日本内分泌・甲状腺外科学会雑誌
Online ISSN : 2758-8777
Print ISSN : 2186-9545
30 巻, 4 号
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特集1
  • 木村 理
    2013 年 30 巻 4 号 p. 245-246
    発行日: 2013年
    公開日: 2014/01/31
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    2000年のWHO分類で,膵神経内分泌腫瘍(Pancreatic Neuroendocrine Tumor;P-NET)は腫瘍径,組織学的分化度,血管浸潤の有無,隣接臓器浸潤の有無,Ki-67指数,核分裂像数から悪性度に応じて,高分化型内分泌腫瘍,高分化型内分泌癌,低分化型内分泌癌に分類された。さらにヨーロッパ神経内分泌腫瘍学会(European Neuroendocrine Tumor Society ;ENETS)より核分裂数,およびKi-67 指数によりG1,G2,G3に分類するGrade分類と,TNM分類により治療指針を立てるとするガイドラインが提唱され,2010年のWHO分類でもENETSガイドラインが推奨したGrade分類が重要視され,高分化型腫瘍はNET G1,NET G2に,低分化型腫瘍はNEC(Neuroendocrine carcinoma)に分類された。本邦においても膵・消化管神経内分泌腫瘍(NET)診療ガイドライン作成の動きが本格化し,完成間近の状態となっている。本ガイドラインの目的は,本邦における膵・消化管NETの診療レベルの均質化であるが,エビデンスレベルの高い報告が少ない領域であるがため,その作成過程でリンパ節郭清,術式選択などに関して各種学会,研究会で多くの議論が行われた。P-NETの診療を行うにあたり,機能性,非機能性の分類,Grade分類,NETの多様性(heterogeneity)をしっかり認識しておくことは重要なことである。また,非機能性腫瘍という診断には,waste basket的な側面があり,非機能性腫瘍の中にも多様性(heterogeneity)が存在していることを認識する必要がある。画一的に大きさのみで治療方針を決めるようなことはせず,各種画像診断を駆使して,腫瘍の形態やリンパ節転移がないか,最近ではEUS-FNAを活用した術前Grade分類の有用性も報告されているが,これらの検査を総合して悪性度の評価を行い治療方針の決定を行うべきである。その結果,より悪性度の高いことを示唆する所見があればリンパ節郭清を伴う膵切除を選択すべきであろう。今年9月に日本神経内分泌腫瘍研究会(Japan Neuroendocrine Tumor society;JNETS)が発足した。JNETSの目的の一つは,本邦のNETに関する診療データを集積し,それを元にしてガイドライン作成を行い,日常診療に還元するとともに,世界に向けて研究成果を公表していくことである。NET work Japanが中心となり,まとめられた本邦におけるNETの疫学データは,膵・消化管NETの部位別頻度など,いくつかの点で欧米とは異なっていた。また,P-NETに対するmTOR阻害剤であるEverolimusの効果も,欧米人よりも日本人を含むアジア人で良好であったという事実などからも,欧米のデータをそのまま本邦の診療にあてはめるべきではないと考えられる。P-NETの外科診療には,他疾患の精査で偶然発見される1cm以下の非機能性腫瘍の取り扱い,リンパ節郭清の範囲,肝転移術後を含む再発高危険群での術後補助療法,術前化学療法など,まだまだ課題が残されている。また,先進諸国で検査可能な血清クロモグラニンAやソマトスタチンレセプターシンチグラフィーなど,本邦において保険診療で行えないことも大きな問題である。JNETSが中心となりオールジャパンで,一つ一つの施設では数に限りのある本邦におけるNETの治療成績がまとめることで新たな事実を明らかにすること,また,様々な問題に取り組んでいくことにより,NET診療の進歩につながることを期待したい。本書では手塚康二先生(山形大学医学部外科学第一講座(消化器・乳腺甲状腺・一般外科学講座)),木村英世先生(九州大学大学院医学研究院臨床・腫瘍外科),土井隆一郎先生(大津赤十字病院外科),青木 琢先生(東京大学肝胆膵・人工臓器移植外科),青木 豪先生(東北大学病院肝胆膵外科)といった方々に主筆をお願いした。本書によってわが国における最新のP-NET外科治療についての考え方がご理解いただけるものと確信している。
  • 手塚 康二, 木村 理
    2013 年 30 巻 4 号 p. 247-252
    発行日: 2013年
    公開日: 2014/01/31
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    WHO分類(2010)により,膵神経内分泌腫瘍(P-NET)はNET G1,G2,NECに分類され,NETの診療に用いられている。局在診断は,腹部超音波検査,Dynamic CT,MRI,超音波内視鏡検査(EUS)検査などを中心に行われる。ソマトスタチン受容体シンチグラフィーや68Ga-DOTATOC-PET/CTは海外でその有用性が報告されているが本邦では保険未承認である。腫瘍径の比較的小さいインスリノーマは,腫瘍核出術や膵縮小手術,腹腔鏡手術のいい適応となる。2cm以上の非機能性P-NETはリンパ節郭清を伴う膵切除術が推奨される。1~2cmの非機能性P-NETに関しても,リンパ節転移を伴うことがあり注意を要する。ガストリノーマは,腫瘍径に関わらずリンパ節転移することがありリンパ節郭清が必要である。進行性P-NETに対して,Everolimusが2011年12月に,Sunitinibが2012年8月に適応追加され,広く用いられてきている。Streptozotocinは,保険認可に向け治験が行われるなど,今後期待できる薬剤である。再発診断や再発後の経過観察などに有用である血清クロモグラニンAは本邦で保険未承認である。
  • 木村 英世, 大塚 隆生, 伊藤 鉄英, 渡邉 雄介, 松永 壮人, 田村 公二, 井手野 昇, 安蘓 鉄平, 宮坂 義浩, 上田 純二, ...
    2013 年 30 巻 4 号 p. 253-255
    発行日: 2013年
    公開日: 2014/01/31
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    本邦における神経内分泌腫瘍(NET)の診断,治療ならびに研究に関する情報の共有を目的としてNET Work Japanが2004年に設立され,2002年~2004年の3年間,患者の実態調査と2005年の1年間の受療患者を対象とした第1回疫学調査が行われた。それによると人口10万人あたりのP-NET有病患者数は2.23人,新規発症数は1.01人であり,いずれも欧米より多いことが明らかとなった。また遠隔転移の頻度,非機能性P-NETにおけるMEN1の合併率などが欧米と異なることも分かった。2010年には第2回疫学調査が行われ,その結果の公表が待たれる。P-NETの治療は外科的切除術が唯一の根治的治療であり,局所に留まるP-NETはすべてが切除適応である。
  • 土井 隆一郎, 阿部 由督, 伊藤 孝, 中村 直人, 松林 潤, 余語 覚匡, 鬼頭 祥悟, 浦 克明, 豊田 英治, 平良 薫, 大江 ...
    2013 年 30 巻 4 号 p. 256-261
    発行日: 2013年
    公開日: 2014/01/31
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    膵神経内分泌腫瘍(pNET)は神経内分泌組織にある腸クロム親和性細胞由来の腫瘍であるとされる。実際に遭遇する腫瘍の種類は多く,腫瘍ごとに症状が異なるため診断方法もさまざまである。しかしながらpNETと診断された場合はすべて外科切除の適応と考えるべきである。インスリノーマ以外の腫瘍は転移・再発のリスクが極めて高く,リンパ節郭清が必要である。肝転移を伴っている場合は予後不良であるが,一方,切除によるメリットがあると判断される場合は肝切除の適応がある。外科切除のみで根治できない症例が多く,集学的治療を考慮しなければならない。pNETに対する分子標的治療薬を組み込んだ治療体系の整理が必要である。
  • 青木 琢, 國土 典宏
    2013 年 30 巻 4 号 p. 262-265
    発行日: 2013年
    公開日: 2014/01/31
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    膵原発神経内分泌腫瘍(P-NET)は,他臓器原発NETと比較し悪性例,転移陽性例の頻度が高いため,原則として全例治療適応となる。治療の第一選択は外科切除であり,原発巣の切除術式は腫瘍のサイズ,主膵管との位置関係,悪性の可能性に基づき決定されるが,リンパ節郭清の基準,縮小手術の適応基準はいまだ明確にはされていない。遠隔転移,特に肝転移の制御は予後の観点から臨床的には最重要課題の一つと考えられる。遠隔転移例に対しても切除可能であれば切除が推奨されるが,治癒切除率は高くなく,また切除後高率にみられる再発に対する有効な治療法が開発されていない点が問題となっている。切除単独療法による根治が困難である現在,抗腫瘍治療(ホルモン治療,抗癌剤,分子標的薬)と外科治療のさまざまな組み合わせが期待されており,長期生存から治癒を目指したストラテジーへの転換が求められている。
  • 河本 泉, 今村 正之
    2013 年 30 巻 4 号 p. 266-270
    発行日: 2013年
    公開日: 2014/01/31
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    膵神経内分泌腫瘍のもっとも重要な予後因子は肝転移である。十分なエビデンスを持った治療法は少ないが,ENETS,NCCNなどから診断・治療のガイドラインが示されている。完全切除術が可能な場合,あるいは十分な減量手術が可能な場合は切除術単独あるいは切除術とRFAの組み合わせが勧められている。切除術の適応とならない場合の治療としては肝局所療法と全身療法がある。肝局所療法としてはRFA,TAE,TACEなどが挙げられており,全身療法としては化学療法,分子標的薬,PRRTなどが挙げられている。2011年以降,新たにエベロリムスとスニチニブが膵NETに保険適用となった。ストレプトゾシンも保険承認にむけて申請準備中である。また本邦からも膵・消化管神経内分泌腫瘍診療ガイドラインが2013年中に公開予定である。
  • 青木 豪, 大塚 英郎, 海野 倫明
    2013 年 30 巻 4 号 p. 271-274
    発行日: 2013年
    公開日: 2014/01/31
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    膵内分泌腫瘍(pancreatic neuroendocrine tumor:P-NET)は比較的稀な疾患であるものの,膵悪性腫瘍全体における比率は年々上昇している。WHOが規定する病期分類は時代により大きく変化し,現在ではKi-67指数や核分裂像に基づく分類が用いられている。P-NETは種類により予後を大きく異にする疾患であるため,外科的治療は腫瘍の種類によって決定される。代表的疾患であるインスリノーマは核出術などの縮小手術が基本となる一方,ガストリノーマはリンパ節郭清を伴う膵切除術が推奨されている。切除不能症例に対してはソマトスタチンアナログ製剤をはじめ,エベロリムスやスニチニブなどの分子標的薬が使用される。この項では,P-NETが発見されてから,治療に至るまでのストラテジーを解説するとともに,興味深い一例を提示する。
特集2
  • 菅間 博, 伊藤 康弘
    2013 年 30 巻 4 号 p. 275
    発行日: 2013年
    公開日: 2014/01/31
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    東日本大震災(2011年3月11日)に伴う福島第一原発事故後3年が経過しようとしている。小児の甲状腺癌の発生が危惧され,社会的な関心が高まっている。小児の甲状腺癌についての医療関係者間での共通の理解が必要と考えられる。しかし,小児甲状腺癌は稀な疾患であるため,過去の基礎データの整理が十分になされていない。チェルノブイリ原発事故(1986年4月26日)では,事故後4~5年から小児の甲状腺癌が発症していることから,小児甲状腺癌についてのコンセンサス形成が急がれる。本特集では,小児甲状腺癌の理解に必要な基礎的事項を整理するとともに,これまでの小児甲状腺癌の臨床について解説する。具体的には,日本国内の小児甲状腺癌の病理学的ならびに遺伝学的な特徴と問題点を整理する。小児甲状腺癌の臨床として,術前診断の良悪判定の要となる細胞診断,さらに小児濾胞癌と小児乳頭癌の臨床について総説する。小児の甲状腺癌についての内分泌・甲状腺外科医の間のコンセンサス形成の一助となれば幸いである。
  • 近藤 哲夫, 中澤 匡男, 加藤 良平
    2013 年 30 巻 4 号 p. 276-280
    発行日: 2013年
    公開日: 2014/01/31
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    乳頭癌充実型は充実性構造を呈して増殖する乳頭癌の一亜型で,成人発生の甲状腺癌に比べて小児の甲状腺癌でその頻度が高いことが知られている。特にチェルノブイリ原子力発電事故後に周辺地域で増加した小児甲状腺癌ではこの充実亜型の割合が高いことが報告され,放射線被爆との関連がこれまで論議されてきた。また乳頭癌充実型にはret/PTC3変異が高いことも知られており,遺伝子異常の点からも通常型乳頭癌とは異なる特徴を持っている。福島原子力発電事故よって本邦でも小児甲状腺癌への関心が高まっているが,本稿では乳頭癌充実型/充実濾胞型の病理学的特徴,低分化癌との異同,チェルノブイリ原子力発電事故との関連,本邦における乳頭癌充実型,遺伝子背景について概説する。
  • 菅間 博
    2013 年 30 巻 4 号 p. 281-286
    発行日: 2013年
    公開日: 2014/01/31
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    小児甲状腺癌を理解するために必要な基礎事項を整理するとともに,福島原発事故以前に日本国内の多施設で手術された小児甲状腺癌を集計し,チェルノブイリ原発事故後の小児甲状腺癌と比較した。甲状腺癌の発症は女児の二次性徴がはじまる9歳位から認められ,20歳以下の甲状腺癌185例のうち15歳以下の小児の症例が39例あった。成人同様に女性に多いが,年齢が低いほど性差は少なくなる。小児に特徴的な甲状腺癌の組織型としては,びまん性硬化型乳頭癌DSPCと,充実型乳頭癌があげられる。DSPCは臨床的には橋本病との鑑別が問題となるが,その病理学的な本質は甲状腺の癌性リンパ管症とびまん性リンパ球浸潤と考えられる。充実型乳頭癌はチェルノブイリ原発事故に注目されたが,放射線被曝と関連のない国内でも若年者にみられる。病理組織学的に低分化癌との鑑別が問題となるが,臨床的に治療方針に違いがあることから,区別する必要がある。
  • 亀山 香織
    2013 年 30 巻 4 号 p. 287-290
    発行日: 2013年
    公開日: 2014/01/31
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    伊藤病院における最近20年間の15歳以下の甲状腺腫瘍性病変で,穿刺吸引細胞診(FNA)が行われ,その後甲状腺を切除した31例(腺腫様甲状腺腫5例,濾胞腺腫10例,濾胞癌4例,通常型乳頭癌3例,びまん性硬化型乳頭癌2例,濾胞型乳頭癌2例,充実型乳頭癌5例)を対象に細胞形態の検討を行った。充実型乳頭癌ではFNAで特徴的な所見は捉えられなかった。びまん性硬化型乳頭癌では多数の砂粒小体,扁平上皮化生である程度推定可能と思われる。今回の検討では症例がなかったが,小児例の多い篩状モルラ型乳頭癌では,濾胞状あるいは乳頭状,管状の細胞集塊が観察され,集塊辺縁には細胞のほつれがあり,核形の不整がみられることで推定される。また,腺腫様甲状腺腫で核腫大の目立つ例があったが,これが小児に多く認められる所見かどうかは今後の検討課題である。
  • 榎本 圭佑, 榎本 敬恵, 長井 美樹, 武田 和也, 原田 祥太郎, 坂田 義治
    2013 年 30 巻 4 号 p. 291-293
    発行日: 2013年
    公開日: 2014/01/31
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    小児甲状腺濾胞癌は発生頻度が非常に低く,主に成人症例の濾胞癌や分化癌の解析に含まれた報告か,症例報告がなされてきた。今日までに知られている小児症例における濾胞癌の臨床像について解説し,その治療法について報告する。
  • 伊藤 康弘, 宮内 昭, 木原 実, 小林 薫, 廣川 満良, 宮 章博
    2013 年 30 巻 4 号 p. 294-298
    発行日: 2013年
    公開日: 2014/01/31
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    年齢は甲状腺乳頭癌の予後を規定する重要な因子である。特に高齢者乳頭癌が生命予後不良であることは,よく知られている。ただし,生命予後とリンパ節再発予後,遠隔再発予後とは必ずしも一致しない。今回われわれは小児(20歳未満)乳頭癌110例の予後および予後因子について検討した。8例に術前から遠隔転移を認め(M1),これらはM0症例に比べてaggressiveな臨床病理学的所見を示した。M0症例における10年リンパ節および遠隔再発率はそれぞれ16%,5%であった。多変量解析において3cm以上のリンパ節転移,16歳以下が独立したリンパ節再発予後因子であり,3cm以上のリンパ節転移と被膜外進展が遠隔再発予後因子であった。M1症例およびM0症例各1例が癌死した。小児乳頭癌の生命予後は良好であるが,再発率はかなり高い。特に3cm以上のリンパ節転移,16歳以下,被膜外進展のある症例に対しては慎重な治療と経過観察が必要である。
原著
  • 桝野 絢子, 榎本 圭佑, 長井 美樹, 島津 宏樹, 武田 和也, 原田 祥太郎, 榎本 敬恵, 田仲 由佳, 松田 忠司, 今西 啓子, ...
    2013 年 30 巻 4 号 p. 299-304
    発行日: 2013年
    公開日: 2014/01/31
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    同時期に甲状腺癌が発見された家族性非髄様甲状腺癌(familial nonmedullary thyroid cancer:FNMTC)の3症例を経験したので,家系調査を行った。症例は37歳・女性,63歳・女性(母),41歳・女性(姉)の3名の家族で,画像所見と病理所見について比較し,その特徴を調べた。超音波画像では2cm以下の多発する腫瘤像を認め,粗大な石灰化を伴うものや小さなものでは比較的同じような類円形を呈していた。CT画像所見では石灰化を伴う腫瘤を両葉に認めた。病理学的所見では両葉に多発する腫瘤像を認め,個々の腫瘤は緻密な線維形成を伴っており,これらの所見は画像所見に反映されていたと考えられる。1症例の中で個々の腫瘤像の特徴が類似した多発する甲状腺乳頭癌をみた場合,FNMTCと考え,入念に家族歴を問う必要があると考える。
  • 武内 大, 都島 由希子, 中西 賢一, 佐藤 成憲, 林 裕倫, 菊森 豊根, 今井 常夫, 岩野 信吾, 伊藤 信嗣
    2013 年 30 巻 4 号 p. 305-309
    発行日: 2013年
    公開日: 2014/01/31
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    欧米では分化型甲状腺癌に対する甲状腺全摘術後のI-131を用いた放射性ヨウ素内用療法による残存甲状腺組織の除去(アブレーション)は標準的な治療法であるが,本邦では法規制およびヨウ素内用療法可能な入院施設の不足によりアブレーションが十分に行えていなかった。2010年本邦で外来アブレーションが可能となったのを受け,甲状腺全摘後の患者を対象に外来で30mCiの内用療法を施行した当院での32例について検証した。半年後に5mCi I-131シンチによるプラナー像における甲状腺床への集積の有無でアブレーションの成否を判定した。評価を行った28例全例で甲状腺床への集積を認めずアブレーション成功と判定でき,当院で実施している甲状腺全摘術の手技で,30mCiによるアブレーションは適切と考えられた。
症例報告
  • 迫 裕孝, 増田 康史, 原田 俊平, 中村 緑佐, 中野 且敬, 秋岡 清一, 細川 洋平
    2013 年 30 巻 4 号 p. 310-313
    発行日: 2013年
    公開日: 2014/01/31
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    症例は28歳女性。21歳のときに腺腫様甲状腺腫にて右葉切除と左葉腫瘍核出術を受けた。24歳時より,左葉が腫大し,28歳時の第2子妊娠の6カ月より急速に増大してきたために出産後,内科で検査を受けた。超音波検査で左葉に4.5cm大の主腫瘍と0.5~1.0cm大の腫瘍数個を指摘された。主腫瘍は,針生検の結果,鑑別困難な濾胞性腫瘍であったので,当科に紹介された。左葉切除+Ⅰ,Ⅱ,左Ⅲ・Ⅳリンパ節郭清術を施行した。術後の病理検査で低分化癌と診断されたので,甲状腺床に30mCiの131Iのアブレーションを施行した。術後10カ月目に3cm大の再発腫瘤と甲状腺床部の腫大と肺転移をきたした。再発腫瘤と甲状腺床部を切除し,外側区域郭清術を施行した。再発腫瘤と甲状腺床部には癌を認めたが,リンパ節転移はなかった。術後,放射性ヨード内用療法を施行したが,肺転移巣には取り込みはみられなかった。現在T4製剤と5FU製剤を投与して経過観察中である。
  • 川野 亮, 川野 汐織, 荻野 宗次郎, 保田 健太郎, 吉川 啓一, 片桐 誠
    2013 年 30 巻 4 号 p. 314-318
    発行日: 2013年
    公開日: 2014/01/31
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    症例は87歳女性。甲状腺腫瘤の精査を目的に当院を受診。触診,超音波検査で右葉に一致して3cm大の充実性結節と両葉に多数のコロイド結節が認められた。血液検査では甲状腺機能は正常であったが血清カルシウムおよびPTHインタクト(I-PTH)の上昇が認められた。充実性結節の細胞診では濾胞性腫瘍もしくは腺腫様甲状腺腫の診断であった。原発性副甲状腺機能亢進症が合併していると診断し頸部CT,99mTc-MIBIシンチを行ったが副甲状腺腫瘍の局在診断は得られなかった。高齢,腎機能低下,僧帽弁閉鎖不全症のため手術療法はhigh-riskのために困難と判断。本人,家族共に手術療法の希望せず,甲状腺結節は経過観察としシナカルセトの投与を開始。カルシウムは速やかに正常化しI-PTHも徐々に低下し正常化した。投与開始後3年目の現在,シナカルセトを継続投与し血清カルシウム,I-PTHはほぼ正常値が保たれている。
  • 佐藤 伸也, 森 祐輔, 橘 正剛, 横井 忠郎, 山下 弘幸, 覚道 健一
    2013 年 30 巻 4 号 p. 319-321
    発行日: 2013年
    公開日: 2014/01/31
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    症例は42歳の女性。甲状腺峡部の15mmの甲状腺乳頭癌および左外側区域のリンパ節転移に対し,甲状腺全摘および左側D2a郭清を施行した。術中,左反回神経に径10mmの表面平滑な紡錘形の白色腫瘍を認めた。腫瘍の一部を切除し病理に供したところ,術後に顆粒細胞腫と判明した。顆粒細胞腫の大多数は良性であるが,時に悪性の経過をたどるため,完全摘出が望ましい。しかし,本症例では術後に反回神経麻痺を認めず,病理でも悪性所見を認めなかったことから,追加切除せずに経過観察している。術後1年半の時点で腫瘍の増大や反回神経麻痺は認めていない。
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