Thiobacillus denitlificansの硫黄脱窒能力を下廃水の窒素除去に応用することを最終目的として, 自然界から
T. denitlificansを純粋分離し, その脱窒特性につき検討した。また, 硫黄脱窒活性の高い菌の自然界からの集積と集積菌の単体硫黄 (S
0) への馴養につき検討した。
無機炭素源としてHCO
3-, 還元硫黄源としてS
2O
32-を用いた無機合成培地により, 活性汚泥, 汚濁河川の底泥などの植種源から, 完全嫌気条件下で硫黄脱窒菌の集積培養を行った結果, すべての植種源から硫黄脱窒能のある集積菌を得ることができた。この集積培養菌を完全嫌気条件下で平板培養することにより, 硫黄沈着粒のみられる黄色の単一コロニーを得た。平板培養を繰り返して得られた純粋菌につき分類試験を行い, 分離菌を
T. denitrificansと同定した。
S
2O
32-を還元硫黄源とする集積菌の回分試験成績をもとに硫黄脱窒反応に関する化学量論値 (
Ys,
Yalk,
Yobs,
CR) を計算した結果から, 集積培養菌の脱窒能のほとんどが硫黄脱窒細菌に由来していることを明らかにした。還元硫黄源をS
2O
32-から, S
0に徐々に置き換える方法によって, 集積菌がS
0を利用できるよう馴養することができた。硫黄脱窒反応は, 0次反応に従い, S
2O
32-, S
0を脱窒反応のH-donorとした場合の比脱窒速度は, それぞれ9.4mgN・mg
-1TOC・d
-1, 2.5mgN・mg
-1TOC・d
-1と硫黄脱窒菌は他栄養脱窒菌に劣らぬ脱窒能を有することがわかった。
抄録全体を表示