音楽教育学
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50 巻, 1 号
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研究論文
  • ─ 東京市汐見尋常高等小学校の史料を中心に ─
    島田 郁子
    2020 年 50 巻 1 号 p. 1-12
    発行日: 2020年
    公開日: 2021/08/31
    ジャーナル フリー

     本研究では, 近森一重の戦前の音楽教育実践と音楽教育観について考察する。その方法は次の二点である。 (1) 近森が戦前唱歌訓導として勤務した, 東京市汐見尋常高等小学校 (現東京都文京区汐見小学校) に保管されている当時の史料を整理し分析する。 (2) 雑誌『教育音楽』の戦前の記事や近森の論文を検討する。その結果, 近森が唱歌訓導として意欲的に音楽教育の環境を整え, 唱歌演習会等の行事を洗練させ, 授業研究を深めていったことや, 実践と理論をつないだ「実践の論」として多くの論文を著したことを明らかにした。また, 二つの授業実践記録の分析を通じて, 近森の実践における諸相を描き出した。以上から, 近森の音楽教育観が, 「学習者の学びに即した系統的な基礎練習」「教授事項の有機的統一」「児童に『発見』を促す指導の工夫」という三つの観点によって構築されていることを指摘した。

  • 西島 千尋
    2020 年 50 巻 1 号 p. 13-24
    発行日: 2020年
    公開日: 2021/08/31
    ジャーナル フリー

     現代の音楽科では「生活や社会の中の音や音楽, 音楽文化」や「他者との協働」 (学習指導要領) が想定されており, 自律した音楽作品が児童・生徒の美的情操を育むという従来の観念だけでは通用しなくなっている。そこで本論文では, 現代の音楽科に新たな方向性をもたらすものとして, Ch. スモールが提唱した「ミュージッキングmusicking」という概念に着目したい。本文ではまずミュージッキングの意義を整理し, D. エリオットが提唱した「ミュージキングmusicing」との比較から, ミュージッキングが複数の媒体の関係による共時的な行為を指し示す概念であることを明らかにする。次に, ミュージッキングを引用する研究を取り上げながらミュージッキングの理論的な錯綜を整理する。それを踏まえ, 音楽療法, 文化人類学, 芸術社会学の各分野でミュージッキングを発展させている研究を参照し, ミュージッキングの音楽科における可能性を探る。

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