水辺環境の回復のため, 下水の2次処理水を流下させた野火止用水の生態系の特色を明らかにするため, 付着藻類と底生小動物の生育状況を2年間にわたって調査した。藻類群落は,
Navicula seminulumと
Stigeoclonium sp., また底生小動物はChironomidaeと
Cheumatopshyche bebilineataに代表された。これらの出現種は, 水路のBODが10mg・l
-1を越える水質であったことを反映し, やや汚濁した河川で優占となる種が多かった。藻類の現存量には, 落葉樹の繁茂による日照条件の変化 (照度の低下), 土の河床の侵食による懸濁物質濃度の増加, また土の河床の基物としての安定性の低さ, ユスリカの摂食などが主たる制限要因として影響し, 降雨による流量の増加と懸濁物質の一時的な増加の影響は小さいと推定された。なお, 極相期における藻類の活性低下に伴う剥離による現存量の減少は認められなかった。底生小動物, とくにユスリカの分布は, その駆除のために散布された昆虫成長制約剤の影響がもっとも顕著であった。
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