大気汚染学会誌
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20 巻, 4 号
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  • 栗原 力, 小島 益生, 篠田 和男, 野村 杉哉
    1985 年 20 巻 4 号 p. 235-250
    発行日: 1985/08/20
    公開日: 2011/11/08
    ジャーナル フリー
    わが国の標準ガスは, 質量比混合法によって, 混合ガスの基準標準ガスが調製され, これをもとに濃度の国内統一化が図られている。現在, 検査制度に基づいて供給されている標準ガスは, 9種類である。この供給体系は国内委員会での検討, 国際委員会の動きを勘案しつつ, 計量行政審議会の建議および答申を踏まえたもので, 国家標準に求源性 (トレーサビリティ;遡及性) をもたせている。本総説は, その経緯, 質量比混合法, 検査制度および国際的な整合について記述した。また, 日本工業規格としても制定されていることと, 今後必要とされる標準ガスについても, その一端を述べた。
  • 栗田 秀實, 植田 洋匡
    1985 年 20 巻 4 号 p. 251-260
    発行日: 1985/08/20
    公開日: 2011/11/08
    ジャーナル フリー
    傾度風が弱い場合に大気汚染物質の長距離輸送を引き起こす総観規模の気象条件について, 気圧, 地上風, 高層気象データに基づいた解析を行った。特に, 長距離輸送に最も重要な役割を果す, 内陸の山岳地帯に日中に形成される熱的低気圧と, 高層気象の特徴に注目した。
    長距離輸送は高気圧に覆われ, 上層風が弱い場合に発生する。このとき, 大気下層では局地風が発達し, 熱的低気圧および総観規模の高気圧に伴う沈降性逆転によりこれらの局地風が結合され, 熱的低気圧に吹き込む太平洋側からと璃本海側からの2つの大規模な風系が形成される。そして, 総観規模の気圧分布は熱的低気圧の中心位置, したがって, 2つの大規模風系の収束線の位置を決定し, その結果, 長距離輸送による大気汚染物質の到達範囲を決定する。
  • 末田 新太郎, 山下 俊郎, 重森 伸康
    1985 年 20 巻 4 号 p. 261-266
    発行日: 1985/08/20
    公開日: 2011/11/08
    ジャーナル フリー
    大気浮遊粉じん中のアジピン酸ジ-2-エチルヘキシル (DEHA) の分析方法について検討した。大気浮遊粉じんは, ハイボリウムエアサンプラーにガラス繊維炉紙を取り付け捕集し, ソックスレー抽出器を用いて, ベンゼンで抽出を行った。ベンゼン可溶性物質は, クデルナ・ダニシュ濃縮器で濃縮後, シリカゲルカラムクロマトグラフィーにより分画した。DEHAは, クロロホルム: エチルエーテル (I: I) フラクションの液層に溶出した。DEHAは, キャピラリーカラムガスクロマトグラフおよびガスクロマトグラフ/質量分析計により同定, 定量した。回収率は, 吸引流速780l/minで89.9%, また吸引流速1300l/minで78.6%であった。この分析方法を用いて, 北九州市内の大気浮遊粉じん中のDEHAを測定した。その濃度は, 1.26ng/m3.であった。
  • 高野 二郎, 北原 滝男, 安岡 高志, 光沢 舜明
    1985 年 20 巻 4 号 p. 267-271
    発行日: 1985/08/20
    公開日: 2011/11/08
    ジャーナル フリー
    本研究では, 大気汚染物質である一酸化窒素の反応性を解明する目的で, 一酸化窒素ガスによるニトロソ化合物のニトロ化合物への酸化反応について, 実験および検討を行った。
    芳香族ニトロソ化合物を四塩化炭素で希釈して1%(9/9) の濃度に調製したのち, 一酸化窒素ガスを芳香族ニトロソ化合物に対して10倍モルの濃度で2時間30分通じた。
    反応終了後, 生成物をGC-MS, IR等で測定した。
    実験はp-ニトロソフェノール, ニトロソベンゼン, ニトロソトルエソ, p-ニトロソ-N, N-ジメチルアニリンの四種類について25℃ で反応を行った。その結果, これら全ての物質は一酸化窒素により, ニトロ化合物に酸化され, その酸化される度合 (酸化効果) はべソゼン核の置換基により異なり, 電子供与性の強さの順にニトロ化合物への転化率が高くなることがわかった。
  • 大気降下物による表層土壌中の金属への寄与に関する富化判別係数および富化率による推定
    立本 英機, 中川 良三, 鈴木 伸
    1985 年 20 巻 4 号 p. 272-278
    発行日: 1985/08/20
    公開日: 2011/12/15
    ジャーナル フリー
    前報で, 大気汚染物質と土壌汚染物質との相関について述べた。本報では, 千葉市内における表層土壌中の金属濃度を調べ, 大気降下物による表層土壌中の金属への寄与について,「富化判別係数 (EDF)」および「富化率 (ER)」による推定を試み, 金属分布の様相などについて検討した。
    表層土壌および下層土壌の中から, 簡便法によってCa, Al, Mn, Fe, Cd, Pb, Cu, Zn, Ni, VおよびSiの11元素を抽出した後, それらの濃度を原子吸光光度法などによって定量した。その結果,
    1) 土壌中の金属濃度は試料採取地点により大きく変化し, また表層土壌中のそれらの金属濃度はAl>Fe>Ca>Mn>Zn>V>Pb>Cu>Ni>Cdの順で小さくなる傾向があった。
    2) 種々の金属のEDFおよびERは次式で計算される
    EDF= (TE/TB/SE/SB)
    ER (%) =100 (EDF-1)/EDF
    ここにTE: 各地点の表層土壌中の元素濃度, TB: 表層土壌の指標元素濃度, SB: 各地点の下層土壌中の元素濃度, SB: 下層土壌中の指標元素濃度で, 本実験ではケイ素 (Si) を選んだ。
    3) 工場周辺地域のEDFは他の地域より高く, 特にFe, Pb, CuおよびZnは顕著に高く, それらのEDF値はそれぞれ, 5.2~3.8, 1.3~2.2, 2.4~3.2および2.9~2.4であった。
    4) データから判断すると鉛は千葉市全域にわたって広範囲に寄与していると推定される。更にFe, Zn, Ca, MnおよびAlもまた徐々に広範囲に寄与されつつあることがわかった。
  • I. 現地における異常症状の実態とその原因について
    松丸 恒夫, 松岡 義浩, 白鳥 孝治
    1985 年 20 巻 4 号 p. 279-285
    発行日: 1985/08/20
    公開日: 2011/11/08
    ジャーナル フリー
    ヨウ素精製工場に隣接するナシ園において, ナシの葉の葉肉部がネクロシス化し, 激しい場合は落葉するという異常症状が発生した。そこで原因究明をねらいとして現地実態調査を行った。その結果は以下のとおりである。
    1) 異常症状は葉脈間の葉肉部にネクロシスを生ずるタイプと葉縁部にネクロシスを生ずるタイプに分けられた。前者には品種「幸水」,「新水」が, 後者には「八幸」,「八君」が相当した。
    2) 異常症状の発生には品種間差が認められ,「幸水」,「八幸」が感受性,「長十郎」が抵抗性,「新水」,「八君」はその中間であった。
    3) ヨウ素, 塩素, 硫黄, 臭素, フッ素成分の葉分析の結果, 被害葉のヨウ素含有率のみが異常に高いことが認められた。
    4) ヨウ素精製工場周辺のナシ以外の植物調査の結果, 6種類の植物葉にネクロシス又はクロロシスを伴う異常症状が確認された。また, それらの植物葉を分析した結果, すべての葉に高濃度のヨウ素が検出された。
    5) ナシの葉の異常症状の原因はヨウ素の過剰集積によるもので, ヨウ素の飛来源は隣接するヨウ素精製工場であろうと推察された。また, 異常症状の発現する葉中ヨウ素含有率の限界値は, 感受性の「幸水」,「八幸」で20~50ppm (乾物当たり) と考えられた。
  • 岩本 真二, 宇都宮 彬, 石橋 竜吾, 武藤 博昭
    1985 年 20 巻 4 号 p. 286-300
    発行日: 1985/08/20
    公開日: 2011/11/08
    ジャーナル フリー
    浮遊粉じんの発生源の推定を行うため, 58年2月から3月にかけて11日間, 福岡県大牟田市内12ヵ所において, ハイボリューム・エア・サンプラーを使い浮遊粉じん採取を行った。これらの試料について25項目を分析した。その結果は, 次のようであった。
    浮遊粉じんは, 大きく炭素系成分, 金属酸化物, 水溶性イオン化合物に分類でき, この3成分で粉じん全体の77%を占めていた。
    これらの多量成分をもとに, chemical mass balance法により, 土壌, 自動車排気ガス, 石油燃焼, 二次生成粒子, 海塩粒子, 亜鉛精錬工場, カルシウム化合物を発生源として寄与率の推定を行った。これら7つの発生源で粉じん全体の85%を同定することができた。
    また, これら発生源寄与の変動をみるために, 気象による分類および重回帰分析を行ったところ, 土壌, 自動車排ガスが粉じん濃度の変動に大きく影響していることがわかった。
  • 樋口 洋一郎, 氏家 淳雄, 市川 勇, 横山 栄二
    1985 年 20 巻 4 号 p. 301-307
    発行日: 1985/08/20
    公開日: 2011/11/08
    ジャーナル フリー
    本研究の目的は, 光化学オキシダントの主成分であるオゾン (O3) の効果につき検討するため, 9~15時間の明暗環境 (明期9~18時, 暗期18~9時) 下におけるラットの回転カゴ運動活性を指標にして検討したものである。
    6~7, 11~12および22~24週令のウィスター系雄ラットに0.25, 0.5および1.0PPmのO3を単回あるいは0.25, 0.5および1.0ppmをそれぞれ第1日, 2日, 3日と進行的に19~22時までそれぞれ3時間暴露した。
    結果は次の通りである。
    1) ラットは暗期に高く, 明期に低い回転カゴ運動活性の日週パターンを示した。
    2) 6~7および11~12週令のラットはO3暴露中有意の運動活性低下を示した。しかし, 22~24週令のラヅトはO3暴露中著明な運動活性の変化を示さなかった。これは成熟ラットの運動活性レベルが6~7および11~12週令ラットより低いためと考えられる。
    3) O3暴露停止後, 運動活性の高進がしばしぼ認められた。
    回転カゴ行動に及ぼすO3の効果の機序は充分説明出来ないが, 動物行動を利用することにより, 比較的低濃度のO3の毒性の検討に応用できると考えられる。
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