位相コントラストX線CT技術は,従来のX線撮像技術に比べ,生体の軟部組織に対して感度が約1,000倍高い.その特性を用いて,ホルマリン固定やエタノール固定された臓器の撮影が行われてきた.今回,冷却下で保存された移植臓器の形態学的な変化を,位相コントラストX線CTで撮影・解析した.研究対象として移植がよく行われる腎臓に着目し,測定にはラットの腎臓を用いた.X線干渉計を用いた位相コントラストX線CTシステムと冷却チャンバーを使用し,低温下でラットの腎臓を撮影した.ラットは,麻酔を施し,移植保護液(ユーロコリンズ液)で潅流し,同液で保存した.このとき,腎臓が凍結した場合を想定し,凍結解凍させた腎臓の評価も行った.評価の結果,凍結した腎臓では,とりわけ尿細管の障害が強く,血管や糸球体の破壊も生じ,全体的に密度が低下した.しかし,破壊された尿細管領域の弁別は容易になることがわかった.
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