音楽教育学
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45 巻, 1 号
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研究論文
  • ―修正版グラウンデッド・セオリー・アプローチを用いて―
    新原 将義, 大澤 愛, 茂呂 雄二
    2015 年 45 巻 1 号 p. 1-12
    発行日: 2015年
    公開日: 2017/03/31
    ジャーナル フリー

     近年盛んに行われている教育現場での音楽アウトリーチに関しては, 教職員の語りはこれまで正当に扱われてこなかった。本研究ではこのことを指摘した上で, 音楽アウトリーチを経験した保育者の語りを捉えることを目的とし, インタビュー及び修正版グラウンデッド・セオリー・アプローチ (M-GTA) による分析を実施した。分析の結果, 保育者が子供に対して獲得的な学習観を前提に接するのではなく, 活動のなかで子供になにができているかを捉えるような語りが中心であったことが明らかになり, 保育園・幼稚園が子供の有能さに着目する場となっていることが示唆された。また, ミーティングやインタビューといった場の設定によって通常は着目しない行動に対する意味づけや, 新たな観点からの語りが得られたことから, こうした場が水平的な学習を促進させる, あるいは水平的な学習を言語化し, 可視化させる場として機能していた可能性が指摘された。

  • ―日米の教師の語りから見るスズキコミュニティのエートス―
    桂 直美
    2015 年 45 巻 1 号 p. 13-24
    発行日: 2015年
    公開日: 2017/03/31
    ジャーナル フリー

     本研究は, スズキメソードとは何かを, 教師たちに内在する視点から捉え直すものである。外在的な教育行為や方法次元の特徴に留まらず, 教師たちの間に内在化されているエートス, すなわち教育実践を支える行動原理となっている価値や信念に焦点をあてることで, スズキメソードをその教育哲学の次元から一つの全体として理解することができる。そのために, スズキ教育論の原点を志向する夏期学校を日米において選び出し, そこに集う教師たちに行ったインタビューから, 双方に共通する主題を取り出すことで, スズキメソードの哲学が今日の教育の担い手たちにどのように受け継がれているかを明らかにした。そこでは, 「音楽を通した人間教育」の内実が示され, 特にすべての子どもの成長を求め競争主義を否定する思想が, 「斉奏」の意義. 教師同士が学び合い教え合う共同体のあり方, 親としての成長, 他者の尊重等, 実践の姿に生きるものとしてとらえられた。

研究報告
  • 長友 洋喜
    2015 年 45 巻 1 号 p. 25-35
    発行日: 2015年
    公開日: 2017/03/31
    ジャーナル フリー

     従来, 多くの研究は芸術的歌唱を音響学などの視点から科学的に分析してきた。しかし, 声楽教師や生徒の実践において中心となる問題は, 歌唱の能力と美しい声をいかに決定しうるのかであろう。本稿の目的は歌唱能力と美しい声の概念を再考することである。そのために本稿は, フレデリック・フスラーの思想を検討した。従来フスラーに関しては, 発声訓練における有効性の検証や, 科学的な分析がなされてきた。それに対し本稿は, フスラーの思想における「能力」と歌唱音声の「美しさ」を検討した。フスラーは, 全ての人が発声器官を有する以上, 歌う「能力」も有し, 発声器官を適切に使えば誰もが芸術的に歌うことができると認識する。フスラーの主張によれば, 歌唱音声の「美しさ」は発声器官の適切な使い方を反映している。フスラーの思想を通し, 歌唱能力と美しい声の概念を再考する必要性と, 声楽家や声楽教師の思想に関心を抱くことの重要性が再確認される。

特集「音楽科へのエール」
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