日本乳癌検診学会誌
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第33回学術総会/シンポジウム1 持続可能な乳がん検診
  • 三好 綾
    2024 年 33 巻 1 号 p. 1-2
    発行日: 2024年
    公開日: 2024/05/02
    ジャーナル 認証あり
    「持続可能な乳がん検診」について考えるにあたり「がん教育」という観点と,「受診をする一般の立場」でもあり「患者になった立場」として考えた。平成29 年以降,中学校・高等学校「保健体育」で「がんについて取り扱う」ことになりがん教育が実施されている。NPO 法人がんサポートかごしまは,年間190 校程度,学校教諭とともにがんの知識「命の大切さ」を伝える授業を展開。がん検診を受けられる年齢になったら積極的に検診を受けるという気持ちの変化が見られている。持続可能な乳がん検診には,大きな制度を保つことはもちろんだが,「受診者の背景や,受診者の抱える健康リスクは多様である」ということを大切にして進めていただきたい。いろんな背景や性格の方がいるのは当たり前でそこを変えていくのは大きな力が必要である。どのような背景をもった人たちでも気軽に負担なく検診を受けられる仕組み作りが必要。また,乳がん検診の啓発活動において,患者を傷つけるような取り組みはNG,偏見をなくすことが受診率向上にも継続にもつながるのではと考える。
  • 水田 綾香, 松元 希央弥, 濵田 維子
    2024 年 33 巻 1 号 p. 3-6
    発行日: 2024年
    公開日: 2024/05/02
    ジャーナル 認証あり
    私たち若い世代は,がんを身近に感じる機会が少なく,がん検診に対して興味関心が低い。私は福岡県のC プロジェクトメンバーとして,若年女性のがん検診受診率向上を目標に,若い世代ががんを身近に感じ,予防行動を習慣化してほしいという思いを「がん検診を,特別な日にしない。」というコンセプトに込め,啓発資材を製作した。この活動を通して,若い女性の検診率が低い理由には,がんに関する知識や情報に触れる機会がないこと,検診の必要性は理解していても日程調整や費用への負担感,検診への羞恥心や不安,受診に関する抵抗感などが,検診受診行動を抑制している現状があることに気づいた。私の大学では,子宮頸がん予防啓発活動に取り組むサークルがあり,女性医師の有無や診療時間など,私たちが知りたいと思う具体的な情報を集約した産婦人科マップを作成・配布している。学園祭では子宮頸がん検診車を招聘し,無料で受診できるイベントも開催しており,毎年多くの学生が検診を受けている。このような取り組みが他大学にも広がれば,受診率向上に繋がるのではないだろうか。さらに,中高校生とその家族が,がん検診の意義について知る教育や情報提供を強化することも必要だと考える。女性特有のがんは将来のライフスタイルに大きな影響を及ぼすため,若いうちから必要な知識を得て,検診に行くことが当たり前になるように,がん検診の輪を繋げたい。
  • 江藤 秀一
    2024 年 33 巻 1 号 p. 7-13
    発行日: 2024年
    公開日: 2024/05/02
    ジャーナル 認証あり
    がん検診,特定健診の受診率向上を目指し,市町村や各医療保険者が様々な取り組みを行っているが,受診率が伸び悩んでいる。この課題解決のためには,受診者の目線に立って,「医療保険制度の枠を超えた取り組み」と,地域・職域の連携が重要であると考える。  そこで,2017 年より,新たな健診事業「あんさんぶる」に取り組んでいる。あんさんぶる事業とは,地方自治体,各医療保険者,団体,企業,健診機関が連携を図り,実施(主催)者の枠を超えた各種がん検診,特定健診等を実施するものである。本事業は,地方自治体,各医療保険者,団体,企業へ協力要請を行い,それらの健診に関わるノウハウや様々なデータを用いることで実現している。  また,2018 年より,福岡ソフトバンクホークス公式戦での乳がん啓発イベント「ピンクフルデー」において,乳がん検診及び啓発活動に取り組んでいる。当事業は,野球観戦「ついで」に,乳がん検診を受診することができ,「あんさんぶる」事業を組み合わせることで住民健(検)診として安価に受診できる,受診者目線での事業である。    今後の「あんさんぶる」事業の拡大推進のためには地方自治体の協力が必要不可欠である。  健診機関では解決できない「契約」・「統一化」・「費用負担」の課題について,都道府県の協力を得て,都道県単位での取り纏めが必要である。一見すると課題解決が困難と思われるが,「広域化契約」が実現すれば解決は容易であると考える。
  • 清水 俊来
    2024 年 33 巻 1 号 p. 15-16
    発行日: 2024年
    公開日: 2024/05/02
    ジャーナル 認証あり
    2023 年3月に「第4期がん対策推進基本計画」が閣議決定された。「誰一人取り残さないがん対策を推進し,全ての国民とがんの克服を目指す。」を全体目標としている。がん検診は,分野別目標の3本柱の1つとして位置づけられている「がん予防」の取組の1 つとして推進していくこととしている。 がん検診は当該がんの死亡率減少を目的として,無症状の健康な集団から当該がんの疑いのある者とない者を区別し,前者を適切な治療に,後者を次回の検診に導く一連のプログラムである。対策型検診としての成果を上げるためには,「科学的根拠に基づくがん検診の実施」,「適切な精度管理の実施」,「受診率向上」の3要件を満たす必要がある。 住民検診については,厚生労働省や国立がん研究センター等により,3 要件が満たされているか定期的に把握・公表される仕組みが定着しつつあるが,持続的かつ効果的な改善策の検討が重要である。一方,職域検診については,定期的なデータ把握・公表の体制構築といった基盤整備が課題となっている。 がん対策としての適切ながん検診実施のために,現在行われている対策型検診の水準を上げ,対象集団への受診勧奨とプログラムの管理・評価を行う組織型検診の構築に向け,地域・職域に関わらず全てのがん検診を効果的に行う体制についての継続的な議論が必要である。
  • 宮﨑 千恵子
    2024 年 33 巻 1 号 p. 17-20
    発行日: 2024年
    公開日: 2024/05/02
    ジャーナル 認証あり
    乳がんは女性特有の病気と認識されているため,自覚症状がある際の相談先が産婦人科になる場合がある。また子宮がん検診と乳がん検診をセットにして「婦人科検診」と称されることも多い。当院では受診する患者のニーズに背中を押される形で,2005 年から産婦人科医師1 人で対策型乳がん検診(マンモグラフィ2 方向+視触診)を開始した。担当する産婦人科医師が,精中機構のマンモグラフィ読影認定,撮影技術認定を取得,自ら撮影した画像で施設・画像評価認定を受け更新を重ねてきた。2 重読影のみ,院外のマンモグラフィ読影認定をもつ医師に依頼し,対策型検診は今年19 年目に入った。診療や対策型以外の乳がん検診のために精中機構の超音波検査実施・判定医師認定も取得し検査を行っている。直近の2022 年度の対策型乳がん検診の結果は,受診者880 名,要精検率3.5%,精検受診率100%,がん発見率0.3%,陽性反応的中度9.7%であった。直近2021 年度と2022 年度の2 年間の受診者1741 名について,検診発見がん症例の内訳と検診履歴,受診者の当院初診時の受診動機と反復受診回数について分析した。当院の結果からは,クリニックが行う婦人科検診が継続的な受診を促すことにつながり,乳がん検診と子宮がん検診両方の受診率向上に寄与することが示唆された。最後に,婦人科検診で乳がん検診の裾野を広げていくにあたっての課題について述べる。
  • 角田 博子
    2024 年 33 巻 1 号 p. 21-24
    発行日: 2024年
    公開日: 2024/05/02
    ジャーナル 認証あり
    精査側からみた持続可能な乳がん検診の課題について,検診施設との連携,精査施設自身およびその地域の課題,精査後の対応の課題の3つにわけて私見を述べた。検診施設との連携においては,まず検診施設の精度が精査施設の負担に大きく影響することを念頭におき,検診施設自身の精度管理を行うこと,また要精検者に関しては検診時の比較を含めたデータと判断を正確に精査側に伝達することも極めて重要である。遠隔診断の普及は望ましいが,的確な読影に関する規制は今のところ不十分である。日本乳癌検診学会での遠隔診断のガイドラインのバージョンアップは行われておらず,今後を期待したい。精査施設においても精度管理が重要なことは変わりないが,医療者のマンパワー不足をどうカバーしていくかはすぐに解決するのは難しい。また地域の受診者が精査機関を受診する交通手段の確保など,地域行政や公的支援も必要であろう。3つめの精査後の対応については,特に非癌となった所見についての経過観察をどう行うかが課題と考えられる。所見によってもかなり異なるものと考えられるが,不必要な精査施設での経過観察は避けたい一方で検診に戻すと再び要精検となる可能性が高いというジレンマがある。課題は多く,すぐに対応できるものから医療以外に関連するものまで多岐にわたる。一つずつ地道に解決していくことが検診の持続を可能にするものと考えられる。
第33回学術総会/パネルディスカッション3 マンモグラフィの再撮影を考える
  • 小山 智美
    2024 年 33 巻 1 号 p. 25-27
    発行日: 2024年
    公開日: 2024/05/02
    ジャーナル 認証あり
    マンモグラフィ撮影では,乳腺を欠損させず全てディテクター(フィルム)内に入れることが基本であり,それがなくては真に病変がないとの証明にはなりません。だ,マンモグラフィにおいては胸郭という曲線の上に乳腺が位置することから,実際にはそれが非常に難しいと感じている人は多いのではないでしょうか。 標準撮影は頭尾方向と内外斜位方向の2方向撮影ですが,技量により大きな差が出てきます。だからと言って何回も撮影させてもらうということはできませんし,やってはなりません。どんな時に再撮影が許されるのか,また再撮影をしなければならないのかを考える必要があるのです。その再撮影を考える上でのベースが「撮影技術の基本を習得すること」です。 基本無くしては再現性も担保されませんし,あらゆる乳房への対応もできないということを理解していただきたい。
  • −全国調査第2報−
    内田 千絵, 武藤 俊一, 斉藤 忍, 早坂 みさを, 伊東 孝宏, 上棚 稔之
    2024 年 33 巻 1 号 p. 29-32
    発行日: 2024年
    公開日: 2024/05/02
    ジャーナル 認証あり
    第32 回日本乳癌検診学会学術総会(2022 年浜松市)のワークショップ2「マンモグラフィの再撮影を考える」として,全国51 施設,技師283 人,調査総件数50,248 件(以下,全国)のマンモグラフィの再撮影率調査を行い,そのうち全国労災病院(以下,全国労災)の調査数は28 施設(技師129 人,調査総件数17,526 件)であった。2022 年調査時の全国の再撮影率平均は10.9%,全国労災の再撮影率平均は15.4%であり,全国労災再撮影率は全国平均よりも4.5%高く,経験年齢層別で比較しても全国平均より高い値となった。この結果を全国労災へフィードバックし,2023 年に改めて全国労災を対象とし再調査を行なった。今回の調査では撮影認定資格の有無および装置更新の有無を独立変数に加え,重回帰分析を行った。再撮影率が前回と比較し,どう変化しているのか,撮影認定資格の有無や装置更新からの影響はあるのか,全国労災の再撮影率の低減のために何をすべきかについて検討した。
  • −当院の取り組みとアンケート調査−
    前里 美和子
    2024 年 33 巻 1 号 p. 33-36
    発行日: 2024年
    公開日: 2024/05/02
    ジャーナル 認証あり
    「日本の診断参考レベル(2020 年版)」(以下DRLs2020)1)で臨床データに基づく2D マンモグラフィ平均乳腺線量およびDBT 平均乳腺線量のDRL 値が新たに追記された。当院では施設の基準値を算出してマンモグラフィの被ばく線量管理や線量最適化に向けた取り組みを行っている。乳房は放射線感受性が高く,ICRP が定めた放射線荷重係数も最も高い2)ため,放射線被ばくには考慮が必要であり,被ばく線量の低減には再撮影についても検証が必要であることが考えられた。そこで,当院ではマンモグラフィ再撮影管理シートを作成して記録管理を開始した。またマンモグラフィは撮影者により再撮影の判断基準があいまいであるため,再撮影の基準を作成し見直しも開始した。本稿では,マンモグラフィの再撮影について当院の取り組みと神奈川乳房画像研究会の世話人の施設にアンケート調査を行ったので報告する。
  • 〜静岡がんセンターでの取組み〜
    伊東 孝宏, 内田 千絵, 斉藤 忍, 早坂 みさを, 上棚 稔之
    2024 年 33 巻 1 号 p. 37-40
    発行日: 2024年
    公開日: 2024/05/02
    ジャーナル 認証あり
    放射線診療において再撮影は,頻繁に日常業務のなかで発生している。マンモグラフィ検査においても同様である。ただし,マンモグラフィの撮影環境は基本的には閉ざされた空間の中で行われることが多く,再撮影は撮影者の判断に委ねられ再撮影の実態を把握することは困難である。 今回は,再撮影の記録と被ばくの線量管理について検討し,再撮影の基準についても未だ検討中ではあるが報告する。再撮影の記録については線量管理ソフトを利用して全ての撮影データを保存する取り組みを中心に提示する。再撮影の基準についてはマンモグラフィの合格基準が再撮影の基準にならないように,必要な再撮影と診断に支障がない場合は再撮影を控える取り組みについて検討した結果を報告する。
第33回学術総会/ワークショップ3 ブレスト・アウェアネスは普及しているのか
  • ~昨年学会後の状況報告を踏まえて~
    吉田 雅行
    2024 年 33 巻 1 号 p. 41-45
    発行日: 2024年
    公開日: 2024/05/02
    ジャーナル 認証あり
    2022 年の学会後,各地域で取り組まれているが,「ブレスト・アウェアネス(以下,B A)」の認知度上昇の把握は難しく,『B A は普及しているのか』と言えば「No」である。 (1) 特別企画:「B A を誰が,誰に,どのように拡げるのか?」は,【目的】乳がんで亡くなる方の減少,【誰が】乳がん検診に携わる関係者が,【誰に対し】一般市民に対し,【どのように拡げる】当事者の目線で当事者とともに,「三つ折りリーフレット」を届けることから (2) 身近な取り組み:市民公開講座のYou Tube 動画,メディア広報,がん教育,三つ折りリーフレットの配布,産業医活動,県のがん検診精度管理委員会・浜松市医師会の広報,医療系大学生との協同,など (3) 市民公開講座の視聴数:第32 回本学術総会時のB A を含めたYouTube 動画視聴回数は延620回 (4) ChatGPT:ChatGPT にB A の普及・啓発の効率的で効果的な方法を尋ねると,メディアの活用,教育機関との連携など,地域の特性に合わせた工夫,アイデア,方法の創出と実施効果の評価(数値化),次への戦略会議,計画立案が大切となる (5) 普及啓発のP D C A サイクルを回すシステムが必要(提案):がん検診の精度管理と同様B Aの認知度向上にもP D C A サイクルを回すことが大切 持続可能な乳がん検診により死亡率低下を達成するには,本学会や国がB A の認知度調査をシステム化し,P D C A サイクルを回しながらのB A の普及・啓発とがん検診精度管理を提案したい。
  • 高木 富美子
    2024 年 33 巻 1 号 p. 47-49
    発行日: 2024年
    公開日: 2024/05/02
    ジャーナル 認証あり
    認定NPO 法人乳房健康研究会ではブレスト・アウェアネス(以下B・A)を普及する目的で2022 年10 月に一般女性を対象にアンケート調査を行った。 B・A に関わる行動を因子分析すると「いつとはなく見たり,触ったり,気にしている」といった「何気ない日常」の中にB・A が存在することがわかった。これを認めて,顕在化させることが普及の鍵である。 この結果をピンクリボン活動に落とし込むにあたり,さらに解析を進めて“乳がんに関する情報接触とコミットメント”の因子分析およびクラスター分析を行った。これにより抽出された因子は「浮遊する情報」と「活動参加」の2つであった。一方,調査対象者は「情報埋没型」(92.7%)と「関与参画型」(7.3%)に分類された。B・A の行動,及び情報接触とコミットメントの2 因子ともに反応が高いのは「関与参画型」である。ロジャースの普及理論に依れば,この層を16%超にすることでB・A は飛躍的な普及が期待できる。 さらに「関与参画型」の属性を調べると,家族や知人・友人にがん患者や乳がん患者がいるとの回答が目立つ。医療機関から患者を介したピンクリボンイベントへの呼びかけが有効と示唆される。
  • 土井 卓子, 井上 謙一, 川崎 あいか, 海野 敬子, 北田 翼, 有泉 千草, 指澤 祐二, 近藤 奈々江, 木下 博勝, 斉藤 好子
    2024 年 33 巻 1 号 p. 51-54
    発行日: 2024年
    公開日: 2024/05/02
    ジャーナル 認証あり
    乳がんの死亡率減少にはブレストアウェアネスが大切である。2015 年から鎌倉では医療者が大学の講義やイベント参加という方法でブレストアウェアネスを広めてきた。学生が医療の現場を目にしたことがきっかけで,2021 年から2 校で学生が主体的にマンモグラフィ検診を推奨する活動が始まった。栄養科の学生が乳がんにかかりにくい食生活を考え,献立の作成に取り組んだ。デジタルアートの学生はモノレールのヘッドマークと中吊り作成,ライトアップイベントのポスター作製,検診を推奨するSNSの配信を行った。思いがけない献立やプロには作れないみずみずしい感性のポスターやヘッドマークが出来上がり,好評を得ている。受け身では一過性の効果しかないが,学生が自主的に参加,研究,行動することで乳がんに対して関心と理解が深まり,次の学年やほかの学部の学生にも活動が広がり,ブレストアウェアネスの実践にもつながった。同じような活動を,全国でつなげて,連携を図り充実したいと考えている。
  • 山川 卓, 杉本 健樹, 安藝 史典, 藤島 則明, 高橋 聖一
    2024 年 33 巻 1 号 p. 55-58
    発行日: 2024年
    公開日: 2024/05/02
    ジャーナル 認証あり
    【目的】ブレスト・アウェアネス(以下BA)に対する高知県及び当院での取り組み及びBA認知度の経年推移を報告するともに,普及,啓発に向けて本学会と地域の果たすべき役割等を考察した。【結果】2020 年12 月,県ホームページにBA をアップロード。2022 年4 月,県内全市町村,保健所等にリーフレットを配布。同年5 月,講演。その後,複数の市町村広報誌にBA の記事,動画等が掲載,配信された。当院では2022 年3 月,同様の講演を行い,院内にリーフレットを提示開始した。当院受診者に対してのBA の説明は医師,看護師あるいは放射線技師が個別に行った。2022年4 月及び2023 年5 月,BA に関する認知度等を当院受診者100 名にアンケート調査した。その結果,BA という言葉を聞いたことがある3% → 8%,その意味を知っている1% → 2%,乳房の異常に気づいても,検診を待つ3%→ 3%等であった。【考察・まとめ】BA の認知度は少し上昇したが,まだまだ低く,普及の壁はかなり高い。本学会としては,メディア,ネットのみならず他学会とも連携し,BA をさらに周知徹底することが重要である。また,地域としても,県から各市町村,地域コミュニティ,学校,クリニック単位等で普及させる必要がある。私たち医療者は,今後も粘り強く,ブレスト・アウェアネスの概念を一人でも多くの人に説明し,乳がん死減少に導いていくべきである。
全国集計報告――2020年度
原著
  • 小西 章子, 藤井 直子, 中間 友美, 古川 博子, 山西 昌子, 寺井 明日香, 片山 若奈, 吉川 絵美, 沢井 ユカ, 藤田 倫子, ...
    2024 年 33 巻 1 号 p. 69-74
    発行日: 2024年
    公開日: 2024/05/02
    ジャーナル 認証あり
    超音波で異常を指摘できないカテゴリー(C) 3以上の石灰化病変を診断するために, マンモグラフィガイド下吸引式乳腺組織生検(MG-VAB) が施行されている。C3 の石灰化のすべてにMG-VAB を行うことは過剰検査であり現実的ではないが,一方で悪性病変が少ないながら含まれているのは確かであり,生検を要するかどうかの適応決定が重要である。特に近年のソフトコピー診断では,詳細な形態観察が可能であるが故に評価が難しい場合があるので,C3-1 とC3-2 の細分類を行うためのスコアリングシステムを作成した。 2015 年1 月~ 2020 年12 月,MG-VAB 施行1335 例中,拡大撮影も行ったC3 ①集簇性858 例,②区域性147 例を対象としてピクセル等倍表示で所見項目を評価した。J-RADS第4 版にて『数が多く密度が高いものはC3-2 とする』とあるが,良・悪性で個数と密度に有意差はなく,有意に悪性の割合が高かった項目は①密度の不均一性・大小不同・濃淡・背景濃度,②密度の不均一性・大小不同・角度であり,これらからスコアリングシステムを作成すると診断能は良好であり,これを用いて細分類を行うとC3-1/C3-2 の悪性率は①11.6% /32.3%,② 6.5% /45.8%となり,MG 初学者でも評価しやすく,生検適応の一助となりうるシステム作成が可能となった。
  • 中村 舞, 信太 圭一, 沼田 百恵, 松本 花菜音, 赤尾 真尋, 青木 琉栞, 木村 暁, 藤井 優子, 田尻 真鈴
    2024 年 33 巻 1 号 p. 75-78
    発行日: 2024年
    公開日: 2024/05/02
    ジャーナル 認証あり
    マンモグラフィ検診において偽陽性となる要因のひとつに局所的非対称性陰影(FAD)がある。ポジショニング不良で乳腺を十分に伸展させることができなかった場合,偽のFAD が描出される。さらに,マンモグラフィ上の乳腺伸展性は医師や診療放射線技師によって視覚的に評価されており,個人の経験に依存する。本研究では診療放射線技師14 名を対象にROC 実験を行った。実験には51 枚のMLO 画像を使用し,1 枚単独での評価と参考画像ありの場合の連続評定実験を実施し,評価の一致度と正確さを比較した。単独評価ではKappa 係数0.63,平均AUC 値0.74 であり,参考画像ありの場合はKappa 係数0.66,平均AUC 値0.82 であった。同一被検者の参考画像を用いることで,乳腺伸展性の評価の一致度と正確さが向上したが,観察者によって乳腺伸展性評価にばらつきがみられた。
  • 植木 匡
    2024 年 33 巻 1 号 p. 79-84
    発行日: 2024年
    公開日: 2024/05/02
    ジャーナル 認証あり
    乳がん検診における検診精度向上は,被検者の不利益を減少させるために重要であ る。新潟県では2003 年度よりの市町村別の検診精度結果を公開しており,この結果をもとに柏崎市の要精検率,がん発見率と陽性反応的中度を評価した。柏崎市では2012 年度より視触診を廃止した。柏崎市の対策型検診の多くを担う医師会検診は,2012 年度よりマンモグラフィーのデジタル化と伴に比較読影を開始した。 2012 年度の前後の3 年間で比較すると,要精検率は有意に減少していた(8.60% vs 4.47%,p < 0.05)。有意ではないものの,がん発見率の減少と陽性反応的中度の若干の上昇もあった。2009 年度から2020 年度までを3 年度毎にまとめた柏崎市の検診精度の推移は,いずれの期間でも要精検率は県全体より低く,陽性反応的中度は高かった。要精検率は,2015年度以降でも差が徐々に大きくなっていた。がん発見率は,一時的に県全体より低くなった。陽性反応的中度は,2014 年度までは差が少なく,2015 年度以降で5.9%以上と差が大きくなった。 柏崎市では検診に関わる施設のメンバーが集まる検診委員会が検診の調整を行ってきた。さらに,検診委員会にて各施設の連携と精度結果の共有を行うことにより検診精度向上を目指している。新潟県の市町村別の検診精度結果は情報の共有に有用な資料であった。
  • 柴田 亜貴子, 入駒 麻希, 飯尾 智美, 安井 有香, 山口 園美, 吉田 雅行, 安達 博, 武藤 繁貴, 福田 崇典, 中島 健, 吉 ...
    2024 年 33 巻 1 号 p. 85-90
    発行日: 2024年
    公開日: 2024/05/02
    ジャーナル 認証あり
    2021 年4 月より日本で初めて,がん未発症者を対象とした遺伝子バリアントに基づく任意型の個別化検診システム「SEIREI-CARE プログラム」を開始した。NCCN ガイドラインに基づいたチャットボット(AI 問診)を用いて遺伝性腫瘍の高リスク者を抽出し,遺伝カウンセリング,遺伝性腫瘍の多遺伝子パネル検査を実施,その結果に基づいた個別化検診を提案した。対象は婦人科検診を受けた37,493 人で,チャットボットに登録し回答したのは2,863 人,そのうちNCCN ガイドライン合致者は757 人(26.4%)であった。 遺伝カウンセリングを受けた人は52 人(6.9%),そのなかで遺伝学的検査を実施した人は9 人,内1 人にBRCA2 の病的バリアントを認めた。検診受診者の中にも遺伝性腫瘍の病的バリアント保持者がいる可能性が示唆された。また,遺伝カウンセリング及び遺伝学的検査実施率が非常に低く,今後の課題であると考えられた。アンケート結果からは,がん未発症者にとってがん発症のリスクを知ることを自分にとって必要なこととしてとらえて即座に行動するには至らない現状が明らかになった。がん未発症者への教育など対策が必要であるとともに,がんゲノム時代を迎える中で医療者も遺伝性腫瘍に関して理解を深めることが必要と考えられた。
症例報告
  • 米沢 圭
    2024 年 33 巻 1 号 p. 91-94
    発行日: 2024年
    公開日: 2024/05/02
    ジャーナル 認証あり
    症例は51 歳女性。右乳頭からの出血に気づき当科受診。右乳頭に約1cm 大の赤色・ 乳頭状で易出血性の腫瘤を認めた。もともと両側陥没乳頭で腫瘤は陥没部から隆起していた。乳房超音波検査(US)では右乳頭陥没部内に12.7mm の境界明瞭な乳頭状の低エコー腫瘤を認めた。ドップラーエコー(CDI)では血流は極めて豊富で,深部から浅部に向かい直線状にほぼ平行に走る10 本ほどの動脈性の血流を認めた。箒の穂の様な走行が特徴的であった。切開生検を行うと,筋上皮を伴う乳管上皮が密に管状・乳頭状に増殖しておりnipple adenoma と診断した。初診後1カ月で形成外科にて局所麻酔下に右乳頭部腫瘤摘出術を施行した。切除標本の病理診断も同様であった。腫瘍内,特に表層部に多数の血管像が確認できた。術後の右乳頭の形態は良好で再発も認めていない。nipple adenomaは乳頭内または乳頭直下から発生する乳頭状ないし充実性の良性腫瘍で比較的まれな疾患である。Paget 病等の悪性疾患との鑑別が問題となる。報告例は皮膚科からのものが多くUS 所見の報告例は少ない。しかしCDI 施行症例では当症例のように血流が豊富と報告されており,今後症例の集積により,このような血流所見が同疾患の鑑別に役立つ可能性もあると考えられた。nipple adenoma の1例を経験し,特徴的なhyper vascular image を認めたので文献的考察を加えて報告する。
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