音楽教育学
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52 巻, 1 号
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研究論文
  • 小畑 千尋
    2022 年 52 巻 1 号 p. 1-12
    発行日: 2022年
    公開日: 2024/01/17
    ジャーナル フリー

     重度の聴覚障害者にとって, 他者と同じ音高・音程で歌うことは非常に困難である。学校教育現場でも, 聴覚障害児に対する音高・音程を合わせて歌うための積極的な指導がなされてきたとは言い難い。しかし, 聴者を対象とした研究では, 内的フィードバック能力 (歌いながら自分自身の歌唱の音高・音程が合っているかどうかの認知) の獲得により, 音高が合っている心地よさ, 歌唱者本人が歌えるという自信などにも繋がることが明らかである。そこで本研究では, 先天性の重度の感音性難聴の大学生を対象に内的フィードバック能力に着目した歌唱活動のセッションの実施と分析を行った。その結果, 重度の感音性難聴の学生であっても, 内的フィードバック能力が獲得でき, そのことに伴い, 自己の発声を受容し, 「歌う」発声を楽しむ姿が認められたことから, 聴覚障害者への内的フィードバック能力獲得のための指導の重要性が示された。

  • ─ ループマシンを活用した5歳児の協同的な音楽表現 ─
    仲条 幸一
    2022 年 52 巻 1 号 p. 13-24
    発行日: 2022年
    公開日: 2024/01/17
    ジャーナル フリー

     本研究は, 私立幼稚園5歳児クラス34名を対象とした身の回りの音を記録・聴取する協同的な音楽づくりの実践により, 次の2つの目的を達成することを目指した。第1の目的は, ICTを活用した音楽づくりの実践から幼児の聴く姿とその変容を捉え, 考察を通してその内容を明らかにすることである。結果, その場の音響としてループされる自分の音を自覚, あるいは予測しながら自分なりの音を表現する姿が見られた。また, 1人で表現する時よりも他の幼児と協同的に表現する方が, 自分の音をより長く聴取する姿を観察することが出来た。第2の目的は, 幼児期の音楽づくりにICTを用いることの教育的意義について考察し, 新たな知見を得ることである。この点については, 活動中の幼児の姿や作品の分析, 担任教諭へのインタビューを通して, 「環境に対する多角的視点の提供」, 「幼児の音遊びの拡充」, 「音楽表現の萌芽の理解」の3点について知見を得た。

研究報告
  • 森山 至貴
    2022 年 52 巻 1 号 p. 25-35
    発行日: 2022年
    公開日: 2024/01/17
    ジャーナル フリー

     本稿は, 音楽教育の分野で1950年代以降2010年代初頭までに多くなされてきた男子の「声変わりの早期化」という主張の当否を検討するものである。18の定量調査と雑誌『教育音楽』内の声変わりに関する記述を検討し, 以下2点を明らかにした。第一に, 「声変わりの早期化」が1950年代以降現在まで進行しているとも進行が止まったとも結論付けられない。第二に, 初潮や身長の急激な伸長などに関する調査を参照すると, 1950~70年代に「声変わりの早期化」が起こっていたと考えるのには, 一定の妥当性があるが, これらの調査は1980年代以降の「声変わりの早期化」を支持しない。「声変わりの早期化」に関する妥当な科学的知見の導出不可能性は, そもそも歌唱指導が科学的なエビデンスに基づいていない可能性を強く示唆している。子どもの発育に悪影響を与えないよう, この状況は改善されるべきである。

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