日本内分泌・甲状腺外科学会雑誌
Online ISSN : 2758-8777
Print ISSN : 2186-9545
30 巻, 2 号
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特集1
  • 内野 眞也, 鈴木 眞一
    2013 年 30 巻 2 号 p. 91
    発行日: 2013年
    公開日: 2013/08/30
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  • 櫻井 晃洋
    2013 年 30 巻 2 号 p. 92-95
    発行日: 2013年
    公開日: 2013/08/30
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    多発性内分泌腫瘍症(multiple endocrine neoplasia,MEN)は複数の内分泌臓器に腫瘍や過形成を生じる常染色体優性遺伝性疾患であり,最初の報告は20世紀初頭にさかのぼる。しかし発症病変の組合せをもとにMEN1とMEN2に分類され,疾患概念が確立したのは1960年代後半のことである。両者は特定の,かつ複数の内分泌腫瘍が家族性に発症するという共通点はあるものの,本来は原因の異なる別個の疾患である。内分泌疾患に総じて言えることであるが,いずれも特徴的な病変に乏しく,また多臓器にまたがる複数の病変の確認をもって臨床的に診断が可能となることから,初発病変の診断の際に適切な全身検索がなされないと本症の診断に至ることができない。多くの日本人MEN患者がいまだ適切な診断に至っていない可能性が考えられ,このことは,患者本人のみならず,同様にMENを発症している血縁者,あるいは将来発症する可能性のある血縁者の診断や治療を遅らせることにもなる。内分泌腫瘍を発症した患者のうちどのような患者に対してMENの検索をすべきなのか,またひとたび患者をMENと診断した場合,その後の患者や家族に対する診療や対応はどうあるべきなのか,こうした問題を簡潔に提示した資料はこれまでわが国には存在していなかった。また本症患者を診療する可能性がある診療科は,内分泌内科・外科,脳神経外科,消化器内科・外科,泌尿器科をはじめとしてきわめて多領域にわたり,必ずしも内分泌内科,内分泌外科を専門とする医師とは限らない。このような現状にかんがみ,われわれはわが国のすべてのMEN患者が適切に診断され,かつ現時点で最良と思われる医療を受けることができることを願って多発性内分泌腫瘍症診療ガイドブックを作成した。本稿では今回金原出版株式会社より上梓された「多発性内分泌腫瘍症診療ガイドブック」作成の経緯とその行程を紹介する。
  • 岡本 高宏
    2013 年 30 巻 2 号 p. 96-97
    発行日: 2013年
    公開日: 2013/08/30
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    多発性内分泌腫瘍症診療ガイドブックで示されている診断アルゴリズムは外科的内分泌疾患の診療にあたって多発性内分泌腫瘍症を見逃さないことを目的としている。その要点と注意点について簡潔に記述した。
  • 小杉 眞司
    2013 年 30 巻 2 号 p. 98-101
    発行日: 2013年
    公開日: 2013/08/30
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    多発性内分泌腫瘍症1型(Multiple Endocrine Neoplasia type 1:MEN1)の診療ガイドラインとすべきガイドブックを作成した。疫学:MEN1の頻度は約3~4万人に1人程度と推定されるが,多くの患者が診断されていない可能性が高い。副甲状腺,下垂体,膵消化管腫瘍の罹病率はそれぞれ90%以上,約50%,約60%である。診断:3主要臓器のうち2病変,あるい1病変と家族歴またはMEN1遺伝子変異で診断される。膵消化管腫瘍の中で最も頻度が高いのはガストリノーマであり十二指腸粘膜下に小腫瘍として発生する。次いでインスリノーマ,非機能性腫瘍が多い。下垂体病変としては,プロラクチノーマが最も高頻度である。遺伝医療:MEN1関連症状の家族歴聴取がMEN1の診断に有用である。家族歴のあるMEN1患者,家族歴のないMEN1患者におけるMEN1変異陽性率はそれぞれ約90%,約50%である。MEN1家族歴がある患者の発症前遺伝子診断は変異保有者の早期診断を可能にする。MEN1遺伝学的検査を実施する際には遺伝カウンセリングを行う。
  • 鈴木 眞一
    2013 年 30 巻 2 号 p. 102-105
    発行日: 2013年
    公開日: 2013/08/30
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    多発性内分泌腺腫瘍症診療ガイドブックのうちのMEN1における治療,サーベイランスについては,CQが17ある。副甲状腺,膵・消化管神経内分泌腫瘍,下垂体腫瘍,その他について手術適応,術式,手術以外の治療,予後さらに術後(治療後)と未発症の腫瘍に対するサーベイランスがそれぞれの臓器ごとに示されている。MENの患者,家族そして診療に携わるものにとって極めて重要な情報である。
  • 内野 眞也
    2013 年 30 巻 2 号 p. 106-109
    発行日: 2013年
    公開日: 2013/08/30
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    多発性内分泌腫瘍症診療ガイドブックの多発性内分泌腫瘍症2型(MEN2)における疫学,診断,遺伝医療について述べる。疫学に関するCQ(クリニカル・クエスチョン)では,その頻度,各病変の罹病率,個々の関連病変に占めるMEN2の頻度についてとりあげた。診断に関するCQでは,甲状腺髄様癌,褐色細胞腫について検査法,自然歴について,またどのような場合にMEN2を疑うかをとりあげた。副甲状腺機能亢進症に関しては,MEN1と重複する部分が多く,MEN1の項を参照して頂くこととした。またコラムとして,カルシトニン測定とカテコールアミン測定のそれぞれの現状を,その他の随伴病変の臨床症状と診断についてとりあげた。遺伝医療に関するCQでは,家族歴の情報はどの程度重要か,RET 遺伝学的検査の対象と検査法・検出率,リスクのある血縁者に対するRET 遺伝学的検査の施行時期についてとりあげ,コラムとしてMEN2の遺伝カウンセリングにおける留意点,RET 遺伝学的検査実施施設,手続き,費用などについて解説した。
  • 今井 常夫
    2013 年 30 巻 2 号 p. 110-113
    発行日: 2013年
    公開日: 2013/08/30
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    多発性内分泌腫瘍症2型の治療は,甲状腺髄様癌に対する甲状腺全摘術と副腎褐色細胞腫に対する副腎摘出術がもっとも重要である。ガイドブックでは,甲状腺髄様癌の手術適応,術式,手術以外の治療,予後,変異キャリアに対する予防的甲状腺全摘術の適応に関してクリニカルクエスチョン(CQ)を設けた。褐色細胞腫では手術適応,術式,手術以外の治療,予後に関してCQを設け,さらにコラムで予防的副腎摘出術,皮質機能温存手術について,褐色細胞腫と妊娠についてを取り上げた。サーベイランスの項目で,まだ発症していない腫瘍に対する定期検査の方法,各腫瘍の術後定期検査についてCQを設けた。ガイドブックは専門家以外の医家向けのために診断について重点的に記載されているが,治療についても必要充分な情報提供がなされている。
特集2
  • 伊藤 公一, 絹谷 清剛
    2013 年 30 巻 2 号 p. 114
    発行日: 2013年
    公開日: 2013/08/30
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  • 筒井 英光, 星 雅恵, 久保田 光博, 鈴木 明彦, 池田 徳彦
    2013 年 30 巻 2 号 p. 115-118
    発行日: 2013年
    公開日: 2013/08/30
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    分化癌の治療方針を外来アブレーションの普及を踏まえ,我が国のガイドラインの内容を参照しつつ概説した。乳頭癌ではTNM分類によってリスクを評価し,甲状腺切除範囲を決定する。T1N0M0の明らかな低リスク群には葉切除を実施し,高リスク群に対してはアブレーションを前提とした全摘術を行う。どちらにも該当しない症例はグレーゾーンとして,合併症と再発・生命予後とのバランスをもとに術式を決定する。予防的リンパ節郭清は甲状腺切除と同一創で実施できる中央区域に留めることが多い。外側区域の潜在的リンパ節転移に対する再手術率をどこまで許容するかが問題となる。濾胞癌の術前診断は困難であり,その治療は遠隔転移を念頭に置いて組み立てられている。多くは濾胞癌を疑って葉切除を行い,病理診断に応じて追加治療を検討する。アブレーションの導入によりハイリスク患者の治療成績の向上が期待されるが,その取り扱いは画一的ではなく,ガイドラインを参考に個々の症例に応じた治療法を選択する必要がある。
  • 野口 靖志
    2013 年 30 巻 2 号 p. 119-121
    発行日: 2013年
    公開日: 2013/08/30
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    『甲状腺腫瘍診療ガイドライン』では,放射性ヨード内用療法についても臨床的立場に即した充実した内容となっている。しかしながら,わが国における放射性ヨード内用療法の現状は,決して恵まれたものとは言えない。そのために様々な課題があり,その易経は少なからずガイドラインに影響を与えていると考える。そこで放射性ヨード内用療法の現状がガイドライン作成にどのような影響を与え,またどのような課題があるのか考察する。
  • 渋谷 洋, 杉野 公則, 長浜 充二, 北川 亘, 伊藤 公一
    2013 年 30 巻 2 号 p. 122-126
    発行日: 2013年
    公開日: 2013/08/30
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    【緒言】放射性ヨウ素内用療法は甲状腺癌進行例に対する術後療法として確立されている。【手術経験】当院の近年手術経験では約半数を高分化癌が占める。以前は甲状腺亜(準)全摘を選択していた場合も,現在は全摘へ移行している。【内用療法症例】症例1.著効例:濾胞癌術後多発肺転移の診断。内用療法2回施行にて寛解。症例2.集積のない無効例:濾胞癌術後多発骨転移指摘もシンチで異常集積なく病状進行。症例3.集積のある無効例:濾胞癌術後右鎖骨転移指摘。シンチにて強い集積認めるが,病巣は増大傾向。多臓器転移から死亡の転帰。【まとめ】甲状腺分化癌の多くの症例は外科的治癒切除可能であるが,遠隔転移症例は対応に苦慮する。外科医の立場からは無症候状態を長く維持することに大きな意味がある。無効症例に治療病床を占有させることは好ましくない。医療資源の有効活用のためには明快な治療適応基準を設けることが望ましい。
  • 東 達也
    2013 年 30 巻 2 号 p. 127-129
    発行日: 2013年
    公開日: 2013/08/30
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    2010年版甲状腺腫瘍診療ガイドラインが出版され,甲状腺癌内用療法はアブレーションでも遠隔転移例でも推奨されているが,近年の急激な甲状腺癌の増加や内用療法施設の実稼働ベッド数の減少などから,入院治療施設の不足が進行しており,その治療環境の現状は我が国がめざす「医療の均てん化」とはほど遠い状況にある。本稿では社会背景や医療経済的考察も交えて,我が国における内用療法環境の現状と問題点に関して報告し,内用療法先進国であるドイツの現状と比較する。
  • 絹谷 清剛
    2013 年 30 巻 2 号 p. 130-136
    発行日: 2013年
    公開日: 2013/08/30
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    甲状腺腫瘍診療ガイドラインの発刊,外来アブレーション実施開始と,甲状腺分化癌の診療がダイナミックに変化しつつある。その一方で,入院加療が必要である遠隔転移患者の全国的待機時間はさらに悪化傾向にある。診療報酬が適正に設定されていないことがその主因である。従来から関連学会で改善に向けた活動を行っていたが,それを強化するために日本核医学会に内用療法戦略会議を設立した。現在進行中の活動を紹介するとともに,関連諸氏の協力をお願いしたい。
特別寄稿
原著
  • 坂東 伸幸, 後藤 孝, 赤羽 俊章, 大貫 なつみ, 山口 朋美, 佐和 弘基, 西原 広史, 田中 伸哉
    2013 年 30 巻 2 号 p. 142-147
    発行日: 2013年
    公開日: 2013/08/30
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    穿刺吸引細胞診は甲状腺結節の質的診断のために最も有用な検査である。当院ではこれまでプレパラートに穿刺吸引細胞を吹き付ける従来法で細胞診を行ってきたが,診断率は高くなかった。そこで液状処理細胞診(Liquid-based cytology;LBC)を採用した。2007年4月から2011年5月までに従来法で穿刺吸引細胞診を施行し,パパニコロウのクラス分類で判定した426病変(従来法群)と2011年6月から2012年8月までにLBCを施行し,当院で甲状腺癌取り扱い規約第6版に準じて判定した297病変(LBC群)との比較を試みた。検体不適正についてLBC群では27病変(9.1%)であり,従来法の68病変(16%)と差を認め,同規約の付帯事項である10%以下を達成した。手術施行し,病理組織と対比できた従来法群125例においてclass Ⅲを除くと感度69.6%,特異度95.2%,正診率80.5%であったが,LBC群53例では鑑別困難例を除くと感度,特異度,正診率とも100%を示した。穿刺吸引細胞におけるLBCは従来法と遜色ないと考えられる。
症例報告
  • 柏木 伸一郎, 石川 哲郎, 田内 潤, 野田 諭, 小野田 尚佳, 若狭 研一, 平川 弘聖
    2013 年 30 巻 2 号 p. 148-151
    発行日: 2013年
    公開日: 2013/08/30
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    症例は45歳の男性。幼少期の健診にて完全内臓逆位を指摘されていた。下肢の脱力を自覚し近医を受診,高血圧および低カリウム血症が認められ精査・加療目的にて当院紹介となった。画像検査にて右副腎に接する約2cm大の腫瘤を認め,同時に全内臓逆位が確認された。血液検査では,アルドステロン血症が認められた。副腎腺腫に起因する原発性アルドステロン症と診断し,腹腔鏡下に右副腎腫瘍摘出術を施行した。病理組織の結果は副腎皮質腺腫であり,原発性アルドステロン産生腫瘍であった。今回われわれは,完全内臓逆位を伴った右副腎腫瘍を経験した。腹腔鏡下に切除しえた本邦報告例はなく,稀な症例であり文献的考察を加え報告する。
  • 志村 英二, 杉谷 巌, 戸田 和寿, 井下 尚子, 佐藤 由紀子, 元井 紀子
    2013 年 30 巻 2 号 p. 152-155
    発行日: 2013年
    公開日: 2013/08/30
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    症例は36歳女性,健康診断にて前頸部腫瘤を指摘され,甲状腺腫瘍疑いにて当科を紹介受診した。頸部超音波検査にて甲状腺左葉下極に27×22×18mm大の辺縁分葉状の低エコー結節を認めた。穿刺吸引細胞診では,細胞質内に多数の好酸性顆粒を認めた。甲状腺腫瘍あるいは甲状腺外迷入病変を考え,甲状腺左葉切除術を施行した。病理学的所見では,腫瘍は甲状腺外軟部組織を中心に存在し,甲状腺組織にも浸潤性に増殖していた。腫瘍細胞は好酸性,顆粒状の豊かな細胞質を持つ類円形細胞よりなり,核異型は認めなかった。免疫染色の結果,腫瘍細胞はS100陽性であった。以上より,顆粒細胞腫と診断した。顆粒細胞腫の大部分は良性腫瘍と考えられているが,稀に遠隔転移や悪性症例の報告もされており,経過観察に注意を要する。
  • 北野 睦三, 杉谷 巌, 戸田 和寿, 元井 紀子, 藤本 吉秀, 川端 一嘉
    2013 年 30 巻 2 号 p. 156-159
    発行日: 2013年
    公開日: 2013/08/30
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    Carcinoma showing thymus-like differentiation(CASTLE)は甲状腺内の異所性胸腺組織または胎生期胸腺遺残組織から発生すると考えられる非常に稀な甲状腺癌である。今回われわれは気管浸潤と総頸動脈を3/4周取り囲み,切除不能と思われたCASTLEの1例を経験した。症例は54歳女性。初診時に右声帯麻痺を認め,CTで右気管食道溝から甲状腺右葉下極に境界不明瞭な4cm弱の腫瘍を認めた。生検施行し,免疫組織化学染色にてCD5(+),CK AE1/3(+)から胸腺組織由来の悪性腫瘍と診断され,甲状腺亜全摘,中央区域リンパ節郭清,胸骨部分切除による気管環状切除,Deltopectoral flap(DP)皮弁による気管孔形成を行った。病理検査にて甲状腺原発と確認できたためCASTLEと診断。術後放射線治療(60 Gy)を行い,経過順調のため気管孔を閉鎖した。浸潤性CASTLEの治療の基本は根治的切除であるが,術後補助療法として放射線治療が有効との報告がある。リンパ節転移と腺外浸潤が重要な予後因子と考えられており,現在経過観察中である。
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