行動療法研究
Online ISSN : 2424-2594
Print ISSN : 0910-6529
30 巻, 1 号
選択された号の論文の6件中1~6を表示しています
  • 皿田 洋子
    原稿種別: 本文
    2004 年30 巻1 号 p. 1-9
    発行日: 2004/03/31
    公開日: 2019/04/06
    ジャーナル フリー
    わが国の精神科治療は、欧米に比べてはるかにおくれてはいるが、入院中心から地域へと移行しつつある。慢性精神障害者が生活の質を高め、地域の中で適応していくのに必要な生活技能を学習する有用な方法として、生活技能訓練(SST)が治療の中に組み込まれはじめて10年になる。おもに入院患者を対象として実施されているが、その中には治療動機の乏しい患者、SSTの流れについていけないスキルの低い患者、さらにはストレス耐性が非常に低く、症状の増悪をきたしやすい患者なども含まれており、一筋縄ではいかないことがよくある。本稿では、臨床上遭遇するこのような困難なケースに対して、課題設定、フィードバック、モデリング、宿題などの技法をどのように使っていけばよいか、具体的な事例をあげながら筆者の考えを述べたい。
  • 安西 信雄, 池淵 恵美
    原稿種別: 本文
    2004 年30 巻1 号 p. 11-22
    発行日: 2004/03/31
    公開日: 2019/04/06
    ジャーナル フリー
    わが国の精神保健分野における社会生活技能訓練(SST)の本格的な導入は、1988年の米国UCLAのLiberman来日から始まった。その後約15年の発展経過をSSTの普及状況に関する6回のアンケート調査にもとづき検討した。その結果、(1)SSTは生活行動の改善を目標にデイケアを中心に開始され、(2)診療報酬化(1994年)以後は医療機関だけでなく非医療機関においても実施施設数の増加がみられ、(3)対象の拡大(統合失調症以外の気分障害や神経症圏、さらに司法など医療以外の対象へ)と技法の多様化(基本訓練モデルに加えて各種モジュールも実施)の傾向が認められた。普及の過程で生じた誤解や批判について検討し、普及におけるSST普及協会の役割を検討した。 SSTに関連した研究報告の経年推移を検討し、研究の動向を概括した。今後のわが国の地域ケアへの転換に関連して、生活の場での行動改善、長期在院患者の退院促進等にSSTが寄与すべきことを考察した。
  • 前田 ケイ
    原稿種別: 本文
    2004 年30 巻1 号 p. 23-28
    発行日: 2004/03/31
    公開日: 2019/04/06
    ジャーナル フリー
    本稿ではSST(social skills training)の実施を集団で行う場合、集団のもつ潜在的な治療教育的力動を生かしつつ、参加メンバーの行動学習を効果的に助けるために、どのような工夫ができるかを具体的に論じた。SSTは幅広い利用者に対して有効な方法であるが、ここではおもに精神障害者のSSTについて述べた。精神障害者のSSTは医師、看護師、臨床心理士、作業療法士、精神保健福祉士など、多職種が行っているので、ここではそのような人々を総称して「スタッフ」とよんだ。SSTにはいろいろな進め方があるが、本稿で紹介するのは基本訓練モデルとよばれる方法である。基本訓練モデルによる指導過程のうち、特に「学習に適切な環境をつくる段階」と「学習を効果的に進める段階」の2つに焦点を絞って、いくつかの集団技法について論じた。
  • 中谷 江利子, 中川 彰子, 磯村 香代子, 大隈 紘子
    原稿種別: 本文
    2004 年30 巻1 号 p. 29-41
    発行日: 2004/03/31
    公開日: 2019/04/06
    ジャーナル フリー
    Prader-Willi症候群(PWS)は、筋緊張低下、肥満、性腺発育不全、精神遅滞を主徴候とする先天性疾患である。肥満とその合併症が生命予後にかかわることから、肥満対策が不可欠とされている。今回筆者らは、身体合併症(心不全、糖尿病、睡眠時無呼吸)があり、生命維持のために減量が必要であったが、食行動異常のほか、こだわり、かんしゃく、放火、俳徊などの多くの問題行動のため、小児科での治療が困難であった13歳男子のPWSの入院治療を行った。入院後も激しい問題行動と、体重測定さえできないほど肥満治療に対しての抵抗が強く、入院生活の継続も懸念された状態であったが、刺激を統制し、オペラント強化法を用いるための治療上の工夫を行ったことにより、患者が積極的に楽しく肥満治療に取り組みながら16kgの減量に成功し、身体合併症の著明な改善がみられた。この治療成果は本症例の生涯にわたる肥満治療において重要な役割を果たすと考えられた。
  • 境泉 洋, 佐藤 寛, 松尾 雅, 滝沢 瑞枝, 富川 源太, 坂野 雄二
    原稿種別: 本文
    2004 年30 巻1 号 p. 43-53
    発行日: 2004/03/31
    公開日: 2019/04/06
    ジャーナル フリー
    問題解決療法(PST)のうつ症状に対する改善効果は、これまで多くの研究によって明らかにされているが、その効果をメタ分析によって検討した研究は行われていない。そこで本研究では、10の研究を用いてPSTの軽度うつ症状に対する改善効果についてメタ分析の視点から検討した。本研究から得られた結果は以下のとおりである。(1)PSTの軽度うつ症状に対する改善効果は、統制群より大きい。(2)セッション数(7 or more sessions、6 or fewer sessions)にかかわらず、PSTの軽度うつ症状に対する改善効果は統制群より大きい。(3)治療形式(グループ形式、個別形式)にかかわらず、PSTの軽度うつ症状に対する改善効果は、統制群より大きい。(4)治療終結期において、PSTの軽度うつ症状に対する治療効果はSSRIより小さいが、フォローアップ期において、PSTの軽度うつ症状に対する治療効果はSSRIより大きい。これらのことから、PSTは軽度うつ症状に対する治療法として有効であり、薬物療法と併用して治療に用いる有用性が示唆された。
  • 宮崎 眞
    原稿種別: 本文
    2004 年30 巻1 号 p. 55-66
    発行日: 2004/03/31
    公開日: 2019/04/06
    ジャーナル フリー
    本研究は重度知的障害のある児童2名を対象とし、見立て遊びを指導し促すことによって発語行動がどのように変容するか検討することを目的とした。指導1-1で「焼きそば」、指導1-2で「カレーライス」「魚焼き」「サンドイッチ」および「目玉焼き」に従ってふり動作の系列を遂行するように、言語教示、動作の示範、動作を言語化の手続きにより指導した。指導2ではさらに「歯磨き」等のスクリプトを新たに加えた。対象児が遊びを開始するのを待ち、ふり動作を行ったときに対象児の動作を言語化する指導手続きを中心にした。指導1〜2の結果、両対象児は見立て遊びを自発するようになった。発語の系列化といった形態面での変化はなかったが、この見立て遊びの進展に伴い、言語面では発話の機能が多様化する傾向が認められた。
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