歯垢や歯石と歯周疾患の発生との間に, 臨床的実験および疫学的観察などから, 高い相関関係がみられることは明らかである。今日まで数多くの歯垢や歯石についての研究が報告されているが, まだその形成機序や石灰化について不明な点がいろいろと残されている。
本実験はStandardized foil techniqueを応用して, 歯石形成量の個体差は何に起因するのかを解明し, 歯石の形成機序についての手がかりを得るために, アイソトープCalcium-45をトレーサーとして, 初期の歯石の石灰化能について検索した。
臨床的に正常な歯列と歯肉をもつ, 被験者5人の下顎中切歯の舌側に規格化したfoilを装着し, その上に3日間と6日間に堆積する歯石を集めた。
歯石形成速度は6日間についてだけ調べた。個体間には有意の差がみられたが, 2回の期間の間, および左側と右側中切歯の間には有意の差はなかった。
石灰化能については, foil上に堆積した沈着物を口腔内より取り出すと, ただちに生理的食塩水に保存し, その後Ca
45を含む石灰液中に2時間浸漬し, 沈着物のCa
45の取り込み量をGas flow counterを用いて, 5分間測定した。
Ca
45は10μc/mlの濃度のものを用い, 浸漬液はCalcifying solution 2ccにCa
45を0.2cc混合したものである。
6日間にfoil上に堆積した沈着物の量は個体によって差がみられたが, 同一の個体から同じ方法を用いて採取した3日目と6日目の沈着物の石灰化能には個体問の差がみられなかった。しかも, 統計学的には両者の間に相関関係が認められなかった。また, 3日目の沈着物のCa
45の取り込み量については, 3回の期間の間, および下顎の左右中切歯間に有意の差はなかった。
6日目の沈着物の石灰化能は3日目のものより, 測定値で約6割増加していた。
以上の結果について, 考察を加えた。
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