芝草研究
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49 巻, 2 号
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研究論文
  • Takao Tsukiboshi, Toshihiro Hayakawa, Koya Sugawara
    2021 年 49 巻 2 号 p. 71-77
    発行日: 2021/03/31
    公開日: 2022/03/31
    ジャーナル オープンアクセス
    寒地型および暖地型芝草にダラースポット病を引き起こす病原糸状菌は, 従来Sclerotinia homoeocarpaと分類されていたが, 日本各地で採集した菌株の形態およびrDNA-ITS遺伝子領域の塩基配列に基づく分子系統解析により, 再同定を行った。 26都道府県から採集した89菌株を用い, クリーピングベントグラス, ケンタッキーブルーグラス, ペレニアルライグラス, ノシバ, コウシュンシバ, センチピードグラス等から分離した63菌株は, コロニー形態および分子系統樹上の位置から, 世界で最も広く分布し, 寒地型芝草の病原菌として知られるClarireedia jacksoniiと同定した。Clarireedia属は交配等により形成された子のう盤およびコロニー形態と遺伝子配列から, 2018年に創設された新属である。コウシュンシバ, ノシバ, バミューダグラス, ベントグラス等から分離した18菌株は, 暖地型芝草の病原菌として世界に広く分布するClarireedia monteithianaと同定した。主にベントグラスから分離した8菌株は, 分子系統樹でClarireedia属の既知種とは異なるグループを形成し, 新種と推定されたため, Clarireedia sp. TG1とした。小型カップを用いた病原性試験および培地上での菌糸生育温度試験の結果, C. jacksoniiはノシバよりベントグラスに強い病原性を示し, 菌糸生育の最適温度は25℃で, 33℃では生育が認められなかった。これに対し, C. monteithianaは菌株によっては上記2草種に概ね同等の病原性を示し, 菌糸生育適温は28℃で, 33℃でも良好に生育した。Clarireedia sp. TG1は両草種に病原性を示し, 菌糸生育適温は20〜28℃であった。3菌種の採集地から, C. jacksonii は主に寒地型芝草菌として全国に分布し, C. monteithiana は暖地型芝草菌として西日本を中心に分布すると推定した。
実用記事
  • 上遠野 敦, 山下 律正, 涌井 史郎, 飯島 健太郎
    2021 年 49 巻 2 号 p. 78-82
    発行日: 2021/03/31
    公開日: 2022/03/31
    ジャーナル オープンアクセス

    都市部軌道緑化による表面温度低減効果について, 無潅水かつ連続無降水におけるバラスト軌道面 (以下非緑化区) および緑化面 (以下緑化区) の温度を定量化した。本研究では緑化区の表面温度が非緑化区の表面温度より低くなることを緑化による表面温度低減効果 (マイナス〜℃) として定義し, その効果を軸とした検証, 分析を行った。結果, (1) 緑化による表面温度低減効果は, 無潅水かつ連続無降水条件においても全体として存在した。統計処理結果から日中では研究期間10日中8日間5%水準で有意に, 夜間では10日全日1%水準で有意に, 緑化による表面温度低減効果が発揮された。 (2) 緑化による表面温度低減効果の最大値は, 最終降水日から7日目に観測された-6.65℃であった。 (3) 緑化区は連続した期間内において, 5℃毎に区分した温度帯のうち非緑化区で観測された高温度帯の出現時間割合を最大約10%低減した。 (4) 本研究で定量化した, 部分としての緑化による表面温度低減効果が, 赤外線温度分布画像を用いて面的に連続して存在することを追認した。本研究の対象である都市部軌道緑化による表面温度低減効果は, 無潅水かつ10日間の連続無降水条件が観測された中で, 日中は9日間5%水準で, 夜間は10日全日1%水準で有意に機能し続けたことをはじめて明らかにした。

資料
講演要旨
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