本発表ではホルモン感受性臓器における腫瘍の発現機序とヒトへの外挿性について紹介する。
膵島細胞腫瘍:セロトニン・ドーパミン拮抗薬による発がんは、その薬理作用により増加したプロラクチン(PRL)によると考えられ、疫学的調査結果からヒトへの外挿性は否定的である。
甲状腺腫瘍(濾胞細胞):甲状腺ホルモン(T)合成阻害剤や肝酵素誘導剤による本腫瘍はTレベル減少に伴う、反応性の甲状腺刺激ホルモン増加を介して発生するが、腫瘍発生の感受性には種差が存在する。
甲状腺C細胞腫瘍:GLP-1受容体作動薬による本腫瘍発生はC細胞上のGLP-1受容体を介するが、ヒトC細胞上にはGLP-1受容体はほとんど発現しない。
副腎髄質褐色細胞腫:多くの本腫瘍誘発化合物が、交感神経刺激により副腎クロム親和性細胞のカテコラミン合成を誘発する経路に作用する。ヒトと異なりラットでは交感神経刺激に対してクロム親和性細胞が増殖する。
卵巣間膜平滑筋腫:β2受容体作動薬による本腫瘍発生は平滑筋細胞への直接作用に対する適応反応と考えられるが、ヒトでは本薬に長期間曝露されないことから外挿性は低い。
精巣間細胞腫瘍:多くの薬物が最終的に血中黄体刺激ホルモン(LH)を上昇させ、本腫瘍を誘発する。ヒトではLH受容体の発現は少なく、ヒトへの外挿性は低い。
乳腺腫瘍:D2受容体抑制を介してPRLを増加させる薬物が本腫瘍を誘発し、疫学的調査結果等からヒトでの外挿性は否定できない。
下垂体細胞腫瘍:LH放出ホルモン作動薬による発がん機序は不明である。D2受容体阻害薬は内因性ドーパミンによる増殖抑制を阻害することにより本腫瘍を発生させる。いずれもヒトへの外挿性が否定できない。
子宮内膜腫瘍:ドーパミン作動薬は、PRLサージの抑制、及び加齢に伴うE:プロゲステロン比の増加により本腫瘍を誘発するが、これらの作用には種差が存在する。
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