本研究の目的は、物質乱用者やひきこもり状態にある人のconcerned significant others(CSO)を対象としたCommunity Reinforcement and Family Training(CRAFT)による効果をメタ分析によって検討することであった。物質乱用者のCSOを対象とした8本の効果研究および、ひきこもり状態にある人のCSOを対象とした2本の効果研究を用いて、CRAFTによる効果を検討した結果、受療に至った割合は物質乱用ケースで64.9%、ひきこもりケースでは30.8%であった。ただし、ひきこもりケースでは、社会参加に至ったケースを含めた割合は61.5%であった。さらに、CSOの心理的機能の改善、関係性の改善のいずれにおいても、物質乱用ケース、ひきこもりケースともに一定の有効性が示された。これらの結果を踏まえ、CRAFTによる効果と今後の研究に関する課題について考察が加えられた。
自閉スペクトラム症(ASD)の支援方法は急速に発展してきた。しかし開発された支援方法は本人へ直接支援することを前提としており、本人が支援を拒否する場合について介入方法は整理されていない。支援を拒否する本人の、支援への動機づけを高めるためには、物質依存者とその家族を包括的に支援するCommunity Reinforcement and Family Training(CRAFT)が参考になると考えられる。ただしASD特性を考えると、CRAFTをそのまま応用適用するのではうまくいかないと考えられる。また、CRAFTは基本的に激しい家庭内暴力や犯罪行為があるIPを臨床試験の対象から除外するが、地域支援では危機介入場面に多く出会う。そこで筆者はCRAFTにASD支援、危機介入を組み合わせたプログラムを作成した。本稿ではそのプログラムを紹介し、考察を加える。
本論文の目的は、受診を拒否している依存性物質使用障害の患者の家族を対象としたCommunity Reinforcement and Family Training(以下、CRAFT)プログラムを紹介し、その結果を報告することである。CRAFT群12例、CRAFT拒否群13例を対象に依存性物質使用障害の患者の受診率を追跡した。その結果、CRAFT群の10例(83.3%)で患者が受診につながった。2例は受診にはつながらなかったが、患者の問題行動が改善した。また、CRAFT群の全例において家族自身の生活の質が改善した。一方、CRAFT拒否群においては、患者が受診につながった事例は0例(0%)であった。これらの結果を踏まえ、受診を拒否している依存性物質使用障害の家族に対するCRAFTの効用と今後の課題について考察した。