脊髄損傷急性期の病態生理の解明を目的として,ラットを用いた急性脊髄損傷モデルを作製し電気生理学的検討,共焦点レーザー走査顕微鏡法による脊髄の形態,機能の観察,及び電子プローブX線微小部分析法による脊髄軸索内元素濃度の変化を多面的に活性ある状態で測定分析を行った.
完全麻痺群では軸索内K
+濃度は低下しCa
2+は上昇した.また神経線維は変形し脊髄誘発電位の波形消失と蛍光強度の減弱を認めた.不全麻痺群の損傷直後の軸索では,一過性のCa
2+濃度増加等により活動電位が低下し螢光強度が減弱した.脊髄誘発電位振幅の回復,軸索膜の蛍光強度の増強や軸索内元素濃度の正常化等にともない麻痺は回復した.
神経線維内の元素濃度及び電位の経時的変化を追跡することは,脊髄損傷の急性期における病態生理解明の一助になるものと思われた.
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