本研究は, 私立幼稚園5歳児クラス34名を対象とした身の回りの音を記録・聴取する協同的な音楽づくりの実践により, 次の2つの目的を達成することを目指した。第1の目的は, ICTを活用した音楽づくりの実践から幼児の聴く姿とその変容を捉え, 考察を通してその内容を明らかにすることである。結果, その場の音響としてループされる自分の音を自覚, あるいは予測しながら自分なりの音を表現する姿が見られた。また, 1人で表現する時よりも他の幼児と協同的に表現する方が, 自分の音をより長く聴取する姿を観察することが出来た。第2の目的は, 幼児期の音楽づくりにICTを用いることの教育的意義について考察し, 新たな知見を得ることである。この点については, 活動中の幼児の姿や作品の分析, 担任教諭へのインタビューを通して, 「環境に対する多角的視点の提供」, 「幼児の音遊びの拡充」, 「音楽表現の萌芽の理解」の3点について知見を得た。
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