本研究の目的は,系統的脱感作法におけるイメージ想起方略を,恐怖・不安の低減効果から検討することであった。反応志向想起(Response-oriented imaging;以下,ROI)と刺激志向想起(Stimulus oriented imaging;以下,SOI)が,2つの実験で比較され,主観的評定,生理指標,行動評定による効果測定が行なわれた。実験1では,ネズミ恐怖のある12名の大学生が,反応志向想起群と刺激志向想起群に分けられ,ネズミに接近する場面を繰り返し想起した。実験Hではスピーチ不安のある12名の,自律訓練法によるリラクセーションを習得した大学生が,実験1と同じく想起法に違いのある2群に分けられ,脱感作セッションを受けた。結果は以下の通りである。実験1で,イメージ想起中の心拍率変化を比較したところ,ROI群の心拍率はSOI群の心拍率よりも有意に増加した。しかし不安・恐怖反応の減少度において群間にはまったく差はなかった。実験Hでは,主観的評定,皮膚伝導度,行動指標のすべてにおいてROI群が,いずれも統計的に有意ではなかったものの,より大きな改善を示した。これらの結果は,リラクセーショソを十分に習得すれば,ROIはより恐怖・不安反応を低減させる効果があることを示唆するものと考察された。
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