九州自動車道と館山自動車道の区間を対照群として選定した. 検証の結果,減速マーク表示設置区間内のカーブ寄りである後半部分において,ライン間隔を狭くすることが,より高い減速効果減速効果をもたらす,という従来の知見を再確認できた

  • 垣田 友希, 吉井 稔雄, 神野 裕昭, 福田 尊元
    2020 年 6 巻 2 号 p. B_61-B_69
    発行日: 2020/02/01
    公開日: 2020/02/06
    ジャーナル フリー

    一般道の主要渋滞箇所は,プローブデータの旅行速度データを用いて,渋滞対策協議会において選定さている.主要渋滞箇所はボトルネック交差点と先詰まり交差点が区分されておらず,また,渋滞の程度も評価されていないことが,効果的・効率的に渋滞対策を推進する上での課題となっていた.本研究は,この解決策として,渋滞による遅れ時間に着目した渋滞評価手法を構築し,松山に適用して適応性を検証した.旅行速度のみでの渋滞評価では,ボトルネック交差点ではないにもかかわらず渋滞交差点と判定されていた複数の交差点が,遅れ時間による渋滞評価ではボトルネック交差点と判定されないことを確認した.また,当手法で算出できる総渋滞遅れ時間により,ボトルネック交差点毎の渋滞の程度を定量評価することができた.

  • 森 健二, 矢野 伸裕, 横関 俊也, 萩田 賢司
    2020 年 6 巻 2 号 p. B_70-B_75
    発行日: 2020/02/01
    公開日: 2020/02/06
    ジャーナル フリー

    2017 年に高速道路における規制速度の 110km/h への引き上げが試行されたことに伴い、車両挙動に変化がみられたかを検証する一環として、追い越し時における追突事故の危険性を比較した。規制速度の引き上げ試行区間となった新東名高速道路において、計測機器を搭載した観測車を走らせ、それを追い越していく一般車の様子を観測するというスタイルの調査を行った。追い越しのために車線変更をするタイミングに着目し、その時の相対速度と車間距離から算出される追突事故のリスク指標を、規制速度の引き上げ前と後で比較した。その結果、リスク指標には速度差との関係がみられるものの、規制速度が異なる状況下においてこうした関係性そのものに変化は見られず、規制速度の引き上げが追突事故の危険性を増加させる結果とはならなかった

  • 今田 大輔, 長田 哲平, 古池 弘隆
    2020 年 6 巻 2 号 p. B_76-B_81
    発行日: 2020/02/01
    公開日: 2020/02/06
    ジャーナル フリー

    わが国の自転車交通事故の約 8 割が交差点で発生している。そこで、交差点における自転車交通事故に着目し、自転車交通事故の削減を目指し、自転車運転者に対して規制したり罰したりするのではなく、自転車運転者が自発的に交差点で一旦停止することで事故を防ぐというコンセプトのもと、交差点で一旦停止するとポイントがつくというスマートフォンアプリケーション(自転車マナーポイントアプリ)を開発した。このアプリは交差点での自転車の停止状況等のデータも取得し道路行政やマーケティング等に活用することも想定している。 本稿では、自転車マナーポイントアプリの概要と、2018 11 1 日から 2019 3 31 日まで兵庫県尼崎市において実施した実証実験の結果を示し、自転車マナーポイントアプリの今後の展望について述べる。

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