行動療法研究
Online ISSN : 2424-2594
Print ISSN : 0910-6529
16 巻, 2 号
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  • 生和 秀敏, 横山 博司
    原稿種別: 本文
    1990 年16 巻2 号 p. 81-91
    発行日: 1990/09/30
    公開日: 2019/04/06
    ジャーナル フリー
    本研究は,制御可能性の判断を構成している回避確率と自己管理確率のいずれの成分が不安低減効果をもっているのかを調べるため,直列回路につながれた2人の被験者の電撃回避手段についての関係性について操作を加え,ペアとして考えた場合の回避確率と自己管理確率の違いが脅威事態の嫌悪度評価や電撃到来予測状況下における心拍変化にどのような違いを生ずるかを検討した。被験者は男子大学生54名。回避事態としては,直列回路につながれた2人の回避手段に対する相互依存的関係の違いにより,AND条件・OR条件・自己管理条件・他者管理条件の4条件を設定した。まず,質問紙調査を行い,一対比較法によって4条件の嫌悪度を回答させた。その後,4種類の回避条件を実際に操作設定し,回避条件の違いが回避反応や電撃到来予期期間の心拍変化に及ぼす影響を調べた。その結果,質問紙調査においては,OR条件,自己管理条件,他者管理条件,AND条件の順に回避条件の選択確率が低くなり,次第に嫌悪度が高くなっていることがわかった。つまり,回避確率が高く,しかも,自己管理の可能性が高いほど好ましい事態とみなされるという結果になった。しかし,実際の回避事態においた場合の生理的覚醒の程度はこれとは異なり,他者管理条件が最も心拍は低く,自己管理条件の心拍が最も高くなっており,回避確率においても最も大きな差のみられるはずのAND条件とOR条件の問には心拍水準においてあまり違、・がみられないという結果が得られた。回避確率の高さが不安低減効果を持つことは大筋において認められたが,自己管理そのものは,むしろ不安を高める方向に機能する可能性があることを示唆する結果になった。
  • 加藤 哲文, 小林 重雄
    原稿種別: 本文
    1990 年16 巻2 号 p. 92-105
    発行日: 1990/09/30
    公開日: 2019/04/06
    ジャーナル フリー
    本研究は,自閉症児において,異種感覚様相問の刺激性制御の転移がいかなる変数によって達成されるかという問題について,継時弁別学習事態で2種類の実験を行なった。実験事態は,視覚刺激から聴覚刺激への転移事態であった。第1に,2種類の時間遅延手続きの比較検討を行なった結果,4名の自閉症児のうち3名において,遅延時間を固定させて用いるよりも遅延時間を順次増加させる条件の方が転移を促進させることがわかった。第2に,転移が不完全であった2名について,時間遅延法の転移促進効果を補強する手続きとして分化強化手続きを導入した。その結果,この2名の転移は迅速に達成された。以上の結果から,視覚刺激から聴覚刺激への刺激性制御の転移において,基礎的弁別学習事態では,漸増型時間遅延法の適用と,分化強化手続きの適用が効果的であることがわかった。
  • 山本 麻子, 上里 一郎
    原稿種別: 本文
    1990 年16 巻2 号 p. 106-114
    発行日: 1990/09/30
    公開日: 2019/04/06
    ジャーナル フリー
    本研究は痛みの制御に及ぼすディストラクション方略とセルフエフィカシーの効果の検討を行うことを目的としている。被験者は,大学生男性24名女性24名で,3℃の冷水に手をつけるように教示された(コールドプレッサーテスト)。これらの被験者は,3(ディストラクション:High/Low/Contro1)×2(セルフエフィカシー:High/Low)の要因計画に従い,6グループに割り当てられ,各条件下での耐性時間,主観的な痛み,ディストレス,不安等が測定された。2要因分散分析を行なった結果,耐性時間の延長において,ディストラクションの主効果が認められたが,セルフエフィカシーの主効果,交互作用はいずれの指標においても認められなかった。この結果について,ディストラクション方略における注意の量とセルフエフィカシー操作における問題点からの検討を行なった。
  • 米村 あゆみ, 生和 秀敏
    原稿種別: 本文
    1990 年16 巻2 号 p. 115-121
    発行日: 1990/09/30
    公開日: 2019/04/06
    ジャーナル フリー
    本研究の目的はスピーチ場面における不安の生理的指標と主観的指標の時間にともなう変化と両者の対応関係について検討することである。7名の被験者の心拍数(HR)と不安の主観的指標をスピーチ前から後にかけて継時的に測定した。その結果,以下の3点が明らかになった。(1)生理的指標であるHRと関連のある主観的指標は「緊張している」,「恐い」といった情動であり,「心配な」,「落ちつかない」といった情動とHRとの問には関連が認められなかった。(2)主観的指標とHRの変化には時間的なずれがみられ,HRはスピーチ中に最高に達するのに対し,主観的指標はスピーチ前に最高値を示した。(3)主観的指標内においても,「心配な」,「落ちつかない」といった成分は「緊張している」といった成分に先行して生じていることが示唆された。これらの結果から,スピーチ場面においてみられる不安反応は単一の情動ではなく複数の情動成分によって構成されており,しかも時間経過にともない主たる情動成分が変化すると考えられる。
  • 小林 正幸
    原稿種別: 本文
    1990 年16 巻2 号 p. 122-131
    発行日: 1990/09/30
    公開日: 2019/04/06
    ジャーナル フリー
    本研究は子どもの社会的スキルの問題の概念化の検討を行うことが目的である。そのため,子どもの社会的スキルの定義と子どもの社会的スキルの問題の概念に関する研究が展望された。社会的スキルの定義に関しては,社会的妥当性の定義が,他の定義と比較して最も妥当な定義と考えられた。また,社会的スキルの問題の概念化に役立つ考え方として,3つのモデルが示された。それらは(1)学習と遂行の区別により問題を4タイプに分類するモデル,(2)問題を3タイプに分類する認知社会的学習モデル,および(3)社会的情報処理仮説,である。社会的スキルの内容と状況要因との関連を検討する必要について論じ,さらに子どもの社会的スキルの問題の概念化に関して,一つのモデルが仮説として呈示された。
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