計算解剖学の臨床応用のプラットフォームを構成する要素技術として各種のシミュレーション技術あるいはナビゲーション技術を開発している.Open MRI治療室内で行う超音波ガイド下肝癌局所治療を51例の肝癌患者に応用し,その治療成績につき検討した.全例において腫瘍と穿刺針の3次元位置関係が直観的に把握でき,誤差は2~4mmであった.とくに,超音波ガイドのみでは十分に描出されなかった12例に対してもリアルタイム3次元ナビゲーションにより穿刺が容易となった.リンパ節自動検出システムでは主病変近傍の3個のリンパ節は放射線科読影専門医の診断とすべて一致していたが,偽陽性も多くみられた.主病変と離れた遠隔リンパ節の検出や転移診断能については今後の研究開発が待たれる.バーチャル気腹システムでは,おおむね実画像と同等と考えられるバーチャル画像が得られた.本システムを応用し,個別化されたトレーニングを行うことにより手術トレーニングがより精緻化することが期待される.また,バーチャル内視鏡システムを応用した血管内フライスルーシステムを開発している.Interventional radiologyではカテーテル操作を2次元のX線透視検査の下で施行せざるを得ないが,本システムは有効に臨床応用できる可能性があり,さらに多くの症例で検証していく必要性がある.計算解剖モデルに基づいて臨床展開を行うプラットフォームの確立は未だ道半ばといえるが,臨床応用への大まかな筋道は立てられたように思う.
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