行動療法研究
Online ISSN : 2424-2594
Print ISSN : 0910-6529
30 巻, 2 号
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  • 志和 資朗, 松田 俊, 佐々木 実
    原稿種別: 本文
    2004 年 30 巻 2 号 p. 75-86
    発行日: 2004/09/30
    公開日: 2019/04/06
    ジャーナル フリー
    本研究では、EMDRによって不快な記憶が脱感作されるかを、精神生理学的な指標であるP3を用いて検討した。本研究の被験者は41名(女性26名、男性15名)である。まず、重度に不快な記憶をもつ31名の大学生の被験者を3つの群に割り当てた;EMDR群(n=10)では不快な記憶を想起しながら眼球運動を行い、Image群(n=10)では視覚刺激を凝視しながら不快な記憶の想起を行い、 EM群(n=11)では眼球運動のみ行った。軽度に不快な記憶をもつ10名の大学生の被験者を低SUDS(主観的障害尺度)群に割り当て、軽度に不快な記憶を想起しながら眼球運動を行わせた。本実験では、不快な記憶に関連する人物の姓(関連刺激)を刺激に用いて脳波の測定を行った。脳波の測定回数は2回で、眼球運動あるいは視覚刺激を凝視した前後に行った。関連刺激に対して生起したP3の振幅を、眼球運動あるいは視覚刺激を凝視した前後で比較した。実験の結果、EMDR群のP3振幅が有意に低下していた。また、SUDSの値は、 EMDR群と低SUDS群で低下した。この結果は、 EMDRの有効性を示すものといえる。
  • 笹川 智子, 金井 嘉宏, 村中 泰子, 鈴木 伸一, 嶋田 洋徳, 坂野 雄二
    原稿種別: 本文
    2004 年 30 巻 2 号 p. 87-98
    発行日: 2004/09/30
    公開日: 2019/04/06
    ジャーナル フリー
    本研究の目的は、日本版Fear of Negative Evaluation Scale(FNE;石川ら,1992)の短縮版を作成し、その測定精度を項目反応理論(IRT)の観点から評価することであった。項目数を削減することによる情報量の損失を、段階反応モデルを用いることで補い、12項目五件法の尺度を構成した。テスト情報関数の形状から、作成された短縮版は幅広い尺度値レベルで安定した測定精度を保つことが示された。特に特性値の高い被検者に対しては30項目二件法の原版よりも有効性が高く、Leary(1983)のBrief Fear of Negative Evaluation Scale(BFNE)との比較においてもすぐれた測定上の特徴をもつものであった。また、簡便なスクリーニングテストとしての有用性や、他の尺度との併用など、臨床・研究場面への応用可能性が論じられた。
  • 長江 信和, 増田 智美, 山田 幸恵, 金築 優, 根建 金男, 金 吉晴
    原稿種別: 本文
    2004 年 30 巻 2 号 p. 113-124
    発行日: 2004/09/30
    公開日: 2019/04/06
    ジャーナル フリー
    外傷後認知尺度は、外傷体験者の認知を測る尺度である(Foa et al., 1999)。外傷後認知は、否定的なライフ・イベントの体験者にみられる外傷的反応の予後に影響を及ぼすと考えられる。本研究では、大学生における否定的ライフ・イベントの体験の分布を調べるとともに、その体験者を対象として日本版外傷後認知尺度の尺度化を試みた。大学の教場で調査を行った結果、回答者2,622名のうち53.5%は自然災害や交通事故などの体験者であることが判明した。一方、外傷後認知尺度の翻訳版がバックトランスレーションの手続きを経て作成された。否定的ライフ・イベントの体験者に対して郵送調査を行った結果、Foa et al.(1999)と同様の3因子が見いだされ、良好な再検査信頼1生と基準関連妥当性が確認された。日本版外傷後認知尺度は、否定的ライフ・イベントの体験者である大学生一般に適用できる可能性が示唆された。
  • 石川 信一, 坂野 雄二
    原稿種別: 本文
    2004 年 30 巻 2 号 p. 125-136
    発行日: 2004/09/30
    公開日: 2019/04/06
    ジャーナル フリー
    本論文の目的は、児童期の不安障害のレビューを行い、児童における不安障害に対する認知行動療法の効果について検討を行うことであった。第1に、児童期の不安障害は、全般性不安障害/過剰不安障害、社会恐怖、分離不安障害、パニック障害、特定の恐怖症、強迫性障害の6つに分類されることが示された。第2に、児童期の不安障害の有病率は10%弱であること、不安障害の各症状は併発率が高いことが示された。第3に、不安症状をもつ児童は学校や他の社会的状況において不適応を示すこと、不安障害を示す成人の多くは児童期から不安症状をもつことがわかった。不安障害の児童に対する認知行動療法の展望の結果、個別介入、集団介入、早期介入、両親を含めた介入の効果が無作為化比較試験によって証明された。最後に、本邦において、効果的な治療法を構築するために、不安障害の児童に対する治療法の研究が必要であることが指摘された。
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