本研究の目的は,堀田(2015)の複数選出選挙区制(大選挙区制)に対応した最適化モデルを,数理的に同じ問題となる合区を設定する問題(合区と配分議席を求める問題)に適用し,参議院選挙区制における最適な合区を明示し,限界較差分析により合区の効果を測定することである。なお,モデルの目的関数として一票の最大較差を最小化する以外にα-divergenceを採用する。これは,個人還元主義に基づく評価指数としてWada(2012,2016)で採用された,分布間の擬距離を測る指数である。このとき,合区を許す数を所与として設定限界まで増やして行った場合の,各指標に関する一票の較差や平均からの乖離の変化と選挙区分布を提示し,合区の可能性を検証する。例えば,3カ所の合区を許せば,一票の最大較差を3倍未満にでき,8カ所許せば2倍未満を達成することがわかる。
抄録全体を表示