音楽教育学
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51 巻, 1 号
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研究論文
  • ─ 高等学校芸術科音楽の授業における実践研究 ─
    増田 建太
    2021 年 51 巻 1 号 p. 1-12
    発行日: 2021年
    公開日: 2022/08/31
    ジャーナル フリー

     対位法は, 西洋音楽の作曲における主要な技法であり, 創作の学習で扱うことは意義深い。しかし, 総合的な音楽能力を要求することから, 学校音楽教育における実践の可能性の検討は未だ十分ではない。ブロック作曲法とは, 筆者が考案した創作の教育方法であり, 音楽の要素の対比を利用して音符群同士の関係性を考察するものである。この作曲法は, 音を比較する視点を重視しているという点で, 対位法に繋がる性格を備えている。本稿では, 高校生を対象に現代音楽の様式の上でブロック作曲法の実践を行い, 学習者を対象とした事前・事後のアンケートを分析した。その結果, 音楽の要素の関係性に対する考察力と聴取力の向上を確認した。また, 生徒がつくった作品の中で模倣技法を扱うケースも見られ, 当実践が対位法に繋がる可能性を持つことも確認できた。以上の結果は, 学校音楽教育における対位法への導入としてのブロック作曲法の価値を示していると考えられる。

  • 菅 道子
    2021 年 51 巻 1 号 p. 13-24
    発行日: 2021年
    公開日: 2022/08/31
    ジャーナル フリー

     堺市は, 視学佐藤吉五郎の指導のもと1937 (S12)~1939 (S14) 年の三年間に約2万人の小学児童を対象に和音感教育を試みた。大多数の小学校では, 和音笛等を使いながら「型の如く」といわれた定型化した基礎練習の和音感教育を徹底し, 同時に「先発隊」といわれた殿馬場尋常小学校等では, 基礎練習とともに作曲や合唱も楽しむ実践モデルとしての和音感教育が展開された。この「型の如く」と「先発隊」の二本立て体制が堺市内の和音感教育を推進する要件となったことが明らかとなった。また, 佐藤の掲げた個人の知識技能に基づく表現の積み上げから生まれる「国民皆唱」の理念は, 同時に「一切の我を捨て真に国家目的に帰一する団体訓練の表現」であり, 絶対音感による基礎練習は国防教育としての意義も付された。こうした和音感教育の矛盾を含んだ両義性は, しかしながら芸能科音楽に向けては実利あるものとみなす考え方につながったことを指摘した。

研究報告
  • ─ 飛沫可視化による飛沫防護具の比較などの検証実験を通して ─
    齊藤 忠彦, 田島 達也, 岩﨑 博道, 岡本 隆太, 高橋 幸三, 財満 健史, 大脇 雅直
    2021 年 51 巻 1 号 p. 25-35
    発行日: 2021年
    公開日: 2022/08/31
    ジャーナル フリー

     2019年12月に報告された新型コロナウイルスの影響は学校教育においても深刻である。特に音楽科では歌唱などの表現活動において飛沫拡散の可能性があるため, その対策を講じることが急務とされているが, 科学的な知見に基づく研究が遅れている。そこで, 本研究では, 飛沫可視化による検証実験を通して, 定量的なデータを得ながら, 歌唱の活動における飛沫感染対策に関わる検討を行うこととした。飛沫可視化によるマスク等の飛沫防護具の比較では, 「不織布マスク」「ガーゼマスク」「合唱用マスク」「マウスシールド」「フェイスシールド」の5種類の飛沫防護具を取り上げ, それらの中で最も飛沫抑制効果が高いのは「不織布マスク」であることを確認した。その他に, 「ハミング」「歌詞唱」「朗読」の比較検討, 「日本語」「ドイツ語」の比較検討なども行った。なお, 飛沫防護具着用による音響的な変化を捉えるために, 音声分析による検証実験を行った。

  • ─ その原曲の伝播と変容 ─
    村尾 忠廣, ゴチェフスキ ヘルマン, 奥 忍
    2021 年 51 巻 1 号 p. 36-46
    発行日: 2021年
    公開日: 2022/08/31
    ジャーナル フリー

     《山の音楽家》はドイツ民謡だとされている。しかし, 原曲とされるシュヴァーベン民謡Ich bin ein Musikanteとは旋律もリズムもあまりに異なっている。本研究の目的は, 《山の音楽家》がドイツ民謡であるか否か, その根拠を問い直すことである。結果は次のとおりである。1) Ich bin ein Musikanteはドイツ国内も含め, 世界各地に伝播, 変容していった。2) その中の一つに, カトリックの歌集として収められたDer Musikantがあり, これが《山の音楽家》の旋律, リズムと極めて類似している。3) 《山の音楽家》は, このDer Musikantを元歌として編曲されたものであろう。4) 伝播の過程でいかに変容したとしても, 「私は音楽家, 楽器が弾ける」と宣言し, 色々な楽器を弾く真似をして歌うということ, これだけは決して変わることなく, あたかも強固な遺伝子のように受け継がれた。

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