Magnetic resonance image(MRI)によるT1強調画像は,軟組織のコントラストに優れる撮像技術であるため,脳変性を伴うような疾患の診断に多く用いられている.従来は放射線科医師による視覚評価にとどまっていたMRIの臨床利用であるが,近年は工学や情報学の研究者による画像解析技術の発達に伴い,voxel by voxelや解剖学的関心領域内の脳組織の体積を定量的に自動で評価することが可能となった.これにより,多数のデータセットを用いた機械学習への応用が多く報告されている.しかしながら,臨床データである医用画像は,その臨床背景や撮像装置に起因するさまざまな問題が存在するため,それらの理解が必要不可欠である.本稿では認知症領域および構造MRIに着目し,これらの解析法および機械学習への応用例について,また,医用画像を用いた機械学習に存在する問題点について紹介する.
認知症の画像診断の分野では,画像バイオマーカーという考え方により,アミロイド(A),タウ(T),神経変性(N)に対応するATN分類という研究クライテリアが提案されている.アミロイドPET(A),タウPET(T),FDG 脳糖代謝(N)の各PETを画像バイオマーカーとして利用することにより,ATN分類が可能になり,認知症の鑑別診断,アルツハイマー病の進行過程の解明に寄与することが期待さ れる.
レビー小体型認知症(DLB)は,好例認知症においてアルツハイマー病に次いで多い認知症である.DLBは複数の神経伝達物質の系統が障害される割に脳萎縮などの構造的変化が非特異的であり特徴に乏しいため,臨床症候やSPECT検査がDLBの診断には有用であり,診断基準にも含まれている.DLBは治療可能な認知症であるため,早期発見や早期診断が臨床的に重要となる.本稿ではドパミントランスポーター画像,心筋123I-metaiodobenzylguanidine(123I-MIBG)画像,脳血流画像のDLBにおける臨床的役割,特に撮影方法,診断上の注意点,臨床症候との画像相関について概説する.線条体ドパミントランスポーター集積の低下,心臓123I-MIBG集積の低下,大脳皮質全,特に後頭葉に目立つ血流低下がDLBの特徴的画像所見である.画像診断上のポイントや問題点について述べる.
今日の日常臨床において,MRI はアルツハイマー病の早期診断や鑑別診断,および進行度評価に必須の検査法である.画像解析法の進歩に伴い,拡散テンソル画像を用いた脳の線維結合や脳内ネットワークなど,局所的な脳萎縮の評価にとどまらない新たな情報を得ることができるようになった.三次元T1 強調画像は日常臨床において短時間で安定した画像が取得可能であり,近年ではネットワーク解析へも応用されている.個人脳内の灰白質の局所的な類似度に着目した手法では,個人レベルでのネットワーク異常の検出も可能となった.これらの新たな解析法を用いることにより,アルツハイマー病においてアミロイド𝛽タンパクやタウタンパクの蓄積が白質線維の結合や脳内ネットワークに与える影響について検討することができるようになり,病態の理解に貢献すると考えられる.
The edge spread function (ESF) in the circular edge method is obtained directly using the reconstructed circular disk, but line spread function (LSF) is determined by differentiating the ESF. We investigated the ESF influenced by subpixel sampling for the filtered backprojection (FBP) images by a simulation study, and estimated the full width at half maximum (FWHM) using curve fitting to ESF assuming the LSF is given as Gaussian function. A phantom consisted of 184 mm background disk and 20 mm signal disk; the contrast was 15%, 7%, and −7%; a 200-mm field of view; image size was 1024 × 1024 matrix and 512 × 512 matrix. Edge of phantom image was blurred by the cumulative distribution function (CDF) of Gaussian function with a known FWHM, and parallel beam projection data with 1024 (512) radial bins and 1024 (512) /180° angular views were reconstructed. The circular edge method is affected by subpixel sampling, differentiation and noise, and CDF Gaussian fitting is effective in reducing the ESF fluctuation. The FWHM by an approximation expression agreed well with that of numerical experiment when FWHM > 0.276 mm for 1024 × 1024 images and FWHM > 0.677 mm for 512 × 512 images.
Iterative image reconstruction using nonlinear sparsifying transform with L1 regularization for CT has been reported to preserve contour and texture while decreasing statistical noise. We investigated the spatial resolution characteristics of this algorithm when applied to a conventional angular views with simulation study. A two-dimensional numerical phantom with a 512 × 512 matrix consists of 184 mm background disk with various 20 mm diameter contrast inserts (−60% to +60%). An ideal parallel beam projection data without degrading factors such as scatter and beam hardening was assumed. The spatial resolution expressed as FWHM was estimated from the edge spread function for disk. The FWHM of L1 reconstruction using nonlocal means filter (NLM) and bilateral filter was highly dependent on the contrast, while median filter was not. A threshold 𝛿* exists in parameter 𝛿 of L1 reconstruction with NLM (L1-NLM) for each object with different contrast; 𝛿* determines the spatial resolution blurring contour most. Contour preservation works effectively if 𝛿 is set sufficiently smaller than 𝛿* of each object, but the contour is remarkably blurred if it is set to larger than or equal to 𝛿*. This causes the contrast dependence of spatial resolution in L1-NLM.
がん腫瘍,動脈硬化,肝硬変など組織病変を伴う多くの疾患において,その初期段階から組織の硬さ(弾性)が変化することから,従来のCT,MRI,超音波などの医用画像による組織の形態や血流などの機能情報に加え,組織弾性の分布が可視化できれば,早期診断や良悪性の鑑別診断や化学療法などの治療効果の判定に有効であることが期待されていた.その臨床ニーズに応えるため,われわれは産学官連携での超音波エラストグラフィーの研究開発を推進し,2003年に世界初の臨床用装置としての実用化を達成した.また,新技術の臨床現場への普及のため診断ガイドラインの整備が進められた結果,現在では,超音波装置の多くにエラストグラフィー機能が搭載され,乳がん,慢性肝炎などへの新たな画像診断法として臨床の場で広く活用されている.
本稿では,日本医用画像工学会功績賞の受賞対象となった「人工知能を用いた内視鏡診断支援システムの開発」について紹介したい.このシステムは,大腸内視鏡を対象として,内視鏡画像からポリープを検出し,その類型判断などを行うものである.ここでは,(1)大腸内視鏡ビデオ画像における大腸ポリープ発見支援,(2)発見された大腸ポリープの腫瘍性であるか否かの分類,(3)腫瘍性であると判断されたポリープの詳細な分類,といった機能が実装されている.特に,超拡大大腸内視鏡画像を用いて大腸ポリープを腫瘍性か非腫瘍性に分類するシステム「EndoBrain」は,機械学習 / 人工知能(ML/AI)技術を本格的に用いた医療機器として,医機法に基づく承認を取得したわが国初のAI内視鏡として知られるに至った.本稿では,受賞対象となった大腸内視鏡診断支援装置の概要について述べ,今後の展望について示したい.
第2回では,X線暗視野法(X-ray Dark-Field Imaging; XDFI)で得られた屈折コントラスト像から屈折コントラストCTを再構成する手法について解説する.屈折コントラスト像は被写体を伝搬するX線の屈折角を明るさとして表現したものであるが,屈折コントラストCTは被写体の屈折率分布を表現する. 一般的にCTを得るには投影として被写体の線積分が必要であり,屈折率の分布を再構成するには,屈折角を屈折率分布の線積分に変換する必要がある.この講座では,過去に得られた屈折角と線積分の関係を表現する3つの投影方程式を紹介し,それぞれのCT再構成法について解説する.