行動療法研究
Online ISSN : 2424-2594
Print ISSN : 0910-6529
42 巻, 3 号
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巻頭言
実践研究
原著
  • 上村 碧, 大月 友, 嶋田 洋徳
    2016 年42 巻3 号 p. 387-398
    発行日: 2016/09/30
    公開日: 2019/04/27
    ジャーナル フリー

    本研究の目的は、セルフコントロールのメカニズムを関係反応の観点から捉え直し、実験的に検討することであった。具体的には、随伴性の特定と時間の派生的関係反応の関連、および、セルフコントロールと時間や比較の刺激機能の変換の関連を検討した。33名の小学生を対象に、関係課題によって時間や比較の関係反応の能力を測定した。また、逆転課題およびWISC-IIIの絵画配列によって、随伴性の特定を測定し、遅延価値割引質問紙やS-M社会生活技能検査へ回答を求めることによって、セルフコントロールを測定した。その結果、時間の派生的関係反応が成立した者は、不成立の者に比べ絵画配列の粗点において有意に高い得点が示された。一方で、時間や比較の刺激機能の変換とセルフコントロールの間には関連性が示されなかった。本研究の結果から、セルフコントロールを関係反応の観点から理解することの有用性と限界点、および今後の展望について検討した。

  • 川井 智理, 嶋 大樹, 柳原 茉美佳, 齋藤 順一, 岩田 彩香, 熊野 宏昭
    2016 年42 巻3 号 p. 399-411
    発行日: 2016/09/30
    公開日: 2019/04/27
    ジャーナル フリー

    本研究は、Acceptance and Commitment Therapy(ACT)が注目する脱フュージョンという行動的プロセスを測定する尺度の作成、その信頼性と妥当性の検討、脱フュージョンに含まれるさまざまな行動の機能の重なりや相違点に基づいた妥当性の高い行動クラスを見いだすことを目的とした。40項目からなる尺度の原案を作成し、首都圏の学生を対象に横断調査を行った。探索的因子分析の結果、本尺度は【自分の自覚】・【選択と行動】・【現在との接触】の3因子18項目から構成されることが示され、脱フュージョンは三つの“機能”を含む可能性が明らかになった。また、それぞれを下位尺度とした場合、十分な内的整合性、収束的妥当性が確認された。今後は、本尺度を用いてACTが介入対象とするほかの行動的プロセスや臨床症状との関連性を検討し、精神的苦痛を緩和する脱フュージョンについての理解をより深めていく必要がある。

実践研究
  • 深町 花子, 石井 香織, 荒井 弘和, 岡 浩一朗
    2016 年42 巻3 号 p. 413-423
    発行日: 2016/09/30
    公開日: 2019/04/27
    ジャーナル フリー

    本研究はアクセプタンス&コミットメント・セラピー(ACT)のスポーツパフォーマンス向上への効果を検討した。対象者は21歳の大学生アーチェリー選手であり、60分の介入を13セッション実施した。パフォーマンスを測定するためにアーチェリーの得点とACT関連尺度の得点を記録した。対象者は試合中に苛立ちや震えが生じることを自身の問題として挙げた。ACTのエクササイズを実施し、ACTのプロセスの一つである「体験の回避」の問題点を理解し、「価値」に基づいて、実際に行動を生起させていくことを確認した。介入の結果、アーチェリーの得点は向上し、「体験の回避」を扱ったセッションの後に該当する尺度の得点が僅かに減少した。対象者は試合を楽しむようになり、いらだつこともなくなったと報告した。本研究の結果より、ACTが心理的柔軟性の改善によって、大学生アスリートのパフォーマンスを向上させる可能性を示唆した。

コロキウム報告
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