音楽教育学
Online ISSN : 2424-1644
Print ISSN : 0289-6907
ISSN-L : 0289-6907
36 巻, 2 号
選択された号の論文の5件中1~5を表示しています
研究論文
  • ―大正期の童謡批判を通じて―
    鈴木 治
    2006 年36 巻2 号 p. 1-11
    発行日: 2006年
    公開日: 2017/08/08
    ジャーナル フリー

     大正期童謡運動で多く世に生み出された「童謡」について, 唱歌教育にそれを教材として積極的に使用する動きに, 批判的な動きを見せた人物に, 東京高等師範学校附属小学校の唱歌訓導を務めた田村虎蔵と青柳善吾がいる。両名とも斯界をリードする人物であり, 音楽ジャーナリズム, 教育ジャーナリズムを通して発表されたその言説は, 常に注目の対象であった。

     本稿では, 青柳善吾が大正期, 東京高等師範学校附属小学校の唱歌訓導として在籍した当時の「童謡批判」を中心に検討する。その観点として (1) 批判の経緯, (2) 批判の内容, (3) 批判の限界, 以上3点を軸に, 青柳の言説を取り上げて分析する。この分析を踏まえ, 童謡批判を通じて青柳がどのような唱歌教材観を形成していったのか。青柳の「思想性」も含め, 青柳が学び, 築いていった「音楽美学」との関連において描き出す。

  • ―H. G. ネーゲリの思想とその活動の歴史的意義―
    関口 博子
    2006 年36 巻2 号 p. 12-22
    発行日: 2006年
    公開日: 2017/08/08
    ジャーナル フリー

     本稿は, 19世紀前期ドイツ語圏スイスの音楽教育・音楽文化において顕著なペスタロッチ主義による学校音楽教育の改革と合唱運動という2つの視点から, H. G. ネーゲリ (1773-1836) の音楽教育思想とその活動の歴史的意義を再評価することを課題とする。ネーゲリは, 従来の音楽教育史研究においてはもっぱらペスタロッチ主義の方法論者としてのみ評価されてきた。しかし彼は, それだけにとどまらず, 人間形成をその目的として学校音楽教育を出発点に, そこから民衆レベルの芸術運動まで展望し, ポリフォニーの合唱作品による人間としての「自立」と他者との「共立」という, スイスの近代民衆像を構想した。そして, そこまで一貫した理論を構築して実践し, さらにその実践を協会運動として構想・展開しており, それがネーゲリの音楽教育と合唱運動の近代性を際立たせている。つまりネーゲリの音楽教育の改革は, 広義の民衆文化の改革と創造の運動であったと言うことができる。

第37回大会
プロジェクト研究1 (常任理事会企画)
プロジェクト研究2 (常任理事会企画)
feedback
Top