日本外傷学会雑誌
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28 巻, 3 号
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原著
  • 越後 整, 山下 典雄, 高須 修, 吉山 直政, 平湯 恒久, 永瀬 正樹, 鍋田 雅和, 中村 篤雄, 宇津 秀晃, 高松 学文, 森岡 ...
    2014 年 28 巻 3 号 p. 261-266
    発行日: 2014/07/20
    公開日: 2014/07/20
    ジャーナル フリー
     ドクターヘリによる早期医療介入が多発外傷の転帰に及ぼす影響について検討を行った.重症頭部外傷に対し緊急手術を要した多発外傷例について,ドクターヘリ搬送群(以下DH群)と救急車搬送群(以下AC群)を比較した結果,覚知から初療開始までの時間はDH群で16±7分,AC群で30±11分と,DH群で有意に短かった.搬入時のlactate値は,DH群で2.3±1.3mmol/L,AC群で3.6±1.6mmol/Lと,AC群で有意に高値であった.搬入時shockであった症例はDH群0例(0%),AC群3例(30%)とAC群で多い傾向にあった.退院時GOSは,DH群で良好例(GR,MD)5例(45%)に対し,AC群2例(20%)とDH群で良好例が多い傾向にあり,救命率は,AC群40%に対しDH群82%と高かった.ドクターヘリの介入により,循環不全を防ぎ,救命率を上昇させる可能性が示唆された.
症例報告
  • 川嶋 太郎, 当麻 美樹, 高岡 諒, 佐野 秀, 高橋 晃, 伊藤 岳, 小野 雄一郎, 小野 真義, 馬越 健介
    2014 年 28 巻 3 号 p. 267-272
    発行日: 2014/07/20
    公開日: 2014/07/20
    ジャーナル フリー
     びまん性特発性骨増殖症(diffuse idiopathic hyperostosis:DISH)にともなう腰椎骨折が原因で腰動脈損傷を生じ,大量後腹膜出血より腹部コンパートメント症候群(abdominal compartment syndrome:ACS)をきたした1例を報告する.
     症例は77歳男性,歩行中の転倒による腰痛で近医受診後転院となった.造影CTで第2腰椎椎体の水平骨折とDISHによる骨増殖部の直接損傷と思われる腰動脈損傷,大量後腹膜出血を認めた.直ちに経カテーテル動脈塞栓術(transcatheter arterial embolization:TAE)を施行したが,膀胱内圧の上昇(39mmHg)に加え呼吸循環障害も出現しACSを合併した.緊急減圧開腹術後にsilo+vacuum packing closureによるopen abdomen managementを施行しACSを解除した.その後,観血的腰椎後方固定術を行い,神経学的後遺症を残すことなく72病日に軽快転院となった.
  • 間山 泰晃, 砂川 宏樹, 小倉 加奈子, 卸川 智文, 中村 陽二, 大城 直人, 佐藤 彩, 粟国 克己
    2014 年 28 巻 3 号 p. 273-276
    発行日: 2014/07/20
    公開日: 2014/07/20
    ジャーナル フリー
     症例は47歳,男性.既往にアルコール性肝硬変を認めた.来院2時間前に左季肋部を打撲し救急外来を独歩で受診した.収縮期血圧88mmHg,脈拍96回/分とショックであった.腹部造影CTでは脾上極の裂創と遅延相での造影剤漏出を認めた.選択的動脈塞栓術を施行した.施行後,収縮期血圧は100mmHg程度まで改善したが,ICU入室後再度ショックとなり手術を施行した.術中所見では腹腔内に噴出性の出血を認め,脾臓摘出術を行った.脾損傷分類(2008)Ⅱ型であった.来院から22時間後死亡した.脾損傷に対して動脈塞栓術を施行したが,既往症から止血困難で予測外死亡をきたしたため報告した.
  • 高橋 哲也, 伊藤 敏孝, 遠藤 英穂, 平田 晶子, 広海 亮, 武居 哲洋, 八木 啓一
    2014 年 28 巻 3 号 p. 277-281
    発行日: 2014/07/20
    公開日: 2014/07/20
    ジャーナル フリー
     症例は6歳の男児.自転車で転倒した際に上腹部をハンドルで打撲し,受傷から3時間後に独歩来院した.来院時意識清明,血圧104/69mmHg,脈拍数87/分と生理学的異常はなかった.腹部dynamic CTで肝右葉に内部に仮性動脈瘤を伴う挫滅と腹腔内出血を認めた.仮性動脈瘤を伴うⅢa型肝損傷(日本外傷学会臓器損傷分類2008)の診断で,循環動態は安定していたため,まずtranscatheter arterial embolization(TAE)を試みることとした.鎮静せずに安静保持可能であった.置換右肝動脈A8に血管外漏出像を認めたため,gelatin spongeを動注し塞栓術を行った.経過良好で第14病日に独歩退院した.自転車ハンドル外傷による小児肝損傷はまれであるが,線的外力という比較的小さな外力で起こり得るため,循環が安定している場合でも仮性動脈瘤形成の可能性もあり,TAEは有効な治療法と考えられた.
  • 加藤 久晶, 福田 哲也, 田中 義人, 三宅 喬人, 名知 祥, 吉田 隆浩, 白井 邦博, 豊田 泉, 小倉 真治
    2014 年 28 巻 3 号 p. 282-285
    発行日: 2014/07/20
    公開日: 2014/07/20
    ジャーナル フリー
     胆嚢は解剖学的に損傷を受けにくい臓器とされ,腹部鈍的外傷による胆嚢損傷の頻度は約2%と報告されている.損傷を受けやすい状況として飲酒後の上腹部への強打が指摘されており,今回その1例を経験した.症例は69歳,女性.飲酒運転中,電柱に衝突した.シートベルトの着用は不明であった.来院時酩酊状態,バイタルサインは安定していたが上腹部の圧痛を認めた.腹部造影CT検査で胆嚢壁および胆嚢内の造影剤漏出と肝周囲の腹水貯留を認めた.緊急開腹手術を行い胆嚢壁の全層性裂創を認めた.腹腔内合併損傷を認めず,胆嚢摘出術を施行し,術後経過は良好であった.
  • 松本 尚也, 増田 卓之, 高橋 学, 石部 頼子, 菅 重典, 小野寺 ちあき, 佐藤 諒, 星川 浩一, 山田 裕彦, 井上 義博, 遠 ...
    2014 年 28 巻 3 号 p. 286-290
    発行日: 2014/07/20
    公開日: 2014/07/20
    ジャーナル フリー
     <目的>出血性ショックを伴う開放骨折は,患肢温存よりも救命を優先すべきであり,止血目的に速やかに切断しなければならないこともある.しかし,一期的な切断術は骨切りにより出血を助長する,手術時間を要するといった問題点がある.今回,出血性ショックを伴う下腿開放骨折3症例に対して行った関節離断について,その有用性を報告する.<方法>患肢温存不能な出血性ショックを伴う下腿開放骨折3症例に対してDamage Control Surgery(以下DCS)として膝関節離断術を行い,二期的に断端形成術を行った.<結果>3症例とも救命することができた.いずれの症例も,DCSは根治術に比べて短時間に手術を行うことができた.
  • 柿﨑 良太, 神應 知道, 増田 智成, 山谷 立大, 稲垣 泰斗, 樫見 文枝, 服部 潤, 片岡 祐一, 北原 孝雄
    2014 年 28 巻 3 号 p. 291-294
    発行日: 2014/07/20
    公開日: 2014/07/20
    ジャーナル フリー
     鈍的心損傷は症状が非特異的であり,心電図異常は診断の助けになる.薬物治療なしに自然軽快した鈍的心損傷による心房細動の1例を経験した.患者は22歳,男性.乗用車を運転中にトラックと正面衝突し救急搬送された.受傷時シートベルトは着用していた.来院時,自覚症状はなく,胸部に特記すべき身体所見は認めなかった.心電図で心房細動を認めたが,心筋トロポニン(cardiac troponin:cTn)Iの上昇はなく,心臓超音波検査も異常を認めなかった.受傷7時間後にcTnTの上昇を認めたが,受傷30時間後に薬物治療なしに洞調律に回復,cTnTも改善し第2病日独歩で退院した.鈍的心損傷による心房細動の報告は少なく,それらは薬物治療を要したと報告されており,本症例は貴重であると考え報告する.
  • 川井 廉之, 井上 剛, 宮崎 敬太, 多田 祐介, 北岡 寬教, 岩村 あさみ, 關 匡彦, 則本 和伸, 福島 英賢, 畑 倫明, 奥地 ...
    2014 年 28 巻 3 号 p. 295-298
    発行日: 2014/07/20
    公開日: 2014/07/20
    ジャーナル フリー
     活動性出血を伴う副腎損傷に対してガーゼパッキングが奏功した多発外傷例を報告する.症例は21歳,男性.交通外傷で当センター搬送となった.造影CT検査にて肺挫傷と肝損傷,活動性出血を伴う右腎臓損傷と右副腎損傷を認め緊急開腹術を施行した.腎の修復の際に後腹膜腔が開放されたため,後腹膜腔による副腎のパッキング効果が期待できないと判断して肝とともにガーゼによるパッキングを行い,引き続き血管内治療に移行した.大動脈造影では副腎からの出血は認められずガーゼパッキングが有効と判断した.本症例のように,血管内治療に先行して開腹術が行われた場合,ガーゼパッキングは有効な一次止血法と考えられた.
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