行動療法研究
Online ISSN : 2424-2594
Print ISSN : 0910-6529
24 巻, 1 号
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  • 遠藤 史子, 芝野 松次郎
    原稿種別: 本文
    1998 年24 巻1 号 p. 1-14
    発行日: 1998/03/31
    公開日: 2019/04/06
    ジャーナル フリー
    施設に入所している要求行動の過剰な高齢者に対して,要求行動の減少と好ましい社会的行動の増加を目標として,刺激統制法とディファレンシャルアテンション法に基づく環境調整を行った。刺激統制法では,施設ホール内の家具の一部を変更し,社会的行動に変化がみられるかを試みた。ディファレンシャルアテンション法では,対象者のポジティブな行動に対しては賞賛や身体的接触などの社会的強化子を与えて強化しながら,ネガティブな行動に対しては対応を控えた。刺激統制法,ディファレンシャルアテンション法の両方の手続きにおいて対象者の不適切な要求行動の減少が認められた。後半,スタッフの強化行動が次第に弱くなってきた為,スーパーバイザーによる結果のフィードバックを行った。フィードバック後,強化手続きは一時的には改善されたが,長く維持されるまでには至らなかった。過剰な要求行動などの高齢者の問題行動においては,他者の接触をはじめとする生活環境による影響が強く,そうした環境の改善が問題行動の低減に有効であることが確認できた。また,強化子にスタッフのかかわり行動を用いる場合,強化を与える側のスタッフの行動を支持することが重要であると推察された。
  • 今野 義孝
    原稿種別: 本文
    1998 年24 巻1 号 p. 15-25
    発行日: 1998/03/31
    公開日: 2019/04/06
    ジャーナル フリー
    本研究では,「とけあい脱感作法」によって短期間に症状が改善した2事例について報告した。事例1は中学時代からあがりと手の震えを訴えていた23歳の不安神経症の女子学生,事例2は2週間前から失声症を呈した19歳の転換反応の女子学生である。事例1は,「とけあい脱感作法」によって発表に対する予期不安が改善するにつれて,課題達成後の不全感が「完壁への欲求」によるものであることに気づくようになった。さらに,課題達成後の不全感に対して「とけあい脱感作法」を試みたところ,クライエントは「完壁への欲求」から解放され,あがりや震えも改善した。事例2では,「とけあい脱感作法」によって悪夢への予期不安やポケベルへの恐怖が改善した。それにともなって,症状の背後に「過剰な自責感」があることに気づき,不安への現実的な対処が可能になり,失声症も改善した。
  • 松本 聰子, 佐藤 健二, 横井 美環, 吉永 美穂, 志村 翠, 坂野 雄二
    原稿種別: 本文
    1998 年24 巻1 号 p. 27-37
    発行日: 1998/03/31
    公開日: 2019/04/06
    ジャーナル フリー
    本研究の目的は,過敏性腸症候群(lrritable Bowel Syndrome;IBSと略す)に関して過去12年間(1985〜96年)の治療研究の動向を展望することにより,IBSに対する治療の現状の把握および心理療法の効果の検討を行うことであった.文献検索の結果,欧米では66件,本邦では9件の治療研究が見出された.主な結果は以下の通りであった.(1)欧米における66件の治療研究は,3つに大別された(薬物療法,食事療法,心理療法).(2)心理療法は認知行動療法(Cognitive Behavior Therapy;CBTと略す),リラクセーション法,認知療法,腸音バイオフィードバック,催眠療法を含んでいた.(3)腸音バイオフィードバックを除く全ての心理療法は統制条件よりも優れていた.(4)CBTあるいは薬物療法と短期力動的精神療法とを組み合わせた治療法の効果は,少なくとも薬物療法と同程度であった.(5)認知療法のみがプラセボ統制条件よりも効果のあることが示された.(6)本邦においては特定の心理療法が多用されてはいなかったが,社会的不適応を伴ったIBS患者に対しては,特に不安に対する行動的技法が適用されていた.最後に,IBSに対する効果的な治療方法を確立していくためには,本邦においても統制研究を行っていく必要性が指摘された.
  • 河合 伊六
    原稿種別: 本文
    1998 年24 巻1 号 p. 39-48
    発行日: 1998/03/31
    公開日: 2019/04/06
    ジャーナル フリー
    発達心理学ではすでに,人生の各発達段階における心身の発達に関する膨大な情報を集積しており,学習(行動)心理学では,発達を促進させる有効な原理や方法を見い出している。本稿は,伝統的な発達研究が持っているいくつかの問題点,たとえば発達研究で多く用いられている相関論的研究で個人ごとの貴重な情報が捨て去られること,発達の規定因を主として内的要因に求めること,環境を構造的に捉えるために行動と環境との機能的関係が解明できないこと,発達を促進する積極的な取り組みが示唆されにくいことなどを取りあげる。とくに両者の見解の相違点を比較考察しながら,行動分析的見解を中心に据えて発達心理学的研究の成果を取り入れ,両者の統合の可能性を探ってみたい。
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