小学生女児の場面絨黙2事例にフェーディング法を中心とする行動療法的な介入が試みられた。改善された行動の学校場面への般化を促進する目的から,相談室での介入よりも,両事例とも,絨黙症状が最も顕著に現われている学校場面での介入に力点が置かれた。〔事例1〕では,相談室においてセラピストとの活発な会話が可能になった後,家庭および放課後の学校という日常的な場面で,発話を促すための段階的な対応が試みられた。さらに,通常の学級場面での介入に関しては,学級担任の教師と緊密な連絡をとりながら,計画的な対応を進めてきた。半年ほどの期間を要して学級での自然な発話が可能になった。〔事例2〕では,相談室においてセラピストや同じような年頃の子どもたちとの遊びや会話を活発にする一方,放課後の学校において,担任や級友をフェーディング刺激とした計画的な介入が比較的長期間にわたって実施されてきた。放課後のセッションにおいて,男児たちのフェード・インが進むにつれ,通常の授業や休み時間での普通の発話が可能になっていった。場面絨黙児に発話行動を形成し,その般化を確実にするためには,子どもの普段の生活の中に介入のための場面を設定し,しかも言語的な行動のみでなく,対象児の社会的行動全般を視野に入れた介入を試みることの必要性が示唆された。
抄録全体を表示