2021 年4 月より日本で初めて,がん未発症者を対象とした遺伝子バリアントに基づく任意型の個別化検診システム「SEIREI-CARE プログラム」を開始した。NCCN ガイドラインに基づいたチャットボット(AI 問診)を用いて遺伝性腫瘍の高リスク者を抽出し,遺伝カウンセリング,遺伝性腫瘍の多遺伝子パネル検査を実施,その結果に基づいた個別化検診を提案した。対象は婦人科検診を受けた37,493 人で,チャットボットに登録し回答したのは2,863 人,そのうちNCCN ガイドライン合致者は757 人(26.4%)であった。
遺伝カウンセリングを受けた人は52 人(6.9%),そのなかで遺伝学的検査を実施した人は9 人,内1 人にBRCA2 の病的バリアントを認めた。検診受診者の中にも遺伝性腫瘍の病的バリアント保持者がいる可能性が示唆された。また,遺伝カウンセリング及び遺伝学的検査実施率が非常に低く,今後の課題であると考えられた。アンケート結果からは,がん未発症者にとってがん発症のリスクを知ることを自分にとって必要なこととしてとらえて即座に行動するには至らない現状が明らかになった。がん未発症者への教育など対策が必要であるとともに,がんゲノム時代を迎える中で医療者も遺伝性腫瘍に関して理解を深めることが必要と考えられた。
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