【目的】rapid growth cancerの中でも脊椎転移の頻度が高い肺癌と肝細胞癌における, 腫瘍脊椎骨全摘術(TES)の適応を見直すことを目的とした. 【対象および方法】最近の10年間に肺癌と肝癌の脊椎転移に対しTESを施行したそれぞれ6例を対象とした. これら12例の手術成績と予後を比較検討した. 【結果】肺癌群では6例中4例が現在も生存中で, 6例の平均生存期間は26.5か月であった. 一方, 肝癌群では6例中1例のみが現在も生存中で, 6例の平均生存期間は12.3か月であった. 肝癌群ではいずれの症例も術後早期に, 肝内再発や多臓器転移, あるいは局所再発をきたしていた. 【考察】肺癌はTES後の予後が肝細胞癌に比べて有意に良かった. 肺癌脊椎転移では, 肺の原発巣がコントロールでき, 主要臓器への転移がなく, 脊椎転移が限局している場合は, TESのような根治的な外科切除も適応となり, 予後の改善が期待できる. 一方, 肝癌では, 肝硬変を伴い易出血傾向を有するため, TESでは手術侵襲が大きくなる. そのため周術期に癌免疫能が低下し, 術後早期から肝内再発や多臓器転移をきたした可能性が示唆される. 肝癌ではTESの適応には慎重でなければならない.
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