われわれは全身撮影可能な立位CTを企業と共同開発した.従来の臥位CTと同等の物理特性をもち,設置面積は従来のCTの3分の2で済み,X線撮影のようなワークフローで検査が行える.健常人での検討では,これまで位置が変化しないとされてきた脳や骨盤が立位で下垂していることがわかり,重力下の人体構造が少しずつ明らかになっている.特に,静脈は立位と臥位での容量変化が部位により異なっており,画像での静脈学を構築する端緒についた.また,骨盤底の緩みや躯幹・大腿などの部位ごとの筋肉量の評価も可能であり,個々の筋萎縮に応じた運動の仕方を示唆することができる.疾患としては,ヘルニア・臓器脱などは定量的に評価可能であり,変形性膝関節症のような運動器疾患の早期発見も可能である.さらに,嚥下・呼吸・排尿・歩行機能などの動態機能の評価とそれに関連する病態の早期発見が可能である.立位CTを通して,健康長寿の時代のニーズに貢献できることを目指したい.
多姿勢における磁気共鳴画像(MRI)を取得可能な装置(Gravity MRI)を開発した.中枢神経系,内臓,骨軟部他におけるGravity MRIの研究成果について述べた.Gravity MRIによって非侵襲的に新たな機能および形態情報を取得可能である.
ヘルメット型―これが,理想的な頭部専用PET装置は何か?という問いへのわれわれの答えである.頭部にフィットするような半球状の検出器配置は,解像度ロスを低減し,最も少ない検出器数で最も感度を高めることができる形状である.7年間の研究開発を経て,世界初となる半球型頭部PET装置「VRAIN」が完成した.PETとしては珍しい座位型であるのも特徴である.患者さんにとって検査への抵抗感が減り,施設にとっては省スペースのメリットも大きいだろう.
医用画像から得られる被験者個別の解剖構造に忠実な筋骨格モデルは,運動障害の原因の解明用途において重要である.一方,体位によって運動器の力学的・動態的な条件は異なるため,立位で行う動作における筋骨格モデルは,臥位において撮影された医用画像ではなく立位において撮影された医用画像から作成されることが望ましい.しかし,立位における医用画像は臥位における医用画像ほど普及しておらず,扱えるデータの数は限定的である.そのためわれわれは,一般に広く普及している臥位による医用画像を有効利用するため,立位時の筋骨格変形を定量化し,臥位の医用画像から立位の医用画像を予測することを目指している.本稿ではその第一段階として,同一被験者により撮影された臥位・立位CT画像を自動セグメンテーションし,その精度を検証した結果を報告する.
定量的磁化率マッピング(QSM)は,組織の磁化率が変化する疾患の診断に有望である.QSMはおもに3T MRIで行われる.本研究では,QSMを汎用的な1.5T MRI で実用することを目的として,QSMノイズと撮像パラメーター(TR/TE)の関係を数値計算と実測値で比較検討した.1.5T QSMのファントム実験の結果は,計算とよく一致した.健常例のヒト脳の実測でも同様の結果を得た.ヒト脳のQSM値は,3T MRIの先行研究で報告されたQSM値と矛盾がなかった.これらの結果は,1.5T QSMの実用可能性を示唆した.
Parallel imaging in magnetic resonance imaging produces non-uniform noise when the acceleration factor is high. To reduce non-uniform noise, we developed a method that combines iterative reconstruction with soft-thresholding and CNN-based denoising. Non-uniform noise is reduced by iterative reconstruction, and further reduced by combining iterative reconstruction with CNN-based denoising. We applied this method to parallel imaging of the heads of six volunteers and confirmed that our method was able to reduce non-uniform noise in reconstructed images with an acceleration factor of 3, where the g-factor is high. Compared with a conventional reconstruction with CNN-based denoising for an acceleration factor of 3, our method improved the structural similarity index measure values relative to the reference images for T2-weighed, T1-weighted, and FLAIR images from 0.922/0.929/0.864 to 0.932/0.938/0.886, respectively (P < 0.05). Therefore, our method contributes to improving image quality with a shorter scan time.