行動療法研究
Online ISSN : 2424-2594
Print ISSN : 0910-6529
18 巻, 1 号
選択された号の論文の8件中1~8を表示しています
  • 岡林 尚子, 武島 あゆみ, 生和 秀敏
    原稿種別: 本文
    1992 年18 巻1 号 p. 1-9
    発行日: 1992/03/31
    公開日: 2019/04/06
    ジャーナル フリー
    本研究では,対人場面における随伴性の有無によってイメージトレーニング(visualization方略)の効果がスピーチ不安の生理的側面および主観的側面にどのような違いとなって現われるかを比較,検討することを目的とした。対人不安感の高い傾向にある被験者17名を随伴性あり群(8名)・随伴性なし群(9名)にそれぞれランダムに振り分けた。不安の生理的指標として心拍数を測定し,主観的指標として9つの情動項目に対する評定を行なった。その結果,不安の生理的側面については随伴性なし群に平均心拍数の減少がみられたものの,統計的に有意な減少はみられなかった。また,主観的な不安感については,随伴性あり群・随伴性なし群ともにイメージトレーニソグ後に不安得点の減少がみられた。主観的不安感について随伴性あり群と随伴性なし群で減少の度合を比較した結果,特に随伴性なし群において不安感の低減が顕著であった。本研究の結果からvisualization方略が随伴性の低い場面において主観的な不安感を低減させるのに有効な方略であることが示唆された。
  • 石川 利江, 佐々木 和義, 福井 至
    原稿種別: 本文
    1992 年18 巻1 号 p. 10-17
    発行日: 1992/03/31
    公開日: 2019/04/06
    ジャーナル フリー
    本研究の目的は,2つの社会的不安尺度,Fear of Negative Evaluation Scale(FNE) SocialとAvoidance and Distress Scale(SADS)の日本版標準化であり,健常者300名と対人不安を訴える32名の被検者を調査対象として両尺度の信頼性と妥当性の検討を行うことである。その結果,以下のようなことが明らかになった。(1)日本版FNEとSADSの内的整合性は充分高いものである。(2)両尺度は因子的妥当性,臨床的妥当性が高く,社会的不安の高い者を判別できる尺度である。(3)再テスト法によって得られた両尺度の信頼性係数は,臨床的に用いる質問紙としては充分高いものである。(4)両尺度は,MASとSTAIと有意な高い相関が得られた。したがって,日本版FNEとSADSは,臨床的あるいは研究上の有用性が高いものであることが示唆された。本研究の結果は,社会的不安理論の枠組みで論じられた。
  • 西川 潔, 赤木 稔, 吉岡 重威
    原稿種別: 本文
    1992 年18 巻1 号 p. 18-26
    発行日: 1992/03/31
    公開日: 2019/04/06
    ジャーナル フリー
    遺糞症24名の患者に,道具的条件づけを中心とした治療を行い,治癒16例,軽快4例,脱落4例,有効率83.3%を得た。緩下剤は,多くの症例で排便を容易ならしめるために併用した。誘因・増悪因子は,放任的な親,厳格な親による排便の躾上の失敗と思われるものが多く,その他としては片親の死亡や同胞の出生,環境の問題など多彩であった。男児が女児の2〜10倍多いと言われていたが,それほど著しい性別差はなかった。我々が行ったこの方法は,保護者の積極的な参加,年長児では患者の同意が治療効果をより向上させると指摘したい。言い換えれぽ,両親と患児の動機づけがこの治療法では重要である。
  • 岩永 誠
    原稿種別: 本文
    1992 年18 巻1 号 p. 27-35
    発行日: 1992/03/31
    公開日: 2019/04/06
    ジャーナル フリー
    不安状況は,身体的危機状況と自我脅威状況の2つに分類されている。本研究は,こうした不安状況の違いが不安反応の表出に及ぼす影響について検討することを目的とした。被験者には男子大学生24名を用い,2条件にランダムに振り分けた。実験条件として,電撃を受けるES条件と,ポルノビデオの呈示を待つ間カメラにより観察されるPV条件を設定した。不安反応には,心拍数と打叩圧を用いた。心拍数と打叩圧の関係性は,相互相関分析を用いて検討した。反応水準の増加の程度はES条件の方が大きく,低域の反応変動性はPV条件の方で大きくなる傾向があった。反応間の関連性については,短周期の心拍変動と打叩圧の相関がES条件で高くなっていた。これらの結果は,不安状況によって不安反応の表出が異なることを示唆するものといえる。
  • 神村 栄一
    原稿種別: 本文
    1992 年18 巻1 号 p. 36-46
    発行日: 1992/03/31
    公開日: 2019/04/06
    ジャーナル フリー
    本研究は,3タイプの認知的対処スタイルが,不安反応(生理的覚醒,外顕行動,主観的言語報告)に及ぼす影響を検討することを目的とした。各群の被験者は,Marlowe-Crowneの社会的望ましさの尺度(MCSD)と,顕在性不安検査(MAS)を用いてスクリーニソグされた男子大学生で構成され,それぞれrepressor(MCSD得点が高くMAS得点が低い),sensitizer(MCSD得点が低くMAS得点が高い),low-anxious(MCSD,MASともに低い)とされた。各被験者は初対面の女学生から面接を受けるというストレス状況におかれ,不安感の主観的評定,心拍率と皮膚伝導度の生理反応,外顕的不安行動の測定が行われた。主な結果は以下の通りである。外顕的不安行動で,sensitizerは他の2群よりも有意に大きな混乱を示した。一方心拍率においては,repressorがもっとも大きな増加を示す傾向にあった。low-anxiousは外顕的不安行動と生理的覚醒のいずれでも不安の程度は小さかった。主観的不安感の評定においては先行研究と一致せず,3群間に大きな差は確認されなかった。repressorとsensitizerにみられた外顕的不安行動と心拍率における覚醒の2指標の間の不一致は,各群の被験者に特有の対処方略における違いによるものであると考察された。
  • 松村 茂治
    原稿種別: 本文
    1992 年18 巻1 号 p. 47-60
    発行日: 1992/03/31
    公開日: 2019/04/06
    ジャーナル フリー
    小学生女児の場面絨黙2事例にフェーディング法を中心とする行動療法的な介入が試みられた。改善された行動の学校場面への般化を促進する目的から,相談室での介入よりも,両事例とも,絨黙症状が最も顕著に現われている学校場面での介入に力点が置かれた。〔事例1〕では,相談室においてセラピストとの活発な会話が可能になった後,家庭および放課後の学校という日常的な場面で,発話を促すための段階的な対応が試みられた。さらに,通常の学級場面での介入に関しては,学級担任の教師と緊密な連絡をとりながら,計画的な対応を進めてきた。半年ほどの期間を要して学級での自然な発話が可能になった。〔事例2〕では,相談室においてセラピストや同じような年頃の子どもたちとの遊びや会話を活発にする一方,放課後の学校において,担任や級友をフェーディング刺激とした計画的な介入が比較的長期間にわたって実施されてきた。放課後のセッションにおいて,男児たちのフェード・インが進むにつれ,通常の授業や休み時間での普通の発話が可能になっていった。場面絨黙児に発話行動を形成し,その般化を確実にするためには,子どもの普段の生活の中に介入のための場面を設定し,しかも言語的な行動のみでなく,対象児の社会的行動全般を視野に入れた介入を試みることの必要性が示唆された。
  • 園山 繁樹
    原稿種別: 本文
    1992 年18 巻1 号 p. 61-70
    発行日: 1992/03/31
    公開日: 2019/04/06
    ジャーナル フリー
    行動療法の技法の有効性はさまざまな要因によって影響される。それらの要因をinterbehavioral psychologyパラダイムを用いて検討することの有用性を考察した。そのために,選択性絨黙の8歳女児の事例を提示し,刺激フェイディング法が有効であるための条件を検討した。その結果,特に刺激機能,状況要因,行動の歴史といったinterbehavioral psychologyパラダイムの構成要素を検討し,それらの要因をも操作することが有益であることが示唆された。
  • 原稿種別: 付録等
    1992 年18 巻1 号 p. 71-74
    発行日: 1992/03/31
    公開日: 2019/04/06
    ジャーナル フリー
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