日本補完代替医療学会誌
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1 巻, 1 号
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巻頭言
総説
  • 兵頭 一之介
    2004 年 1 巻 1 号 p. 7-15
    発行日: 2004年
    公開日: 2004/04/27
    ジャーナル フリー
    世界的なインターネットの普及や予防医学,自己健康管理への関心,患者の治療選択における自己決定意識の高まりなどから,近年,補完代替医療(CAM; Complementary and Alternative Medicine)の利用者が急速に増加している.わが国のがん患者においてCAMのうち最も利用頻度の高いものは健康食品で,情報もこれに偏っているが,臨床試験で有効性を確認されたものはほとんどない.先進諸国では西洋医学的手法に則ったCAMの有効性を検証するための臨床試験を遂行しようとする機運が広がっている.米国補完代替医療センターでは,現在,多くの臨床試験が行なわれており,我が国でも厚生労働省がん研究助成金によるがんのCAMに関する研究班が設けられ,金沢大学医学部に我が国初のCAMの専門講座が開設され,この分野の本格的な研究がスタートしている.
  • 丹後 俊郎
    2004 年 1 巻 1 号 p. 17-29
    発行日: 2004年
    公開日: 2004/04/27
    ジャーナル フリー
    無作為化比較試験(RCT, randomized controlled trial)が新しい治療法の効果を評価するためにヒトに施される実験であり,かつまた,それが最も質の高い科学的なエビデンスを提供してくれる唯一の研究デザインであることは世界的に広く認められた事実である.一方,日本では,RCT に対する関心とその重要性への認識は低く,薬効評価の分野でも質の高い RCT はきわめて少なかった.最近の科学的根拠に基づく医療(EBM)の流行により RCT に対する関心は高まっているものの,RCT を正しく理解して実践できる臨床医,製薬メーカの臨床開発担当者は少ない.このことは補完代替医療の評価においても全く同様にあてはまる.RCT を正しく理解し,デザインし,その結果を正しく評価できる研究者,実務家の養成は急務である.本小論では,RCT とは何か,RCT をデザインする上で必要不可欠な統計学的考え方を解説する.
  • 鈴木 克彦
    2004 年 1 巻 1 号 p. 31-40
    発行日: 2004年
    公開日: 2004/04/27
    ジャーナル フリー
    適度な運動は免疫能を高め,感染症や癌の予防に有効とされる一方,激しい運動やトレーニングは免疫能を弱め,炎症やアレルギーを助長するとされる.これらの機序については,激しい運動やトレーニングに伴い血中 NK 細胞・ T 細胞の数や機能,分泌型 IgA の唾液濃度などが一過性に低下し,免疫抑制作用のあるストレスホルモンや抗炎症性サイトカインが分泌され,易感染性につながると考えられている.一方,激運動に伴い好中球・単球が動員され活性酸素の産生が高まり,炎症反応や酸化ストレスを引き起こすが,適切な栄養・休養に加え,抗酸化物質等のサプリメントの使用によりこれらの反応を制御できる可能性が示されつつある.また,適度な運動習慣がストレスや感染に対する抵抗力(防衛体力)を強化するという科学的根拠が集積されつつある.本稿では予防医学・補完代替医療の適用の是非を念頭に置いて,運動免疫学分野の最新の研究成果を紹介する.
  • 糸川 嘉則
    2004 年 1 巻 1 号 p. 41-52
    発行日: 2004年
    公開日: 2004/04/27
    ジャーナル フリー
    本総説はビタミン・ミネラルなど微量栄養素の代替医療における役割について述べたものである.ビタミンやミネラルが代替医療に利用できる条件としては次の二つがある.1. 大多数の日本人が通常の食事で必要量に達しないビタミンや必須ミネラルである.平成13年度の国民栄養調査の結果からビタミンB 1,B6,C,E,カルシウム,マグネシウム,鉄,亜鉛,銅がこれに含まれる.2. ビタミンやミネラルがその栄養素としての機能の他に特異的な薬理学的な機能を有する場合.これにはビタミンA,D,E,K,B 1,B12,C,マグネシウム,鉄,亜鉛,銅,リチウム,バナジウムが含まれる.さらに,まだビタミンとは認められていないビタミン様作用物質群は薬理的な作用を有するから,代替医療の対象になるであろう.これらの微量栄養素の機能と代替医療における役割について論じた.
  • 今西 二郎
    2004 年 1 巻 1 号 p. 53-61
    発行日: 2004年
    公開日: 2004/04/27
    ジャーナル フリー
     メディカル・アロマセラピーは,エッセンシャルオイルを用いて,疾患の治療や症状の緩和を図る補完・代替医療の一つである.また,メディカル・アロマセラピーは,看護や介護領域など広く用いることができる.エッセンシャルオイルには,抗菌作用,抗ウイルス作用,抗炎症作用,鎮静作用,抗不安作用などさまざまな薬理作用があるので,メディカル・アロマセラピーは産婦人科疾患,皮膚疾患,上気道感染症,心身症,疼痛管理,ストレス管理などにおいて,有用である.アロマセラピーの方法としては,吸入,内服,アロマバス,マッサージなどがある.このうち,アロママッサージは,もっとも効果が高い.アロママッサージにより,効率よくリラクセーションを誘導することができる.しかし,メディカル・アロマセラピーは,あくまでも補完的であり,他の療法と組み合わせることで,統合医療の実現に貢献できる.
  • ―最も古いものに最も新しいものがある―
    上馬塲 和夫
    2004 年 1 巻 1 号 p. 63-76
    発行日: 2004年
    公開日: 2004/04/27
    ジャーナル フリー
    世界の4大伝統医学(中国,インド,チベット,イスラム)は共通して,体だけでなく心とSpiritualityのレベルへのホリスティックなアプローチ法を有している.古い伝統医学ではあるが,将来の生命科学の雛形となる可能性がある.
  • 高橋 多喜子
    2004 年 1 巻 1 号 p. 77-84
    発行日: 2004年
    公開日: 2004/04/27
    ジャーナル フリー
    音楽療法は一言でいえば,音楽による心理療法ということができる.言葉では表現できない何か,言葉を超える何かをクライエントと共有し,そのことでクライエントが成長し,またはそのことで自己治癒力が増進する,またはクライエントのQOL(生活の質)が向上するというのが音楽療法といえよう.これは芸術療法一般に共通することでもある.ここでは,わが国の音楽療法の現状,歴史,音楽療法の形態,及び対象者について概観し,次に,わが国で深刻な問題となっている痴呆高齢者のための音楽療法と終末期医療における音楽療法について最近の効果研究を挙げ,この領域での音楽療法を紹介する.
  • 後藤 重則, 金子 亨, 江川 滉二
    2004 年 1 巻 1 号 p. 85-93
    発行日: 2004年
    公開日: 2004/04/27
    ジャーナル フリー
    過去20年間においてがん免疫学の知識が高まり,それを応用したがん免疫療法が登場した.その中でTリンパ球,樹状細胞を体外で加工,処理し治療に供する免疫細胞療法は,がん抗原ペプチドが多数同定されるとともに発展してきている.免疫細胞療法の奏効率は10~20%程度と報告されている.また,免疫細胞療法が術後の補助療法として生存率を増加させることも報告されている.本稿では,免疫細胞療法の歴史的背景と医療現場における現状を概説する.
原著
  • 小正 葉子, 溝口 亨, 久保田 仁志, 竹腰 英夫
    2004 年 1 巻 1 号 p. 95-101
    発行日: 2004年
    公開日: 2004/04/27
    ジャーナル フリー
    エゾウコギ根抽出物(EUE)とエゴマ種子抽出物(OSE)の単独及び併用による抗アレルギー作用を検討した結果,次の成績を得た.1)Compound 48/80によるヒスタミン遊離試験では,単独及び併用で対照群と比較して有意なヒスタミン遊離抑制がみられ(p<0.01),EUEとOSEの濃度比5:1では,それぞれ単独よりも強い遊離抑制効果が得られた.2)卵白アルブミン由来のマウス抗血清に対するPCA試験では,EUE単独及び併用群の14日間連続経口投与により用量に依存した抑制がみられ,単独及び併用で対照群と比較して有意な色素漏出抑制がみられた(p<0.01).併用群の効果はEUE単独程度であったが,明らかにDSCG(インタール®吸入液)群よりも高かった.3)EUEはヒスタミンとセロトニンの皮内注射による色素漏出試験において対照群と比較して有意な抑制はみられなかったものの,用量に依存した抑制傾向がみられた.
    みられた.
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