日本乳癌検診学会誌
Online ISSN : 1882-6873
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5 巻, 2 号
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  • 藤田 広志
    1996 年 5 巻 2 号 p. 135-147
    発行日: 1996/07/10
    公開日: 2011/03/02
    ジャーナル フリー
    本稿では, 実用化が近いといわれるマンモグラフィのためのコンピュータ支援診断 (CAD) システムの原理について, 筆者らによって開発された岐阜大学における例を示しながら, その概要を解説する。CADシステムは, ハード的にはディジタル撮像装置 (または, フィルム・ディジタイザ) とワークステーションで, 主に構成されている。また, ソフト的には, 前処理部・検出部・後処理部の主な3部門で構成されており, その具体的な画像処理の手法をここで簡単に説明する。マンモCADシステムは, 微小石灰化クラスタと腫瘤陰影の検出を対象としており, 良悪性の鑑別処理機能も備えている。最後に, 予想されるCADの利用形態について考察する。
  • 植野 映
    1996 年 5 巻 2 号 p. 157-172
    発行日: 1996/07/10
    公開日: 2011/03/02
    ジャーナル フリー
  • 森本 忠興, 堀田 勝平
    1996 年 5 巻 2 号 p. 173
    発行日: 1996/07/10
    公開日: 2011/03/02
    ジャーナル フリー
  • 杉島 節夫, 横山 俊朗, 吉田 友子, 高木 博美, 一本杉 聡, 古賀 稔啓, 鹿毛 政義, 森松 稔
    1996 年 5 巻 2 号 p. 175-181
    発行日: 1996/07/10
    公開日: 2011/03/02
    ジャーナル フリー
    乳腺の細胞診延べ2,741例を病理組織診と対比し, 細胞診にてClass III以上と診断し乳癌が疑われた症例で, 画像診断上悪性所見を示さず細胞診のみ乳癌の術前診断を行い得た症例の病理形態学的特徴について検討をした。細胞診のクラス分類の内訳としてClass Iは1,470例 (53.6%), Class IIは131例 (4.8%), Class IIIは59例 (2.2%), Class IVは41例 (1.5%), Class Vは224例 (8.2%), さらに検体不良例816例 (29.8%) であった。
    細胞診にてClass III以上と診断した324症例のうち病理組織診断が施行され, 術後の再発例を除き悪性と診断されたのは234症例であった。234症例の乳癌のうち画像診断上悪性所見の認められなかった症例は17症例 (7.3%) であった。画像診断上悪性所見の認められなかった症例の組織型は, 乳頭腺管癌8例, 粘液癌4例, 硬癌2例, 充実腺管癌1例, 嚢胞内乳頭癌1例, 非浸潤性乳管癌1例であり, 腫瘤の大きさとしては1.0cm以下が9例, 1.1~1.5cmが8例と1例は乳頭分泌物で腫瘤は認められず, 全症例とも1.5cm以下の腫瘤であった。さらに粘液癌では1.5cm以下の大きさの腫瘤ではすべて画像診断上は悪性所見に乏しく, 細胞診のみが乳癌の術前診断に有用であった。
  • 乳癌検診を支えるco-medical sideからの提言
    二村 友佳子, 佐々木 文雄, 八木 早苗, 宮下 民子, 梶原 和則, 竹内 透
    1996 年 5 巻 2 号 p. 183-187
    発行日: 1996/07/10
    公開日: 2011/03/02
    ジャーナル フリー
    われわれは, オクトソン方式の超音波画像による乳癌の集検を昭和60年から10年間行ってきた。この検診の初期では, 発見癌が少なく, 高頻度の中間期癌がみられた。このため技師の立場から画質の改善をするために装置の改良, 撮像体位の工夫など高い検診効率をめざす努力が強いられてきた。すなわち画質改善のために, 1) TD数の増加, 2) 乳頭乳輪下のアーチファクトの軽減, 3) ブラインドエリアを軽減する撮影体位の工夫, の3点を実行した。見逃しを避けるため, 4) 病変が描出された症例には問診票に異常所見を付記した。医師に多くの情報を与えるため, 5) 技師による視触知所見を添付, および6) 腫瘤部分のthinsliceによる拡大撮影を加えた。これらの努力によっても発見癌は触知例のみで, 中間期癌の数も減少し得なかった。これは超音波画像のあらわす乳癌のechogenicityのスペクトラムが広いため容易に異常の指摘が困難であると推察される。また, 正常の乳腺組織によってできるechogenicityが乳癌と類似するため数多くのFN例の出現も見られている。このため超音波診断装置MAT-1による集検の対象を, digital radiographyによる検診に徐々に移行させている。また, 近い将来, 検診効率の立場から補助診断手段としてマンモグラフィの導入が確実であるが, 人員が確保できれば, マンモグラフィでは検出し得ない非触知癌を目的としたリアルタイム超音波を採用することも検討していかなくてはならない。
  • 中込 誠, 阿部 文子, 大須賀 由美子, 小畑 実子, 小倉 正幸, 平山 現生, 玉城 繁, 北浜 博之
    1996 年 5 巻 2 号 p. 189-194
    発行日: 1996/07/10
    公開日: 2011/03/02
    ジャーナル フリー
    乳癌一次検診に画像診断を導入する目的は早期非触知乳癌の発見にあると言われている。江戸川区公費無料乳癌検診では全例に日本超音波医学会認定の臨床検査技師 (以下, 認定超音波検査士) による超音波検査を施行し, 早期非触知乳癌の発見に有用であった。超音波検査は1人8分で両側全域を検索し, 同時に毎年受診の勧奨も併せて行った。4年間の総受診者数は延べ19,236例, 乳癌は109例 (乳癌発見率0.57%), このうち早期乳癌は52例で23例は非触知乳癌 (早期乳癌非触知率44.2%) であった。特に, 10mm以下の微小乳癌においては, 非触知率85.7%できわめて高く, 超音波検査が有用であった。非触知乳癌の最小径は5mmであった。
    認定超音波検査士によるルーチン超音波検査で高率に早期非触知乳癌を発見したことは, 乳癌が増加傾向にある現状に鑑み, 認定超音波検査士の役割が今後ますます重要となりうることを示唆しており, 認定超音波検査士の育成とともに乳癌検診に超音波検査が普及することの必要性が認識された。
  • 山口 哲央, 近藤 博之, 黒田 怜子, 笹 三徳, 森本 忠興
    1996 年 5 巻 2 号 p. 195-199
    発行日: 1996/07/10
    公開日: 2011/03/02
    ジャーナル フリー
    マンモグラフィを用いたモデル地区の乳癌検診を, 無症状の住民で原則としと50歳以上を対象に行った。この検診でのマンモグラフィ像より, Wolfe分類に従って乳腺実質を年齢別にN1・P1・P2・DYの4型に分類し, スクリーニングマンモグラフィに要求される事柄などについて検討した。50歳以上ではN1+P1が大部分を占め, 腫瘤陰影の描出に問題とされるDYは2.4%とわずかであった。これらの結果より, マンモグラフィは50歳以上に適していた。この検診での発見乳癌は11例 (発見率0.7%) であり, 比較的乳腺密度の高いP2は11例中4例であった。なかでも, マンモグラフィ所見が腫瘤陰影を呈した6例中3例 (50%) がP2であり, P2に分類されるマンモグラフィ像の精度が重要であった。今後, モデル地区以外の住民に対してマンモグラフィの導入を段階的に進めるためには, 現在行われといる視触診による乳癌検診に平行して行うのが妥当と考えられる。1993年度の徳島県の乳癌検診受診者14,833名のうち, 50~69歳の受診者は8,893名 (60.0%) であった。仮にマンモグラフィ撮影の対象を50歳以上と制限した場合, マンモグラフィ導入は大部分において可能と思われた。
  • 石岡 亮, 荒木田 栄子, 弓野 彰子, 丹野 律子
    1996 年 5 巻 2 号 p. 201-207
    発行日: 1996/07/10
    公開日: 2011/03/02
    ジャーナル フリー
    北海道における乳癌検診の現状およびモデル事業からスクリーニングマンモグラフィ (以下, SMG) 導入のための検討を行った。
    最近過去5年間の道内乳癌検診成績は, 乳癌発見率で平均0.18%と全国の0.08%に比べ有意に高かった。これは北海道の乳癌死亡数が多いこともあるが, 一次検診の場でマンモグラフィ (以下, MMG) を含む二次検査を実施し, 精検受診率を高めていることが一因と考えられた。したがって検診精度の面からも一次検診にMMGを導入することは精度管理上有用であるばかりでなく, 集検の拡大にも寄与するものと思われた。一方, 現状の体制からSMGへ移行していくとなれば, まだ多くの問題があることがモデル事業を通して明らかになった。とくにMMGの画像管理および撮影技術は, 充分な指導の基に実施されるべきであると考える。SMGによる乳癌検診を押し進めるためには, これらを踏まえたうえで技術指導体制の構築および専門技師養成のための体制づくりが早急に望まれる。
  • 萩原 明, 田中 耕策, 田中 利彦, 田村 暢男, 坪井 晟, 須田 嵩, 麻賀 太郎
    1996 年 5 巻 2 号 p. 209-214
    発行日: 1996/07/10
    公開日: 2011/03/02
    ジャーナル フリー
    乳癌検診に限らず, 癌検診のほとんどは画像の良否によって決まる。良好な画質のもとに早期診断, 早期治療が可能となる。今回, 当施設と某施設の乳房専用装置によるマンモグラフィについてACRプログラムに準じ, 管電圧, 焦点サイズ, 増感紙/フィルムの密着性, ファントムの画像評価などを対比したところ, 両施設ともACRガイドラインによく適合していた。そこで, 泉らの神奈川県下の54施設についてのアンケート調査によれば, 撮影条件など適合している施設は8カ所 (14.5%) で, ACR-156ファントム所有施設は10カ所 (18.5%), またACRプログラムの方法で性能チェックを行っている施設は4カ所 (7.4%) と低率であった。
    以上からマンモグラフィのガイドラインの普及がぜひとも必要となろう。なお, 今後は画質の品質管理について追求したいと思う。
  • 原口 雅行, 池田 卓
    1996 年 5 巻 2 号 p. 215-218
    発行日: 1996/07/10
    公開日: 2011/03/02
    ジャーナル フリー
    宮城県対がん協会は平成元年12月より, 地域を限定し年間約5,000名を対象に, 50歳以上の受診者にスクリーニングマンモグラフィを試みてきた。その結果, マンモグラフィ併用群の発見率は0.28%で非併用群は0.09%であった。併用群は発見率も発見癌のうちの早期癌の占める割合も高く, 良い結果を得ている。しかし, 受診者全貝にマンモグラフィを実施するにはいろいろ問題点が多い。まず, 現在の検診方法である視触診法では医師1人当りの処理人数が限られており, それにマンモグラフィを併用すれば, 1日の処理人数はさらに減少する。よってマンパワーの問題が起こる。次に年齢別に発見率を見ると, 40歳以上より発見率が増えてきており, 年々高齢者が増えるなかでどのよに対象者を絞るか, また検診終了後に後日担当医以外の医師2名による再読影 (ダブルチェック) を行っているが, これより発見される癌が約半数であり, ダブルチェックはぜひ施すべきであろう。このマンパワーをどうするか。最後に料金の問題がある。現在の国の基準単価は887円とあまりにも安すぎる。現在それぞれの施設でそれぞれに料金を設定して検診を施行しているが, 現在の料金にマンモグラフィを追加するとかなり高額になると思われる。
    以上4つの問題点を挙げたが, まだまだ問題はあるであろう。これらのことを画像診断導入までに経営的立場で検討しておく必要があると思う。
  • 藤田 美保, 森本 忠興
    1996 年 5 巻 2 号 p. 219-225
    発行日: 1996/07/10
    公開日: 2011/03/02
    ジャーナル フリー
    善通寺市における過去12年間の乳癌集団検診の経緯をまとめ, 検診の質の向上のための要因とその効果について報告する。
    受診者総数は17,035名で, 近年の受診率は約25%である。検診成績は, 要精検者1,281名 (7.5%), 精検受診者1,277名 (99.7%), 発見乳癌21例 (0.12%), 中間期発見乳癌8例となっている。この間, 質のよい検診を住民に提供するための具体策として, (1) きめ細かなデータ管理, (2) ボランティアの活用, (3) 個人記録の継続使用, (4) 保健婦による徹底した個別指導, (5) 三次検診実施医療機関との連携, (6) 検診医に対するデータのフィードバック, を基本方針に掲げ, 検診体制の整備に努めてきた。
    その結果, (1) 比較的高い受診率を維持している, (2) 精検受診率が高い, (3) 癌発見率が視・触診法の集団検診としては高い, (4) 発見乳癌中, 早期癌の比率が向上してきた, 等の顕著な効果が得られた。
    問題点としては, (1) 検診医1名当りの検診数が1時間に40名近くになることもあり, 検診精度を保つためにはスケジュールが過密すぎる, (2) 個人カードを継続使用するため, カード整理や当日の業務が煩雑になる, (3) 三次検診実施機関が市内に1カ所しかない, (4) 乳癌発見率の高い60歳以上の受診率が低い, 等が挙げられ, 今後の課題として取り組んでいかなければならない。
  • 西村 みずえ, 秀平 隆康, 中越 緑, 久保 八栄美, 山本 朝子
    1996 年 5 巻 2 号 p. 227-229
    発行日: 1996/07/10
    公開日: 2011/03/02
    ジャーナル フリー
    人口4,800人足らずの小さな町で長年にわたり, 啓発活動, 検診体制の整備をし, 徐々に検診受診率の向上をみた。工夫した事項は, (1) 地区組織活動の育成, 強化, (2) 個別通知, (3) 乳癌検診と他検診とのセット化, (4) 職場検診での癌検診の充実, が挙げられる。受診率は1975年17.3%, 1980年27.5%, 1985年66.1%, 1989年73.4%, 1994年80.1%と向上した。地区組織活動の育成, 強化は町民の健康づくりの基盤づくりに効果的であり, (3) (4) のように人々のニーズに合わせた検診体制の整備も有効である。特に近年, 女性の職場進出は目覚しく, 職域検診に癌検診を導入するなど受けやすい環境づくりが受診率向上に効果的である。
  • 原田 朱美
    1996 年 5 巻 2 号 p. 231-236
    発行日: 1996/07/10
    公開日: 2011/03/02
    ジャーナル フリー
    美山町は老人人口26.8%を占める山間僻地, 医療機関, 交通機関に恵まれない地域である。昭和57年, 婦人会の要望により, 子宮癌検診と同時に実施し, 婦人検診として開始。現在は住民総合検診の一項目として実施している。
    [乳がん検診の意義]
    (1) 住民のニーズに合った保健事業であった。
    (2) 専門の医師による集団検診。
    (3) 乳がんの早期発見・早期治療。
    (4) 子宮癌検診と同時実施 (受診者拡大と住民総合検診の体制づくり)。
    (5) 健康づくりへの意識の向上。
    (6) 理事者の保健事業に対する理解と協力。
    (7) 要精検者の専門機関へのパイプ役と保健婦への指導・助言。
    [今後の課題]
    (1) 自己検診法の普及。
    (2) 効果的な要精検者のフォロー
    (3) 集団検診の精度管理 (“検診のもれ” の心理的不安解消と, 受診者が高齢化するなかでの検診のあり方の検討)。
    (4) さらなる受診者拡大をはかるために (新規受診者, 若年受診者の拡大をはかるために, 健康教育の充実を)。
  • 森本 忠興, 堀田 勝平
    1996 年 5 巻 2 号 p. 237-244
    発行日: 1996/07/10
    公開日: 2011/03/02
    ジャーナル フリー
  • 大内 憲明, 大貫 幸二, 吉田 弘一, 木村 道夫, 大内 明夫, 椎葉 健一, 里見 進, 松野 正紀
    1996 年 5 巻 2 号 p. 245-248
    発行日: 1996/07/10
    公開日: 2011/03/02
    ジャーナル フリー
    マンモグラフィ導入 (SMG) 検診の適正な受診間隔を設定するため、継続受診者からの早期乳癌発見率ならびに中間期乳癌の発生率を検討した。対象はSMG+視触診併用群28,465名で、初回受診群は19,237名であり、継続受診群は9,228名である。
    乳癌発見率は初回群で0.33%、繰り返し群で0.14%であった。SMG併用群の継続受診者9,228名のうち、発見乳癌は13例であった。これを受診間隔でみると、2年に1回の検診による発見乳癌7例はすべて早期乳癌であり、3年に1回では4例中3例が早期乳癌であった。
    2年に1回の検診では中間期乳癌数は2例であり、同時期の視触診単独群では14例であった。中間期乳癌の発生率はSMG併用群が0.011%で、視触診群の0.022%に比して1/2であった。また、乳癌総数に占める中間期乳癌数の比率は視触診のみによる検診では19.4%であるのに対し、SMG併用検診では4.4%と著しく低下した。したがって、2年に1回の検診でも、SMGを併用することにより中間期乳癌の発生を抑えることが可能である。さらに、専用機器の処理能力、被曝リスク・利益比ならびに費用・効果比を考慮した場合、SMG導入検診の間隔は2年間が適切と考えられる。
  • 横江 隆夫, 飯野 佑一, 武井 寛幸, 堀口 淳, 前村 道生, 二渡 玉江, 森下 靖雄
    1996 年 5 巻 2 号 p. 249-254
    発行日: 1996/07/10
    公開日: 2011/03/02
    ジャーナル フリー
    集団検診発見乳癌患者のQOLおよびQOLの評価法, 問題点について検討した。
    集検発見乳癌患者は外来例と比べ早期例が多く, 縮小手術が多く行われており, 身体症状は少なかった。乳房温存手術が行われた患者では, 外観の満足度が高かった。しかし, QOL総得点は定乳切の方が高かった。大項目別QOL得点, 総合的QOL得点は, 年齢の影響を強く受けていた。精検受診者の性格, 精検を勧めた医師の説明の仕方が受診者の不安の有無に大きな影響を与えていた。
    QOLの評価法にはまだ改善すべき余地が多く, アンケートの項目や記載方式, 得られた得点の解釈にも注意を払わなければならない。
  • 角田 博子, 東野 英利子, 篠原 勲, 加賀 紀彦
    1996 年 5 巻 2 号 p. 255-260
    発行日: 1996/07/10
    公開日: 2011/03/02
    ジャーナル フリー
    乳癌検診に画像診断を取り入れようとする動きに伴い, 触診にマンモグラフィを加えた方法が有力になりつつある。しかし, マンモグラフィによる腫瘤検出の感度はその乳腺実質の状況に左右され, 実際にこの方法によるマンモグラムの読影を開始してみると, 乳腺実質の状況によっては触診が不必要と考えられる場合も少なくなく, それは被検者の年齢によることに気付かされる。そこで, 今回茨城県で行われている住民触診において撮影された50歳以上のマンモグラムを用いてマンモグラム上の乳房濃度分類を行い, 年齢階級別に比較し, さらにその結果を考慮し, 検診方法のあり方について検討した。実質は, 萎縮, 正常, 部分的濃厚, 濃厚, 非常に濃厚の5段階に分類した。平成7年6月から10月の間に撮影された852名のマンモグラムは, 萎縮340名, 正常336名, 部分的濃厚88名, 非常に濃厚14名であり, マンモグラフィのみでは偽陰性の可能性のある乳腺は, 濃厚と非常に濃厚では102名, 12%を占めた。年齢が上がるにつれて萎縮や正常に分類されるマンモグラムが増し, 60歳代後半の年齢層では, 濃厚と非常に濃厚の合計はわずかに3%であった。検診はバスによる出張検診であるが, 852名のマンモグラムのうち撮影不良と判定したものは3.7%で, 許容範囲と考えられた。この結果から, まず全員にマンモグラフィを行い, そのあと選択された被検者に対して二次検診の形で触診または超音波検査を行う方法や, 年齢によって検診方法を変える, たとえば50歳代は触診とマンモグラフィ, 60歳以上はマンモグラフィのみ行うといった方法が提案される。全員一律の方法に比べると煩雑になることは否めないが, 今後画像診断を取り入れるうえでは, 費用効果比の高い柔軟な検診システムを作り上げることが重要と考えられた。
  • 小池 綏男
    1996 年 5 巻 2 号 p. 261-266
    発行日: 1996/07/10
    公開日: 2011/03/02
    ジャーナル フリー
    乳癌集検で要精検とされて昭和60年4月から平成6年12月までの9年8カ月間に長野県がん検診センターの乳腺外来を受診した1,431例に対する検診医の触診および超音波診断の診断能を集検受診前の自覚症状の有無から比較検討し, さらに著者の診断能とも対比して, 以下の結果を得た。
    1) 1,431例の受診者中, 自覚症状があった症例は345例 (24.1%) であり, うち28例 (8.1%) が乳癌症例であった。
    2) 乳癌症例の頻度は乳房変形群が28.6%と最も多く, ついで腫瘤触知群10.7%, 乳腺痛群6.5%の順であり, 自覚症状がない群は3.4%であった。
    3) 年齢別にみて自覚症状があった群の方がなかった群より乳癌症例の頻度が多かったが, 有意差は認めなかった。年齢層が増すにつれて乳癌症例の頻度が多くなる傾向がみられた。
    4) 検診医の触診の診断能は自覚症状の有無に左右されたが, 超音波診断は左右されなかった。
    5) 著者の触診の診断能は自覚症状の有無に左右されなかったが, 超音波診断は多少左右された。
    6) 検診医の触診および超音波診断の診断能が著者と比べて低かったことから検診医の診断能を向上させるための行政的対策が必要であると考える。
  • 小池 綏男, 宮原 早苗, 寺井 直樹
    1996 年 5 巻 2 号 p. 267-272
    発行日: 1996/07/10
    公開日: 2011/03/02
    ジャーナル フリー
    乳癌集検で要精検とされて最近9年8カ月間に長野県がん検診センターの乳腺外来を訪れた1,431例の中から発見した乳癌64例を集検受診前の自覚症状の有無に分けて臨床病理学的に比較検討し, 以下の結果を得た。
    1) 集検受診前に自覚症状があった345例から発見された乳癌は28例 (8.1%) で, 自覚症状がなかった1,067例中の36例 (3.4%) に比して有意に多かった。発見乳癌64例中では自覚症状があった症例は43.8%を占め, 腫瘤触知が最も多かった。
    2) 乳癌の腫瘤の大きさ, 病期, 割面肉眼所見, リンパ節転移, 手術後の転帰からみると, 自覚症状があった群にはなかった群より進行した症例がやや多い傾向がみられた。
    3) 乳癌集検の現場においては, 自覚症状のある人は集検ではなく医療施設を直接受診するように指導すべきである。
  • 第1報;自己検診は医師による視触診に換わり得るか
    横森 忠紘, 家里 裕, 小林 功, 大矢 敏裕, 吉田 崇, 落合 亮
    1996 年 5 巻 2 号 p. 273-282
    発行日: 1996/07/10
    公開日: 2011/03/02
    ジャーナル フリー
    新潟県小千谷市・北魚沼郡において, 1979年度より医師による講話と自己検診実習指導を重点的にとり入れた乳癌検診を実施している。今回は, その経験と成績を基に「自己検診は医師による視触診検診に換わり得るか」というテーマで次の検証を試みた。
    1) 自己検診はどの程度普及しているか;市部で65%, 郡部で90%の実施率である。
    2) 自己検診で病変が発見されるか;検診乳癌42例中病変の自覚者は20例で, 16例が自己検診を実施していた。また, 自己検診実施者17例中16例が病変を自覚していた。
    3) 自己検診で早期発見が可能か;外来乳癌156例中, 自己検診実施群 (70例) は非実施群 (86例) より有意に腫瘍径は小さく, 病期が若かった。
    4) 自己検診に対する住民の意識;アンケート調査で, 「自己検診で病変が見つかると思う」と答えたのは47%で, 「自己検診をしていれば検診を受けなくても良い」と答えたのは15%であった。
    5) 保健婦および看護婦の考え;97%が「自己検診で病変が見つかる」と回答したが, 検診に換わり得ると答えたのは3%のみであった。
    以上の検証の結果, 自己検診の有用性については十分に実証された。しかし現場では, 従来, 自己検診の普及活動は視触診検診と併行して推進されてきたものであり, 自己検診の普及のためには視触診検診は不可欠であるという意見が多く, 医師による視触診検診に対する地元の要望も強いものがあった。
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